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第878回 禁煙流用
2007年10月31日
喫煙は習慣や嗜好品の一環のように感じてしまいますが、ニコチンという化学物質への依存症である事は広く知られています。依存症であるために簡単にやめる事が難しく、禁煙の過程ではニコチンへの禁断症状に苦しめられてしまいます。
そうした禁断症状は長い間の習慣としてニコチンに接していたものが、禁煙によって補給が途絶えて突然のニコチン切れになる事から起こります。微量のニコチンを補給する事で、急激なニコチン切れを防ぎ、禁断症状を抑えながら徐々に禁煙を成功させるものに「ニコチンパッチ」があります。
ニコチンパッチは微量のニコチンを含んだ粘着性のあるパッチを皮膚に貼り付けて使用する物で、実際に喫煙を行うよりは遥かに少ないニコチンを皮膚より吸収させてニコチン切れを防いでいます。
ニコチンパッチの使用に関しては、以前から傷みを和らげる作用があるのではという事が言われていました。前立腺切除手術を受けた喫煙を行わない患者90人に、手術前の麻酔を行う前の段階でニコチンパッチ、もしくはニコチンを含まないパッチを貼ってもらい経過を観察したところ、術後24時間で痛みを和らげるために自己投与したモルヒネの量に明らかな違いが出て、ニコチンパッチの痛みを和らげる効果が裏付けられています。
今回の研究では術後の痛みに限定しているため、慢性的な疼痛への効果は確認されておらず、ニコチンの受容体も中枢神経と末梢神経の両方にある事から、ニコチンが痛みを和らげるメカニズムに関しても明確にはされていません。
ニコチンパッチに含まれるニコチン量が微量である事や、短期間の使用であれば依存性への問題がない事を考えると、意外と便利な痛みの緩和剤となるかもしれません。今後は喫煙者や女性など、さまざまな集団で異なる用量での研究を行い、効果が発生するメカニズムについても解明が進むと思います。生涯お世話になる事はない物と思っていましたが、少しだけ使用する可能性が出てきたのかもしれません。
第877回 価格と品質
2007年10月30日
健康のために軽いジョギングという話はよく聞かされます。心肺機能や摂取カロリーの燃焼、全身の筋力の維持、血行促進...etc。さまざまな健康上のメリットが考えられます。デメリットがあるとすれば、道路の整備が進んだ事で、ある程度の軟らかさを供えた土の上を走る事が少なくなり、固いアスファルトの路面が踵や膝、腰などに負担をかけてしまう事でしょうか。
舗装された固い路面を走る事は、体重を前方へ勢いを付けて送り出すというエネルギーを片足ずつ受け続ける事でり、その反動は足腰に大きな衝撃を与える事になります。そのため足腰を守り、安全に走り続けるにはランニングシューズの存在は欠かす事ができなくなっています。ランニングシューズには衝撃がかかる事が予想される部分に、衝撃吸収性に優れた素材が封入されるなどして、固い路面からの衝撃に供えています。
非常に衝撃吸収性に優れたソルボセインやエアークッション、衝撃吸収ゴムなど、それぞれのメーカーの考え方や製品のコンセプト、デザインによって使用される素材や使われ方が異なり、それが価格に反映されたりもしています。
先日、そんなスポーツシューズの価格差が必ずしも性能差とならないという、興味深い研究レポートが発表されていました。何より重要視されるべきは、スポーツシューズの価格ではなく、いかに足に合っているかだと言います。
今回の研究では、男性43人を被験者とし、大手3メーカーの製品をそれぞれ3種類、合計9種類のシューズを使用して行っています。比較的安価な価格帯の物、平均的な価格帯の物、高価な物という3ランクに分けたシューズを着用してもらい、履き心地については被験者が主観的に判断、評価し、各部にセンサーを取り付けてもらう事で、足が路面に当る際に生じる足底圧や各部位にかかる圧力も測定しています。
その結果、履き心地に関する評価では、価格による差が明確ではなく、明らかな違いを見出す事ができず、衝撃吸収性についても一部の製品に優れたものがあっても、明確なパターン分けはできなかったそうです。実数値で見ると安価な製品の方に高価な物よりも足底圧が低いという結果も出てはいましたが、統計学的に違いとして認めるほどのものではないと言います。
今回のレポートを受けて、得られた結果はあくまで価格と履き心地、衝撃吸収性という保護効果にのみ焦点を当てたもので、スポーツシューズの寿命までは念頭に置いていないという指摘も出されています。価格は素材選びに影響し、寿命にも関わっているので、数ヶ月から1年ほど使用した後であれば、まるで違う結果が得られると言われています。
確かにあらゆる条件下の使用に耐える適応性の高さや、いつまでも変わらない使用感を与える寿命、デザインからくる満足度やイメージによって増幅される自己の潜在能力など、その他のさまざまな要因が複雑に絡んでいる事は明らかな感じがします。走らない身としては、デザインが優先してしまうのですが...。
第876回 まんねんろう
2007年10月29日
料理でそれほど多種多様な種類を使うという訳ではないのですが、ハーブやスパイスがたくさん並んでいるのを見ると楽しくなってしまいます。特に気に入っているのがパセリシードにバジル、タイム、クローブといったところで、ローズマリーはどちらかと言えば料理よりも精油を芳香剤として使う方が好きでした。
ローズマリーの学名はロスマリヌスで「海のしずく」という意味からきていると言います。綺麗な名前だと思って調べていたら、和名が「まんねんろう」というあまりイメージに合わないもので驚いた事があります。
花言葉は「記憶、思い出」とされているだけあって、薬用として用いられる際の効能には、記憶力の改善が含まれています。非常に多くのポリフェノール類を含み、その中の一つ「カルノシン酸」に神経細胞の維持に重要な働きを持つ神経成長因子の生成を高める働きがある事で知られています。
カルノシン酸を投与すると、脳梗塞による脳組織の壊死を予防する事も確認されており、アルツハイマー病やパーキンソン病への効果も期待されています。
最近の研究でカルノシン酸が細胞死を抑える遺伝子を活性化する事が解明され、認知症などをはじめとする脳神経細胞の細胞死に関連した疾患の予防や治療に応用できる可能性が示されていました。
認知力が衰え始める前に症状を予防できる可能性に加え、神経回路を再生する力も高いとされていましたので、治療効果も期待できる事から、後々医薬品やサプリメントとして役立つ製品が出てくるのかもしれません。まんねんろうと言うと、どことなく記憶力が悪そうなイメージを持ってしまうのは私だけでしょうか...。
第875回 湿度調整
2007年10月26日
以前、部屋の中にグラスや花瓶に入れたシリカゲルを置いていた事があります。きれいに見える事と部屋の湿度を調整してもらおうと考えたからです。
シリカゲルのシリカとはケイ酸の事で、ケイ素と酸素、水素の化合物となっています。ケイ素はシリコンとも呼ばれ、医療用の素材として整形手術などでも名前を聞く事がありますが、岩石などの元でもあり、地球上ではありふれた元素となっています。
そのケイ酸をゲル化させた物がシリカゲルで、ゲル状なので液体のように流動性があります。それでは使い道に困るので、脱水乾燥させる事で流動性を失わせ、通常見かける固い粒にしています。
シリカゲルの表面は非常に多くの穴が開いていて、表面積を大きなものにしています。表面積だけの比較なら、スプーン1杯のシリカゲルはテニスコートよりも大きな表面積を持っているとさえ言われます。
それだけ大きな表面積を持っている事から吸湿性に優れている事は想像できますが、炭などが多孔質を活かして物理的に吸着能力を発揮する事に対し、シリカゲルは多孔質に合せ、空気中の水分と化学的に結合するという力があり、圧倒的な吸湿力を発揮します。
シリカゲルに化学結合した水は加熱する事で蒸散するので、完全に吸湿力を失ったシリカゲルでもフライパンや電子レンジで加熱してやれば、また吸湿力を発揮してくれます。
注意深くシリカゲルのラベルを見ていると、「A形}「B形」と書かれている事があります。A形のシリカゲルは緻密な構造をしていて表面積が広いため、あまり湿度が高くない条件下でさらに湿度を下げる目的に適しているとされ、クッキーなどの除湿剤に向いています。
B形のシリカゲルは比較的構造が粗い事から、多孔質の中に毛細管現象が起こりやすく、高湿度の下で多量の水分を吸収させるのに向いています。力強く湿度を吸収した後で、低湿度の条件下に置かれると取り込んだ水分を放出する性質を持つので、室内に置いて湿度が高い時は吸湿し、逆に低い時は取り込んでいた水分を放出してもらって、室内の湿度を一定に保とうと考えた訳です。
第874回 シーズン到来
2007年10月25日
秋という季節は気候が良くなる事もあって、さまざまな呼び方をされます。その中にあって「食欲の秋」は、最も実感できる事の一つかもしれません。暑さから食欲が下がりがちな夏を終えて身体への負担が減り、多くの食材が収穫の時を迎えるので、食欲が増してくる事は容易に想像できます。
生物学的に見るとこれから冬を迎えるという事で、栄養を蓄えようする本能も絡んでるように思えます。夏は暑く、汗もかく事から基礎代謝が高くなっているように思えます。しかし、実は逆で、高い気温によって体温を作り出す事にエネルギーをあまり使わなくて済む夏は、基礎代謝が年間を通して最も低い季節と言えます。
冬場は低い気温にも関わらず、一定の体温を保たなくてはいけないため、基礎代謝が年間を通して最大になると言います。恒温動物は体温を体内の筋肉や肝臓で作れ出すために、かなり多くのエネルギーを費やし、摂取したエネルギーの半分以上が体温を作り出す事に使われています。
その傾向は穀物を主食とし、収穫した作物で一年を過す農耕民族の方が顕著とされ、かつて日本人は夏場には基礎代謝が10%ほど下がり、冬場には10%ほど上がっていたとされます。カロリーの高い欧米の食事内容や冷暖房の完備などによってその傾向は小さくなったと言いますが、名残りは残っていますのでダイエットを行うなら冬場をお薦めしたいと思います。
第873回 腐敗?醗酵?
2007年10月24日
最近は生分解性プラスティックを普通に見かけるようになり、地中などでやがて微生物に分解されてしまうという安心感がプラスティック製品を見た際、それほど環境負荷が大きい物という印象を薄くしてくれています。
地球上のさまざまな物は微生物によって分解されてしまいます。微生物の分解活動によって、地球上の衛生状態が保たれていると言っても過言ではないのかもしれません。そんな微生物よる分解は、本来は掃除として行われるものではなく、微生物がエネルギーを得るための食事として日々行われています。
私達は長い歴史の中で、そうした微生物による分解作業を腐敗として付き合ってきました。腐敗を防ぎ、食料を長期にわたって保存できるようにする工夫は、古くからさまざまな料理法としても伝えられてきています。それらは塩分や糖分を増やしたり、水分を減らしたり、殺菌性のある調味料やハーブを用いたりと、微生物に生育環境を与えないかたちで成り立っています。
腐敗が微生物によるものである事を証明したのはパスツールで、150年ほど前の事と、意外にも歴史が浅い事に驚かされてしまいます。それまでの食料保存方法は経験的に成立してきていたと言えます。
今ほど食材の管理を良好に行えない時代には、とりあえず臭いをかいで見るという方法で腐敗に対する備えを行う事ができました。腐敗した食材では、多くの場合タンパク質やアミノ酸が分解されて硫化水素やアンモニアが生成されているので、臭いをかいだ際、本能的に不快感を感じてしまいます。
似たような微生物の分解作業でも、糖類の分解が行われた場合は乳酸やアルコールが生成されているので、臭いをかいでも不快感を生じる事はありません。身体に不利益をもたらす成分ではないので、そのまま食用にする事ができ、同じプロセスによって分解されたにもかかわらず発酵と呼ばれて区別されます。
味噌、しょうゆ、酒、酢、漬物など、多くの発酵食品が使用され、日本は発酵技術では歴史的にも世界の最先端にあるとされます。発酵食品というと健康食というイメージが強く感じられてしまうのですが、腐敗との境界は人間の都合によって決められたやや曖昧なものという事ができます。あまり難しく考えてはダメなのかもしれません。
第872回 藻と草?
2007年10月23日
鍋物の季節が来ると、ダシとして入れられた昆布を鍋の底に見つける事があります。昆布を鍋にあまり長く入れておくとエグ味が出てしまうので、映像的には美味しそうに見えても、鍋の底に入れっぱなしというのはお薦めできないと思って見てしまいます。
海のミネラルをたっぷりと含み、アルギン酸やフコイダンといった健康成分でも話題になった海藻類は昆布に限らず、幅広く愛用されてきています。そんな海藻類を漢字で書く際、海藻と海草の二通りの表記があり、たまに迷ってしまいます。
海藻は地上の植物のように根、茎、葉のような形態を供えてはいますが、それらが機能よって分化してはいません。基本的に「藻」の仲間なので、陸上の植物とは異なる分類の生物という事になります。
胞子によって子孫を増やす事から花は咲かず、根は岩に固着し、荒波の中で流されないためだけの存在なので、根から養分を吸収する事はありません。海の底が砂や泥になっている場所には、ほとんど海藻が生えない理由がそこにあります。
太陽光が届く量によって色の傾向があり、浅瀬のものは陸上の植物のような緑色、深くなるにつれて褐色、紅色と色の分布が変わっていきます。
それに対し海草は根、茎、葉といった形態を持ち、それぞれ分化して機能しています。陸上の植物の仲間で、海の中でも花を咲かせ種ができ、文字通り海の草と言えます。
馴染み深い昆布、ワカメ、ひじきにモズクなどは海藻に入ります。日本近海には1400種類ほどの海藻が確認され、古来より日本の食卓に上っていました。海草は16種類と日本近海では種類が少ないのですが、海藻と共に「藻場」と呼ばれる海の森を形成し、魚介類に産卵や成長のための場所を与え、水質浄化などの重要な役割を担っています。最近、その藻場が眼に見えて減ってきているとの事なので、海の将来が心配です。
第871回 酸化発熱
2007年10月22日
寒くなってくると使い捨てカイロのまとめ売りがスーパーなどでも見かけられるようになってきます。外側のビニールの袋を開け、中の袋を取り出して軽く揺すってやると発熱が始まり、一定の時間温かさを維持する使い捨てカイロは、食品の袋の中に入れられている品質を保持するための脱酸素剤の応用によって作られています。
主な内容物は鉄粉で、鉄という非常に錆(酸化)やすい物が酸化する際に発生させる熱を利用して温かさを発生させています。鉄粉だけではうまく酸化熱を発生させる事ができない事から、鉄を錆びやすい状態にする水分、塩分を加え、温度や持続時間、水分量などの調整のために粉状の炭も入れられています。
普通に袋の口を閉じると中に空気が入ってしまいます。窒素、酸素、二酸化炭素といった空気中の成分の中で、酸素はカビや雑菌(好気性細菌)、昆虫の生存に欠かす事ができないばかりか、食品の油脂を酸化させたり、ビタミンなどの栄養素を壊す原因にもなってしまいます。
そのため酸化しやすい鉄粉を一定の酸素透過性を供えたフィルムなどで包装して、食品のパッケージとなる袋に入れておきます。鉄粉は酸化する事で袋内の酸素を吸着し、袋内に酸素が存在しない空間を作り上げます。
酸化のために温度が上がると、必然的に反応速度も速くなってしまうので一気に酸化が進んでしまいます。脱酸素剤の場合、酸素を吸着する時間にはそれぞれの制限がありすが、あまり温度が上がってしまうと内容の食品への悪影響が考えられます。
逆に使い捨てカイロの場合、温度が上がる事は良い事なのですが、反応速度が上がり過ぎると使用時間が短くなってしまうので、程よい加減に維持する事が製品開発の重要な部分となってきます。
稀に袋の中の物を直接鍋に入れようとして、一緒に脱酸素剤を入れてしまったという話を聞かされる事がありますが、短時間であれば外側のフィルム剤が熱に影響される事も少なく、鉄粉自体も安全性が確認されているので大丈夫なのですが、袋ごと一緒に電子レンジにかけてしまうのは、火花が発生する可能性もあるので注意が必要です。
第870回 期間短縮
2007年10月19日
先日、新薬の承認機関を短縮するという厚生労働大臣の発言が報道されていました。日本での新薬の承認は欧米に比べて非常に長く、4年ほどを要すると言われていました。それを米国並みの1年半にするという事で、倍以上の短縮となります。
日本では最先端の医療が行われていると思われがちですが、実は新薬の承認や保険の適応などの問題によって、どちらかと言うと遅れがちな傾向にあります。
ガン治療の際に問題にされていたのですが、治療を行う中で保険適応外の新薬を使用すると、治療全体の保険適応ができなくなり、全額を患者が負担する事になってしまい、治療効果を優先するか治療コストを優先するかという事に直面してしまいます。
新薬承認の高速化は、そうした問題の解決に繋がるのではと期待しています。具体的な方策として、審議官の人員を増やすとの事なので、承認を急ぐあまり審査の質が低下する事は防げるように思えます。
カナダの研究機関がまとめた統計によると、米国では医薬品の副作用による死亡が、死因の4位を占めているとされていました。投薬ミスや過剰摂取などの人為的なミスを除いた数値を元にしているので、適正に処方された医薬品による副作用がいかに一般的な死因になり得るものかを伺う事ができます。
新薬が素早く承認されて治療に用いられる。患者にとって治療の選択の幅が広がる事は非常に大きなメリットとなります。そのメリットのみが活かされるような制度改革となる事を願いたいと思います。
第869回 うなだれる花
2007年10月18日
今年の夏は特に長かったような感じがしています。毎年、夏の終りが近付いてくると、その事を嘆くかのようにがっくりとうなだれたヒマワリを見る事ができます。実際は種が充分に成長して重くなった花の部分が重さに耐えかねて下を向き、地面に種を落としやすい状態になっているだけですが、枯れて下がった葉も合せて、夏の終わりの寂しい風景に見えてしまいます。
ヒマワリは太陽に向かって向きを変える花と言われますが、それは成長過程で頭頂部が向きを変え、夜には元に戻るだけの事で、普通にイメージされる花が開いた頃には東の方向に固定されてしまっています。
学名のヘリアンサスはギリシャ語の太陽を意味するヘリオスと花を意味するアントスが合わさった物が語源となり、文字通り太陽の花となっています。
ギリシャ神話の中にも夏の代表の花として登場していますが、実はヒマワリの原産地は北米大陸で、先住民の間では食用として栽培もされていました。北米大陸の発見に伴い、イギリスに種子が伝えられた事がヨーロッパがヒマワリを知る最初の事となりましたので16世紀以降。紀元前に成立しているギリシャ神話にヒマワリが出てくる事は、明らかに不自然で、後の時代に付け足されたものと言えます。
ヒマワリというとゴッホの代表作が有名ですが、せいぜい私に縁があるのはヒマワリ油くらいのものでしょうか。近年、ディーゼル燃料として注目を集めていますが、マーガリンの原料としても使われてきました。90年代以前はリノール酸が8割近く、オレイン酸が2割程度という脂肪酸分布が主流となっていましたが、リノール酸離れが進むにつれて交配育種法の変更によって、リノール酸が2割、オレイン酸が6割程度という脂肪酸分布に変わってきています。健康という太陽の方を向いているのでしょうか。
第868回 感染保全
2007年10月17日
かつてあまりに強い酸性のために胃の内部に細菌は存在しないと考えられていましたが、それを覆したのがピロリ菌だと言えます。ピロリ菌については、胃の中に存在する事でアレルギー症状が出難くなるというメリットや、胃潰瘍や胃ガンを発生させるというデメリットも伝えられ、未解明な部分も多く残されています。
胃粘膜の表皮細胞は活発な入れ替わりが行われており、2、3日毎に新たな細胞と置き換わっています。そうする事で病原菌の感染から身を守っていると考えられていますが、ピロリ菌はそうした細胞の入れ替わりにも関わらず、感染を持続する事ができています。
これまではピロリ菌の感染持続機能については謎とされてきましたが、ピロリ菌が感染した胃の表皮細胞では、通常行われている細胞死が半分程度に抑えられている事が発見されています。おそらくピロリ菌が感染を持続させるために、何らかの方法で細胞死を抑制している事が考えられます。
ピロリ菌が持つ特殊なタンパク質の一部を欠損させると、感染した胃の細胞死抑制が起こらない事から、ピロリ菌が胃粘膜の表皮細胞にその特殊なタンパク質を注入する事で細胞死を抑え、感染の持続を図っている事が考えられます。
細胞死が抑えられると、細胞がガン化する確率が高まる事が知られており、ピロリ菌がガンを発生させるメカニズムの一つがこの特殊タンパク質注入にあると考える事ができます。
自分の身体の回りをアンモニアで守り、強烈な胃酸にも溶かされる事なく生き残るバクテリア。それだけでも充分怖い存在だったのが、さらに怖い日常活動をしている事を知ってしまった気がします。
第867回 エコノミーリスク
2007年10月16日
世界中を飛び回り、第一線で活躍するビジネスマン。仕事も健康も気力さえも絶好調で、健康上何ら不安要因は存在していないのに、出張先の空港で飛行機を降りてロビーを歩いていると急激な不調を訴え、そのまま急死してしまう。そんなセンセーショナルな症状で知られるエコノミークラス症候群は、誰にでも起こりえる可能性がある割には、命に関わる怖ろしい静脈血栓症として知られています。
急に症状が発生して死に至るというショッキングな展開や、狭いエコノミークラスのシートからくる閉塞感もあって、飛行機という移動手段に伴う非常に怖い疾患と考えられがちですが、実はそれほど発生率は高くなく、5千人に1人程度の発症率というのが、先日行われた統計によって判ってきています。
国際企業に勤務し、旅行する機会の多い8800人を対象にデータを収集したところ、長時間と定めた連続4時間以上のフライトを行った回数は10万回を超え、その中で53例の血栓症が発生した事が判っています。53例中22例がフライトから8週間以内に起こり、データを元にして算出された血栓症リスクは、長時間フライト4656回に1例だったと言います。
傾向としては短期間に搭乗を繰り返す人や長時間の搭乗を行う人。30歳未満の人。経口避妊薬を使用する女性や目立って背が高いか低い人。肥り気味の人が特にリスクが高かったとされています。
エコノミークラス症候群は、一定の時間姿勢が固定されるなどして血流が滞りがちになっている脚の血管に生じた血栓が剥れて、肺や心臓、脳などに移動してしまう事で起こります。アスピリンなどの抗血栓薬を事前に飲用しておく事で予防できるという意見もありますが、発症のリスクの大きさの割にはデメリットの方が大きいのでお薦めはできないとしていました。
要は血流をできるだけ滞らせない事が大切なので、脚を効果的に動かして筋肉を小刻みに収縮させ、血流を生じさせる事だと思います。あまり格好の良い事ではないのですが、知り合いが絶賛していた貧乏ゆすりが手軽で良いのかもしれません。
第866回 吐息検査
2007年10月15日
年末が近付いてくると中途半端な田舎道では、飲酒運転の検問に出くわす事が増えてきます。最近は社会的な意識も変わり、厳罰が適用される事もあって、飲酒運転をしてしまう人は減ったように思えるのですが、飲酒に対して寛容な国民性を持つ日本、特に田舎ではお茶代わりにビールが出されるという事は、かつてはよく見られていました。
暗い夜道を走っていると、前の方に明るい反射帯を着け、手には懐中電灯を持った数名の警察官の方が見え、停車させられます。行き先などを尋ねられながら、それではこれにと先端に無数の穴が開けられた呼気中のアルコール濃度を測定する機械を差し出されます。
いつも疚しい事はないので勢いよく息を吹きかけているのですが、本当にこの程度の装置でアルコール濃度を測れるのか不思議に思えてしまいます。さすがに試す事はできませんが...。
装置に息を吹きかけるという検査技法はかなり手軽な検査方法ではあるので、他への応用が進めば診療時間の短縮や検査の軽減にも繋げる事ができます。先日、行われていた研究によると、アルコール検査と同じように息を吹きかけるだけで糖尿病の診断ができる可能性が報告されていました。
大気汚染を調べるために開発された化学物質の検出技法を用いた研究の結果、1型糖尿病患者の血糖値が高くなった際、呼気には硝酸メチルの濃度が通常の10倍に上昇する事が確認されています。
硝酸メチルは血糖値が高くなる事によって細胞が損傷した際に生成されると考えられています。硝酸メチルが検出されるパターンを注意深く検査する事で、呼気から血液中の糖分量を知る事ができるかもしれません。
今のところ糖尿病に関する呼気検査は存在しませんが、将来的には血液を採取する事で皮膚に傷を付けなくても血糖値を知る事ができるようになるかもしれません。夜道で呼び止められて呼気検査を行われ、お酒は飲んでないようですが血糖値が高いですねと言われてしまう、そんな時代が来るのかもしれません。
第865回 久助セット
2007年10月12日
せんべいやおかきなどが製造工程で割れたり欠けてしまったり、焼きムラや形が悪くなった物などを詰め合わせて、格安のお得なセットにして販売している物を「久助」と呼びます。本来はそれなりの価値がある物の規格外品なので、見かけをそれほど気にしないのであれば、大変お買い得でもあります。
最近ではせんべいなどに限った言葉でもなく、クッキーやその他の品でも久助と表記された物を見る事ができ、知らずにメーカーやブランドと思い込んでしまう事もあります。
久助の名前の由来は、完全を意味する「十」から一つ欠けた「九」に親しみを込めて擬人化し、「助」を付けたものが変化したとする説や、へまばかりしていた職人の「五助」を叱り付ける際、親方があまりの怒りのために呼び間違えたとする説もあります。
また、和菓子に欠かせない高級品の吉野葛を「久助葛」と呼ばれる事がある事から、くずと葛をかけてそう呼ぶようになったという説や、江戸時代の奉公人に多い名前だったので、彼等が帰省する際にお土産として喜んだ事が元になったという説もあり、広く使われている割には由来が謎となっています。
子供の頃通っていた塾の近くに街中で有名な高級パン屋の工場があり、焼き損じた規格外品を工場に併設された店舗で格安で販売していて、非常に得した気分になって買っていました。あれが久助と思ったのですが、詰め合わせのセットになっていない単品販売なのでちょっと違うかなと今頃考えています。
第864回 櫨街道
2007年10月11日
秋が深まってくると街中ではハロウィンの飾りが増えてきます。さすがに日本では仮装して近所を回る習慣は定着していませんが、どことなくユーモラスな飾り付けを見るのは楽しいものがあります。
内容的な事や成り立ちは明らかに異なりますが、ハロウィンはどことなく日本のお盆に通じるものがあり、特に地域によって催される家族の墓地にろうそくを燈し、墓地を飾るという習慣はお盆の送り火のように見えてしまいます。
お盆、ハロウィン、クリスマスと大活躍するろうそくですが、かつては櫨の実を絞った物から作られていました。今日では安価なパラフィンが使われていますが、櫨を使った和ろうそくは世界中で「ジャパンワックス」として賞賛されるほど質の高いものでした。
櫨を使った和ろうそくは、炎がきれいで煤が出難く、蝋がこぼれ難いという優れた特徴がありました。融点が低い事からこぼれた蝋に触れても火傷をし難いという安全面でも優れており、手作業で作られるろうそく造りに適した素材となっていました。
真綿と和紙で作られた芯に何度も溶けた蝋を付けて必要な太さに仕上げられますが、このときにできる年輪のような層が外側と内側の境となり、蝋がこぼれ出すのを防ぐ働きを持ち、最終的に手作業で行われる蝋付けの工程で蝋に空気を含ませ、本来半透明の蝋を白く仕上げています。
以前住んでいた街には、川沿いの道に沿ってたくさん櫨の木が植えられていました。討ち入り後、一時身柄を預けられた赤穂浪士が、その街への恩返しとして現金収入にもなる櫨を植えてくれた名残りという事でしたが、和ろうそくについて知ると、触れるとかぶれを起こす櫨の木に込められた浪士達の気持ちが少し解るような気がします。深まる秋、たまには電気を消してろうそくというのも良いのかもしれません。
第863回 無花果
2007年10月10日
「無花果」と書かれたものを見た際、それが子供の頃から見慣れた「イチジク」の事とは到底思えず、慌てて辞書をひいた事があります。後に日本に昔からあった果物ではなく、アラビア地方の南部が原産で日本へは江戸時代に入ってきた事を知り、意外に思った事がイチジクの印象として残されています。
イチジクは果物の中でも歴史が古く、温暖な気候が適していた地中海沿岸地方では紀元前から栽培が行われていた記録が残され、紀元前2000年以上も前のエジプトの彫刻にもイチジクの姿を見る事ができます。
イチジクの名前の由来に関しては、中国を経由して入ってくる際、中国名の「映日果(インジークォ)」が訛ったという説や俗称となって「イヌビワ」からきたとする節もありますが、信憑性としては一日に一つずつ熟していく事から、「一熟」と呼ばれ、それが変じたとする説が有力なように思えます。
実際には一日に一つとは限らないのですが、他の果物のように木全体が一斉に熟すのではなく、実ができた順にばらばらに少しずつ熟していくので、一熟という呼び名は案外当っているのかもしれません。
漢字で表記する際の無花果については、文字の通りに花を生じないまま実ができるように見えますが、果実を割ると中から出てくる無数の赤い小さな粒が花となっています。私達が果実としている部分が果嚢(かのう)と呼ばれる花を蓄えた物で、花がない訳ではなくむしろ花しかない果物とも言えます。
ギリシャ神話の中では、女神デメテルが栽培法を伝えたとされ、ギリシャ、ローマ、オリエントといった地域では知恵の木、生命の木として大切にされてきています。歴史の古さという点では、アダムとイブが葉を下着代わりに使ったという事もあり、リンゴに匹敵するものがあるのかもしれません。今が旬でもありますので、今度見かけたら中の花を観察してみようと思っています。
第862回 フードマイレージ
2007年10月09日
マイレージサービス・・・すでに充分定着したポイントサービスではないでしょうか。1981年にアメリカン航空ではじまった乗客の移動距離に応じたサービスは、その後、日本にも導入され、最近の電子マネーの普及に伴い、相互の交換ができるようになってからはさらに急速に発展してきています。
マイレージサービスに見られたような物事を移動した距離に応じて評価するという考え方は、環境保護の観点からも新たな評価基準となってきつつあります。
日本は食料自給率が非常に低い状態にあり、必然的に食料の多くを輸入に頼っています。それぞれの品目を生産に適した場所から、価格的にも見合うかたちで買い付けを行い、船便などで輸入する事で食料の確保、価格の安定が保たれています。
そうした輸入食料の総量と移動距離をかけたものを「フードマイレージ」と呼びます。フードマイレージを算出する事で、その食料が市場に供給されるために排出された二酸化炭素量の目安を知る事ができ、フードマイレージを小さくする事で、一つの食品を得る事による環境負荷を小さくする事ができます。
あくまでも輸送という観点のみでの指標なので、フードマイレージだけを小さくする事が環境負荷を低減する事とは言えませんが、その地域で生産された物をその地域で消費する地産池消が進めば、フードマイレージはかなり小さくなるのではないでしょうか。農作物は生産する際に二酸化炭素を吸着してくれます。そろそろ自給率自体の考え方を変えなければいけない時期なのかもしれません。
第861回 白衣禁止
2007年10月05日
英国の病院で医師の白衣とネクタイの着用を禁止する措置が取られたというニュースを聞き、すぐに高血圧の事を考えてしまいました。家にいて血圧を測る際は正常値を示しているのに、病院へ行って血圧を測ると高い数値が出てしまう・・・白衣高血圧は、医師や看護士の白衣を見た事で緊張し、それによって血圧が一時的に上昇してしまう事を言います。
軽い高血圧と診断される人のうち約2〜3割が白衣高血圧にあたるのではと見られ、医師の白衣やネクタイを止めれば、それで白衣高血圧が減るのではと考える事ができます。
しかし、詳しくニュースを見ていると、実際には別の理由による禁止措置だったらしく、主な理由は「院内感染」を管理する取り組みの一環という事でした。伝統的なスタイルである白衣をはじめ指輪などのアクセサリー、時計、ネクタイ、長袖の服も着用禁止の対象となっています。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などのほとんどの抗生物質に耐性を持つ「超強力菌」の潜伏の可能性が疑われるためで、中でもネクタイは「毎日着用するにも関わらず、稀にしか選択されない。患者のケアに役立つ機能はない。病原菌が棲み付きやすい」として厳重に禁止されています。
白衣にネクタイ、高そうな時計と、身なりのきちんとした医師に診断されると良さそうな気がしますが、考えてみれば患者の側にメリットがある物は何一つありません。院内感染の問題が深刻化するに合せ、英国のユニークな取り組みには注目していきたいと思っています。
第860回 ウィルス探し
2007年10月04日
それまで元気に活躍していた人が突然疲労感や微熱、頭痛、筋肉痛、精神神経症状などを訴え、長い時間連続して、または断続的に症状が続き、健全な社会生活が送れなくなる事があります。慢性疲労症候群と呼ばれる疾患で、運動などが原因ではないため、充分な休息を摂っても回復しない事が特徴となっています。
当初、そうした症状が認識されていなかった事から、怠け癖やうつ病などと混同されたりしていましたが、慢性疲労症候群に罹ると発熱や喉の痛み、リンパ腺の腫れが生じる事や、集団的に発生する事もあるためウィルスなどの関与も疑われています。
これまで有力な説として風邪によく似た症状を起こすエプスタインバーウィルスや、古くから馬の病気として知られたボルナ病ウィルスも人に対して慢性疲労症候群と同じ症状を発生させる病原性を持つ事が判明した事から、それらが原因ではないかと見られてきました。
その後、湾岸戦争が起こり、帰還した兵士の中に湾岸戦争後蔓延性疲労患者と呼ばれる患者の存在が知られるようになると、多くの患者が感染していたマイコプラズマが、非常によく似た症状を示す慢性疲労症候群の原因ではないかと考えられるようになりました。
そんな中、先日、米国カリフォルニア州の開業医によって、新たなウィルスが原因となっている可能性を示唆する研究結果が報告されました。今回の研究では、多くの検体を採取して分析した結果として、消化管の中で増殖するエンテロウィルスが原因ではないかとしています。
当初、約3000の血液検体を採取し、ウィルスの遺伝子を探す作業が行われ、検体の35%にエンテロウィルスが存在する事が突き止められました。しかし、一人の患者から複数の検体が採取されている事を考慮すると、エンテロウィルスの存在は5%未満となるため、血液ではなく組織内にウィルスを探す事に方向転換が図られました。
過去、自殺した慢性疲労症候群患者の脳や筋肉、心臓などからエンテロウィルスが発見された事はありましたが、生存している患者から脳や心臓の検体を採取する事は不可能なので、エンテロウィルス増殖の場である胃に着目し、慢性疲労症候群の患者からは82%が陽性、健常者では20%が陽性という結果が得られています。
血液にのみ原因を探す中、消化器官に着目した事が今回の成果に繋がっています。エンテロウィルスは慢性疲労症候群の原因の全てではなく、一部にすぎないという指摘もありますが、少なくとも実際に存在する疾患であり、感染症である事が認識されるきっかけには充分すぎる成果ではないでしょうか。
第859回 中秋?仲秋?
2007年10月03日
田舎で暮らしていると秋の風景はどことなく霞がかかっている印象があります。霞んでいるというと良い風情のように思えますが、実は枯れ草をそこかしこで燃やしているからで、二酸化炭素の排出抑制に努力する世情に反しているし、煙くて換気もできない事に困ってしまいます。
そんな煙も夜が更けてくると一段落するのか、空気が澄んできてきれいな夜空を見上げる事ができます。毎年旧暦の8月15日は中秋の名月とされ、古くからお月見をする習慣があります。
お月見の習慣は中国から伝わったものとされ、唐の時代から旧暦の8月15日を「中秋節」として月見の宴が開かれていました。その習慣が平安時代に日本へ伝わり、一年で最も月が美しく見えるとされる空気が澄んだ季節、秋にお月見をする習慣が定着しました。
お月見というと月見団子と花瓶などにさしたススキを連想してしまいます。月見団子の数は通常の年であれば12個、閏年には1つ多い13個をお供えします。地域によっては中秋の名月のときだけ15個を供え、後の名月(中秋の名月から一ヵ月後の旧暦9月13日)には13個を供える事もあるそうです。
供えられたススキは切り口が鋭い事から魔除けになるとされ、月に供えた後、軒先に吊るしておく事で一年間家族が病気をしないと言われます。また、ススキの強力な生命力に肖って、庭や水田に刺しておく事も行われます。稲にススキのように育ってほしいという願いが込められています。
「ちゅうしゅう」という言葉には「中秋」と「仲秋」が当てられます。旧暦では7月から9月を秋とし、その真ん中が月がきれいな日としています。中秋はそんな秋の期間のちょうど真ん中、8月15日当日の事を指し、仲秋は秋の期間の真ん中となる8月の事を指します。そのため旧暦の8月15日に見る月だけが「中秋の名月」となり、それ以外の旧暦の8月中に見る月は「仲秋の名月」と微妙な区別がされます。
残暑は続きますが朝晩が涼しくなる時期、ゆっくり月でも見上げるという余裕は今も昔も大切な事なのかもしれません。
第858回 イメージカタログ作成
2007年10月02日
近年のパソコン、特にソフトウェアや周辺機器の発達には驚かされる事があります。機器自体の価格の低下や精度の向上。ソフトウェアの処理速度や対応範囲の拡大など、これまででは考えられなかった利用範囲を生み出してきています。
3Dスキャン技術の発達によって、パソコンで読み込んだ個人によく似せたぬいぐるみを製造する技術は、すでに一般的に行われていますが、さらに3Dスキャンの精度が向上した事によって稀な遺伝子疾患を持つ小児の特定に利用できるという報告が行われています。
顔の特徴に影響をもたらす可能性がある遺伝子疾患は700種以上が知られていますが、かなり稀なものも含まれ、顔自体の違いも極めて微妙なものであるため、初期診断時の印象では捉えにくいものがあります。
今回開発されたソフトウェアは遺伝子疾患のある小児の3D画像を収集し、ソフトウェアが画像から特定の遺伝子疾患を持つ小児の「平均的な顔」を作成する機能を持っています。
小児に原因がはっきりしない症状が見られた場合た際、顔の3D写真を撮影する事によって、遺伝子疾患ごとの平均的な顔と照らし合わせ、遺伝子疾患の有無に関する可能性を判定するというわけです。
現段階での診断成功率は90%にも上っているとの事なので、さまざまな検査を行い、結論がいつまでも得られない状態になる前にスキャナーの前に座り、判定を行ってもらうというのは、患者の利益と言う点ではかなり大きなものがあるのではないでしょうか。
第857回 早期実現希望
2007年10月01日
世界中で最も罹患者が多い感染症・・・急に言われると何が該当するのか、ちょっと考えてしまいます。細菌やウィルスなどに感染して起こる感染症の中で、世界的に感染者数が最も多いものとなると、それは「虫歯」ではないでしょうか。
ミュータンス菌に感染する事で起こる虫歯は、それが感染症である事すら意識しないほど一般的に見られる感染症となっています。しかも一旦症状が出てしまうと、自己治癒力の及ぶ範囲では治す事のできない、ある意味怖いものでもあります。
そのため、虫歯の治療には患部を削り取り、詰め物をして元の歯の形を取り戻すという事が行われていますが、その際に用いられるドリルが出す音や振動は患者にとって非常に不快なものとされています。
ミュータンス菌が出す酸によって歯が溶かされ、中の神経がむき出しになると非常な痛みを伴います。そのむき出しの神経に歯科治療で用いられるドリルは、振動や歯を削る際の熱などによって刺激を与え、更に痛みを発生させる事があります。
そうした物理的な方法ではなく、化学的な反応を用いる事によって痛みのない治療法が開発されつつあります。非熱プラズマブラシと呼ばれる新たな治療方法は、これまでの機械的なドリルとは異なり、低温での化学反応を用いる事から熱や振動が出ないため歯の神経を刺激せず、削られた歯と詰め物の間に形成される化学的結合によって、従来のどの治療法よりも強固なものになると考えられています。
自分に関係なくても歯科から聞こえてくるドリルの音には恐怖を感じてしまう事があります。すでに非熱プラズマブラシに関しては2件の特許が出願され、実用化の時が間近な事を感じさせます。できるだけ早く実用化され、あの不快な音が昔懐かしいと感じられる日がくる事を願いたいと思います。
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