« 2004年12月 |
コラムトップへ
| 2005年02月 »
第222回 怖い感染症?
2005年01月31日
今回でこのコラムも222回目、222というと猫の日、2月22日を思い出してしまいます。という事で今回は猫の話題。実際に猫と生活していると、猫の様々な病気が気になります。そんな中で特に怖いとされるのが、猫白血病ウィルス、猫伝染性腹膜炎ウィルス、そして猫免疫不全ウィルスという、3大ウィルスと呼ばれるものです。
中でも致死性の高い猫伝染性腹膜炎ウィルスなどは、かなり怖い存在ではあります。その3大ウィルスにおいて、実は猫免疫不全ウィルスだけは、それほど怖ろしい存在ではないという事は、あまり知られている事ではありません。免疫不全ウィルスという事で、猫エイズという言い方もされるこのウィルスは、伝染力も低く、致死性もかなり低いと言われます。人間のエイズと混同される事が、正確な理解を妨げているようです。
猫免疫不全ウィルスは、1987年カリフォルニア大学のペデルセン教授によって初めて報告されました。非対称型と言われるRNAウィルスで、人間には感染しません。感染力はそれほど強くなく、猫同士の喧嘩などによる傷口への唾液の侵入で感染します。感染すると体内でウィルスが増殖し、キャリアとなるのですが、その段階で発症するとは限りません。症状にはステージ1からステージ4までの4段階があり、末期のステージ4になって初めて猫エイズと呼ばれる状態になります。
それぞれのステージ間は、ゆっくりと移行するので、発症する事なく天寿を全うする事も珍しくはありません。人間のエイズと大きく異なる特徴として、猫免疫不全ウィルスは、既に何らかの抗体を得ていると、それが多いほどステージ間の移行がゆっくりと進むという傾向があります。気を付けなければいけない事は、ヘルペスウィルスなどの一部のウィルスへの感染によって、ステージ間の移行が早まる事と、過剰な医療へのアレルギーによって、ステージ間移行を急速に加速してしまう事です。猫は本来、強力な免疫力を持ち、アレルギーも起こしやすい性質を持っています。ウィルスへの感染が判ってから、治療と称して不必要な薬剤の投与やワクチンの摂取が行われ、それによるアレルギーも少なくはありません。病気を正しく理解して、騒がず落ち着いて対処する事が大切です。
第221回 蜜って?
2005年01月28日
アップルパイ好きの私は、リンゴが旬を迎え店頭に並び始めると、何となく嬉しくなってしまいます。面倒なのでアップルパイは作りませんが、色合いや形、艶や重さを見て、気に入った物を購入します。くるくると回転させて皮を剥くのが苦手なので、切り分けてから皮を剥くのですが、まず半分に切った際に中心部に「蜜」が入っているのを見つけると、特に美味しい物に出会ったようで得した気分になれます。
リンゴの種がある中心付近に、回りとは明らかに違う透明な果肉が蜜と呼ばれる物です。蜂蜜のような色合いゆえにリンゴの蜜と呼ばれるのですが、その部分だけを切り出して味をみても、別段甘味は強くありません。この蜜とは、いったい何なのでしょうか?
正体は糖分の一種ソルビトールです。リンゴは葉に受けた日光によって光合成を行います。光合成によって作られたデンプンは、さまざまな糖に変化し、果実に運ばれて蓄えられます。完熟期が近付いたリンゴの果実では、運び込まれた糖が飽和状態となり、余分な糖が水や養分を運ぶ維管束から溢れ、細胞と細胞の隙間に溜って、独特な透明感を出してくれます。これが蜜と呼ばれるものです。
蜜自体にはそれほど甘味はありませんので、味に直接の影響はありませんが、溢れるほどの糖分が素になっているだけに、蜜が入っているリンゴは美味しい可能性が高いと言う事ができます。品種によっても入りやすいものがあり、「ふじ」は比較的蜜が入っている可能性が高い品種です。また、袋を被せず日光に良く当てた方が蜜ができやすいので、色が鮮やかなリンゴはその可能性が高く、養分が溢れるほど注ぎ込まれている事も重要なので、重量もずっしりとしている方が良いようです。収穫後1〜2ヶ月で消えてしまうので、あまり長く保存しない事も大切になっています。
第220回 強烈な甘味
2005年01月27日
食べ物の甘味を素材本来の味以上にしたい場合、砂糖をはじめとする甘味料が用いられます。中には砂糖と比べ、数十倍や中には数百倍という物まで存在しています。素材としての単価が砂糖と同じであれば、使用量が少なくて済む事から、コストを大幅に下げる事ができたり、微量で済む事からカロリーを抑えたりという使い方ができます。
戦後まもなく、南方からの輸入が途絶えていた事から、砂糖の値段が高騰し、工業原料としては、ほとんど使えない状態になった事があります。そんな時代背景の中、代替甘味料はシェアを伸ばし、一般的に見られるようになりました。当時使われていたものとしては、サッカリンやチクロ(サイクラミン酸ナトリウム)がよく知られています。
サッカリンは、世界初の人工甘味料であり、現在も使用されています。何よりコストが低いのが魅力で、砂糖が入手困難な頃は、貴重な甘味を付ける添加物という一面もありましたが、ほとんどは製造原価を下げる目的で使用されていました。砂糖の300〜400倍という甘さだけでも、大幅なコスト削減が望めそうな感じがします。一時、発ガン性が指摘され、使用禁止になった事もありますが、その後使用が認められ、現在も用途を限定する形で使用されています。
一方、チクロは、人工の甘味料の中では、最も砂糖に近い味という事で、原料として優れた一面は持っていたのですが、やはり毒性が指摘され、現在も使用が禁止されています。価格はサッカリンよりも高価で、甘味自体も砂糖の40倍程度ですが、後味がさっぱりしていて、いまだに当時の味を覚えていて、懐かしむ人も多いと言われています。このチクロ、最近になって話題に上る事が増えてきました。国内では使用が禁止されていますが、いまだに使用できる国はたくさんあり、製造を国外に委託した際、原料として指定していたアスパルテームが高価である事から、現場の判断でチクロに変更され、国内へ入ってくる事があります。チクロ自体の毒性は、それほど大きくはないとする説もあります。突然回収という話題で出てきますが、食べてしまっていたからといって、それほど不安になる必要はなさそうです。
第219回 寄生共生
2005年01月26日
寄生虫、非常に嫌な響きだと思うのですが、それでもファンやマニアが多いという事に、価値観というものの多様性を感じてしまいます。寄生虫とは、文字通り寄生して生存活動を行うものですが、似たような生活形態に共生というものもあります。
寄生とは、生物同士が一方の利益のみしか利益を受けないのに、密接な関係をもって生活するもので、典型的な例としてはギョウチュウやサナダムシではないでしょうか。しかし、最近判ってきた事では、腸内に寄生虫がいる事で、免疫の異常が抑えられ、アレルギーの症状が緩和される事が示唆されてきています。腸内に生息して、一方的に栄養を奪っていると考えられていた寄生虫は、腸内で免疫を整えるという利益をもたらしていたとも考えられます。
それに対し共生とは、生物同士が密接な関係を持ち、どちらも損害を受けないものと定義され、アリとアブラムシの例がよく引用されます。この長らく共生の典型例とされてきたアリとアブラムシですが、実は考えられてきたような関係ではなく、アリがアブラムシのお尻を仲間の頭と勘違いし、挨拶として触角で軽く叩き、それを攻撃と思ったアブラムシが反撃のために蹴飛ばそうとして出す後足を、アリは挨拶を返してくれたと勘違いして攻撃を行わないという事が判ってきました。さらにアブラムシが攻撃を免れるために体液を出し、それをアリが挨拶の一環と考える事が、いかにも共生しているように見られていたようです。
小さな生物の世界は、解っているようで正確な理解が行われていない事が多く、新たに解明される情報に驚かされる事も多々あります。特にさまざまな生物が種を超えて共に生息する環境には、見た目による思い込みも多い事と思います。小さな生物たちからもたらされる大きな驚きに、これからも期待したいと考えています。
第218回 骨と肝臓
2005年01月25日
減少する骨量を守るために必要なもの、骨の材料となるものや各種ビタミン。その中でもビタミンDとKの役割は重要です。どちらも造骨ビタミンと呼ばれる事から、同じ働きを持っているように感じてしまいますが、両者骨への関わりの大きな違いは、ビタミンDがカルシウム吸収を促進、運搬する事に対し、ビタミンKは、骨を丈夫に保つ働きを持っています。ビタミンDが骨までカルシウムを運び、ビタミンKがそのカルシウムを骨に定着させる働きを持つというものになっています。
近年、骨粗鬆症を患う方が増えてから、ビタミンKは脚光を浴びています。実際、ビタミンKを投与する事で、骨密度の低下を防ぐ事ができると考えられています。その事を裏付ける実験中、ある事が判ってきました。米国医師会誌のビタミンKによる骨量減少予防の実験において、肝臓ガンにビタミンKが有効であるという結果が得られていました。
C型肝炎ウィルスの感染によるウィルス性肝硬変の患者では、肝臓ガンを発症するリスクが高まっていますが、今回の研究では、平均年齢60歳のウィルス性肝硬変患者の女性40名に、無作為にビタミンK45mg含有錠剤を投与するグループと、偽薬を投与するグループに分け、3年間にわたる経過観察が行われました。結果、ビタミンK投与グループでは、肝臓ガンの発症が21人中2人、偽薬グループでは19人中9人と、大幅に発症率に違いが生じていました。
ビタミンKが肝臓ガンを予防する細かなメカニズムについては、今のところ不明とされていますが、ビタミンKが細胞の増殖をコントロールする役割を担っているのでは、と考えられています。ビタミンKの使用は安価で安全性が高いため、今後の研究による新たなガン予防の確立が待たれます。薬効を打ち消してしまうワーファリンとの併用はできませんが、骨粗鬆症の予防の意味でもビタミンKの摂取はお薦めできるものかもしれません。
第217回 命の沙汰も...。
2005年01月24日
あまり人間的に肯定できる人ではなかったのですが、人生において重要な教訓を幾つか残してくれた人がいます。その人の言葉に、「命は金では買えないというが、それは既に失われた命が、金で買い戻せないという事実に基づいた詭弁で、世界には金がないために失われる命がいくらでもある。命も金で買えるんだよ」というものがありました。保険制度が確立されている日本では、あまりぴんと来ない話ですが、そうした事態が身近に迫ってきているとしたら、どのように考えますか?
最近、保険制度の改革に絡み、混合診療の解禁が審議されています。言葉だけを見ると、様々な診療が受けやすくなり、良い制度のように思えてしまうのですが、合せて保険制度も改革され、米国型の保険制度が取り入れられると言われています。米国の保険制度は、一見合理的な感じがするのですが、多くの批判や、それを裏付ける事例が多く出されています。先日も解禁論者から、患者が新規抗ガン剤の恩恵にあずかれないのは非人道的な事で、未承認薬についても患者がコストを負担すれば、自由に使えるようにするべきだ、という主張がなされていました。
新薬の開発には莫大なコストがかかり、開発しても保険診療の適応を受けるには、長い時間がかかってしまうと言われています。それを患者の自己負担において使用できるようにすれば、少なくとも出来たての新薬を治療を待つ患者にすぐに仕えるようになり、患者にも早期に利益を確保したい製薬会社にもメリットがあります。しかし、そこで問題となるのが、患者が自己負担する費用です。新薬が登場するたびに、薬の価格は高騰していますが、単純な比較で大腸ガンの治療に用いられる抗ガン剤の価格一つをとっても、80年代に盛んに行われたロイコボリン併用治療に用いられる薬剤の費用が、8週間で60ドルとされていた事に対し、新世代の抗ガン剤として期待されるアバスチンは、8週間で2万1千ドルとなっています。
8週間、2ヶ月にも満たない期間です。その間に200万円を超える薬代と、別途発生する診療に関する費用。米国では、急患に駆けつけた救急車が患者を乗せる前に保険を確認し、未加入と知るとそのまま帰ってしまった。保険会社の意向で、開腹手術後の当日に帰宅を余儀なくされた、という笑えない話が多く聞かれています。何事も無く健やかに過ごせていれば、そうした心配はないのかもしれませんが、万が一という事はありえない事ではありません。今後の成り行きが心配です。
第216回 凶器?薬?
2005年01月21日
刑法では、犯罪に該当する事を実現しようとして何らかの行動を起すが、その行為自体に本来その犯罪を実現するに足りる充分な危険性が無かった場合、不能犯として刑事罰の対象とはしません。例えば、誰かを殺害しようとして呪いをかけたり、飲み物に怪しげな薬ビンに入った粉末{実際は砂糖)を混ぜたりという行為は、実際に効果を発揮する事はありませんので、不能犯として扱われます。
先日、判決公判が行われた埼玉県本庄市で起きた保険金殺人事件は、凶器として使われた風邪薬の主成分「アセトアミノフェン」の致死性が争点となり、大きな注目を集めました。この事件は、被害者に多額の保険金を掛け、大量の風邪薬を連日「健康ドリンク」と称して飲用させるという異常なものです。風邪薬に含まれるアセトアミノフェンに致死性が認められれば、被告の行為は殺人であり、認められなければ、殺人に関しては不能犯となるという、極めて重要な意味を、一般的な薬剤の毒性に求めた事になります。
アセトアミノフェンは、1950年頃から日本や海外でも使われ始めた歴史のある薬剤です。市販の風邪薬や鎮痛解熱剤にも含まれ、安全性の評価は高いものがあり、小児へのアスピリンの使用が、危険なライ症候群に繋がる危険性が指摘されて以降、解熱剤としてアセトアミノフェンを使用する事が推奨されているほどです。しかし、国内では比較的副作用が少ない薬剤として知られていますが、海外では数多くの中毒死を引き起こしている薬剤でもあります。米国では、年間450人ほどがアセトアミノフェンの中毒で死亡していると言われ、その多くは自殺ではありますが、100人ほどは過剰摂取による事故死と見られています。
鎮痛剤、解熱剤、風邪薬と複数の薬剤に含まれている事や、多く飲めばよく効くという考え方の存在が過剰摂取の背景にあると言われます。また、アルコールの摂取によって肝臓の解毒機能が低下する事が、過剰摂取を引き起こすという考え方もあります。日本では、アルコールと頭痛薬の日常的摂取は、あまり行われてはいない事もあり、アセトアミノフェンの過剰摂取による事故は、起こりにくいと考えられていますが、日本薬剤師会ではアセトアミノフェンを、普通の量を普通に飲む分には危険性が無い薬剤とした上で、大衆薬では唯一自殺が可能な薬剤で、過剰摂取による副作用が非常に強く、大量に飲んだり、アルコールと一緒に飲用すると非常に危険として注意を呼びかけています。お酒を飲んだ後、風邪っぽいからと薬を飲んで寝るのは、充分注意した方が良さそうですね。
第215回 栄光と挫折の殺虫剤
2005年01月20日
DDTというと、何を連想するでしょうか?ダイオキシン、PCBと並ぶ毒物、環境ホルモン、進駐軍が用いる強烈な殺虫剤。レイチェル・カーソンの著書、「沈黙の春」によって、完全に悪者にされてしまった感があるDDTは、かつてはノーベル賞に関与したほど栄光に包まれた薬剤でした。良く効く農薬として知られ、それが元になってプロレスの技にもその名を残していると言われます。
DDT自体は、1873年に合成されています。その後、1930年代になって、スイスのガイギー社のミュラーによって強い殺虫性が発見され、農業用防疫殺虫剤として製造されます。1943年には、米英で工業化が開始され、マラリア患者の発症数を激減させました。その功績によりミュラーは、1948年にノーベル賞を授与されています。日本へは進駐軍によって持ち込まれ、大量に散布された事が伝えられています。破壊された街の不衛生な状態から、数万人規模の死亡者が予想されたチフスがほとんど見られず、シラミを激減させたのもDDTのお陰と言われています。
近代の化学工業は、副産物として多くの塩素を発生させます。塩素の複合体であるDDTは、安価な材料でできる効果的な農薬として、大量生産、大量消費されます。森林保護の名目や、蚊や蝿の発生を防ぐために森や湖に大量に投入されました。その結果、30年の間に約300トンが使用され、その量は地球の表面全てをうっすらと白く覆う事ができる量だと言われます。既に1950年頃には、一部の生理学者の間で、鳥や魚に薬剤が蓄積されている事が懸念されていましたが、一般的に自然環境への弊害が意識されるようになるのは、1962年の「沈黙の春」出版以降という事になります。
その後、米国では製薬会社の意向もあり、すぐには使用を禁止せず、DDTの毒性についての論議が重ねられます。最終的には使用禁止に落ち着くのですが、現在でも発展途上国では、マラリアの発生を防ぐ有効な手立てとして散布され続けています。DDT自体の毒性は、実際はそれほど高くないと指摘する声もあります。DDTの毒性よりも、安直に大量散布を続けた使用方法に問題があったのでは、本来の薬剤使用のように必要な箇所に必要な量を使用していれば、ノーベル賞授与の栄光のままだったのでは、と思う反面、当時の使用方法が現在も続けられていれば、環境に蓄積され、どのような被害が生じていた事かと恐ろしくもなってしまいます。
第214回 注目のウィルス
2005年01月19日
最近、よく名前を耳にするウィルスがノロウィルスではないでしょうか。寒い時期なので、風邪やインフルエンザに関係したコロナウィルスやレトロウィルスが話題になりそうですが、それ以上の話題となってニュース番組を賑わせています。ノロウィルスは、食中毒を引き起こすウィルスとして知られています。それが各地で感染者を増やし、体力の落ちた老人や嘔吐物を喉に詰まらせるといった痛ましい事故によって、死亡者数を増やし続けています。
食中毒というと、夏場や梅雨時をイメージしてしまいます。冬場はあまり意識自体しないのですが、冬場でも食中毒は起こります。夏と冬の原因の大きな違いは、夏の食中毒が細菌が主な原因となっているのに対し、冬の食中毒ではウィルスが原因の多くを占めています。その原因となるものの中で、最も多いのがこのノロウィルスと言われています。
ノロウィルスは、1972年に米国の急性胃腸炎患者から発見されました。その年の5月には、食品衛生法の改正を受けて、食中毒の原因物質に「小型球形ウィルス」として追加されています。電子顕微鏡で見た姿が小さな球形をしているために、その名称が付けられ、用いられてきましたが、食中毒関連で小型球形ウィルスといえば、ほぼノロウィルスの事として間違いない状況でした。その後、遺伝子解析や学会の研究状況を踏まえて、2003年8月に食中毒原因物質としては、ノロウィルスと名称を改められました。そのため、この名称を急に聞くようになったというのもあります。
感染後の潜伏期間は1日から2日で、胃から腸へ運ぶ運動機能の低下による吐き気と、感染部位となる空腸上部の炎症による下痢、発熱、頭痛といった風邪にような症状も見られます。本来ならば症状は軽症で、1日から3日で治癒されてしまいます。ウィルス感染症の常で、効果を発揮する薬剤が存在しないので、日頃から体力、免疫力を高めておく事が大切です。まだまだ話題に上りそうなウィルスですので、充分にお気を付け下さい。
第213回 冷え対策
2005年01月18日
年末あたりからの寒さが続いています。晩秋の生まれのせいか、比較的寒さに強い性質なのですが、私の周りには冷え性という方が多数おられ、この冬の寒さがこたえているのはないかと考えてしまいます。冷え性とは、通常では感じない温度でも寒さを感じたり、寒さへの耐性を著しく低い状態を指します。一般的に疾患とは考えられませんが、冷えは万病の元と言われるくらい、さまざまな疾患に繋がる可能性があるので、しっかりとした対策が必要です。
冷え性に縁がない方は、多めに着込めば大丈夫、という感じがするのでしょうが、実際の冷え性は、そんな単純な事では対応する事ができません。西洋医学では冷え性と言い、疾患ではなく、体質的な事であると考えるので、これといった治療は行いませんが、漢方の世界では冷え症として、症状の一環として捉えます。メカニズム的には、毛細血管の血行不良と自律神経の異常が上げられますが、他にもホルモンの異常や貧血なども考えられます。
また、それ以外にも最近増えているタイプに、エネルギー不足というものがあります。このご時勢にエネルギー不足?と思ってしまいそうですが、ダイエットによって必要な栄養が摂れず、正常なエネルギーの燃焼が行われないために体温が上がりきれない為に起こります。よく知られた血行不良という原因についても、ストレスや食事内容の変化から、血液がドロドロしたものになり、流れが悪くなるというタイプも増えてきています。
そういった新たなタイプの冷え性であれば、ダイエットを中止する、食事内容を検討し、血液をサラサラにするなどの対策によって、症状を緩和する事が可能です。栄養も充分、血液の状態も良く、血行も正常なのに冷え性という場合、筋力の不足ではないかと考えています。体温は筋肉と肝臓によって作り出されています。その筋肉が少ない状態では、発熱量も少なくなり、身体を暖められなくなってしまいます。冷え性にお悩みの方、少しだけ筋肉を鍛えてみるのは如何でしょうか。
第212回 霜降り
2005年01月17日
霜降りというと連想されるものは、神戸牛、松坂牛といった高価な牛肉でしょうか。肉の中に適度な脂肪が散りばめられる事で、肉自体が柔らかく、脂の旨味でこくが出るとされ、美味しい牛肉の代名詞にも使われています。しかし、本来料理において使われてきた霜降りという言葉は、魚料理の下拵えとして、魚肉に熱湯をかけ、表面を軽く加熱する事で、旨味を逃がさず余分な脂分を除く調理方法を指したものでした。
素材の生臭みやぬめり、余分な脂分を除き、旨味を封じ込めるために熱湯をかけますが、そうする事でうろこや血合いも取り除きやすくなり、鍋の煮汁も濁りにくくなります。湯通しと呼ばれる事もありますが、加熱された表面が白くなる事から、霜が降った風景に見立てて、霜降りと呼ぶところに、日本の食文化の繊細さや優雅さを感じる事ができます。
表面のみを軽く炙る「たたき」も広義にはこの霜降りに入り、魚を美味しくする調理方法の一つとなっています。子供の頃、せっかく透明感がある切り身を加熱し、表面のみを濁らせてしまうという感じで、もったいない印象を持っていたのですが、意味を知ると納得がいきます。先日、この霜降りに関する新たな手法を教えられました。霜降りのお湯の代わりに、日頃愛用しているお茶を用いるというものです。そうする事で、より臭みやぬめりが取り除かれ、殺菌という観点からも優れた効果を発揮してくれます。
魚に関する食中毒の中心となっている腸炎ビブリオ菌は、お茶に含まれるカテキンの抗菌作用を苦手としています。寿司屋で大きな湯呑みが使われ、多量のお茶が振舞われるのは、お茶の抗菌力によって生もの中心の寿司ネタからくる食中毒を未然に防ぐ意味があるとされています。霜降りに用いる程度では、お茶の風味を食材に移す事は難しいのですが、臭みを防ぐ効果や殺菌効果には優れています。料理は細かな手間の積み重ねで美味しくなります。今度、魚料理の際には試してみたいと思っています。
第211回 自給率向上
2005年01月14日
「遺伝子組み換えの大豆は使用していませんよ。納入される大豆の箱にそう書いてありましたから」何でもない一言ですが、日常接している食材だけに、よく考えると気味が悪くなってしまいます。最近、豆腐のパッケージに「遺伝子組み換え不使用」「国産大豆使用」と書かれた物をよく見かけ、一応購入の際の選考基準にはなっています。
大豆の遺伝子組み換えというと、除草剤への耐性を持たせたものが良く知られています。除草剤で雑草を枯らしてしまっても、作物である大豆だけは残る事から、畑を管理する手間が大幅に軽減される事になるわけです。農家の方、種大豆と専用除草剤を販売する会社には良い話ですが、野放図に除草剤が使用された可能性のある大豆を買わされる側は、とても歓迎できる話ではありません。
さらに困った事に、遺伝子組み換え大豆の畑やその周辺では、土壌菌や雑草自体が変化して除草剤への耐性を確保し、必要となる除草剤の量が増え続けるという傾向が見られています。人為的に作り出された遺伝子の未知の弊害という懸念に合せ、大量に必要となる薬剤への懸念も持ち合わせている事になります。そうした遺伝子組み換え大豆を拒否し、国産大豆の畑を広げようとして始まった運動に「大豆畑トラスト運動」があります。
すでに会が結成されて7年目を迎えるという事で、記念集会も予定されているそうです。7年の活動の成果でしょうか、7年前と比べて大豆の自給率は2%から5%まで、大幅に向上したそうで、私も消費者の立場から協力できる事があればと思っています。2%から5%、確かに倍以上の大きな伸びです。それでも95%は、確実に国内産ではない大豆という事になります。どこのスーパーへ行っても見かける「国内産大豆使用」の豆腐。この事態をどのように考えますか?
第210回 ほおるもん?
2005年01月13日
体内の器官によって血液を介して命令を伝える内分泌系、ホルモン。まったく同じ響きを持ちながら、料理の世界になると別な物を指す言葉となります。ホルモン焼きやホルモン煮込みで知られる食材、食肉の部位を指すホルモンですが、部位的には必ずしも内分泌器官とは限りません。
狭義のホルモンは小腸と大腸を指し、広義には胃や肝臓、心臓、腎臓、子宮といった内臓全般の食用となる部分を指しています。語源に関しては諸説があり、実しやかに言われているところでは、食肉とされる筋肉部分を除いた、廃棄される場所であったため、「放(ほお)る物(もん)」から来ているとされています。
由来という観点から、最も定かなのは、大阪の洋食レストラン「北極星」の店主、北里茂男が毎日大量に捨てられている内臓を使って、何か新しい料理ができないかと考えた事が始まりとされています。実際、1940年には「ホルモン料理」は、正式に登録商標となっています。商標の出願に際し、名称を決定するに至った細かな経緯が添えられていないため、公文書上では、ホルモンの語源に関しては謎となっています。
食材が臓物であり、食材となった各器官の名称をメニューに列記する事も、あまり気味の良い事ではなく、だからといって廃物利用を想起させる名称も抵抗がある事から、身体を活性化させるという繋がりで、栄養価が高い内臓料理をホルモンに懸けたのか、関西人特有のユーモアなのか、いずれかを語源として考えたいと思ってしまいました。
第209回 命令系統?
2005年01月12日
体色を変化させるというと、カメレオンが思い浮かびます。周りの色と同化して、自分自身を目立たないようにしてしまうのですが、同じようにイカやタコといった頭足類も、体色を変化させる事では負けていません。カメレオンが、周りの色を認識して、ゆっくりと色を変える事に対し、頭足類は一瞬のうちに体色を変化させてしまいます。その違いは、頭足類の色素変更は神経に直結しているのに対し、カメレオンの変色は、ホルモンによって変更されているためです。
私たちも身体に何らかの変化を持たせる場合、各種の分泌器官からホルモンを分泌し、血液を介して命令を伝えています。私たちが血糖値や血圧を調整するのと同じ仕組みで、カメレオンは体色を変化させています。そのため、何かの作用を促進するものと、元に戻そうとするもの、ホルモンには、必ず対になるものが用意されています。そうしたホルモンのバランスによって、身体機能は正常に保たれているのです。
元々、ホルモンとは、ギリシャ語の「刺激する」「呼び覚ます」という意味を持つ、「ホルマオ」が元となり、20世紀初頭にイギリスの生理学者ベーリスとスターリンによって、ホルモンと名付けられました。体内の決まった器官のみで生成され、特定の器官だけに作用するという事と、血液中の濃度が極めて微量という特徴を持っています。
一定の器官から分泌されたホルモンは、作用を発揮する器官、「標的器官」を持っています。標的となる器官には、そのホルモン分子だけに反応する受容体が存在し、ホルモン分子と受容体が結合する事によって、ホルモンの効果が発揮されます。標的器官が、極めて微量な濃度のホルモンに反応でき、標的器官以外では、効果が発揮されないのも、この受容体の働きによります。神経による調節と比べて、器官の発動に時間がかかってしまいますが、分泌腺から遠く離れた器官でも大きな働きを発動させたり、継続性を持たせるには優れたシステムとなっています。最近では、ストレスの影響もあり、分泌腺や受容体の働きに変調をきたす例や、化学物質がホルモン分子と間違われて受容体と結合してしまう例も増えてきています。体の命令系統でもあり、健康を維持管理する上では、無視できない影響力を持つシステムです。負担をかけないようにしたいものです。
第208回 外郎?
2005年01月11日
正月用という意味合いからか、年末年始にかけて通常よりも多くの種類の和菓子を見かけます。新たに創作されたものから、伝統的なもの、地域性が強く感じられるものと、見ているだけでも楽しませてもらえます。そんな和菓子の中にあって、「外郎(ういろう)」は、私の中で独自の世界を持つものとなっています。
和菓子とお茶で過ごす一時をこよなく愛す私にとって、羊羹はお気に入りのアイテムの一つなのですが、似て非なるもの、外郎は、わずかに形態が似ているだけに、余計好きになる事ができない食べ物となっています。私の周りにも好きだという人はなく、地元の名古屋へ旅行する事も、出張する事もない家族でしたが、何故か時折2本1セットの箱が食卓に置かれている、外郎とはそんな存在でした。
外郎は、うるち米やもち米を粉にしたものに、水と黒砂糖を混ぜて型に入れ、蒸上げて作られます。正式な名称は「外郎餅」との事ですが、ういろうという響きが、どことなく日本のものではないような、不思議な印象を与えてくれます。この外郎、語源は漢方薬からきているといいます。咳やたんに効く薬に、外郎または外郎薬というものがあり、その薬に形状や色が似ている事から、外郎餅の名が付いた、もしくは、外郎薬はあまりにも不味いために、薬を飲んだ後は餅菓子を食べて、口直しをしたために、その餅菓子が外郎餅と呼ばれるようになったと言われています。
元々、外郎という言葉自体は、中国で律令で定められた定員外の官を、「員外郎」という官僚名で呼んでいた事が元になっています。外をういと読むのは唐の読み方ですが、室町時代に元の礼部員外郎だった陳宗敬が日本に帰化し、その際伝えた薬、「透頂香」が別名で外郎薬と呼ばれるようになった事が始まりと伝えられています。その外郎薬に関係して名付けられた外郎餅ですが、考案者は周防の秋津治朗作とされます。由来を知ると、その物が好きになってくるのですが、外郎はちょっと...。
第207回 禁酒しましょう。
2005年01月07日
忘年会、新年会と、この時期はお酒に縁が深くなります。全くお酒とは縁が無い私ですら、「乾杯だけなら」「一口くらいは」と薦められてしまいます。酔ってテンションが上がる人達を横に、一人ウーロン茶を飲んでいるのも、それなりに寂しいものがありますが、所詮は嗜好品、美味しいと思う人だけが美味しく飲めば良い事と考え、このまま縁のない人でいようと思っています。
最近では、女性でもお酒を飲む人が増え、私の周りには酒豪を自認する人までいます。そうした状況の中、妊娠中も飲酒の習慣を止めない妊婦も増えていると言われ、胎児への影響が心配されています。妊婦が摂取したアルコールは、血液を介して胎盤を通過し、胎児へと流れ込みます。胎児は、アルコールを代謝する機能が未発達なため、母体よりも遥かに大きなダメージを受けてしまい、場合によっては、FAS(胎児性アルコール症候群)の障害へと繋がる可能性があります。
FASは、外見的特長や、発達の遅れや刺激への過反応、変化への適応困難、学習障害などの行動障害が報告されています。1960年代の終りには、アルコールによる胎児への障害が問題とされていた米国でも、いまだに1000人中2、3人は、FASの障害を持つ子供が生まれていると言われます。FASの困ったところは、摂取量に関する明確な基準を作る事が困難という事です。
人によってアルコールへの耐性が異なるように、胎児も耐性は一律ではなく、母体のアルコールの代謝能力も異なります。アルコールを摂取する際の体調によっても、吸収率や分解機能に差が出てしまうので、個人レベルでも基準を作る事でさえ困難な事と思われます。「少しくらいなら」「安定期に入ったから」と油断しがちですが、身体に必要不可欠という物ではありませんので、妊娠中は禁酒される事をお薦めしたいと思っています。
第206回 新たな環境保護
2005年01月06日
和食、その一言にはヘルシーなイメージがあり、対する欧米食には、健康にマイナス面の影響、特に肥満を誘発してしまう、そんなイメージが定着しています。実際、栄養成分を分析すると、脂質や食物繊維の量、栄養のバランス的な部分から、和食の方が肥満に繋がりにくい内容となっており、国民の肥満率にもそうした影響を伺う事ができます。
欧米に肥った人が多い事は、民族的な事や生活習慣、価値観なども関わっているため、一概に食事内容だけに原因を求める事はできないと思います。現地で見た感じでは、とにかく食べる量が多く、日常の食事が和食を中心とした場合であっても、量的な問題で肥満は避けられないという印象を持ってしまいました。肥満は様々な影響を及ぼす事が知られています。そんな肥満が及ぼす、新たな影響に関する試算が公表されていました。
米国疾病管理センター(CDC)の研究によると、米国内に蔓延する肥満の影響の一環として、高騰しているジェット機の燃料コストをさらに上昇させ、二酸化炭素の排出という環境面への打撃も与えている事が判明していました。肥満の乗客の体重が加わった事で、航空機は3億5000万ガロン(約13億3000万リットル)もの燃料を余分に必要とし、2000年当時の相場でも2億7500万ドルもの燃料コストが余計に掛かった計算になります。それに伴い、二酸化炭素の排出も380万トンと推定され、地球の温暖化への悪影響が懸念されます。
今回の試算は、航空機に限った事ですが、積載重量の増加による自家用車の燃費の悪化を考えると、石油資源の消費、二酸化炭素の排出という点では、かなりの悪影響を与えている事が予想されます。ジェット燃料に関しては、識別のために添加される染料にオゾン層破壊の懸念も言われているだけに、ダイエットという新たな環境保護活動のはじまりに期待したいと思います。
第205回 過剰症?
2005年01月05日
ビタミン類の一種としても扱われる葉酸は、妊娠初期に多量に摂取しておく事で、胎児の二分脊椎の先天性欠損を防ぐ効果がある事が知られ、葉酸自体に過剰症がないとされる事からも、日常を通して、多量に摂取する事が推奨されています。しかし、この葉酸の摂取に関して、気になるニュースが報告されていました。
昨年12月、英国の医学誌の報告によると、妊娠後期の葉酸の大量摂取は、その数十年後の乳ガンの発生に関与している可能性があるという研究結果が出されていました。1960年代にスコットランドのアバディーンで行われた研究に由来するもので、3000人を超える妊婦を対象に行われた葉酸サプリメントの試験が元になっています。
試験は、最高で通常の摂取量の10倍を超える量を投与するグループや、葉酸のサプリメントと信じ込ませた偽薬を与えたグループを含め、全員が出産まで葉酸のサプリメントを服用するという形で行われ、その後の追跡調査で、葉酸を多量に摂取した女性の乳ガンの発生率は、偽薬を投与された女性よりも高く、最も多く摂取したグループにその影響が顕著だったとしています。
そうした情報に触れると、葉酸の知られていなかった過剰症の発見かと思ってしまうのですが、実は全く逆の結果を示す研究結果も存在しています。葉酸を多く含む食品を大量に摂取している女性の乳ガンの発生率は、そうした食品をあまり摂取しない女性よりもはるかに低く、大腸ガンの発生率も低いとされています。葉酸の摂取による胎児の先天性の神経欠損症発生リスクが、劇的に低下する事が確認されているだけに、葉酸は摂取しておきたい栄養素なのですが、こうした両極端な研究の存在は混乱の元となってしまいます。今回の両研究では、サプリメントとして摂取するか、食品から摂取するかという、葉酸自体の質的問題という、別な意味も含まれているような気がしています。
第204回 食べました?
2005年01月04日
新年、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。
慌しく年末年始を迎えたのですが、今年はそれらしい事はせず、比較的ゆっくりと過ごせたと思っています。そんな中、一応縁起を担ぎ、年越しそばだけは、しっかりといただきました。元々そば好きというのもあるのですが、ニュース番組の最後の方で老舗そば屋の賑わいを報じる話しが出ると、一年の終りという感じがして、自分も用意をしなければという気分になってしまいます。
ほぼ全国的に年の瀬の行事として根付いている年越しそばですが、実は由来には諸説があり、はっきりとしていません。庶民の間に年の終りにそばを食べる習慣が生じた事についても、江戸時代とする説から鎌倉時代とする説まであり、大きな時間の開きがあります。由来に関しても多様な説が存在していますが、その中でも有力視される説は、4つに分類する事ができます。
第一の説では、そばが細く長い食材である事から、運や寿命、身代や家系が長く続くという縁起を担ぎ、年の瀬に次の年への願いを込めて食べるようになったとされます。実際に地方によっては、そばに限らず長い食材であれば何でも良いとする地域や、年越しそばの事を「寿命そば」「のびそば」と称する地域もあります。第二に、金細工師が飛び散った金粉を、そば粉を練った物に吸着させ、後で水にさらすと、水の底に金粉が溜まる事から、金がたまるという縁起物となったとする説もあります。
第三の説が時代的には最も古く、鎌倉時代にお寺が「世直しそば」と称して、そばがきを振舞ったところ、運が向いてきたという事から、年の瀬の縁起物として「運そば」をいただく事になったというものです。第四の説では、そばは切れやすい事から、悪縁を切り、良いできのそばは切れにくいので、良縁は長く繋がるという事から年末に食べたというものです。いずれも、もっともらしい説得力と裏付けとなる地域情報が伴っているので、どれか一つに絞る事は難しい事と思います。痩せた土地でも力強く育つそばは、各地で栽培され、飢饉などの際、大切な食料となったという言い伝えも多く残されています。様々な由来が残されている事は、それだけそばという食材への関わりの深さを示しているようで、非常に興味深い事と思っています。
|