第1071回 増大要因
2008年08月20日
人による個人差はありますが、ほぼすべての人が人生の約4分の1もの大きな時間を費やしているもの、それが睡眠ではないでしょうか。毎日同じように繰り返す事ではありますが、決して蔑ろにする事のできない大切な事でもあります。
その睡眠の質を大きく低下させてしまうものの一つに、睡眠時無呼吸症の存在があります。睡眠時無呼吸症は、睡眠中に呼吸停止や浅呼吸が生じて睡眠を妨げる障害で、ほとんどの場合、日中の過度の眠気や慢性的な疲労感以外には本人に自覚はありません。
自分では充分な時間の睡眠を確保しているつもりでも、疲れや眠気が抜けない。それだけでも困った障害と思えるのですが、過去の多くの研究で睡眠時無呼吸症が死亡リスクを増大させる事が示されてきています。
先日行われたあらゆる原因による死亡率と睡眠時無呼吸症との独立した関連性を示す研究によると、睡眠時無呼吸症の存在は死亡率を極めて大きく増大させる事が認められ、重度の睡眠時無呼吸症がある人の場合、40歳の人の死亡率が正常な人の57歳時の死亡率と同じになるとされていました。
また別な研究では、重度の睡眠時無呼吸症によって死亡率が3倍も高まる事や、軽度から中等度の睡眠時無呼吸症でも正常な人よりも50%も死亡率が高まる事を示すという結果も得られています。
良い睡眠は健康の基本でもあるので、睡眠の質の低下が死亡率を増大させる事はある程度は予想できる事ではありますが、数字的な結果として示されると怖いものを感じてしまいます。日中の眠気や疲れ、充分に気を付けたいと思います。
第1070回 本物不在
2008年08月19日
昔から「香りマツタケ、味シメジ」と言われます。確かにマツタケは香り高く、最も良い香りを持つキノコと呼ばれる事も納得できます。しかし、もう片方のシメジは、食べやすい食材ではありますが、それほどしっかりとした旨味があるとは思えません。
旨味という点ではシイタケやマイタケの方が勝っているように思えるのですが、何故、美味しいキノコの頂点にシメジを据えられているのか、ちょっと不思議に思えてしまいます。
実はその理由は単純なもので、私たちが普段シメジとして接している食材が、本当のシメジではないという事を上げる事ができます。
本来、シメジと言うとキシメジ科シメジ属のホンシメジを指します。しかし、普段接しているシメジは、同じキシメジ科ではありますがシロタモギタケ属のブナシメジか、ヒラタケ科ヒラタケ属のヒラタケを人工栽培したもので、本当のシメジではありません。
ホンシメジはマツタケと同じく共生菌と呼ばれるキノコで、生きている木と共生関係を築いて助け合う事で生活しています。そのため人工栽培する事が極めて難しく、天然物は非常に貴重で日常的に流通する事はありません。
それに対しブナシメジやヒラタケは腐生菌に分類されるキノコで、枯木やオガクズなどで比較的容易に栽培する事ができます。ヒラタケの人工栽培が確立され、一般的に流通される事になった際、馴染みのないヒラタケでは消費者に受け入れられないかもしれないので、よく似たシメジという商標で売られる事になりました。
その後、ブナシメジの栽培法が確立されると、ヒラタケよりもシメジに近く、同じキシメジ科でもあるという事から、ブナシメジをホンシメジという商標で売り出す事になりました。
それが一般化して本当のシメジではないヒラタケ、ブナシメジがシメジ、ホンシメジとして売られる事になってしまいました。今ではキノコ類を販売する際は、本来の名前を使うようにという林野庁長官通達が出され、ヒラタケ、ブナシメジとして売られてはいますが、どちらも相変わらずシメジとして扱われています。
名前が取り違えられているだけなら良いのですが、キノコの美味しさを決めているグアニル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸などの旨味成分の含有量が、ホンシメジとヒラタケ、ブナシメジでは5倍近い開きがあります。普段食べているシメジが5倍美味しくなったとしたら...。そう考えると味はシメジなのかもしれません。
第1069回 レタスの入浴
2008年08月18日
大好きな食材なのですが、あまり日持ちがしない事から常備するには至らない、レタスにはそんな印象があります。透明感のある淡い緑と白の色合いは、少し時間を置いてしまうと茶色く変色してしまいます。
レタスを調理する際、芯を回し取って内側から小分けして、手で千切って食べやすい大きさにし、極力包丁は使いません。包丁は金属で出来ているので、金属のイオン効果で変色しやすくなるのを防ぐためです。
それだけ変色しやすいレタスですが、レタスが変色するのには大事な意味があります。レタスが変色するのはレタスが持つ酵素の力によるもので、変色した部分は強い酸性の状態にあります。虫に食べられたりした際に、その部分を酸性にして虫を追い払ったり、その部分からの雑菌の進入を防ぐためです。
そんなレタスの変色を防ぎ、シャキっとした食感を長持ちさせる方法があります。別に難しい事ではなく、非常に簡単な事なのですが意外と知られていない事でもあります。
沸騰したお湯と水を混ぜ合わせる、それで約50度のお湯ができます。それに2分ほど漬け込む事でレタスは、通常の状態よりも変色しにくくする事ができます。予期せぬ高温に出会った事で形成される特殊なタンパク質が変色を防いでくれます。
また、50度という温度はレタスに含まれるペクチンを硬化させ始める温度で、ペクチンが硬化する事でレタスの食感はよりシャキっとしたものになります。
水の分子の動きも温度が高まるほど大きくなる事から、常温の水よりも50度の方がよりレタスに吸収されやすくなり、レタスを瑞々しくパリっとした食感にしてくれ、苦味成分も加熱された事で分解され、レタスが持つ本来の甘みを楽しむ事ができます。レタスとお湯、ちょっと不似合いな感じの取り合わせですが、レタスをより美味しくしてくれます。
第1068回 付合模索
2008年08月12日
ヘリコバクターピロリ菌は、かつては酸性度が高すぎて一切の雑菌が棲息できないと考えられていた胃の中で繁殖しています。飲料水などから経口感染する事から、保菌者の割合は高いとされ、胃ガンや胃潰瘍の原因になる事も示唆されている事から、悪者視されています。
ピロリ菌と人類の関わりは古く、人類誕生以降感染が続いていたと考えられています。20世紀に入ってからは衛生状態が著しく改善された事や、抗生物質が使われるようになった事もあって、感染者の数は減少傾向にあると考えられています。
特に近年、ピロリ菌駆除専用の抗生物質が開発されてからは、保菌者の数は大きく減少し、ピロリ菌への感染もそれほど脅威とは言えなくなってきているてきていると思います。
弊害ばかりが言われてきたピロリ菌ですが、駆除できるようになり、研究が進むようになってくると、それなりに効用があったのではと言われるようになってきました。
これまでピロリ菌の存在は、アレルギー症状を緩和するのではという可能性が示唆されてきていました。ピロリ菌を保有する小児では、アトピー性皮膚炎の発生が少ない事も確認されています。
また、最近の研究では小児喘息の発生を抑えるの事も知られるようになってきています。7千人を超える小児のデータを収集し、ピロリ菌の保有の有無についてグループ分けして分析を行ったところ、ピロリ菌を保有する小児では、喘息の発生が59%も低く、花粉症やアトピー性皮膚炎、発疹などのアレルギーの発生も40%も低くなる事が明らかにされています。
ピロリ菌が減少した事で成人の胃潰瘍や胃ガンは減少し、良い影響が出ていると言えますが、子供にとっては疾患の予防という大切な役割が低下してきている事にもなります。
世界が清潔化して、身の回りからさまざまな菌が姿を消す事で、思わぬ弊害が出てくると言われていますが、ピロリ菌の存在もその一つなのかもしれません。今後は、上手に付き合う方法を探すという方向で研究が進めば良いのではと思ってしまいます。
第1067回 数え方いろいろ
2008年08月11日
本来、イカは1匹、2匹ではなく1杯、2杯と数えます。別な数え方としては1本、2本で、同じく杯で数えられるタコは、1匹、2匹と数える事もあります。食材には独特の数え方をする物がありますが、最近ではそれもあまり使われなくなってきているのではないでしょうか。
ハマグリはグラムで価格表示が行われる事が多く、単体で数える場合は1個、2個となってしまいますが、1口、2口という数え方もあります。1口、2口という数え方は、形状を見ると納得いくものがありますが、どことなく寄付などを思い起こしてしまいます。
素麺や最近ではパスタでも1回分を束ねてある物は、1束、2束と数えますが、「把(わ)」という単位でも数えていました。同じ数え方では野菜があり、葉物野菜やネギ、ニラなど束ねられて売られる事が多い野菜では1把、2把と数えられていました。
いまだに健在という点では、豆腐の1丁、2丁ですが、こんにゃくが同じ数えられ方をしていた事はあまり知られておらず、もう一つの数え方、1枚、2枚の方が一般化しています。もっと知られていないのは包丁が1丁、2丁と数えられるという事で、「柄(え)」という数え方も使われず、1本、2本が普通となっています。
房の状態で収穫される果物については、1房、2房が使われていますが、巨峰などの大粒のブドウの場合、房を離れると粒、バナナの場合、1本、2本となる事は、数え方を複雑化しているようにも思えます。
ご飯の場合、1杯、2杯が普通に使われ、イカと一緒とあえて言われてしまうとちょっと意外な感じもしてしまいます。そのご飯も1膳、2膳という数え方があり、同じ数え方は箸にも使われています。
箸に関しては、ほとんど知られてしませんが、1具、2具や1揃い、2揃いとい数え方があり、言われると解る気はしますが、使ってみても通じないようには思えてしまいます。
食材の数え方に限らず、日本語の古い言い回しには美しいものが多いと思っています。失われる一方ではありますが、できるだけ次の世代に残してあげられればと思うのは私だけでしょうか。
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