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第125回 備蓄と不安
2004年08月31日
新型インフルエンザが大流行した場合、最悪のシナリオを辿ると。国内では約17万人もの死者が出るとの試算があります。それに備えるために個性労働省では、国と都道府県に働きかけ、約1千万人分の「特効薬」とされているオセルタミビル(商品名:タミフル)の国家備蓄を始めています。
厚生労働省では、昨秋より10〜40年という周期で出現する新型インフルエンザウィルスへの対策を、専門家による小委員会を設けて検討を重ねてきました。同委員会では、国内で流行した場合、最大で3千2百万人の感染者が発生し、2千5百万人が受診、何も処置を行わなかった場合、17万人が死亡すると試算しています。備蓄は、そうした試算に合せた事で、毎年2百万人分を積み増しし、5年後には1千万人分を確保する予定になっています。
ところが、特効薬とみなされてきたタミフルにも、意外な落とし穴がある事が判ってきました。タミフルを使用した子供達の約2割の子から、耐性ウィルスが発見され、この耐性ウィルスが人から人へと感染すれば、タミフルが効かないという事態が予想されます。
これまで、タミフルについては、耐性ウィルスが発生する割合は、大人で0.4〜1%、子供の場合でも4%程度とされていました。しかし、実際に02〜03年に発熱などで受診し、検査キットによってインフルエンザが確認された0〜13歳までの子供50人を対象に調べたところ、18%にあたる9人から耐性ウィルスが発見されています。鳥インフルエンザなどの新型インフルエンザに関しては、誰も免疫を持っていない状態なので、耐性ウィルスが発生しやすいと考えられるので、今後の監視が重要になってきたと考えられます。
第124回 リスク3倍
2004年08月30日
喫煙に関しては、これまでも様々なリスクが報告されてきていましたが、今回行われた研究結果は、生命の危機に直結する「くも膜下出血」に関する事なので、かなりインパクトがあると思います。
国立がんセンター予防研究部長の津金昌一郎氏が主任研究者を務める厚生労働省の研究班の調査によると、喫煙を行う人は、行わない人に比べ、脳卒中、中でも血管が破れる事によって起こる「くも膜下出血」の発症リスクが、3倍程度高くなる事が明らかにされました。
90年に行われた生活習慣アンケートに回答を行った、当時40〜59歳までの男性約2万人、女性約2万2千人に対し、その後11年間を追跡調査を行ったところ、男性702人、女性447人が脳卒中を発症、そのうち男性73人、女性106人がくも膜下出血が原因となっていました。発症率を見ると、喫煙を行う、行わないでは、男性で約3.6倍、女性では2.7倍もの高率になっていました。たばこの本数的変化は、それ程でもなく、一日に20本以上吸う人と20本以下の人とでは、ほとんど発症率に違いはありませんでした。
そのため、くも膜下出血に限って言えば、予防の意味も含め、健康の為に本数を減らすよりは、きっぱりと止めてしまう方が良いようです。血管が詰まってしまう脳梗塞に関しても、男性が1.6%、女性が2倍ほど発症リスクが高まるそうですので、健康の為には吸い過ぎにご注意というより、きっぱり止めましょう。
第123回 菌食
2004年08月27日
細菌を体内に摂り込んでください。突然そう言われると、その抵抗感はかなりのものだと思います。でも、それはとても日常的な事なんです、と言ったら、何の事か解らなくなりそうですね。今朝、私はパンを食べました。それも立派に細菌の助けを借りた食品を摂取した事になります。
日常的な食品、味噌、しょうゆ、お酢、お酒、ヨーグルト、パン、納豆、キノコ、これらは細菌という共通項を持っています。日本は、この細菌を上手に食生活に取り入れる事の先進国で、細菌の助けを借りて製造される食品や、細菌そのものの食品もさまざまなバラエティーを持っています。
人間が日常摂取する食品は、大きく3つに分けられます。植物か動物、そして菌類です。細菌というと感染症のイメージが強く出てしまいますが、人間に対し有害な細菌自体は非常に少なく、ほとんどの細菌は無害です。中でも古くから発酵という形で接してきた酵母菌の類は、食材の性質を変えて消化吸収の良い状態にしたり、それまでは含まれていなかった栄養素を作り出したりしてくれます。
最近、食の欧米化によって、伝統的な細菌由来の食品が減ってきています。せっかくの良い食文化ですから、しっかりと残して後世に伝えたいものです。
第122回 一転否定
2004年08月26日
昨日のコラムのネタ、中国の鳥から豚への感染についてですが、一転して中国政府によって否定する声明が出されました。この声明は中国農業部より、オフィシャルサイトを通じて出されたもので、豚など110万匹を対象とした検査を実施した結果、豚からのウィルスは検出されなかったというもので、豚からのウィルス検出という先の報道を全面的に否定するものです。
一連の騒動の発端は、中国農業科学院ハルピン獣医研究所の陳化蘭研究員による、北京で開催された国際シンポジウムの席上での論文、03年に福建省で豚の体内から鳥インフルエンザのウィルスが見つかったという内容によるもので、この論文により、各国のメディアが鳥インフルエンザの豚への感染疑惑が報道されました。
そうした過剰な報道に対し陳研究員は、外電の報道内容を批判した上で、「鳥インフルエンザウィルスが豚の体内から検出される可能性は、非常に低く、自然界において豚への感染が起こるかどうかについても確証がない」としています。更に人への感染についても、「強い毒性を持つウィルスに突然変異が起これば人への感染力を持つ可能性はあるが、現時点では突然変異は確認されていない」との見解を発表しました。
WHO(世界保健機関)の在沖代表事務所によると、現時点で、豚への感染は報告されていないとの事ですので、ひとまず安心という感じがしますが、ウィルスの鳥から豚への感染、豚の体内での変異というのは、ありえない事ではないので、今後も警戒が必要だと思っています。
第121回 鶏から豚へ
2004年08月25日
北京で開催された鳥インフルエンザの対策等に関する国際シンポジウムにおいて、中国の研究者から毒性の強いH5N1型のインフルエンザウィルスが、豚から検出された事が発表されました。豚への感染が確認されたのは、これが初めての事になります。
発表では、03年と今年、中国の複数の地域で、豚から鳥インフルエンザのウィルスが見つかったとして、詳細な情報は開示されていないそうですが、北京在住のWHO(世界保健機関)の専門家は、豚に感染したウィルスが変異して、人への感染力を強める可能性があると指摘しています。
通常、鳥インフルエンザは、ウィルスを含んだ糞等に直接触れなければ、ほとんど感染する事はありません。豚は鳥にも人にも近いDNAを持つ事から、ウィルスが豚に感染する事によって、人にも感染しやすい状態に突然変異する可能性が考えられます。
鳥と人では、DNAがかけ離れているため、鳥から人への感染は、ほとんど見られませんでした。その仲立ちをするのが豚で、豚は鳥に近く、人にも近いという存在でした。鳥インフルエンザが特異な存在だったのは、その毒性もですが、鳥から直接人に感染するところにありました。すでに今年に入ってからベトナムやタイ、中国で感染が報告され、アジアだけでも27名の方が亡くなっています。今回、豚への感染が確認された事から、これまでのインフルエンザのように、強力な感染力を持つとなると、かなりの脅威となる事が考えられます。今後の動向に注目しながら、免疫力を高めて、自己防衛に努めたいと考えています。
第120回 不老長寿の素
2004年08月24日
不老長寿、古来より人々が求めるテーマの一つとされてきました。時の権力者によって、大々的な研究が行われたり、今日では、ゲノム解析で、徐々に解明されるのでは、という期待も膨らんできています。そんな不老長寿に関係している物質が、国立遺伝学研究所の広瀬進教授によって発見されました。
生体内では、ガンや老化の原因となる活性酸素が常に作り出されていますが、その活性酸素の作用を抑える働きを「AP1」という物質が担っています。今回、新たに見つかったタンパク質「MBF1」は、このAP1の活性化に重要な役わりを持っています。
広瀬教授は、ショウジョウバエを用いた実験で、MBF1を失わせたハエ、多く持つハエ、普通のハエという3グループを用意し、活性酸素を作用させました。その結果、普通のハエが95時間で半数が死んでしまった事に対し、MBF1を持たないハエが、70時間で半数が死に、多く持つハエは、105時間も長生きし、MBF1が長寿に関係している事を証明していました。
このMBF1は、人の体内にもあるそうですが、長寿の一端を担う物質の発見で、長寿の薬の実現に一歩近付いたとして期待が膨らんでいます。不老無き長寿というのは、ちょっと辛い感じがしますので、ちゃんと不老長寿がセットになって開発される事を、切に願いたいと思っています。
第119回 9を重ねて
2004年08月23日
9という数字は、「苦」に通じる事から、あまり良いイメージは持たれません。迷信深い建物では、9号室が無いという例も珍しくない事です。しかし、中国では9は陽が極まる数字とされ、縁起の良い数として扱われてきました。そのため9が重なる9月9日は、縁起の良い日とされ、陽が重なるという事で、重陽の節句とされてきました。
旧暦の9月9日は、現在の10月にあたるため、各地で農産物の収穫が行われる時期に重なり、栗が採れる時期でもあるので、栗の節句と呼ばれ、栗ご飯を炊いたりして祝ったといわれます。明治以降、そうした習慣は廃れていったそうですが、旧暦の頃は菊の見頃と重なる事から、菊の節句として、五節句の一つとして残されています。
菊の節句には、菊酒を飲んで長寿を祝います。菊酒といっても、特別な製造を行うものでなく、杯に菊の花びらを浮かべて飲むという単純なものですが、厄を払い、長寿を得る妙薬として考えられていました。
花札で9月を表す札には、菊の花と共に「寿」と書かれた杯が描かれているそうですが、菊酒に対する信仰を受けたものといわれます。菊は、芳香の強いものほど邪気を払う力が強いと考えられます。9月9日には、お酒が飲めない方は、香りの強い菊の花を飾って、長寿を願ってみるというのも一興ではないでしょうか。
第118回 今年は“二の丑”
2004年08月20日
立秋までの18日間、この期間を「夏の土用」と呼び、一年間で最も暑い期間とされます。夏バテをしてしまう危険性も、最も高い期間という事になりますので、夏バテ予防としてさまざまな工夫が伝えられています。中でもうなぎは、この時期欠かす事のできない食材ではないでしょうか。土用の丑の日にうなぎというと、夏の定番という感じですが、この定番化には諸説があり、平賀源内説が有名です。
平賀源内が着想のヒントとしたのは、万葉集の中にあった、「石麿にわれ申す夏痩せに良しといふ物そ鰻取り食せ」という和歌が元となったといいますから、夏にうなぎという発想は、かなり古くからあったものと思われます。そのうなぎが最も消費される「土用の丑の日」、今年は二回ある事をご存知ですか?
丑、暦の十二支の丑の事ですが、18日の期間に十二支を一日ずつ割り振るので、年によって一回の年と二回の年があります。うなぎ好きの方には、ちょっと得した感じですが、実はこの丑の日、あまり良い日とは呼べない日でもあります。土用自体が気が強まり、夏の場合、酷暑となる時期でもあるのですが、丑の日は、最も災難を受けやすい日という事になります。
丑の方角を守る神様は玄武であり、黒で表される神様なので、黒い色調の物を食べる事で、災いを逃れるというおまじないがあります。黒い色調の食べ物としては、うなぎ、どじょう、鯉、黒鯛、茄子などが珍重されたようです。また、「うし」から「う」の付く食べ物が災いを除くという縁起担ぎもあり、うどん、梅干、うり、うなぎが、食あたりを防ぐという考え方もあったようです。でも、うなぎと梅干って...。
第117回 旬ですか?
2004年08月19日
大豆というと、何時が旬なのか今ひとつ判らない感じがします。大豆になる前、枝豆というと、断然夏という感じになってくるのではないでしょうか。枝豆は、東洋の一部でしか食されていませんが、大豆となると、かなり広い範囲で食されています。日本人をはじめとするアジア人は、欧米人に比べて虚血性心疾患や骨粗鬆症の発生率が低いという研究結果があります。乳製品を多く摂る欧米人に比べて、何故、と思ってしまいますが、大豆食品を多く摂る事が影響していると思われます。
骨粗鬆症は、体内のホルモン、エストロゲンの減少が関わっています。大豆に含まれるイソフラボンは、植物のエストロゲンと呼ばれる事もある物質で、大豆製品を日常摂る事で、エストロゲンの減少を補い、骨粗鬆症を未然に防ぐと考えられています。
また、大豆に含まれるレシチンは、血液中の脂肪分の排出を促し、血液の状態を良くしてくれます。その影響が、欧米よりも虚血性心疾患の発生を低く抑えていると思われます。
最近、大豆由来の食品「味噌」には、発酵に関わる麹菌が、発酵の過程でGABA(γーアミノ酪酸)を生成し、含まれている事が判ってきました。GABAといえば、血圧を安定させる事で知られていましたが、その他の働きとして、脳内に多く存在し、その量が低下すると痴呆や精神の不安定を引き起こす事が知られるようになってきました。夏の大豆消費といえば、枝豆へ目がいってしまいますが、お味噌汁も忘れず毎日のメニューに加えたいものです。
第116回 バスルームの危険物
2004年08月18日
かつてマンション暮らしだった頃、狭いユニットバスの中でシャワーを浴びるので、周りにお湯を撒き散らさないように、シャワーカーテンを閉めておく必要がありました。このシャワーカーテンは意外なほど雑菌に汚染され、場合によっては、非常に危険な一面を持っています。
シャワーを浴び終えると、お湯をかけて飛び散った泡を洗い流すのですが、それだけでは落ちない汚れが残されています。そうした汚れの中には、それを栄養とする雑菌が生息し、それらは、意外なトラブルを起こす危険性を持っています。
シャワーカーテンに生息する雑菌のDNAを調べると、その80%はスフィンゴモナスかメチロバクテリアというグループに属し、どちらもグループにも日和見感染する可能性がある細菌が含まれています。そのため、傷口に入り込んだり、免疫力が低下している人がそれらの細菌に接した場合、思わぬ感染症を引き起こす可能性があります。もちろん健康な人の場合、ほとんど危険はなく、改めて意識するほどの事もありません。
日常の生活の中で、意外なほど日和見感染をする可能性を持つ細菌のコロニーは存在します。そうした細菌たちに対し、氾濫する抗菌グッズが対処してきていたのですが、それらはより強力な細菌の繁殖や、私達自身の免疫の確保という点で、マイナスの方向に働いていると考えられるようになってきました。抗菌、滅菌という発想ではなく、免疫力の向上による菌たちとの共生が重要なのかもしれません。
第115回 加工品との違い
2004年08月17日
毎日の生活の中に、意外なほど加工食品は取り込まれています。中には、生の素材とは別な食品としての位置付けを得ているものもあり、そういうものとして大した意識も無く接していますが、元の食材と比べた場合、どういう違いが生じているのでしょうか。
缶詰の食品としてツナ缶は、使用頻度が高い物の一つだと思います。生のマグロと比べると、質感はともかく、意識的にも大きな違いがあります。両者はタンパク質という点では、ほとんど違いはありませんが、脂肪分はオイル漬けの分、ツナ缶の方が高くなります。特に大きな違いとしては、DHAをはじめとする有効成分は、ツナ缶では生の切り身のような効果は期待できません。同じく缶詰の食品として、果物の缶詰と生の果物では、シロップ漬けの分、缶詰の方がカロリーが高く、ビタミンCの含有量という点では、生の方が圧倒的で、缶詰からの摂取はほとんど期待できなくなっています。
加工品の方が優れている食品として、コーン缶詰は生のコーンと比べて栄養価はほとんど同じで、加熱した分、カロチンの量が多くなっています。アサリ貝についても同じ事が言え、加熱処理によって生と比べるとエネルギーやタンパク質が倍になっています。顕著な例として、サケ缶に至っては、骨ごと加工される事から、カルシウムが摂取しやすい状態になっており、生の切り身と比べると、10倍近いカルシウムを得る事ができるようになっています。
手軽さゆえに利用される加工食品ですので、あまり細かな事は考えたくない感じがしますが、使う品目はそれ程多くないので、特性を理解し、長所を生かし、短所を補う工夫をしながら上手に接する事で、より便利な食材とする事ができるのではないでしょうか。
第114回 日射病と熱射病
2004年08月16日
今年の夏は、いつもに無く暑かった印象があります。熱射病による痛ましい被害も報告されていました。子供の頃、帽子を被らずに遊びに行くと、日射病になるぞと脅されていたためか、暑さの弊害として日射病という印象が強くあります。熱射病は日射病の高温版で、直接日光に当たると日射病、間接的に高温に曝されると熱射病という感じがします。この日射病と熱射病、原因や症状に明確な違いがある事をご存知ですか。
日射病は日光の下、作業や運動を行う事により身体がオーバーヒートした状態を指し、熱射病は高温多湿の環境下で、作業や運動を行い、大量の汗をかく事によって体内のミネラルや水分が失われ、体温の調整機能が働くなり、身体に熱がこもった状態を指します。
症状にも違いがあり、日射病の典型的状態としては、顔が赤く、皮膚が熱くなり、表皮はさらさらと乾いた感じがします。それに対し熱射病は、顔が青白く、皮膚は冷たく、表皮は汗のためにべたついた感じがします。対処法も異なり、日射病は涼しい場所で頭を高く、足を低くして寝かせ、後頭部や脇の下を冷やして、体温が下がるようにします。熱射病は、同じく涼しい場所で頭を低く、足を高くして寝かせ、体温が下がり過ぎている場合は、毛布で包む等して身体を温めます。
いずれの場合も、水分補給は重要で、真水よりもわずかに食塩を溶かしたものか、市販のアイソトニック飲料を少しずつ与えます。対処法を誤ると、非常に危険な症状でもありますので、そうなる前にきちんとした水分補給や適度な休養を摂る事が大切です。まだまだ暑い日が続きますので、充分注意したいと思います。
第113回 第六の栄養素
2004年08月13日
かつて何の役にも立っていないと思われ、今日では、その不足が危険視されている栄養素があります。食物繊維、いわゆるダイエタリーファイバーです。食物繊維は、食品に含まれる成分中、消化酵素によって消化されにくい性質を持つもので、水に溶ける「水溶性食物繊維」と、水に溶けない「不溶性食物繊維」の2種類が存在します。
水溶性食物繊維は、水をたくさん含む性質を持ち、ぬるぬるした粘性があります。その性質を利用し、糖分の吸収を緩やかにする事によって、食後の血糖値の急速な上昇を抑え、インシュリンの分泌を無理なく行えるようにして、糖尿病の予防に貢献するという特徴を持っています。また、コレステロールの再吸収を防いでくれる事から、血液中のコレステロール値を下げる事にも役立ち、動脈硬化や胆石を防いでくれます。
それに対し不溶性食物繊維は、体内の毒物を排出させる働きを持っています。食物を通じ体内に摂取された毒物を、繊維質が絡みつく事によって体外へ排出させますが、腸内の悪玉菌によって日常作り出される発ガン物質の排出にも、大いに役立ってくれます。食物繊維が不足すると、便秘になりがちといいますが、便秘によって腸内の環境が悪化すると、腸内の悪玉菌が増え、発ガン物質も盛んに作り出されてしまいます。その為、不溶性食物繊維は、腸内環境の維持、管理にも役立つ成分となっています。
繊維質の食材は、いまひとつ人気がなかったりしますが、料理やさまざまな工夫で、日常生活に取り入れていきたい成分ではないかと思います。水溶性、不溶性共に摂取する事が好ましいのですが、最近の食の内容を考えると、意識して摂取しなければと思っています。しかし、何事も適度という事があり、摂り過ぎは下痢の元で、その際、必要なミネラルまでうしなってしまったら、せっかくの健康志向も台無しになってしまいます。食物繊維とも上手に付き合いたいものです。
第112回 上手に付き合いましょう、ワカメ
2004年08月12日
暑さ、寒さも彼岸まで。昔からの言い伝えですが、何となくこのところの暑さを思えば、本当かな?と思ってしまいます。いつもの事ですが、暑さに弱い私は、この時期、食欲が無くなり、偏った食事内容になってしまいます。そんな時、重宝しているのがワカメです。「ワカメとキュウリの酢味噌和え」等の涼しげな料理で、何とか暑い盛りを乗り切っています。
通常、家庭でワカメといえば、湯通しの塩蔵か素干しのワカメが一般的で、それを水で戻して使うというのが通例ではないでしょうか。水で戻すと意外なほど量が増え、驚かされる事があります。湯通し塩蔵ワカメで3〜4倍、素干しワカメでは8〜10倍にもなるからです。私は、素干しのワカメを使っていますので、当初、少さを感じつつ、いざ料理にかかる際に思いの外、量が増えてしまっている事があります。
ワカメを水で戻す際は、他の事と並行していますが、実は、それはあまり良くない事だとご存知でしたか?ワカメに含まれる栄養成分の中で、水溶性の成分は、この時点で失われてしまう事があります。戻した水にぬめりが多く出ている事がありますが、このぬめりには、水溶性食物繊維のアルギン酸等も含まれています。その為、ワカメを戻す時は、手早さが要求されます。特に塩蔵ワカメは、塩による浸透圧の変化がありますので、水を替えながら手早く戻す事が大切です。
また、調理法もワカメの良さを引き出すには、それなりの工夫が必要です。ワカメというと酢の物を連想してしまいますが、酢はアルギン酸と結び付いたミネラル類を吸収されやすい状態にしてくれるので、ワカメの豊富なミネラルを摂取するには、理想的な組み合わせといえます。しかし、ワカメに含まれるカロチン(ビタミンA)を吸収するには、油分が必要になります。ワカメというと、さっぱりした料理を連想してしまいますが、脂溶性のビタミンを吸収するためには、油で炒める事や、サラダにしてドレッシングと一緒にという工夫も必要になります。煮過ぎもワカメの風味をダメにしてしまうので、さっと煮て緑色になったくらいが良く、褐色になってしまうと煮過ぎという事になります。
結構、扱いが難しい感じがしてしまいますが、海草という食材は、毎日の食に取り入れやすい健康食でもありますので、上手に付き合いたいと思っています。
第111回 ところてんって?
2004年08月11日
前回、私的なところてんに触れてみましたので、少々ところてんについて話してみたいと思いました。ところてん、ちょっと変わった存在です。通常ところてんといえば、細く切られて酢しょうゆ、または黒蜜等に浸された料理を指します。しかし、ところてんは、素材の名称でもあります。このように素材名と料理名が一致している例は、極めて稀ではないでしょうか。
ところてんの歴史は以外に古く、一般的には平安時代に中国からといわれています。しかし、奈良時代の記述には、既に聖武天皇の頃、国分寺へ頒布する経文の写経生にところてんを支給した記載が残されています。当時は、原料となる天草を「石花采」と書き、煮溶かして利用すれば、盛夏の暑気を払い、厳冬には寒さに耐えると言い伝えられていたそうです。
記載としては「心太」と書き、文字通り「こころふと」と呼んでいたそうですが、それが「こころたい」、「こころてい」、「こころてん」を経て、「ところてん」と呼ばれるようになっています。高貴な食べ物として貴族の食とされてきましたが、江戸時代には、一般庶民にも広まり、暑い日に冷たくしたところてんは、その透明感も手伝って涼を得られる食として好まれてきました。
その後、ところてんは、伏見の旅籠屋美濃屋太郎左衛門によって、寒天への加工法が発見され、さまざまな素材として利用されるようになり、和菓子の世界に革命的な変化をもたらします。素材という事で、寒天の方が先にあった感じがしますが、かなりの開きで、ところてんの方が古い事になります。
第110回 ところてんの思い出
2004年08月10日
一応、自分の事を好奇心旺盛で、比較的物事に柔軟な方だと思っているのですが、意外と頑固な面もあります。食べ物の姿が一緒で、記憶している味や風味がまったく異なる場合、その違和感から飲み込む事ができなくなってしまいます。そんな時、自分の頑固さを感じてしまうのですが、その最も顕著な例が「ところてん」でした。
幼少の頃からあまりところてんには縁が無く、記憶している範囲では、何となく気になって、母親にせがんで買ってもらったのは、小学生の頃だったと思います。その際、母親の「あんな物が食べたいのか」というリアクションから、私がそれまでところてんに縁がなかったのは、単に母親が好きではなかったからのようです。
その後も、それ程食べたという思いはないのですが、一時期、暑さによる食欲の減退も手伝って、ところてんばかり食べていた時期があります。ほぼ一ヶ月程度の事でしたが、かなり体重が減少してしまいました。実際、体内ではほとんど消化吸収されない事から、栄養価はほとんど期待できない食べ物でもあります。そんなある日の事です。知り合いの家で、出されたところてんは、これまで慣れ親しんできた酢しょうゆ味のタレではなく、黒蜜がかけられていました。
「葛きり」のようなものと理解すれば良かったのですが、細く切られたところてんに、透明感のある黒いタレでしたので、口に運んだ瞬間、私の中ではツンとくる酢酸の刺激と、しょうゆの香りが広がっていました。そこにトロっとした黒蜜の甘味です。何とか飲み込むのに凄く苦労してしまいました。
ところてんの味付けについては、関東が酢しょうゆ、関西が黒蜜との事で、同様の話しは、関東・関西間の食文化の違いとして聞く事があります。食品を食べられる、食べられないという判断は、脳の前頭葉が掌っていますが、私の前頭葉はかなり頑固なのかもしれないと思ってしまいました。
第109回 基礎代謝
2004年08月09日
最近の原油価格の高騰を受けて、ガソリンの価格も上昇してきています。日常の買出しに限らず、隣家を訪れるにも車を必要とする生活を送っていると、どうしても燃費という点が気になってしまいます。この先、まだまだ原油価格は上がりそうだし、時節柄エアコンも多用するので、燃費はますます気になる事となってしまいます。車の場合、少ない燃料で長く動く事ができるというのは、当然良い事なのですが、人の場合、その正反対の事が求められています。いわゆる基礎代謝の向上です。
基礎代謝とは、身体的、精神的に安静な状態、まったく何もしていない状態で消費される、必要最小限のエネルギー量の事を指します。性別や年齢、体質や気温、健康状態等で異なるため、人によって基礎代謝量は大きく異なります。本来、人も車と同様、基礎代謝量が小さい方が、少ない食事量で生存する事が可能となりますので、良いという事になるのでしょうが、今日のように栄養過多の状態では、基礎代謝量は大きい方がダイエットに有効であり、好ましい状態と思われます。
何もしていない状態でも、身体はエネルギーを消費しています。自律神経に掌られる内臓の動きや、身体機能は、自分の意思によって活動を活発化させる事は難しいのですが、比較的簡単に基礎代謝量を向上させる方法があります。筋肉量を増加させる事は、エネルギー消費の活発な器官を増加させる事になり、基礎代謝量の大きな増加を期待することができます。
筋肉の増加は、自分でもコントロールする事ができまるばかりでなく、一つ一つの動作に要求されるエネルギー量の増加、筋肉は発熱器官でもあるので、体温の上昇=脂肪が燃焼しやすい状態を作り出すという点でもメリットがあります。リバウンドの心配が少ないダイエット法でもありますので、基礎代謝量を増大させて身体の燃費を悪くしてみるのは如何でしょうか。
第108回 熱量って?
2004年08月06日
熱量、いわゆるカロリーの事ですが、突然、熱量という言葉が出てくると、思わず物理の世界かと思ってしまいます。毎日の暑さのせいで、食欲もかなり下降傾向にあるので、何か栄養のある物を、と思ってしまうのですが、その際、何となく気になってしまうのが、カロリーです。
カロリーという言葉は日常耳にし、ラベル等で目にする事も多いのですが、実際のところ多い、少ない、何かと同じ程度しか意識せず、あまり詳細に考えない数値ではないでしょうか。規定では、体内で飲食物から作り出されるエネルギーの単位の事を指し、1気圧のもとで、14.5℃の水1gを15.5℃まで加熱できるエネルギー量という事になっています。
初めてカロリーについて学んだ際、ピーナツが例に用いられていて、ピーナツを針金に刺して燃焼させている画像が挿絵に使われていたのですが、ピーナツは納得できるにしろ、とても燃えるとは思えないうどんやプリンのカロリーは、どうやって計るのだろうという疑問が子供心に残されてしまいました。
後に知る事となるのですが、その食品に含まれる3大栄養素、脂質、糖質、タンパク質を元に換算してカロリーは割り出されています。それぞれ1gあたり、脂質が9kカロリー、糖質が4kカロリー、タンパク質が4kカロリーとして算出されています。脂質は、糖質、タンパク質の倍以上のカロリーがあるので、脂質を多く含む食品のカロリー数は、自然と高い数値になり、糖質やタンパク質の比率が増えると、カロリー数が低く抑えられる事になります。最近では、含まれる栄養素が表示されている食品も増えていますが、一度自分で計算してみるのも...、面倒ですね。
第107回 硬化2倍
2004年08月05日
動脈硬化というと、生活習慣病の典型のような感じがします。誰しも人は年を取ります。老化は血管と共に訪れると言われ、ある程度の動脈の硬化も加齢に伴う避けられない事のようにも思えてしまいます。そうした動脈硬化も、他の生活習慣病と同じく低年齢化している事が、岡山理科大学臨床検査病理学の由谷親夫教授による研究で明らかになりました。
由谷教授の研究によると、心臓の筋肉に血液を送る冠状動脈に硬化が起こる割合は、20〜30才という比較的若い世代の男性で、1980年前後から1990年代前半の10年間で、2倍以上になったとの事です。
病理解剖された約1000人の血管を詳細に調べ、過去の同様の研究と比較するという手法で研究を行ったそうですが、この傾向は、その後も続いていると見られ、狭心症や心筋梗塞といった循環器系の病気が、今後も増加を続ける可能性を示唆しているとの事です。
動脈硬化が進んだ原因には、血液中の総コレステロール値が高いという事が考えられ、動物性脂肪の過剰摂取といった食生活の改善が急務だと思われます。また、ストレスによっても血液中のコレステロール値は、増加する可能性がありますので、食生活に気を配り、ストレスを溜めない生活習慣の必要性が強く感じられます。
第106回 母は強し
2004年08月04日
洋の東西を問わず、女性は出産を機に強くなり、様々な危険からわが子を守るようになると言われます。子供を守ろうとする母性本能がなせる事と思われますが、それだけではない事が解ってきました。母となった女性が強くなるのは、単に母親としての心理的変化ばかりではなく、生理学的にもそれまでとは違いが生じていた事が、米国ウィスコンシン大学のスティーブン・ガミー助教授が行ったマウスを使った実験で明らかにされています。
人や動物がストレスにさらされた時、分泌されるホルモンがあります。脳の視床下部から分泌され、副腎皮質ホルモンの分泌を促すホルモンである「副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)」と呼ばれるホルモンです。ガミー助教授は、このCRHに着目し、CRHが行動に及ぼす影響について実験を行う事にしました。
子供を生んで6日後の母マウスに、CRHの分量を集団ごとに変えて一日一回、四日間連続で投与します。その後、母マウスのカゴから子供を出し、代わりに馴染みの無いオスのマウスを入れます。CRHをほとんど与えていないグループの母マウスは、馴染みの無いオスに対し、猛烈に攻撃を加え、排除しようとします。それに対し、CRHを多く与えた母マウスは、怯えてほとんど攻撃を行いませんでした。中間の集団では、攻撃回数の明らかな減少が見られ、CRHと母マウスの行動には、明らかな関係が伺えました。
出産直後は、CRHの分泌が低下し、子供を守るという本能に合わせて、恐怖心を感じにくい状態になっている事が、母は強し、といわれる所以なのでしょうか。この間に様々な恐怖症が克服されると、出産を機に強い女性になれる事と思います。
第105回 二重螺旋のクリック氏
2004年08月03日
先日、英国王立協会は、米国ソーク研究所名誉所長のフランシス・クリック氏が、カリフォルニア州サンディエゴで死去したと発表しました。享年88歳、ガン闘病中の事でした。
クリック氏は、1953年ジェームズ・ワトソン博士と共に、20世紀最大の発見と評され、科学者に限らず多くの人々の生命観に影響を与えたDNAの二重螺旋構造を明らかにしました。DNAの二重螺旋構造の発見は、今日の分子生物学隆盛の基礎を築き、様々な分野への応用も進められています。そんなクリック氏は、1916年英国生まれ、第二次大戦中は英国海軍で機雷の研究に従事しました。
終戦後、生物学に転向し、51年にケンブリッジ大学でジェームズ・ワトソン博士と出会います。20世紀初頭から遺伝学は、急速な発達を遂げていましたが、当時は、遺伝子の正体が細胞内の染色体にあるDNAという物質らしいという憶測程度しかありませんでした。クリック、ワトソン両氏は、DNAの分子構造の解明に着手、53年に長い鎖のような分子をより合わせた二重螺旋構造に辿り着きました。
この業績で62年に両氏は、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。その後、クリック氏は、77年に米国サンディエゴのソーク研究所に移籍し、脳科学の研究に専念。人の意識や心の動きの科学的解明を行いました。クリック氏の訃報に対し、BBCのインタビューを受けたワトソン博士は、「彼のすばらしい知性は忘れられない。彼は私に家族の一員のように接してくれた。ケンブリッジの研究所で過ごした2年間は、真に特別な経験だった」と話しています。私たちにとって、生まれたときから常識となっていたDNAの二重螺旋構造。その発見者の死に際し、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
第104回 ニキビ?
2004年08月02日
毎日、強い日差しが降り注いでいます。昼食の際の外出以外では、それほど日差しを受ける事はなさそうなのですが、日焼け止めは欠かす事ができません。それでもしっかり日焼けしてしまっているのですが、過大な効果を期待しつつ、きちんと毎日塗っています。最近のものは、以前のものと比べ、それほど肌に負担をかけないようなのですが、それでも連日続くと、肌にトラブルが発生します。
いわゆる吹出物というやつですが、私の場合、年齢的にニキビとは呼べなくなってしまっています。この吹出物、アクネ菌が関わっている事が、以前から知られ、様々なアクネ菌対策が講じられてきました。今回、ドイツのゲッティンゲン大学ゲノム学研究グループがゲノム解析に成功し、アクネ菌の全遺伝情報の解析が行われていました。
アクネ菌は、通常は無害ですが、毛穴が詰まって皮脂が溜まると増殖し、炎症を引き起こすと考えられてきました。今回のゲノム解析によって、アクネ菌のゲノムが環状の染色体に収まり、遺伝子が2333個である事や、皮膚細胞の構成成分を劣化させ、菌が皮膚細胞内部に入りやすくする酵素や、皮脂を分解する酵素などの遺伝情報が含まれている事も解明されています。そうした酵素や毒素の発生を阻害する薬剤の開発が行われれば、ニキビや吹出物の有効な予防が可能となります。
これまでアクネ菌に対しては、殺菌作用のある薬剤やアクネ菌自体が活性酸素を発生させる物質を内包している事から、光線を照射して活性酸素を発生させ、殺菌を行うといった滅菌治療が行われてきました。しかし、アクネ菌自体は、常在菌であり、余分な皮脂を分解したり、皮膚を弱酸性に保つといった役割を持っていました。今回の解析で殺菌ではなく、役割を果たしてもらいながら、毒素だけは出さないといった、アクネ菌と上手に付き合う方法が見つかればと期待しています。
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