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第798回 危険な塗り薬
2007年06月29日
先日、米国で17歳の陸上選手が筋肉痛を和らげるための塗り薬の過剰使用が原因で死亡したという報告が行われていました。死亡した高校生は普通に売られている市販の塗り薬を複数使用していたとされ、それらの塗り薬には有効成分としてサリチル酸メチルが含まれていました。
サリチル酸メチルは、自然界ではシラカバ、ゲッカコウ、チョウジなど約160種の植物に精油成分として含まれ、独特な芳香をもっています。市販品のほとんどは合成した物とされ、香料や消炎剤、鎮痛剤などに幅広く使われている特に珍しい成分ではありません。
炎症を抑える働きがある事から肩こりや筋肉痛などの炎症を抑え、痛みを和らげる目的で塗り薬や湿布薬にも使用されています。高用量だと内出血、不整脈、肝障害などの副作用が生じる怖れもありますが、飲み薬ではない事からそれほどの危険は認知されていない事と思います。
今回の死亡例は極めて稀なケースとされ、用法用量を守って使用していれば安全と考えられますが、異なる市販薬に同じ薬剤が入っていて、知らないうちに過剰摂取となっている事に気付かないという危険性を示しているとも考える事ができます。
筋肉痛はすぐに収まるものではない事から、繰返し塗布してしまう事も珍しくはありません。市販薬と言えども薬には変わりはなく、ある程度のリスクが伴う事。市販薬は処方薬と比べて効き目が弱い反面、安全性が高いという事ではないとしっかり認識し、自分が使用する薬剤の内容についてよく知っておく必要がある事を、あらためて教えられてしまいます。
第797回 寝坊の弊害
2007年06月28日
日頃から睡眠不足を感じています。そのため、週末の朝など遅くまで寝ていられる事に憧れてしまうのですが、なかなかゆっくりできずにいます。それでも平日に不足した分を週末の朝を遅めにする事で、日頃の睡眠不足を補っているという実感を持っているのは私だけではないと思います。
先日、そうしたライフスタイルがあまり良くない影響を及ぼす事を、ミネアポリスで開催されていた睡眠専門家協会の年次集会で報告されていました。学生を対象とした研究で、週末に朝寝坊をする生徒は、普段通りに起床時間を保つ生徒に比べて、学校の成績が劣る可能性があると示されていました。
今回の研究はボランティアを対象とし、週末の睡眠パターンを模擬的に再現する事で睡眠の質や朝の覚醒、概日周期などを検討しています。
週末に次の日が休みという安心感から夜更かをして、翌日朝寝坊をすると体内時計に遅れが生じ、月曜の朝になっても脳の覚醒の合図が遅れてしまいます。その結果として週の初めは頭がスッキリしない、気力が充実しないなどから、学業不振に陥る可能性が大きいとしています。
平日に充分な睡眠を摂っておらず、週末に補おうとする傾向もそうした流れに繋がると指摘され、日常を通した睡眠の管理の重要性にも言及され、毎日必要な量の睡眠をしっかり確保する事が大切としています。悪いと解っていながら、なかなか抜け出せない。日常の時間配分と睡眠について、もっとしっかり考えなければいけないと考えてしまいました。
第796回 手配書の魚
2007年06月27日
指名手配というと似顔絵や写真が張り出され、特徴などが添えてあるポスターをすぐに連想してしまいます。似顔絵が凶悪な人相だったりするといかにもという感じがするのですが、それが魚だと何となく間抜けに見えてしまいます。
安土桃山時代、朝鮮出兵を控えた兵士達は、一旦朝鮮半島に近い港町下関に駐留します。その際、現地でたくさん獲れる魚の美味しさに驚き、それほど大きな魚でもない事から丸ごと食べてしまっていました。その魚こそ下関の名産、ふぐだった事から食中毒者が相次ぎ、それを聞いた太閤秀吉は烈火のごとく怒り、ふぐを食べる事を禁止します。
「この魚、食うべからず」という立て札をして、立て札には字が読めない者のために似顔絵を添えて、ふぐを食べないように呼びかけたと言います。後に「河豚食用禁止の令」と呼ばれる立て札は日本初のふぐ食の取り締まりとなり、その後の幕藩体制にも引き継がれています。
武士の間で禁止されたふぐ食ではありましたが、地元の庶民の間ではその後も盛んにふぐを食べていたと言います。おそらく地元であれば武士の間でも食べられていた事は想像できるのですが、毛利元就によって「身内にふぐの毒によって死したる者が出た場合、御家断絶に処す」と定められていた事から表向きはふぐを食べていなかった事となっています。
やがて幕藩体制が明治維新によって終了しますが、明治政府によって公布された「違警罪即決例」の中に、「ふぐを喰う者は拘留科刑に処す」という項目があり、ふぐ食の禁止は続けられています。
明治21年(1888年)、ふぐ食は転機を迎えます。伊藤博文が下関の料亭を訪れた際、しけが続き魚がまるで取れていなかった事から、女将が仕方なく覚悟を決めてふぐを出したところ、その美味しさに大喜びして、「こんな美味しい物を何故禁止にしておくのか」と違警罪即決例のふぐに関する条項の削除に働きかけ、秀吉の発令以来続いた禁食令が解除される事となっています。実に手配書の立て札から290年。貝塚から骨が出土する事もあるほど古くから親しまれたふぐですが、美味しさと引き換えに当れば死ぬというインパクトの大きさが伝わってきます。
第795回 回る石
2007年06月26日
ブナ科ナラ属のカシ、クヌギ、ナラ、シイなどの実は、総称してどんぐりと呼ばれます。どんぐりは漢字で表記すると「団栗」となりますが、この漢字表記は当て字とされています。
どんぐりの中でシイの実は炒る事でそのまま食べる事ができますが、他の実は渋みが強く直接食用にする事には向いていません。しかし、どんぐりは縄文時代の重要な食料であったと考えられています。
どんぐりの渋みは水溶性のタンニンによるものなので、縄文人はどんぐりを潰して水にさらし、沈殿したデンプンを練って焼き、主食の一つとしていたと見られています。
それだけ古い時代から親しまれているどんぐりですが、歴史が古い分、名前の由来については謎の部分を多く残しています。有力なところでは、どんぐりはその丸さからコマとして遊ばれる事が多かった事から、コマの古名「ツムグリ」が転じたとされています。
「旋風」などで使われている「つむじ」には回転するという意味があり、「クリ」は石を指す古語とされます。別な説では朝鮮語で丸い事を「トングルダ」、モンゴルでは「トグリグ」と言います。日本でも「とぐろ」という言葉があり、広くアジア圏で丸さに関する似た言葉が存在しています。
そうした丸いという語系からという説もありますが、どんぐりという言葉の用例が江戸時代になってからという事から、やはりどんぐりの語源は回る石にあるのかもしれません。
第794回 ウレミファ...?
2007年06月25日
手軽ですぐに始められる健康法に、よく笑う、よく歌うというものがあります。どちらも何でもない日常的な事ですが、免疫力やストレスへの抵抗力を高める事に有効だとされます。
笑う事はともかく、歌うとなるとある程度能動的に意識して始める必要があり、本格的な部分に踏み込んでみると、すぐに楽譜という難解なものに入り口を閉ざされた感じになってしまいます。
楽譜は5本の線が引かれた上に演奏記号や符号が記入され、出す音の高さや長さ、強さが指示してあります。その意味では言語のようなもので、一度細かな決まり事を覚えてしまえばと言われますが、なかなか難しげに思えてしまいます。
楽譜の中で音の高さ、音階はドレミファソラシというイタリア語で表記されます。英語ではCDEFGABとされ、日本語ではハニホヘトイロで表されています。イタリア語のドレミ・・・という音名は、11世紀のイタリアで宣教師であり音楽教師でもあったグィード・ダレッツオの発明とされています。
中世の賛歌の一つである「聖ヨハネ賛歌」は、一節から六節にかけて各節の最初の音が一音ずつ高くなっていく事から、各節の出だしの歌詞の頭の部分をその高さの音に割り付けた事が元になっていると言います。
歌詞の頭の部分をそのまま持ってくると、最初の音は歌詞からUtとなってしまうのですが、口調を良くするためにDoに変えられ、「シ」にあたる部分は聖ヨハネを表すSJとから聖ヨハネをフランス語で表した場合のSIに変えられて「シ」と呼ぶようになっています。
普段意識せずに使っているものにも意外な由来があるものだと思ってしまうのですが、最近はカラオケなどで楽譜とは関係なく歌えてしまうので、積極的に健康作りに取り入れられる事をお薦めしたいと考えています。
第793回 硬さの使い分け
2007年06月22日
輸入物のパスタを茹でる際、翻訳されたラベルの説明通りの時間で上げると、意外と茹で過ぎになってしまっている事があります。原因はパスタを茹で加減の好みの違いというより、生産している国と日本との水の硬度の違いによるものと考えられます。
水の硬度は含まれているカルシウムとマグネシウムの量で計測され、含有量によって軟水、中硬水、硬水、超硬水にWHO(世界保健機構)の飲料水質ガイドラインでは分けられています。
パスタを茹でるには超硬水、中でも硬さの指標が300を超えるかなりの硬水が向いているとされ、水に含まれるカルシウムがパスタのデンプンと結合し、茹で上がったパスタのコシを強くしてくれます。
また、超硬水は肉類を煮てダシを取る事にも向いていて、肉の臭みを抑えてアクを出しやすくしてくれます。同じダシでも和風のダシは、カツオや昆布のグルタミン酸などの旨味成分を充分に引き出さなくてはいけないため、軟水の方が向いているとされます。
お茶も和洋で水の硬軟が別れ、紅茶はリーフの種類によって異なりますが中硬水の方が適し、日本茶は軟水の方が向いています。理由としては軟水の方が渋味と苦味の元となるタンニンを沈殿させず、茶葉のエキスを充分に溶かし出してくれるためで、淡い緑色の日本茶に硬度が高い水を使うとタンニンと反応して黒ずみの原因ともなります。
同じタンニンの扱いにしてもコーヒーの場合、硬水を使う事でタンニンを沈殿させ、マイルドな味わいにする事ができます。水単体での味に関しては、硬度が高いとキレのある辛口とされ、低いとまろやかな味と評されます。ミネラルウォーターのラベルには硬度表が記載されている事があるので、用途別に選ぶのも面白い事かもしれません。
第792回 先進国の条件?
2007年06月21日
目覚しい経済発展を遂げる中国では、ちょうど日本の高度成長期のような状況をさらに大型化したような状態にあると聞かされます。そんな中国で昨年の死亡原因が、これまでの脳血管疾病を抑えてはじめてガンが第一位となった事を、中国衛生省の統計として発表されていました。
都市部での死亡原因の27.3%がガンによるものとされ、農村部でも25.1%。実に全体の4分の1以上となり、背景にあると考えられている深刻な環境汚染が懸念されてきています。
衛生省の発表では、2005年には中国全土で760万人がガンで死亡し、全世界のガンによる死亡者数の13%に相当するとされています。
研究機関では、急激にガンが増えた原因として、空気や水などの環境汚染、特に飲料水となる地下水の汚染。残留農薬や食品添加物などの食品汚染。細菌やウィルスの増加といった事を上げています。
特に水質汚染が進んでいるとされる中国東部の淮河流域の瀋丘県では、ガン患者が以上に多い村が100以上も存在し、人口2000人程度の村での死亡者の54%がガンによるものだったと言われます。
食料の汚染も深刻で、家畜に使われる薬品や飼料に加えられる添加剤、野菜や果物への成長促進剤、殺虫剤などの残留が疑われ、慢性中毒を起こす重金属の野菜への残留、中でもカドミウムの残留がガンを急激に増やす原因となっていると指摘する声もあります。
奇跡と言われた高度成長を遂げて先進国の仲間入りをした日本。それを上回るほどの勢いで経済成長を続ける中国。共に死亡原因の第一位がガンというのは、大切なものを置き去りにしてしまったようなやりきれないものを感じてしまいます。
第791回 ガスマスク配り
2007年06月20日
日本固有の風景にティッシュ配りというものがあります。初めて見る外国人の方は、あれは無料で配っているのか?と不思議になるそうですが、企業の広告が入った宣伝媒体である事を話すと理解してもらえます。
日常生活に浸透しているティッシュペーパーは、意外な物が元になってその歴史をスタートしています。第一次大戦の最中、脱脂綿の代替品として開発された薄い紙に給水力を持たせ、重ねて層状にする事でガスマスクのフィルターとしました。
当時は兵器として毒ガスが開発され、従来の兵器とは全く異なる脅威となっていました。その毒ガスの害を除く物として大量に作られ、戦争の終了と共に不良在庫となってしまった替えフィルターにアメリカのキンバリー・クラーク社が目を付けてメイク落とし用として発売したのが今日のティッシュペーパーの始まりとなっています。
ティッシュの語源はフランス語で「布」などの織物を意味する「Tissu」からきていて、大元はラテン語の「織る」という動詞の過去分詞形にあるとされます。発祥の地、米国では発売の際に付けられた商標、「クリネックス」でも通じるので発売当初の名前がしっかり根付いている事になります。
通常のティッシュペーパーは2枚が重ねられて折り込まれていますが、それには幾つかの理由があると言われます。第一に強度的な問題があるとされ、製造時に一定の強度がないと折り込む事ができなくなるのですが、強度を確保するために厚くなると柔らかさが損なわれ、ごわごわした感じになってしまうため、2枚を重ねる事で強度を確保していると言います。
また、紙には表と裏があり、ざらついた裏面を重ねる事によって滑らかで肌触りの良い表面を外側にできる事で、より柔らかく肌に優しい質感にしているそうです。元々がメイク落としとして直接肌に触れさせる事から、柔らかく肌触りが良くなる事が2枚重ねの理由と言えます。
街頭で配られているポケットティッシュは、品質的に通常の箱入りのボックスティッシュよりも劣る事があり、若干ごわごわした感じがしてしまう事があります。折り方も複雑になっていて、コンパクトなサイズという事もあり、どことなくフィルターに見えてしまうのは私だけでしょうか。街頭でフィルター配り、見方によっては怖いものがあります。
第790回 べろべろ
2007年06月19日
前回紹介したカロリー低密度食を作る際、特にダイエットの効果のみに特化して考えると寒天がお薦めと言えます。寒天はアガロースと呼ばれる食物繊維からできており、人の消化酵素ではほとんど分解されないためにカロリーがなく、腸で油や糖分の吸収を妨げてくれるのでよりダイエット向きだと言えます。
単体で食べる事は少なく、何らかの味付けや混ぜ物を行うという意味でも酵素分解されにくい寒天は、加工のしやすさという点で優れています。果物を混ぜてゼリーを作る際、果物の酵素の働きでゼラチンだと固まらなくなる事がありますが、寒天ではそうした事がなく使いやすい食材でもあります。
そんな寒天を使う料理が面白くて、各地の寒天を使った郷土料理を見ていた際に出会った「べろべろ」は、名前のインパクトからも忘れられない料理となりました。
べろべろは金沢の郷土料理で、おせち料理や祭事で出される食事にはよく登場すると言います。「えびす」「えびし」と呼ばれる事もあり、別な地域では「べっこう」という呼び方もされるそうです。
作り方は比較的簡単で、寒天を水で戻し、昆布で取ったダシを煮立てながら寒天を千切って入れ、煮溶かしてしょうゆと砂糖またはみりん、しょうがの絞り汁で味を調え、溶き卵を菜箸に沿わせて静かに回し入れます。
卵は一か所にかたまらないようにして、火が通ったら水で濡らした型に流し込んで粗熱が取れたら、さらに冷蔵庫で冷します。よく冷したら型から取り出し、薄く切って器に並べます。
だし汁にしょうゆという色合いに卵がマーブル状に入った姿からべっこうの名前が付いたというのは、容易に想像できます。べろべろの語源についてはべっこう由来というより、その食感からというのが正しいように思えます。
ダイエットのために完全にカロリー低密度食に切り替えなくても、食前に寒天を摂っておくのは有効とされるので、前菜にでもいかがでしょうか。涼しげな姿も含め、これからの季節にお薦めの一品と言えます。
第789回 水増しましょう
2007年06月18日
随分と前の話になりますが、ところてんとわらび餅にはまってしまい、そればかり食べていたら一気に体重が減少してしまったという、あまり良くない経験があります。夏場で食欲が極端に下がっていたので、食べやすい物ばかりを食べていたという感じですが、炭水化物に偏重した栄養摂取にはいまだに反省しています。
先日、肥満の治療に関する手法を研究した内容が報告され、ダイエットには食事の量を減らすより水分が多く、一定重量あたりのカロリー密度が低い食事を摂る方が有効であるという内容に当時の事を思い出してしまい、変に納得させられるものがありました。
カロリー密度が低い食事を摂れば、量の割には摂取カロリーを低く抑える事ができるので、空腹感やもの足りなさを感じる事が少なくて済むと事は容易に想像する事ができます。
研究では22歳から60歳までの肥満女性71人に対し、従来のダイエットに有効とされてきた低脂肪食のみを与えるグループと、低脂肪食に水分が多い食品を加えたグループに分け、1年後に調査を行ったところ、両グループとも体重の減少が見られましたが、最初の半年間での比較ではカロリー密度が低い食事を与えられたグループの方が減少量が大きかったという結果が得られています。
また、食事に関する内容でもカロリー密度が低い食事を摂っているグループの方が、重量比で25%も多く食事を摂っていて空腹感を感じる事も少なかったという質的な満足が得られています。
食事量を制限するダイエットは、継続的な空腹感や食事への不満から余計に反動が大きいとされますが、カロリーの低密度食であればそのリスクを最小限に抑える事が考えられ、取り組みやすいダイエットになる事が考えられます。水分が多くカロリーが低密度となると、野菜や果物、スープなどが上げられていましたが、タンパク質を付加する意味ではゼラチンを上手に活用する事や、食物繊維という意味では寒天を使うというのも有効かもしれません。とりあえず私自身で実証済みでもあります...。
第788回 体育会系アンチエイジング
2007年06月15日
いかに若さを保つか、いくつまでも若々しくあり続けるかという事、そのために重要な事が「抗老化」「抗加齢」といったアンチエイジングです。これまでアンチシジングは、老化の原因として考えられている活性酸素を除去する事が重要視され、活性酸素を発生させるウェイトトレーニングには身体機能の保全といった意味しか見出せないでいました。
ところが先日、バーベルなどを使ったウェイトトレーニングによって高齢者の筋肉が若返る事が、米国とカナダの研究チームによって確認され、報告が行われていました。
今回の研究は、65歳以上の健康な高齢者25人の大腿部筋組織の遺伝子発現を調べたもので、対象となる筋肉群の収縮運動30回を含む1時間の筋力トレーニングを週2回、半年にわたって実施してもらい、20〜35歳までの若い人から採取した組織と比較しています。
比較の結果、筋力トレーニングの実施によって高齢者の筋組織に見られる「遺伝子指紋」が若い人に近いレベルに戻っている事が判ったそうです。筋力に関する評価でも、高齢者の筋力は若い人に比べるとトレーニングの実施によって、開始当初の58%程度から38%までの差に改善されていたと言います。
研究者達の間では当初、高齢者の遺伝子発現はほとんど変化がないと予想していたらしく、今回の結果に非常に驚いたそうです。トレーニングは健康を維持するだけではなく、老化そのものを食い止める事に有効という事を示した事になり、高齢者の運動の必要性を説いたものとも言えます。今後の研究を検証しながら、運動との良い関係を築きたいものだと考えてしまいました。
第787回 操作弊害
2007年06月14日
先日、遺伝子操作によって花粉症の症状を軽減させる米の話が報じられていました。従来の米に遺伝子操作によってスギ花粉症の原因となる抗原、「T細胞エピトープ」を持たせたというもので、正式には「エピトープペプチド集積米」と呼ばれています。
毎日の主食である米からスギ花粉症の抗原を摂取する事で、スギ花粉に対する免疫作用によってアレルギー症状が軽減されるという働きが期待されています。目論みとしては一日に一合の米を食べる事で、徐々にアレルギーの症状が緩和され、数ヶ月で症状の改善が期待できるとしています。
同じような働きを持つ物として、新たに米にコレラのワクチン成分を含むものが開発されていました。米の遺伝子を組み替える事によって作り出されたもので、粉末にして摂取する事でコレラに罹り難くなり、米のまま長期保存が可能という事です。
コレラ菌は一度感染する事によって体内に免疫ができる事から、それ以降、発症し難くなります。米の遺伝子にコレラ菌の遺伝子の一部を組み込む事によって、コレラ菌の一部が体内に入った事になり、免疫ができる仕組みを利用し、コレラ菌の毒素部分は取り除いてあるため発症はしないと言います。
そうした用途を含め、遺伝子組み換えの作物は徐々に身の回りに増えつつあります。先日、遺伝子組み換えトウモロコシの安全性に関する実験データの再解析を行ったところ、遺伝子組み換えトウモロコシを食べた事によってラットの成長や腎臓の機能などを示す数値に、明らかな違いが生じていた事が判り、研究結果に関する報告が行われていました。
さまざまな点でメリットばかりが先行して報じられる遺伝子組み換え作物ですが、長期間の試験を含め、きちんとしたリスク判定を行ってほしいと考えてしまいます。毎日の食を通して健康を確保するのは基本的な事ではありますが、安全性に疑問が生じている物の効果によって健康を作り出すというのは、少々方向が違うように思えてしまいます。
第786回 汁、かやき
2007年06月13日
熊本に住んでいると別に不思議でもない「辛子れんこん」も、他所へ行くと変な食べ物呼ばわりされてしまう事があります。その地域の特産品や風習などから生まれる地域に根差した郷土料理には、少なからずそうしたものがあり、失礼だとは思いながらも奇異に感じてしまう事も少なくはありません。
青森県南部八戸地方に伝えられる「せんべい汁」に最初に出会った際も、素朴な外観とは裏腹に鍋物にパリっとした食感が命のせんべいを入れてしまうという事に大きな抵抗感を感じてしまいました。
せんべい汁は、江戸時代の後期、主食が五穀を中心とした物へと変化していく中で、飢饉や凶作に強く、土壌にも適していた麦や蕎麦の栽培が盛んになり、粒状では食べ難い麦や蕎麦を粉に挽いて練り上げるという調理法の発展形として誕生したとされています。
江戸時代、文化文政期の文献には、「汁物に柔らかい麦せんべい、蕎麦せんべいをちぎって入れた」というものがあり、既にせんべい汁が成立していた事を見る事ができます。当時は麦や蕎麦のせんべいを今日のように堅くは焼き上げず、柔らかさを残した団子や麺のような感じにしていた事がちぎってという表現から伺えます。
明治時代に入るとせんべいの焼き型が普及し、せんべいの生産が各家庭の囲炉裏から製造業者へと変わり、当時の好みを繁栄して堅焼きの物へと変化していきます。この時点で堅焼きができない蕎麦せんべいは見られなくなり、堅焼きの麦せんべいを使う今日のせんべい汁のスタイルが出来上がったと考えられます。
鶏肉や豚肉、馬肉または魚介類に山菜などの野菜類を加えた鍋にせんべいが入るせんべい汁ですが、調理の手順で最初から具としてせんべいが入るのが正しいせんべい汁らしく、出来上がった鍋に頃合を見てせんべいを入れる物は、「せんべいかやき」と呼ばれて区別されているそうです。
現地では、せんべいに赤飯を挟んで食べる「おこわせんべい」も食べられているという事なので、独自のせんべい食文化が発達していると言えます。八戸のせんべいに関しては、処刑を免れたキリストがシベリア経由で八戸に上陸し、郷里で食べていたパンに似せて作ったという伝説もあり、興味深いものを感じてしまいます。
第785回 復権の兆し
2007年06月12日
最近、原油の高値が続き、今後も原油価格が下がるという見通しが低い事から、ガソリンの使用量を減らすためにアルコールを添加するという事が注目されてきています。それ以降、アルコールの原料となるサトウキビやトウモロコシの取引価格の高騰に始まり、さまざまな部分に影響が生じてきています。
また、地球温暖化を防ぐためにもガソリンの使用量を減らし、アルコールの原料となる作物を作る際、二酸化炭素を吸収してもらうという事にも期待が集まっています。
そんな中、再度ディーゼルエンジンが注目を集めてきています。ディーゼルエンジンは大型のトラックに使われ、濛々と黒煙を上げて走るというイメージが強く、排出される黒煙に含まれる粒子状物質がアレルギー症状を悪化させるとして、日本国内では自家用車を中心にほとんど見られなくなってきていました。
かつては自家用車のカタログを見ると、若干車両価格が割高になる場合もありますがディーゼルエンジン仕様の設定がありました。首都圏でのディーゼル車の規制以降、そうした初期設定は見られなくなり、日本国内でのディーゼル自家用車の製造はなくなっていたような印象があります。しかし、全く製造されていないのではなく、輸出仕様車や海外生産車にはディーゼル車が存在しています。
特にEU諸国ではディーゼル車の人気が高く、二酸化炭素の排出量の少なさから、新規のディーゼル車購入に対し助成も行われています。購入時の優遇措置に合せて、燃費がよく、頑丈なので経済性が高い事も購入者の人気となっています。
ディーゼル車の欠点は大きなエンジン音と窒素酸化物、粒子状物質の排出にありましたが、エンジン音は消音技術の向上によって驚くほど静かになると言われ、窒素酸化物は触媒によって低減する事が既に可能となっています。
粒子状物質の排出に関しては、窒素酸化物の排出を抑えると粒子状物質の排出が増えるという難しい面がありましたが、現在、その対策が急激に進んでいると言います。日本はディーゼルエンジンの技術において先進的な立場にありました。その先進性が失われないうちにディーゼルエンジン復権の日が来そうで、何となくほっとするものがあります。
二酸化炭素の排出のみで考えると、ディーゼル車はモーターとガソリンエンジンを併用したハイブリッド車と同程度でしかなく、生産するために排出される二酸化炭素量は圧倒的に少ないと言われます。また、菜種や大豆などの天然の油脂からも燃料を作る事ができるので、環境負荷という点で大いに評価する事ができます。今後、発売される新型車に注目したいと思っています。
第784回 鑑定方法
2007年06月11日
先日、「純粋はちみつ」と表示された商品の約2割に虚偽表示があり、人工甘味料や水飴が添加されているという実態が報じられていました。一部には養蜂業者のコメントが添えられ、安価な中国産のはちみつと価格的に競争していく上では仕方のない行為という発言も見られていました。
そんなはちみつに関して、スーパーで売られているはちみつのほとんどが中国産か、更に原価が安い加糖はちみつや精製はちみつに麦芽糖やカラメルを混ぜて作った人工はちみつだとするショッキングな内容の書物が刊行されています。
著者の発言によると、国産表示も純正マークもあてにならず、国産と表示されたはちみつにも外国産が多く、国産として高価な価格で流通しているはちみつにもかなりの割合で外国産が含まれていると言います。国産と銘打たれた高価なはちみつは全体の30%近くも流通しているのに、国産のはちみつの供給量はわずか5%にすぎず、明らかに不自然な状態となっています。
純粋なはちみつと人工的な手が加えられたはちみつを見分けるのは、それほど難しくないという話があります。簡単な見分け方では、水を入れたコップにはちみつを入れ、溶け方で見るという方法があります。はちみつは糖の過飽和溶液ですぐには溶けずに沈殿しますが、加糖された物では比較的簡単に水に溶けてしまいます。
またろうそくの糸芯に染み込ませて火をつけるとはちみつは燃え、水分が多い人工物は火がつかないと言います。吸水紙に落としてみると純粋なはちみつは染み込まず、白い布に染み込ませて洗うと、はちみつはシミにならないのに対し、カラメルなどを加えた物ではシミが残るという見分け方もあります。
俗説で低温になった際、純粋なはちみつは結晶化するが、純粋ではないはちみつは結晶化しないというものもありますが、一概には言えず、花粉などが多く含まれたはちみつほど結晶化しやすいという傾向があります。そうした見分け方もはちみつの純粋さを見分ける事には役立つかもしれませんが、国産かどうかについては役には立たないというのが実状です。信用できる店から買いましょうというアピールを多く見かけますが、30%に対する5%の話を聞いた後では、何をもって信用して良いのか迷ってしまうものがあります。
第783回 通風予防飲料?
2007年06月08日
病気による苦痛の大きさという点で、よく名前が出されるものに「通風」があります。文字通り風が吹いても痛いとされる通風は、突然足の親指の付け根に激痛が走り、赤く腫れ上がってくるという特徴的な症状を持ち、風に限らずわずかな音などの刺激でも痛みに響くという激しい苦痛を伴います。
激しい痛みは永続的なものではなく、長くても2週間ほどで収まってしまいますが、痛みを感じなくなったからといって通風が治った訳ではなく、治療を行ってなかったり、生活習慣や食習慣など何も改善していない場合、痛みがない間でも進行している事が考えられます。
日本での通風の歴史は比較的浅く、初めて患者の報告が行われたのは約100年ほど前の事となっていますが、それ以降、特に高度成長期以後の食生活の変化が進むにつれて急速に増え続け、現在では50万人以上と言われ、かつて上流階級の贅沢病と言われていた通風が一般的な生活習慣病なってきています。
そんな通風の予防にコーヒーが有効に作用する可能性を示す研究結果が報告されていました。通風の病歴がない40〜75歳の男性約4万6千人を対象に12年間の追跡調査を行ったところ、コーヒーをまったく飲まない人に比べ、一日6杯以上飲む人では通風の発生率が59%低く、4杯以上でも40%低い事が判ったそうです。
カフェイン抜きのコーヒーでは予防効果と見られるものは若干低めになったそうですが、代わりに紅茶を摂取した場合や他の飲料からのカフェイン摂取の場合でも罹患率への影響が見られなかった事から、カフェインではなくコーヒーのみに含まれる成分が罹患率を下げる事に影響していると考えられます。
コーヒーに含まれるカフェイン以外の成分で、通風の罹患率を下げている可能性があるものとして「クロロゲン酸」が有力視されています。クロロゲン酸は強力な抗酸化作用がある事で知られていますが、細かな効能についてはこれからという部分を多く残したままで、徐々にさまざまな健康効果が言われてきてはいますが、コーヒーを一日6杯...。少々辛いものがあるかもしれません。
第782回 風が吹けば...。
2007年06月07日
昔の諺に「風が吹けば桶屋が儲かる」というものがあります。一つの物事がさまざまな影響を及ぼし、意外な結果を生むという内容なのですが、複雑な物事が絡み合って出来上がっている自然界でも一つの物事が意外な結果に繋がっていくという事は珍しい事ではありません。それが良い影響なら良いのですが、中には危機的な状況に繋がりかねない事もあり、厳重な注意が必要な場合もあります。
ウィルスや細菌に対抗して一つの薬だけを使い続けていると、やがてウィルスや細菌に薬に対する耐性ができ、薬が効かなくなってきます。そうした薬剤耐性の発生は人や動物の体内に限った事ではなく、自然界という環境中においても起こりうる事です。
先日、英国の研究チームによって新型インフルエンザが大流行した場合、抗ウィルス薬としてタミフルが大量に使用される事によって、尿中に排出されたタミフルの成分が河川の水を介して野鳥の体内へと入り、タミフルが効かない耐性を持ったウィルスが生じる可能性がある事を示す研究結果を公表していました。
タミフルの成分は人の体内で活性化し、ウィルスの増殖力を抑える働きをもっています。体内に入ったタミフルはその大半が尿などによって体外へ排出され、比較的化学変化もしにくい事から環境中でも安定的に残る事から、微生物の体内から小動物へといった食物連鎖の中での生体濃縮や、単純に飲み水などによって体内へと入り込む可能性が考えられます。
それが鳥の体内でインフルエンザウィルスと出会い、タミフルへの薬剤耐性を生むきっかけとなれば、新型インフルエンザへの有効な手立ては最初から失われるという事も考えられてしまいます。研究では新型インフルエンザが流行して、タミフルが大量に使用される事を想定していますが、現状、日本ではタミフルが研究が行われた英国の何倍も使用されています。研究結果によって懸念されていた事態が既に進行中でない事を祈ってしまいます。
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