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第819回 毒から新染料
2007年07月31日
医薬品の分野では、意外な物が有効な素材となる事があり、それを見つけた研究者の発想自体を不思議に思えてしまう事があります。以前、カブトガニの血液からAIDS(後天性免疫不全症候群)の有効な治療薬が作られるという話を聞かされた際は、カブトガニと言う存在も含めて、非常に奇異な感じがしてしまいました。
先日、サソリの毒である「クロロトキシン」を染料として使うという、新たな治療法に関するレポートが出されていました。染料と言っても衣服や繊維を染めるのではなく、ガン細胞を特異的に染め、ガン細胞を切除するための精度を向上させるというものです。
この染料を用いる事でガン細胞の正確な分布が確認でき、周囲の正常な細胞を傷付けずに摘出する事ができるようになります。悪性のガンの場合、80%近くが摘出した場所から再発している事を考えると、摘出箇所を大きめにとるという身体への負担以上のメリットが考えられます。
また、これまでのMRI(磁気共鳴画像診断)を用いた診断方法では、ガン細胞が100万個以上存在していなければ腫瘍の識別が困難だったものが、今回の染料を用いれば200個ほどでも確認できると言います。
サソリの毒というと致死性の高い猛毒という感じがしますが、実は蜂の毒程度とされ、急激なアレルギー症状であるアナフラキシーショックを起こさなければ死に至る事はほとんどないと言います。今後の有効活用に期待したいものです。
第818回 離乳異説
2007年07月30日
先日、何らかのアレルギーを持つ子供の比率の高さに関する報道が行われていました。子供の頃、食物アレルギーによって給食に何らかの制限を持っていたり、喘息によって体育に参加できない友達というのは、比較的稀な存在だったように思えます。
近年、急激に何らかのアレルギー症状を持つ子供の比率が増えた背景については、幾つもの仮説が出されていますが、その一つとして非常に興味深い離乳食に関する仮説があります。
離乳食は生後5ヶ月から半年ではじまり、12ヶ月から15ヶ月で完了するという一定のモデルがあります。その間に食事内容、特に食品の硬さや形状などを徐々に大人と同じ通常の食事に近い物にして、母乳から一般食への切り替えが行われます。
子供の腸は生後一年という時間をかけて完成します。離乳食を与え始め離乳プログラムが完了する頃、やっと通常の食事に対応できる状態になり、離乳プログラム中は未成熟な消化器官で大人と同じ食事内容に対応している事になります。その未成熟な消化器官で一般食に触れる期間にアレルギーの原因となる抗体が作られる可能性があると言います。
大人の腸は腸壁の目が細かく、消化酵素によってアミノ酸やポリペプチドといった小さな物質にまで分解されていないとタンパク質を吸収する事がありません。しかし、未成熟な腸では目が粗く、摂り込んだタンパク質が充分分解されていなくても吸収して血液中へ送り込んでしまいます。
そうして血液中に入り込んだタンパク質は、体内の免疫システムによって異種タンパク質として自動的に抗体を作り出す対象と判断され、アレルギーの下地となっているというのです。
既に広く実施されている離乳食という慣習に関するものなので、にわかに信じて良いものかという疑念もない訳ではないのですが、内容の整合性、現在行われている離乳プログラムを作成したスポック博士以前に行われていた子育てなどを考えると納得がいくものがあります。
授乳の期間が増える事で母親としては大変にはなるのですが、接する機会が増える事で後の人格形成にも好影響がある事が言われています。もう一度、効率を配して原点を見直す必要があるのかもしれません。
第817回 冷却無効
2007年07月27日
激しい運動などによって体内には乳酸が疲労物質として蓄積されます。スポーツ選手が試合の後、急速に筋肉を冷すのは、冷す事によって血管が収縮し、乳酸をなどの疲労物質や老廃物を含んだ血液が一気に押し流され、代わりに酸素を豊富に含んだ血液が供給され、筋肉の疲労を速やかに回復させると考えられています。
筋肉疲労に対し冷たい貼り薬が使われるのは、さまざまな薬剤の効果もありますが、冷たい刺激によって血管が収縮し、冷えた貼り付け部分の温度を上げるために血管が拡張され、血流が盛んになるという理屈によっても成り立っています。
先日、オーストラリアで行われたボランティア40人を使った実験では、運動後に筋肉を冷す冷水浴の効果に疑問を挟むものとなっています。冷水浴を行った人は、なまぬるいお湯に入った人よりも24時間後に筋肉痛を訴える人が多かったと言います。
乳酸を分解するには物理的な刺激が必要とされます。外側から加えられる事と言えば熱や圧力くらいで、温泉で温めたりマッサージをするというのはそれにあたり、冷水浴では血流の促進以外乳酸の分解にはあまり影響していなかった事が考えられます。熱を持った筋肉を冷ますという事で、良い感じはするのですが翌日の筋肉痛を増大させる可能性があると言うのでは、避けた方が良い事は確実なようです。
第816回 ダイエット事情
2007年07月26日
ここのところ「入隊しました」「キャンプインしました」という言葉を回りからよく聞かされます。某ダイエットプログラムを始めたという事らしく、意外な人まで始めている事から普及率の高さに驚かされるものがあります。
プログラム自体はDVDの映像に従って運動を行い、1週間でダイエットを実行するという典型的な短期集中型のエクササイズになっているそうですが、普段運動から遠ざかっている人には、結構過酷な内容であると聞かされます。
DVDの映像には自己啓発的な部分もあり、適度な達成感を毎回味わいながら実行する事ができ、正しく内容が実行が行われると有効に有酸素運動が行われ、エクササイズ効果が期待できる事になります。
プログラムの実施は1週間で終了する事になっていますが実施した事によって、一定の筋力の増加も期待できる事から、基礎代謝の向上による継続性もある程度は考えられるのではと思われます。
それに対し、最近、宗教系のダイエットプログラムが人気を集めてきています。厳格な食事制限を伴うもので、食事をするタイミングと内容が決められ、加熱調理に否定な立場を採っているところにも特徴があります。
食事毎に大麦若葉の粉末が出てくる事、ハチミツ以外の動物由来の食材を使用しない事、生の水分が多い野菜か果物、ジュースなどが食事の中心となる事などに特徴があります。
信仰と重なる部分もある事から米国では急速に広まっているそうですが、栄養上の偏りが心配されるのであまり長い期間はお薦めできないのではと考えています。信仰に基いて生涯その内容の食事で通す事も心配ですが、一時的な流行ではじめて、やがて食生活が元に戻った際のリバウンドが心配でもあります。隊長の下でエクササイズしてた方が良いのかもしれません。
第815回 疑問考察
2007年07月25日
先日、中国のダンボール入り肉まん報道は、世界中に大きな衝撃を与えました。その後、それがやらせであった事が伝えられ、番組の制作サイドが処罰されたそうですが、中国国内ですら本当にやらせであったのかという疑問の声が根強いと言います。
実際、番組を円滑に制作するために人を雇い、現場を再現したという事は明白でも、元々事実として存在していた事を再現したのか、荒唐無稽な事を創作していたのかという点については、はっきりと言及されていない状態で、事態の沈静化を意図したという見方が残されてしまいます。
風邪薬へのジエチレングリコール、ペットフードへのメラミン混入以降、中国産製品への不安が広がり、既に米国では中国産原料を使用していない「チャイナフリー」という表示を行う製品の登場や、大統領令による輸入食品の安全性を検討する作業部会の設立が行われています。
そうした中国から輸出される食品への不信感を払拭するため、中国の品質検査総局は日本の厚生労働省が公表している2006年度の輸入食品監視統計を紹介し、安全性の高さをアピールしています。
同資料によると日本へ輸入された食品等の届出総数は185万9281件、届出重量は3409万5810トンとされ、そのうちの約10%にあたる19万3589件が抜き取り検査の対象となり、1530件が不合格とされています。抜き取り検査の合格率は99.21%となります。
国別の届出件数としては中国が57万8524件と最多で、2位の米国19万6858件を倍以上も引き離しています。抜き取り検査の対象となる比率としては中国が15.7%と最も高くなっています。
世界的に不安感が高まる中、この数字をどう捉えるべきなのか、複雑なものを感じてしまいます。
第814回 血液指標
2007年07月24日
最近、「メタボ」という言葉に出会う頻度が増してきました。メタボリックシンドロームを意識する人が増えてきた事と思うのですが、複合的に判断されるメタボリックシンドロームの判断指標中で、特に胴回りが意識されている感じがします。
胴回りの増大は皮下脂肪の増加に限らず、内臓脂肪の増加も関係しています。近年、内臓脂肪の増加が招く危険性については広く認識されてきていますが、手軽に状態を判断する事は体内である事からも簡単ではなく、個人レベルでの正確な把握、対策などは難しい事と思います。
そんな内臓脂肪に関して、血液中に含まれるレチノールと結合したタンパク質の濃度と、内臓脂肪の増大との間に相関がある事が解明され、血液検査によって内臓脂肪の状態を判断できる可能性が出てきています。
196人から採取された内臓脂肪の生体標本について検討が行われた際、RBP4と呼ばれるレチノール結合タンパクが皮下脂肪よりも内臓脂肪によって多く生成される事が判明し、肥満の人は標準体重の人に比べてRBP4の血中濃度が2〜3倍になる事が判りました。
更に血液中のRBP4の量が内臓脂肪の量を正確に反映していた事から、RBP4の血中濃度が内臓脂肪の増減や、内臓脂肪の増加によってリスクが増加する疾患の発生リスクを判断する指標となりえる可能性があるとされています。
RBP4は肥満の原因ではないとされていますが、インシュリンへの感受性を低下させる可能性がある事も示唆され、RBP4の血中濃度が高い事は、あまり健康上よくない事は確かなようです。
現在、RBP4の血中濃度を下げる薬剤の研究が進行中という事ですが、運動によっても下げる効果がある事は実証されているそうなので、新たな健康診断時の血液検査に加わりそうな項目にも、これまで通りの健康法が大切と考えられます。
第813回 手術旅行
2007年07月23日
かつて医療、特に手術などを行う事を目的に国外へ出るという事は、臓器移植や性転換などの未認可の分野を医療制度や法制度が違う国外に求めて、というイメージが強くありました。しかし、米国では全く別な理由から国外で施療を受ける医療ツアーの人気が高まってきています。
米国では、保険料が高額である事から保険に未加入の人が増えた事や、医療費自体も高騰を続けている事から、国外で高水準で低料金な医療を求める動きが増えてきています。
2005年の統計では、人口の約15%にあたる4500万人が保険に未加入とされ、2006年に医療目的で海外旅行に出た人は、少なく見積もっても15万人以上と言われています。
今年度は更に増えて2005年の統計時より倍増する可能性が高く、すでに専門の旅行代理店と提携したツアー会社も設立され、全米に続々と増え続け、一部の保険会社もこの取り組みに加わってきているそうです。
実際、心臓のバイパス手術を行う場合、米国内では13万ドル(1560万円)の費用を要するのに対し、インドで行った場合は1万ドル(120万円)、タイでは1万1000ドル(132万円)程度で済むと言われます。
タイ在住の方から、タイの医療は非常に進んでいると聞かされた事がありますが、医療発展の背景にはそうした国外からの医療ツアーの取り込みがあったものと、今更ながらに納得させられるものがあります。
医療ツアーとはいえ海外旅行という事で、同時にレジャーもと考える人も多いという事ですが、専門家の間では施療直後のレジャー行為に懸念を持ち、医療ツアーのリスクとして考える声も上げられています。
米国の医療制度を手本に改革の声が上げられている日本。先にあるものは同じ医療ツアーなのかと考えると、少々悲観的な気分になってしまいます。
第812回 生食危険
2007年07月20日
梅雨が明けて暑くなってくると、スタミナという言葉を頻繁に聞かされるようになります。夏場のスタミナ食としては、「土用の丑の日」のウナギはその代表の一つではないでしょうか。実際、土用の丑の日のウナギの売上は、年間を通しても最も高いものとなっています。
土用の丑の日にウナギを食べるという習慣は、江戸時代に平賀源内によって広められたという事は、すでに広く知られた事となっています。夏場に売上が下がるウナギ屋に頼まれての事と言われ、今日もそれが習慣のように残されている事からは、仕掛け人としての有能さを伺う事ができます。
ウナギを栄養面から見てみると、良質なタンパク源でありビタミンやミネラル類を豊富に含み、体表のヌルヌル成分ですらムコタンパクとして優れた働きを持つなど栄養価に富んでいます。夏バテによって低下した食欲の中での愛用補給に優れた食材といえます。
そんなウナギは万葉集にも出てくるほど古くから食されていたとされ、なじみの深い食材となっています。調理法法としては、古くは焼いて食べていた事が想像できますが、今日では蒲焼、白焼きや酢の物、うまきやうざくなどが知られています。
古くから親しまれ、それなりの調理バリエーションを持つウナギですが、不思議とウナギ尽くしのメニューの中にも「刺身」の存在を見る事はありません。大分県の一部では刺身にして食べる地域もあるそうですが、一般的にはウナギの刺身を見かける事はないと言えるでしょう。
ウナギを刺身で食べる際、必要となる事は身をよく洗う事です。血液が身に残らないようにして刺身にします。これはウナギの血液にイクシオトキシンという毒物が含まれているためで、イクシオトキシンが調理の際などに目に入ると結膜炎を起こし、傷口に入ると炎症、誤って食べてしまうと嘔吐などの食中毒症状を起こすと言います。
また多量に摂取した場合は死に至る事もあり、それだけのリスクを犯して食べるには、それほどウナギの刺身は美味しくないとも言います。イクシオトキシンは熱に弱く、ウナギを焼く事でほとんど無害化してしまう事ができます。しかも香ばしい風味も加わりますので、一挙両得とも言え、今日の調理法に繋がっているようです。本当の旬は冬。夏に食べるのは、栄養価を求めてという事でしょうか。
第811回 標的発見
2007年07月19日
以前、健康食品の製造受託メーカーの工場の方と話をしていた際、通常の食品製造とは異なり濃縮された成分素材を使う事もあって、アレルギーによってシフトを組む事が非常に難しいという話が出て驚かされた事があります。
製造を行う製品の内容成分を把握し、誰がその成分にアレルギーを持っていて製造に参加できないかを常に念頭に置いておかなければならず、成分が濃縮されたていたり純粋な状態にされている事から、新たなアレルギーも生じやすく、苦労するそうです。
現在、食品のアレルギーには直接的な治療法がなく、原因となる成分を特定し、それを避ける事しかアレルギー症状を避ける方法はないとされています。原因となる食品が限られた僅かな物であればそれほど憂慮する事もありませんが、食品数が多かったりどこででも出される極めて一般的な食材であったりすると対処が大変になってしまいます。
先日、生体がアレルギー反応を生じる際、インターロイキン−12(IL−12)と呼ばれる分子が欠如している事が報告されていました。IL−12は白血球の樹状細胞から分泌され、外来物質に対する免疫反応を制御する働きを持っていると考えられています。
食品アレルギーを持つマウスと持たないマウスの消化管や脾臓内の樹状細胞を比較したところ、アレルギーを持つマウスの樹状細胞からはIL−12が分泌されていない事が判ってきました。
この結果によって特定の食物が、人によっては全く無害であるのに、別の人には生命の危機にまで発展するほどのアレルギーを誘発してしまうのかが説明でき、将来的な治療法確立への標的が確認された事になります。アレルゲンから逃れるばかりではなく、積極的に立ち向かう治療法の確立を期待したいと思います。
第810回 土用危機
2007年07月18日
熱帯魚を飼育していると、季節の変わり目や水質が悪化した際に魚の体表に白い点が発生する事があります。白点病と呼ばれる症状で、非常に感染力の強い繊毛虫の一種が魚の体表に付着して、コロニーを形成し、魚の体液をエサとして増殖するというやっかいなものです。
繊毛虫は魚の体液を奪うために魚の体表に穴を開けるので、感染した魚は痒がって水草や砂利に体をこすり付けるという特徴的な動きをします。症状に気付くのが早ければ、感染した魚だけを隔離して治療を行いますが、感染力が強力なので一晩のうちに水槽全体に蔓延する事もあります。
そんな白点病の治療に用いられるのが「マラカイトグリーン」で、マラカイトグリーン単体よりもマラカイトグリーンを含む薬剤としてペットショップで比較的簡単に入手する事ができます。
天然石のマラカイト(孔雀石)に色合いが似ている事からその名が付けられたマラカイトグリーンは、染色力が強い安価な染料としても使われる事があり、主にシュウ酸遠や塩酸塩として流通しています。
還元作用が強い事から、活性酸素を発生して抗菌力を発揮するとされ、白点病の治療に限らずブドウ球菌などにも有効とされます。明確な毒性の評価はされていませんが、核酸塩基と親和性を示す事から発ガン性があると考えられ、そのために2005年8月から食用の養殖魚への使用が禁止されています。
最近、中国産ウナギからこのマラカイトグリーンが検出され、回収が行われていました。抗菌剤として飼育水に混ぜたものがウナギに残留していた事が考えられ、微量である事から継続して摂取しない限り影響はないとされますが、日本よりも3年も早い2002年に使用が禁止されている中国産ウナギからの検出という事で、食の安全に対する倫理観が問われる事と思います。
土用の丑の日へ向け安価な中国産ウナギが店頭を賑わす時期ではありますが、今年は供給量や価格面、商品イメージなど例年とは違った動きが見られるのではと注目しています。
第809回 甘味毒性発見
2007年07月17日
犬は甘い物を好む傾向があります。そのため、犬用の食べ物には甘い味付けがしてある事が多く、甘い物を喜ぶという事で誤ってチョコレートを与えてしまうと、チョコレートに含まれるテオブロミンによって中毒を起こしてしまう危機性がある事は広く知られています。
また、ネギに含まれる硫化物によっても中毒を起こす事も知られ、甘辛い味付けで素材の存在感が薄れるスキヤキは犬がネギを気付かずに食べてしまう危険なメニューとされています。
近年、代替甘味料として以上に虫歯を予防するという機能性面が重視され、キシリトールの利用が広がってきています。飼い主と同じメニューを食べる事も多くなった犬達に人と同じような生活習慣病が見られるようになり、同じく虫歯を心配する声を受けてかキシリトールを配合した製品も増えてきています。
しかし、このキシリトールが犬には有害である可能性が急に浮上してきています。キシリトールの有害性について、昨年8月には動物の変死を監視する米国動物虐待防止協会が報告し、翌9月には米国獣医学協会が指摘しています。
報告された症状としては、犬に体重10kgあたり1gのキシリトールを与えると、30分以内に急激に血糖値が下がり、嘔吐や歩行困難、肝不全の可能性が確認され、早急にブドウ糖の点滴を行わないと生命の危険に発展する可能性も示唆されています。
犬にキシリトールを与えるとインシュリンが多量に分泌され、血糖値が一気に下がってしまう事で低血糖症状を起こす事が原因と考えられ、日本での症例報告はまだ1件ですが、米国では2005年以降、100件を軽く超えるペースで急増しています。
犬は唾液のpHの関係でほとんど虫歯になる事がありません。積極的に虫歯予防をする必要がない事を考えると、キシリトールを使う理由もなくなってしまいます。何もかもを人と同じにするという発送自体、やはり無理があるのかもしれません。充分な注意が必要だと思います。
第808回 見落とし分発見
2007年07月13日
地球温暖化が問題視される中、温室効果ガスの排出抑制の努力が進められています。温室効果ガスと言うと二酸化炭素、メタンガス、フロンガスが三大ガスとして知られ、中でもフロンガスはオゾン層の破壊の原因とされる事からも対策が進み、二酸化炭素も排出抑制の動きが近年強まってきています。
その三大ガスの一つであり、二酸化炭素の21倍もの温室効果を持つとされるメタンガスは、二酸化炭素ほどの継続性を持たない事や、排出の実態が完全に明らかにされていなかった事もあり、あまり論議になっていなかった感じがします。
メタンガスと言うと卵が腐ったような臭いを連想してしまいますが、本来は無色無臭の気体で、メタンガスが生成される際に一緒にできてしまう硫化硫黄のせいで変な臭いと思われてしまいます。嫌気性細菌が酸素のない特殊な環境下で生成するとされ、地中や水中、堆肥などの空気が遮断された中で微生物などによって有機物が分解される過程で発生するとされてきました。
以前、衛星を使ったメタンガスの拡散状況を探る研究が行われた際、熱帯雨林から上昇してくるかなりの量のメタンガスが観測され、謎の排出量とされていました。熱帯雨林地下の微生物が生成しているとは考えにくい量だったからです。
最近の研究で植物もメタンガスを排出している事が示唆されてきつつあります。これまで植物は酸素がない特殊な環境下に置かれた場合のみ、メタンガスを排出する可能性がある事が知られていましたが、通常の環境下でも発生源となりうるという研究結果が出されています。
その仮説に基くと熱帯雨林の上空に存在するメタンガスの上昇気流の説明が可能となり、地球上の10〜30%のメタンガスは植物由来という試算が成り立ちます。二酸化炭素の吸収源として植物を増やす試みが行われていますが、メタンガスの排出次第では温暖化の加速の方へ作用する事も考えられ、温暖化という問題への取り組みの難しさを考えさせられてしまいます。
第807回 危険素材?
2007年07月12日
子供の頃、面白いからやってみろと言われて、ピンポン玉に火を着けてみた事があります。ライターの火を近付け、火を着けてみると、一気に全体に火が回って燃えてしまい、驚かされた事を思い出します。
今から思えばピンポン玉は燃えやすいセルロイドで作られているので、当然と言えば当然なのですが、当時は一瞬にして炎に包まれる事自体想像できない事でした。
ちょっとレトロな響きを感じてしますセルロイドは、木や紙などに含まれるニトロセルロースを樟脳で固めたもので、天然の樹脂と言う事ができます。透明性やしなやかさ、吸湿性に優れ、プラスティックにはない艶や柄、肌触りから今でもメガネのフレーム、玩具、筆記具などに使われています。
ピンポン玉もいまだにセルロイドで作られていて、これだけプラスティックの技術が進んだ今でもセルロイドには敵わないと言われる一つとなっています。そんなセルロイドの最大の欠点は燃えやすさと言われ、1954年に米国が燃えやすく危険としてセルロイド製品の輸入を禁止した事さえあります。
かつて映画のフィルムもセルロイドで作られていたため、何らかの理由でコマ送りが滞ると高温のランプの熱が溜まって容易に発火する事もありました。映写室にはさまざまなフィルムが山積みされていた事から、一旦火の手が上がると大変な事になるので、当時は映写技師に危険物取扱人の免許も必要とされてたほどです。
その後、セルロイドは燃えやすい硝酸セルロイドから燃えにくい酢酸セルロイドへと変化したのですが、安価で大量生産しやすいポリエステルやプラスティックに転換されてしまっています。
セルロイドの生産には良質な樟脳が不可欠です。日本は樟脳が採れる楠に恵まれ、盛んにセルロイド作りが行われる原動力となっていました。自然素材から作られるセルロイドは生分解性が高く、ゴミとして捨てられてもやがては土へと還っていきます。
最近、テレビのCMで大量のキューピー人形を見かけるのですが、以前はキューピー人形もセルロイドで作られていました。プラスティックのゴミが問題となる中、セルロイドの復権を願いたいとキューピーを見る度に思ってしまいます。
第806回 クリーンエネルギーへの一歩
2007年07月11日
最近、ガソリン価格の高騰を受け、バイオ燃料への感心が高まった事から、さまざまな農産物への影響が出てきています。これまで作ってきた作物から、エタノールの原料となるトウモロコシなどへの転作が行われた事による生産量の不足、身近なところではオレンジジュースの値上げなどが顕著な例でしょうか。
そうした中、世界的に新たなクリーンエネルギーへの転換が求められていますが、有力視されている燃料電池をはじめ、どことなく遠い未来の技術のような雰囲気を感じるという事は否めないものがあります。
現状、足かせとなっているあらゆる条件を無視して、何が次のエネルギーとして好ましいかという質問を受けた場合、私としては「水素」という回答が一番ではないかと考えています。
水素は燃焼しても水しか出さないので、極めてクリーンな上、現在、ある程度完成の域に達しているエンジンの技術を応用する事が可能と考えられます。渋滞が酷い都市部では湿度が上がってしまったり、乱暴な運転をする車が走り去る際に、マフラーから排出する水をかけられたという事も想像されますが、現状の排ガス問題とは雲泥の差があります。
また、水素は燃料電池で発電に用いる事も可能で、長い送電線を使って途中で電力ロスを起こしながら発電所から電気を送ってもらわなくても、各家庭で直に発電して使うという効率の良い電力利用をする事ができるようになります。
そうした水素利用に対する最大の問題はコスト面だと言われます。基本的に水素は水を電気分解する事で得られますが、得られた水素によって発生できるエネルギーよりも水素を得るためのエネルギーの方が大きいというのが実情となっています。
先日、微生物が水素を作り出す際に働く「ヒドロゲナーゼ」という酵素ができる過程で、補助役として働く3種類のタンパク質の立体構造が解析されていました。今後、研究が進めばより有効にヒドロゲナーゼを利用する事ができ、水素エネルギーの開発に役立つ可能性が考えられます。
水素を作り出すという事に関して、現在さまざまな手法が研究され、化石燃料や金属触媒などを用いる方法よりもはるかに微生物を使った方が低コストになると見られています。今回の研究がさらに発展を遂げ、微生物がクリーンエネルギーを作り出す担い手となれば、よりエコな感じがしてしまいます。水素スタンドに車を止め、「発酵水素、一番絞りをお願いします」という日も来るのでしょうか...。
第805回 ブレーキ解除
2007年07月10日
子供の頃、私達が大人になる頃には、ガンは盲腸と同じような感覚で治療できる病気になっているだろうと聞かされていました。しかし、大人になった今、ガンは死亡原因の一位となり、いまだに怖い病気以外の何物でもありません。
ガン細胞は日常的に体内で無数に発生していると言われます。それでもガンを発症せずに済んでいるのは、体内の免疫によって逐一排除されているからです。そうした免疫システムが何らかの理由でガン細胞を見落としたり、ガン細胞を排除できなかった場合、増殖を繰り返すガン細胞は急激に数を増やしていきます。
そうして出来上がる腫瘍に対し、放射線や化学薬品、切除といった治療法が採られていますが、本来、ガン細胞を排除する役目であった免疫によって、ガン細胞の排除を促すという事もガン治療の一環として行われています。
免疫療法と呼ばれる体内の免疫力を高める治療法に関し、先日、新たなアプローチになるのではと思える研究結果が発表されていました。さまざまな免疫反応を抑制する働きを持つ「制御性T細胞」に特有のタンパク質を発見したとの事で、特有のタンパク質を使って制御性T細胞の目印とする事ができます。
また、制御性T細胞を減らす抗体も特定された事から、抗体を使って制御性T細胞を減らし、ガンを攻撃する免疫力を高める事ができるのではないかと考えられ、新たなガン治療法に繋がるとされています。
現在はまだ実験段階との事ですが、抗体によって制御性T細胞の数を正常な状態の4分の1にまで減らす事に成功し、ガンへの免疫が高まったとされ、生存率の上昇も確認されています。
制御性T細胞は、本来アレルギーなどの過剰な免疫反応を抑制する働きを持っていますが、ガンなどに対抗する有益な免疫反応も抑えていた事が考えられ、今後の研究によっては、これまで免疫力の発揮できなかった本当の力を発揮できるのではないかと考えられます。アレルギーの抑制が絡むので、扱いが難しくなる事は予想されますが、今後の発展、実用化を待ちたいと思います。
第804回 誘導要因(2)
2007年07月09日
夏の不快な虫と蚊の事を思っていたのですが、最近は冬場でも見かける事があります。実際、都市空間では冬場でも気温がそれほど下がらない事や、産卵、孵化に適した水場が多い事も手伝って、年中棲息している事が確認されています。
よく「お酒を飲むと蚊に刺されやすくなる」と言いますが、実は根拠の無い事ではありません。アルコールが肝臓で分解される際、アルコールはアセトアルデヒド、酢酸、水と二酸化炭素の順に分解されていきます。そのため排出する二酸化炭素の量が増えてしまい、蚊に反応されやすくなります。更にお酒を飲んだ事で心拍数が上がり、体温も上がる事から、より蚊が好む状態になっていると言えます。
同じように蚊に好まれる人について、「血液型がO型の人」と言われます。これも実際に根拠がある事で、O型の人の赤血球の表面を覆っている物質が、花の蜜に似ている事から日頃から食べ慣れた花の蜜と勘違いしてO型の血液型の人を好むと言われています。
また、電気などの灯りに集まるイメージを持たれがちですが、実際には暗い色を好み、白い服を着た人より黒い服を着た人に集まる習性があります。実験データでは黒い服に集まった数は、白い服の10倍というのもあり、色の及ぼす影響の大きさも伺えます。
話が最初に戻りますが、車は大量の二酸化炭素を発生させ、エンジンが脈動しながら熱を持っています。それで色が黒であれば、蚊が好む条件を全て備えた物という事ができます。蚊に刺されたくない人は、その反対の状況を作り出せば良いのかもしれません。
日本にいる蚊は約100種類と言われ、その中で人を刺す蚊は白と黒の筋模様の「ヒトスジシマカ」と赤っぽい色の「アカイエカ」の2種と言われます。その中でメス、しかも産卵期を迎えたメスだけが人を刺すのですが、その割には数が多すぎる気がするのは、田舎に暮らす私だけでしょうか。
第803回 誘導要因(1)
2007年07月06日
先日、藪に面した空き地に車を停めたところ、大量の蚊が寄ってきて驚かされてしまいました。考えてみれば車は蚊が好むものをたくさん備えていて、呼び寄せていると言った方が適切なような感じさえしてしまいます。
蚊は本来、花の蜜や果汁、樹液などをエサとして生活しているのですが、メスが産卵期を迎えると必要なタンパク質をそれまでのエサでは補えなくなってしまう事から、動物の血液をタンパク源とする事で産卵に備えようとします。
血液は空気に触れると固まるという性質を持っています。蚊が血液をうまく吸入するためには、血液の粘度が低くないといけないため、血液の固まるという性質が邪魔になります。そこで蚊は刺した際に唾液を流し込む事で血液が固まる事を抑え、刺された痛みを和らげています。
唾液を血液に混ぜた事で血液が固まりにくくなるだけでなく、消化吸収も円滑に行えるようになります。しかし、皮膚が唾液によってアレルギーを起こす事からかゆみを生じてしまいます。赤く腫れて痒くなるのはアレルギー反応になります。
蚊は動物を見つけるために、生きている動物が必ず発している二酸化炭素に反応します。独自の感覚器官で二酸化炭素を見つけると、温度や湿気を帯びた乱気流を目指して急降下し、動物の皮膚に取り付いて採血用の管を刺してきます。よく耳元で不快な羽音を聞かされる事がありますが、呼気に含まれる二酸化炭素を目指して来ていると考えると納得がいきます。
第802回 元気調味料
2007年07月05日
疲れたとき、身体はエネルギー効率の良い糖分を求めます。甘い物を少量摂れば多少の疲れは緩和されるのですが、それでもダメな場合は、糖分をエネルギーに変えるビタミンBが不足していたり、疲労物質の蓄積などが考えられます。
そんな際は、更に甘い物を摂り続けても効果は期待できないので、少量の酢を摂る事で楽になる事があります。酢に含まれるクエン酸をはじめとした諸成分が、体内の疲労物質を分解してくれる働きが大きいためで、わざわざ酢を単体で飲用するというより、料理などに加えて上手に活用すると良いと思います。
酢は作り方や材料によっていくつかの種類に分けていく事ができます。最初に大きく分けられるとは、伝統的な製法によって作られる醸造酢と、より効率的に作れるように工夫された合成酢です。
合成酢はトウモロコシなどの原料からアルコールを作り、酢酸菌の膜に繰返し通しながら発酵させて作り出したり、化学合成された氷酢酸を希釈して、甘味料や化学調味料を加えて味を調えたりして作られています。
それに対し醸造酢は、材料を発酵させる事で一旦酒の状態にして、その後酢酸発酵を行って作られています。材料によって更に細かく細分化され、代表的な分け方としては米酢と穀物酢を見かける事が多いと思います。
米酢は1リットルあたり40g以上の米を原料として使う必要があり、それが穀物だと穀物酢となります。穀物酢の分類になりますが、糠を完全に取り去っていない米を180g以上使っていると「米黒酢」と呼ばれ、大麦のみを原料として使い、使用量が180g以上であれば「大麦黒酢」と呼ばれます。
原料に果物が使われると果実酢に分類され、それぞれ搾り汁が300g以上含まれる事でりんごの果汁を使った「りんご酢」、ぶどうの果汁を使った「ぶどう酢」、それ以外の果実を使った「果実酢」などに細分化されています。
酢は作り方、原材料などによって、さまざまな風味や味わいがあるので、複数取り揃えて料理などによって使い分けると、意外と楽しく接する事ができます。少量でも味を引き立ててくれるので、上手に付き合う事ができれば美味しく健康管理ができるお薦めの食材と言えます。
第801回 強さ祖先譲り
2007年07月04日
かつて人の胃には一切の微生物は存在しないと考えられていました。強力な胃酸の働きによって、微生物自体が消化されてしまうと思われていたからです。しかし、そんな胃の中にも微生物が存在する事が確認され、最近では広くその存在が知られる事となっています。
胃の中に存在する微生物、「ピロリ菌」は、ウレアーゼという酵素を使って胃の中にある尿素をアンモニアに変化させ、アンモニアの強力なアルカリ性で胃酸の酸性を中和する事で胃の中という特殊な環境に適応しています。胃の中以外にはほとんど存在せず、謎が多い細菌とも言われています。
そんなピロリ菌の祖先と見られる細菌が意外なところから見つかっています。沖縄近海の水深1000メートル付近の熱水噴出口で2種類の微生物を採取、ゲノム(全遺伝情報)解析をかけたところ、「イプシロンプロテオバクテリア」と呼ばれる細菌の仲間で、ピロリ菌に近い近縁種である事が判りました。
熱水に含まれる硫黄などを栄養素として棲息していると見られるこの細菌は、貝類など他の生物と共生する能力が高く、病原性はないとされています。より詳しく塩基配列の分析を行ったところ、この細菌がピロリ菌の祖先である可能性が高い事が突き止められています。
深海の熱水噴出口付近は、極めて過酷で特殊な環境下にある事で知られています。その特殊性から他では見られない特徴を備えた生物が発見される事があるのですが、ピロリ菌がそんな特殊な環境下で生まれた事は、ピロリ菌の特殊性を思うとどことなく納得がいくものがあります。しかし、深海から胃の中へ、その長旅については想像を絶するものがあるように思えてしまいます。
第800回 八百万
2007年07月03日
食と健康をキーワードに話をさせていただくこのコラムも、今回で800回を迎える事となりました。毎回、きりの良い数字の際は、その数字にまつわる話題にしてきましたので、今回も800を中心に話を進めていきたいと思います。
食に関する事で800というと、まず連想してしまうのが「八百屋」ではないでしょうか。食材を販売する店で、たくさんの品目を扱っているイメージですが、どちらかといえば野菜関連が品揃えの中心となっている小売店という感じでしょうか。
元々八百屋は、青物野菜を販売していた事から青物屋と呼ばれていたものが、後に略されて青屋(あおや)となり、八百屋となったと言います。青が八百に変わった背景には、藍染業者と間違われないようにしたとする説や、取り扱う商品が多い事から、漠然と数が多い事を示す八百が当てはめられたという説があります。
その八百屋から派生した言葉に「八百長」があります。八百長は事前に勝敗を示し合わせておいて勝負に臨む事を指しますが、明治時代に八百屋を営んでいた長兵衛に由来するとされています。八百屋の主、長兵衛は「八百長」の愛称で親しまれ、碁を得意としていました。
長兵衛の碁仲間に相撲の年寄「伊勢海五太夫」がいましたが、実力で勝る長兵衛は、いつもわざと負けを装って勝敗を調整しては伊勢海五太夫の機嫌を取り、相撲部屋へ納品する商品の発注を取り付けていました。後に勝敗を調整していた事が発覚し、相撲界ではわざと負ける事を八百長と呼ぶようになり、やがて事前に示し合わせて勝負する意味も含まれ、相撲界を超えて広く使われるようになっています。
八百がたくさんの数を意味するという事は、八百八町、八百万(やおよろず)などの用例に見る事ができますが、八百がその意味を持つようになった過程については、文献が存在する以前から言葉として成り立っていたらしく謎のままとなっています。由来好きの私としては、幾分すっきりしない展開ではあるのですが、八百万の神に象徴されるようにあらゆる物に魂が宿り、感謝と畏敬の念を忘れないという気持ちは、食に携わる者として忘れてはいけない大切な事と、八百という数字を見ながらあらためて考えてしまいました。
第799回 古典的有効療法
2007年07月02日
糖尿病にとって外傷ができてしまい、それが感染症を起こしてしまう事は、抵抗力が下がっている事に併せて血液中に糖分という細菌の格好の栄養が豊富な状態という事もあって、極めて深刻な事態に発展しかねない事でもあります。
当初、左足にできた1円玉より若干大きめのピンク色の潰瘍だったものが、1年後には左足全体を被う黒く醜い塊に変化し、幾種類もの抗生物質を用いた治療の末に薬剤耐性を持つに至った細菌の温床となっているという事は、高齢の重度糖尿患者にとって稀な例という事ではありません。
一年の間に知りうる限りの治療が施されていますが、どれも効果が無く、左足の切断以外には手の施しようが無い事が考えられます。しかし、患者はそれには同意せず、足を失うくらいなら死んだ方がましだという言葉を繰り返しています。
実際、早急に足を切断しなければ患者は命を落とすだろうと、医師全員の意見は一致しています。担当の医師は仕方なくハチミツに浸したガーゼで傷口を包みました。それから2週間、潰瘍に変化が見られ始め、改善へと向かいます。黒く変色していた患部はピンク色の肉へと変わり、1年後には歩けるまでに回復したと言います。
ハチミツを用いた治療法の歴史は古く、古代シュメールでも行われていたそうで、ユダヤの律法と解説をまとめた「タルムード」にも紹介されています。古代ギリシャではヒポクラテスが絶賛したとも言われています。
1940年代に抗生物質が登場してからは疑わしい民間療法とされ、見向きもされなくなっていましたが、数々の臨床報告書や治療例によって、ハチミツを用いた治療法の有効性は裏付けられてきています。
ハチミツには過酸化水素を作る酵素が蜂によって加えられているので、抗菌作用がある事は確認されてます。しかし、それ以外のさまざまな成分が複雑な働きを発揮する事で、ハチミツの効能ができあがっていると考えられ、未解明の部分を多く残しています。
細菌にハチミツへの耐性を持たせようとした実験もあるそうですが、繰返し実験を行っても細菌は耐性を持てなかったと言います。最近何かと悪いニュースが多かったハチミツですが、本来は健康に役立つものである事は広く理解されています。もう一度見直されるためにも、良いハチミツの流通を願いたいと思います。
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