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第918回 三つ星
2007年12月28日
技術があれば一つ星は得られる。それに加えて才能があれば二つ星は得られる。そして三つ星を得るには哲学がなければならない。そう言われると妙に格調高く、権威的なものに感じてしまいます。
毎年発売されるミシュランのレストランガイドが今年も既に発売されています。レストランの格付けでは世界的な権威として知られ、並たいていの事では三つ星を獲得する事が難しい事は広く知られています。
今年の東京版では8件のレストランが選ばれ、これだけ選ばれる事は珍しいという意見もあり、東京の街がいかにグルメであるかを想像する事ができます。
都内には約16万件のレストランがあると言われますが、ノミネートされる店はその1%にも満たない1500軒とされ、その1500軒を調査員が1年以上かけて内緒で見て回り、評価を下すというシステムを採っています。もちろん食事代も自腹となっていて、あくまでも公平、客観的な視点が大切にされています。
最終的に選ばれたのがノミネートのされた中の150軒で、一つ星が117軒、二つ星が25軒、三つ星が8軒となっており、選ばれたレストランは、文字通り頂点に立った事になります。
ミシュランと言うとレースファンではなくてもタイヤの存在を思い出してしまいます。世界的なタイヤメーカーでもあるミシュラン社とレストランガイドのミシュランは同じ会社で、タイヤメーカーの創始者ミシュラン兄弟が宣伝を兼ねてドライブガイドを作る事を思い付いた事に由来しています。
そのミシュラン社によると三つ星レストランとは、「遠くにあっても訪問するに値するレストラン」という事になっています。タイヤメーカーという事を考えると、どうも「遠くにあっても」というのがポイントのような気がしてしまうのですが、公共交通機関が発達した東京版も存在する事を思うと、やはり考え過ぎかもしれません...。
第917回 燃料高騰
2007年12月27日
本格的な冬を迎えて暖房の必要性が強く感じられてきます。今年はラニーニャ現象の影響で寒さも厳しいという話でしたが、今のところ異常と思えるほどの寒さの報告が無く、一安心しています。
初めて阿蘇に転居した冬は、とにかく寒さに驚き、暖房のコツも判らない事から、ファンヒーターを何台も使い、18リットルと20リットルの灯油缶を交互に抱えて、一日おきに灯油を購入していました。
今ではエアコンの暖房も交えてポイントごとに暖めるので、ほとんど灯油も必要なくなってきているのですが、昨今の原油価格の高騰を受けた灯油価格の上昇には、見ているだけで背筋が寒くなってしまいます。
灯油というと暖房以外ではあまり接する事はありませんが、元々はランプの燃料として精製され「ともしびあぶら」から灯油の名前が付けられ、日常的に石油と言うと灯油の事を連想する事が多いのではないでしょうか。
灯油は引火性はありますが、引火点が40度と高く、冬の寒い気温の中では火のついたマッチ棒を投げ込んでも発火する事がありません。しかし、引火点以下の低い温度であっても霧状にしておけばガソリン並みの引火性を持つという意外な一面を持っています。
少々イメージが異なりますが、ジェット機の燃料は灯油を使用しています。厳密には灯油よりも質の良いケロシンと呼ばれる物ですが、灯油とほぼ同じ物で、あれだけの出力を発揮するジェットエンジンが家庭のストーブと同じ燃料という事に、多少の抵抗感と微笑ましさを感じてしまいます。
燃料という点では、トラックなどのディーゼルエンジンで使用されている軽油も灯油に近い物で、実際ディーゼルエンジンに灯油を給油しても走る事ができると言います。リッター当りの単価を考えると、灯油で走った方が安上がりな気がしてしまうのですが、灯油には特殊な添加剤が混ぜられていて、ディーゼル車に給油すると白煙が出るようになっているそうです。しかも脱税行為にあたるらしいのでお薦めはできません。
灯油から水素を取り出して発電する燃料電池も開発されていましたが、今のような灯油価格では実用化や普及という点で先行きが不安になってしまいます。灯油価格の高騰を受けて、今年は薪ストーブの売れ行きが良いそうですが、薪の需要から放置されがちな間伐材の問題解決に繋がらないかと淡い期待をしています。穏やかな春が恋しくなってしまいます。
第916回 新特定方法
2007年12月26日
あまり歓迎できる事ではありませんが、稀に「歯の治療痕から被害者を特定・・・」というニュースを聞かされる事があります。事件や大きな災害などで被害者の身元が確認でき難い状況の中、個人特有のものである歯型や歯の治療痕は個人を特定する有力な手掛かりとなります。
遺体の損傷が大きく身元の確認が困難な場合、歯の治療記録が最後の手段となる事が多いのですが、地震や津波といった大規模な災害や飛行機事故といった被害者が集中的に発生する場合、手作業に頼らざるを得ない照合作業には膨大な時間が必要となり、誤認も格段に多くなると言います。
1985年の日航機墜落事故では、520人の犠牲者中325人に歯型の照合が必要となり、2800人以上の医師、歯科医師、法医学者が一斉に作業に当りましたが全ての遺体の特定には3ヶ月の期間を必要としていました。
今回新たに開発された歯型照合システムは、「位相限定相関法(POC)」という技術を応用したもので、歯科のレントゲン写真に見られる歪みを自動的に調整、補正して照合作業の迅速性を確保しています。
この新たなシステムの有効性、実用性を試す試験では、画像補正の後にコンピューターがそれぞれのレントゲン写真に最も近い画像を3点選出し、法医学の専門家によって最終的な評価が行われています。画像補正から選出までの時間は、たったの3.6秒ほどと言われ、1回目の照合で87%が正確に認識され、2回目では98%、3回目では100%の認識率に達しています。
このシステムの使用によって法医学的作業の95%が削減できると推定され、大切な人を失い、照合作業のために正式な葬儀もできないという遺族の感情面での混乱も軽減できるとしています。とてもありがたいシステムの開発と思いますが、良く考えてみるとあまりお世話にはなりたくないものです。
第915回 賢さ比べ
2007年12月25日
私が住む南阿蘇の反対側、阿蘇の北側にはテレビで有名なチンパンジーがいます。独特の行動で笑いを誘っているとの事ですが、チンパンジー自体が元々賢い生き物であると意見は多く聞かされます。
先日、1〜9の数字を見分ける訓練を受けたチンパンジーの母子3組と大学生を比較した実験では、チンパンジーと人にタッチスクリーンのモニター上に表示される1〜9の数字を短時間見せ、数字を空白の四角形に置き換えて、どの位置にどの数字が表示されていたかを触れさせる記憶テストで、チンパンジーの子供の成績は母チンパンジー、人のいずれも上回るものであったとされています。
生物学者を含む多くの研究者が、あらゆる認知機能においてチンパンジーの方が人よりも優れているという考えを持っているそうですが、今回、5歳の若いチンパンジーが人よりも優れた記憶力を示した事になります。
また、逆の結果を示す実験の報告も行われており、人の2歳の子供と霊長類との社会性を示す実験では、エサやおやつを見せた後、それをケースに収めて渡したところ、人の子供は見よう見まねでケースを空けられる事に対し、霊長類ではケースを叩くなどの行為が続き、なかなか開封には至らないとされていました。
複雑な光景やパターンの映像を正確、詳細に記憶しておく事は「直感像記憶」と呼ばれますが、人にもその能力があるとされ、年齢と共に低下するとされています。柔軟な知能を持ち続ける事が賢いと判定されるためには必要なのかもしれません。
第914回 姥目樫
2007年12月21日
姥目樫と書いてそのままウバメガシと読みます。別名、馬目樫とも今芽樫とも呼ばれる事がありますが、いずれにせよ固くて頑固そうな名前だと思ってしまいます。
ウバメガシは暖かい地方の海岸から山にかけての斜面に多く、特に海岸付近の乾燥した斜面に見かける事ができます。本来は高木で20mくらいの高さになるそうですが、通常見かけるものは6m程度の低木が多いとされます。
紀伊半島の南部では、多くの低山の斜面にウバメガシを植えられ、細心の注意がはらわれながら維持されていたと言います。伐採の際も伐採後の樹木の生長にまで気配りがされ、おがくずを出さないように斧のみで伐採されたという話も残されています。
そうして育てられたウバメガシは、立ち木の状態のまま炭焼き師に売られ、有名な紀州備長炭の材料とされました。紀州備長炭は元禄時代、紀州藩の炭問屋、備長屋長左衛門が命名したと伝えられ、今でも炭に一大ブランドとなっています。
備長炭はウバメガシという固い原木を使っていますが、それだけではない甲高い金属音を出すほどの固さを持っています。燃え尽きないような温度で蒸し焼きにして炭化させ、仕上げに一気に空気を送り込んで高温にし、一気に灰をかけて消火する。そうした特殊な製法によって固い備長炭が作られています。
備長炭の本当の特徴は固さではなく、火力の強さと程よい遠赤外線を発生させる事にあります。また、うちわで煽る事によって火力のコントロールがしやすく、焼いている間に弾けにくい事も美味しく焼き上げてくれる事に繋がっています。
火持ちが良い事でも知られ、料理を焼き上げる炭として最良の素材と言えるのですが、最近、原木となるウバメガシが激減してきていて、各地で地方公共団体が作成するレッドデータブックに記載されてきています。炭焼き、食、植物、さまざまな面から大切にしなければならない存在だと思えてしまいます。
第913回 ふり加減、当て加減
2007年12月20日
塩を制する者は料理を制すると言います。職人さんを見ていると微妙なふり方一つで塩加減のコントロールがされていて、一朝一夕には真似る事ができない難しさを感じてしまいます。
日常的な料理のレベルでは、そこまでの微妙なコントロールは必要ないかもしれないのですが、ちょっとした工夫が結果に出るだけに、できる事はこだわってみたいと思ってしまいます。
肉や魚を焼く際、軽く塩をふる事で、肉や魚の身を引き締めて生臭みをとり、塩味で美味しさを引き立てる事ができます。塩の働きとしてタンパク質の凝固を促進する働きがある事から、身崩れを防ぎ、旨味が逃げ出す事を防ぐ事にも繋がります。
やり方としては、20〜30cmという高さから全体にパラパラとふりかけるというもので、ふり塩と表現されます。縁起を担いで、振るという言葉を避ける場合もあり、その際は当てるという縁起の良い言葉を使い、あて塩と呼ばれたりもします。
肉には全体の重量の1%程度の塩をふりますが、事前にふっておいて味を染ませておくという事はせずに、焼く直前にふります。塩をふって時間が経つと身が締まって固くなり、浸透圧で旨味まで流出させてしまうからです。
魚の場合は、余分な水分と生臭みを除くために重量の3%程度を30〜60分前にふり、ザルなどの水分を落とせる物に乗せておきます。塩加減については、魚の種類や大きさ、鮮度、脂ののり具合によって調整する必要があり、青魚の場合は多め、白身やエビ、イカなどは少なめにします。
できればふる塩にもこだわりたいもので、食卓塩や精製塩などの炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムといった防湿剤を含むものは、素材との馴染みが悪いので避け、にがり成分の多い天然塩や粗塩などを使うと、より美味しく仕上がる事と思います。
第912回 寒風強化
2007年12月19日
暖かい九州で生産される農産物ではほとんど見る事はないのですが、冷涼な気候の栽培地から出荷される野菜に中に、通常よりもくしゃくしゃに丸められた印象の外観を持つ物があります。「寒じめ」と呼ばれる物で、年を越して栽培されるホウレン草などで見かける事があります。
寒じめはホウレン草や小松菜などに冬場に栽培される野菜に見られる栽培方法で、ビニールハウスなどで育てた作物を、充分に育成ができた段階でビニールを開放し、寒気にさらして育成させます。
急な寒気にさらされた事で、葉が葉脈に沿って縮み、葉全体が丸みを帯びて厚みが増し、緑色が濃くなります。それまで暖かい環境で育てられた作物は、厳しい寒さによって育成が遅められたり、成長自体を停止させたりします。
葉の中の水分が凍りつく事で容積が増してしまうと、葉自体が内部から壊されてしまう可能性もあるので、葉の水分量を減らすという自己防衛機能も発揮されます。
葉の水分量が減る事で、葉に含まれる糖質やビタミン、ミネラルといった栄養素が濃縮され、味が濃い、栄養価も高い作物とする事ができます。
寒気にさらす事で土の温度が下がると根の活動も低くなり、水分や養分の吸い上げも無くなる事から、寒じめをはじめる前には充分に育成させておく必要があり、冷たい空気の中でも日光をたっぷり当てる事で糖質が増える事から、比較的手がかかる栽培方法だと言えます。
売り場での価格は通常の栽培方法の物と比べると若干高めになるのですが、見かけたら食べ比べてみる価値はあるのかもしれません。
第911回 有効予防
2007年12月18日
毎年、冬の時期になるとインフルエンザの流行に関するニュースをよく耳にする事になります。大陸からの風向きや乾燥した空気、強い風など、ウィルスが飛散しやすい環境が整う事もあって、毎年同じくらいの時期に流行が繰り返されていますが、今年はそれがかなり早めと言われています。
現在、多くの国で新型インフルエンザの大流行を想定した抗ウィルス薬の備蓄が盛んに行われています。しかし、抗ウィルス薬やワクチンでは大流行を食い止めるには充分ではないという事は、数多くの研究によって示されています。
インフルエンザをはじめとする呼吸器系ウィルスの動物から人、人から人への伝播を防ぐ措置として、隔離や社会的距離の確保、遮断、個人的予防措置、衛生対策などが考えられます。そうした予防措置やその他の措置、何もしない場合を比較した調査の結果、手洗いやマスク、手袋やガウンの着用は、呼吸器系ウィルスの蔓延に対しそれぞれ単独で有効である事が判っています。
また、それらは併用すればさらに高い効果が得られる事が確実とされ、併用して使用した場合、抗ウィルス薬よりも効果がある事が考えられるとされています。意外と身近なところに流行を未然に防ぐ手立てがあった感じがしますが、昔から実践されてきた事。最新の抗ウィルス薬よりも効果ありというのはちょっと驚きな感じがしないでもないですが、用心は報われるという事だと思えてしまいます。
第910回 夜勤弊害
2007年12月17日
夜勤というとストレスが多い大変な仕事のように思えてしまいます。実際、本来は眠るべき時間を起きている事がさまざまな弊害に繋がってしまう事は、以前から指摘されてはいました。先日、そうした弊害の一環として、発ガンリスクが高まってしまうという気になる研究結果が発表されていました。
これまで数々の研究から夜間勤務とガンの関係を示す結果が得られていました。疫学データ上では、看護士や客室乗務員などの交代制勤務を行う職種で乳ガンリスクが高まる事や、前立腺ガン、大腸ガンのリスクも増大する事が示されていました。
夜間に活動をして光を浴びる事がリスク増大に顕著に結び付いている事から、夜間に光を浴びる事でメラトニンの分泌量が減少してしまう事が原因として有力視されています。メラトニンは脳の松果体から夜間、暗いときに作られ、さまざまな生理学的システムに作用する事で知られています。
メラトニンはガンの抑制遺伝子を含む免疫系統にも影響を及ぼしている事が考えられ、夜間、起きていて光を浴びる事で分泌量が減少すると、正常な免疫系統の働きが弱まる事が考えられるため、発ガンリスクの増大に繋がると考えられます。
また、睡眠パターンが不規則になる事は、思いのほか身体へのストレスとなる事から、ストレスによる免疫力の低下も発ガンに繋がるという考え方もできます。
今回の研究で示されていた事は、あくまで発ガンリスクを高める可能性があるというだけで、アスベストや喫煙のように明確な発ガン因子となりえるものではないとされます。やはり睡眠は健康にとって重要な要素であり、仕事で遅くなるときは、他に何か健康に良い事をして補っておくべきという事でしょうか。
第909回 益と害
2007年12月14日
コレステロールの善玉、悪玉という扱いを見ていると、どことなく人という存在がわがままに思えてきます。HDL(高比重リポタンパク)は善玉コレステロールと呼ばれ、LDL(低比重リポタンパク)は悪玉コレステロールと呼ばれています。
両者の違いはその正反対の働きにあり、HDLは全身からコレステロールを回収して肝臓へ持ち帰る働きがあり、LDLは肝臓から全身へとコレステロールを届ける働きを持っています。
今日、食生活の影響でコレステロールが過剰な状態にある事から、回収してきてくれるHDLは善玉とされ、配達するLDLは悪玉とされています。もし、コレステロールがなかなか摂取できない成分で、身体にとって不可欠にも関わらず不足しがちな成分だとしたら、回収してしまうHDLは悪玉と呼ばれ、全身に届けるLDLは善玉と呼ばれていたのかもしれません。
似たようなもので、自然界に存在しながら人の都合によって害虫、益虫という区別をされている昆虫がいます。蚕や蜜蜂は直接の収入を与えてくれる事から、益虫の代表として扱われます。人に直接利用できる資源を与える、もしくは害虫とされるものを退治する。益虫にはそうした定義が当てはめられています。
同じく人に利用可能な資源を与えるものですが、そのものが食材となるイナゴ、蜂の子、ザザムシなどは益虫と呼ばれる事がない事から、益虫の定義の不確かさを感じずにはいられません。
害虫にしてもその代表の一つとして殺虫剤のラベルにまで姿が描かれ、指名手配書付きの害虫という感じがするゲジゲジは、圧倒的な脚力を生かしてゴキブリなどの害虫を捕食してくれています。ゴキブリを捕食してくれる数少ない存在ですが、その姿ゆえでしょうか、益虫と害虫という曖昧な判断に翻弄されているようで、どことなく気の毒な気がしてしまいます。
第908回 黄色い風物詩
2007年12月13日
春が訪れると遠くの景色が見渡し難くなり、停めていた自転車のサドルに小さな砂埃がうっすらと積もっている事があります。春の風物詩とも言える黄砂の跡です。黄砂は春先の3月から5月にかけてよく観察されていましたが、最近では春以外の季節にも観測される事が多くなってきました。
特に中国大陸からの風の影響を受けやすい九州では、黄砂は春になると定番のように見られていました。諸外国でもイエローサンドと呼ばれ、地球環境、特に気候変動に影響を及ぼすのではとも考えられています。
中国大陸の砂漠地帯、黄土高原、ゴビ砂漠、タクラマカン砂漠などの砂が嵐によって巻き上げられ、上空の偏西風に乗って飛来するものと考えられていますが、中国の耕地拡大や環境破壊、砂漠化の進行によって規模が拡大し続けているとも言われます。
既に江戸時代の書物にも泥雨、紅雪、黄雪として黄砂に関する記述が見られ、古くからの現象である事が確認できます。しかし、成り立ちから考えると江戸時代では遅すぎる感じがして、遥か昔からの事ではないかと思ってしまいます。
黄砂が大気中に留まると太陽光線を阻害し、農作物の育成を妨げるばかりでなく、気温の上昇を抑えて地球を寒冷化させる事も考えられます。逆に氷の上に降り注ぐと、それまでしっかりと反射していた日光を反射できなくなり、地表を暖めて地球の温暖化を進めてしまうという、気候に対する両面を持っています。
気象庁では、黄砂によって視界が10kmを下回ると黄砂という発表をします。かつては黄砂現象が観測されましたと、春の訪れを感じさせるローカルなニュースとして聞かれていましたが、最近では偏西風に乗って移動する途中で工業地帯の上空を通る事から、さまざまな化学物質を吸着していてアレルギー物質となっている事も疑われています。
微細な砂埃が降り注ぐ現象なので、元々ありがたいものではない感じはしますが、降り注ぐ期間が増えて春という季節感が無くなり、量的にも増えたばかりか化学物質汚染でアレルギーの可能性まで言われるようになると、どことなく迷惑に感じてしまいながら寂しいものがない訳でもありません。
第907回 小さな理由
2007年12月12日
元々虫が苦手なのですが、幸いにも虫はサイズ的に小さいので助かっている感じがします。拡大写真などで見せられると、虫の体の造り自体に生理的に受け付けられない部分を多く見つけてしまうのですが、小さい事で直接目に触れず、日常生活では遠ざける程度で済んでいます。
虫が大きくならない、大きくなれない理由の一つに独自の呼吸システムがあるという意見があります。虫は私達人間のように肺で酸素を取り込み、血液を介して全身に酸素を供給するのではなく、気管と呼ばれる全身に張り巡らされた空気が通る管を使って、直接酸素を取り込んでいます。
そのため体が大きくなる事で、体内の気管が長くなりすぎると呼吸によって生じた二酸化炭素が完全に排出されず、酸素も末端まで届き難くなってしまいます。大型化せず、適度な大きさを守っているのは、そうした事情によるものだという訳です。
太古の昔、地球上の大気には酸素は存在していませんでした。やがて原始の海に生命が生まれ、進化の過程で光合成をするものが出現した事で、大気中に酸素が蓄積されました。酸素は酸化力が強い気体なので、当初毒物として存在していましたが、酸素が持つ強力な酸化力を利用して燃焼という大きなエネルギーを利用するようになると、酸素を呼吸する事はその後の生物にとって生命の維持に欠かせないものとなりました。
身体内の全ての細胞に酸素を運搬し、エネルギー生産のための燃焼によって生じた二酸化炭素を排出する。そのために多くの動物が赤血球に代表される血色素を使っています。血色素は金属を中心にした物質で、酸素が多い時は酸素と結合し、二酸化炭素が多い環境下では結合した酸素を放して二酸化炭素と結合する性質を持っています。
血色素を使って酸素と二酸化炭素の交換を行う事で、より確実なガス交換を行う事ができるのですが、そのためには血液と血色素が必要になってしまいます。昆虫はそれを気管で済ませる事によって、軽量化に成功しているという見方もできます。身体に必要な栄養を運搬するための最低限の体液は備わっているのですが、虫が変に軽く、乾いた感じがしてしまうのは、そうした思い切ったシステムを採用した事によるものなのかもしれません。
第906回 放射冷却の跡
2007年12月11日
寒い冬の夜、外に出て夜空を眺めるときれいな星空を見る事ができます。雲一つなく晴れわたった空を眺めていると、次の朝の事が気になってきます。
翌朝、起きてみると辺りは霜で真っ白になって、車のフロントガラスにはしっかりと凍りついた霜が張り付いています。やがて気温が上がって溶けはじめると、流れ落ちる様子からかなりの水分量だったように思えるのですが、雲一つない夜空の下、どこからそんな水分が来るのか気になった事があります。
霜は大気が冷される事で空気中の水分の飽和点が下がり、氷結点以下に冷されていた車のフロントガラスや木々の葉や枝、屋外に置かれた物などに触れた瞬間に凍結したものです。氷結の仕方によって樹枝状や針状、柱状、無定形などと分類されるようですが、多くの場合は一瞬で凍りついた事を示すかのように表面に均一に広がっていると思います。
気温が下がった事で飽和点が下がり、余剰となった空気中の水蒸気だけで付近一帯を広く覆うだけの霜となる事から、空気中の水分がいかに大量かと思ってしまいます。
しっかりと凍りついたフロントガラスの霜は、いくらワイパーを動かしても表面をなぞるだけなので、今のところ削り落とす事にしています。純粋なアルコールが手に入るのなら凝固点がマイナス114.5度なので、うまく頑固な霜も溶かしてくれ、乾いた布で拭き取れば簡単ではあるのですが、手軽な分、ちょっと割高な感じはします。やはり削るのが一番でしょうか。
第905回 肥満希釈
2007年12月10日
ガンの診断に関しては、それぞれの部位に関する特異的な抗体が指標として用いられています。PSA(前立腺特異抗体)は前立腺ガンの指標として、血液中の濃度を測定する事で前立腺の罹患状態を把握する事に用いられています。
PSAは前立腺から分泌される物質で、本来は酵素の一種として、精子の運動性を高める役割を果たしています。健康な状態では血液中にPSAが漏れ出す事は非常に稀なのですが、前立腺に疾患があると血液検査でPSAを検出する事ができるようになります。
前立腺自体から分泌されている物質なので、健康な人でも多少は血液中に漏れ出す事は考えられるのですが、その検出値は非常に低濃度で、前立腺疾患患者との比較では40倍ほどの濃度の差となってしまいます。この濃度差によって疾患の有無が認識されてきました。
PSAを用いた検査では、血液中の濃度が重要な意味を持っているのですが、これまで肥満によってPSAの血中濃度が通常よりも低く検出される傾向があり、検査結果を調整する必要がある事が知られていました。あくまで傾向として言われ、詳細なメカニズムについては謎とされてきていましたが、肥満によって血液が多めになる事でPSAが薄められている可能性が示唆されています。
ある調査によるとPSA検査を受けた高齢男性のうち、過体重および肥満の男性のPSA値は、正常な体重の男性と比べて20〜25%も低く検出される事が明らかにされています。この状態では、検査結果に基いて正常と判断しても、数年にわたって放置しているうちにガンが成長してしまう可能性もあると言われます。
1988年から2006年の間に前立腺の摘出手術を受けた1万4千人について調査を行った結果、体重が多い男性ほど血液量も多い事が判明しています。血液量が多い事でPSAが希釈された事を裏付ける調査結果として、同じく血液中の濃度を指標とする他の腫瘍マーカーにも当てはまるのではとして、血液検査を行う際に念頭に置いておく事と指摘されていました。
血液の量と体重とは比例関係にあるように言われますが、実際に検査結果にまで影響が出るのであれば、日頃から正確な体重を把握しておかなければいけないのかもしれません。
第904回 黄金と白銀
2007年12月08日
黄金比という言葉を耳にします。この世で最も美しく見える比率とされ、西洋美術には黄金比の比率が多く取り入れられています。有名なギリシャのパルテノン神殿は、正面の比率が黄金比で作られていると言われ、見る者が落ち着いた美しさを感じる理由の一つとされています。
数字で表すと少々難しくなってしまうのですが、基本的に黄金比は線分をaとbの長さで分ける際、a:b=b:(a+b)が成り立つように分割したものとされ、比率的には1:1.618とされます。
黄金比の長方形から短い方の長さの正方形を引くと、残された長方形はまた黄金比になっています。黄金分割と呼ばれる図形処理ですが、それを繰り返していき、正方形の角の部分を滑らかに曲線を描くように繋いでいくと、きれいな螺旋が描かれていきます。
この螺旋は自然界に多く見られると言われ、オウムガイの殻の螺旋やヒマワリの種の配列もこの螺旋に近いものを描いています。厳密には若干縦が短めですが、ハイビジョンテレビも黄金比に近い比率を持っています。やはり落ち着く比率なのでしょうか。
黄金比ほどには耳にする事はないかもしれませんが、白銀比という比率も存在しています。縦と横の長さが1:ルート2となるもので、あまり見た事がないと言われそうですが、実は頻繁に見ています。
コピー用紙やチラシなどでA4版やそれより大きなA3版の用紙を使っていますが、A版に採用されているのが白銀比となっています。用紙のサイズという事で、どことなく外国の規格のようにも思えてしまいますが、日本建築では古くから白銀比を建築の単位として伝統的に受け継いできています。
日本建築では「差し金」という独自の物差しを使いますが、差し金には表裏で異なる目盛りが刻まれています。片側の通常の目盛りに対し、もう片側は丸太から切り出す事のできる最大サイズの角材を記した目盛りで、丸い面を計る事で1.414で割った値が判るようにしてあります。
白銀比が用紙サイズに使われている理由は、白銀比の四角形を長い方の辺で半分にした際、できた図形が元の長方形と相似形になる事にあります。
最も大きいA0のサイズの用紙を半分に切るとA1二枚が得られ、A1を半分にするとA2二枚となります。馴染み深いA4の用紙は二枚を繋げるとA3一枚の大きさになります。旧型となりつつあるこれまでのテレビは、縦と横のサイズ比が3:4であり、正確ではありませんがほぼ白銀比となっています。
黄金比、白銀比、どことなく怪しげな言葉であり、数字で表すと非常に難解な感じもしてしまうのですが、私達の日常には意外と溢れている落ち着きを与えてくれる比率なのかもしれません。
第903回 和洋中文化特殊
2007年12月06日
料理をする際、その料理に合せたさまざまな道具が使われますが、食材を切るという工程が比較的多い事を考えると、そのための道具、包丁はかなり重要な道具となっているのではないでしょうか。
包丁の語源は荘氏の養生主篇に登場する料理人、「庖丁」にあるとされます。庖丁の「庖」は調理場、「丁」はそこの召使を意味する言葉なので、一個人の名前というよりも調理場で働く男、名もない調理人といったところでしょうか。
その庖丁が見事な包丁さばきを見せた事で、魏の恵王に褒められ、その際使っていた刃物が庖丁と呼ばれるようになっています。後に庖が当用漢字から外されたため、同じ音を持つ包で代用する事になったので、今日の包丁になっています。
包丁の造りはそれぞれの料理というより、使い方によって形状が分かれ、大きな分けかたをすると和包丁、洋包丁、中華包丁と特殊な用途に用いられる特殊包丁に分ける事ができ、それぞれの長所を合せて作られた文化包丁は最も普及している包丁ではないでしょうか。
良い包丁を選ぶ際、かつては5000円をラインにそれ以上なら良い包丁で、それ以下ならあまり良くないという意見を聞かされた事があります。近頃ではホームセンターなどでの価格破壊の影響もあって、あまりそうした目安もあてにならなくなってきているのかもしれません。
包丁について注意深く見てみると、いろいろなこだわりや工夫が採り入れられている物があり、価格もかなり大きな幅を持っている事に気付きます。その中にあって、少々疑問を持たずにはいられない物も少なくはありません。
中でも実際の日本刀の刀匠が日本刀と同じ造りにして、銘まで切り込んだ包丁には、特に大きな違和感を感じてしまいます。本来の包丁と日本刀とでは、鍛造し焼きを入れるという工程は共通して見えますが、構造上は全く異なる物となっているからです。
包丁、特に本来の和包丁は鍛造されて刃になる薄い鋼に、補強と適度な厚みと重さを与えるための生鉄を張り合わせて作られ、外側に生鉄、中が鋼となっています。全てを鋼で造ってしまうと、鋼は鉄を精錬して作られる事から、手間ひまがかかり、当時の精錬技術では鉄からの歩留まりも悪い事から、非常に高価な物となってしまう事が考えられます。
それに対し日本刀は鋼の刀身の芯の部分に生鉄を入れて造られ、外側に鋼、中に生鉄と包丁とは逆の構造になっています。鋼だけで造ってしまうと強い反面、脆くなって折れやすくなるのを防ぐためです。鋼を繰返し折り返してパイシートのような多層構造を持たせるのも、強さとしなやかさを併せ持たせるための工夫となっています。
折り返し鍛錬と焼きを入れる際の微妙な加減で刀身の表面に微細な文様や粒子を生じさせ、森羅万象を表現するという事も刀匠の腕の見せ所となっているのですが、美術的価値と武器としての機能、高い精神性を求められる日本刀ならともかく、トマトやキュウリを切る包丁にそれが必要かと思ってしまいます。
また、切るという事に関しても、骨ごと肉を分断して刃こぼれしない構造の日本刀と、素材を切ってまな板で止まるようになっている包丁では、刃の細かな形状から違っています。
それで価格が同じならば、生活雑貨の中にもある程度の遊びが必要と感じる身としては歓迎できるものもあるのですが、軽く数倍はしてしまうのでは、暇な時は台所の片隅で包丁の地鉄に浮かぶ鉄の文様を楽しむ趣味の持ち主にしかお薦めできないと思ってしまいます。
第902回 血糖コントロール
2007年12月05日
ダイエット方法の一つに低インシュリンダイエットと呼ばれるものがあり、それなりにブームになっていました。インシュリンというと糖尿病との関連がすぐに思い浮かぶだけで、ダイエットとはあまり関係ない感じがするのですが、実はメカニズム的に深くダイエットと関わっています。
インシュリンは体内のホルモンで唯一、血糖値を下げる働きを持っています。インシュリンを分泌する事ができなくなったり、インシュリンに反応できなくなってしまうと、血糖値を良好な状態に保つ事ができなくなってしまい、糖尿病に陥ってしまいます。
そんなホルモンであるインシュリンが何故ダイエットかと言うと、血糖値を調整する仕組みにその理由があります。血液中の糖分が増える、血糖値が高い状態になると、身体は血糖値を下げる必要がある事からインシュリンを分泌します。
インシュリンはその働きとして血液中の糖分を脂肪細胞の中に摂り込むように促し、血糖値を下げます。結果的に血糖値は下がるのですが、脂肪細胞は糖分を摂り込み、脂肪を蓄える事になってしまいます。
そのためインシュリンを作用させないようにして、脂肪細胞への糖分の摂り込みがなくす事で、脂肪を増やさずダイエットに繋げるという訳です。
インシュリンは食後に血糖値が上昇する事に合せて分泌されます。そのため、血糖値が上がり難い食べ物を選ぶ事や食べ方をする事で、インシュリンの分泌量を低くする事ができればダイエットを成功させる事ができると言えます。
力士が最初にやる事と言われる1日の食事を2食にする理由は、この低インシュリンダイエットを逆手に取ったやり方と言え、食事回数を少なくする事で一回の食事の後に血糖値が上がる際のインシュリン分泌量を高めて脂肪の量を増やす事を容易にしています。
その逆の方法がスーパーモデルなどが行っていると言われるもので、1日に6食と食事回数を増やす事で血糖値の上下の変動を少なくし、インシュリンが出にくい状況を作って脂肪の蓄積を抑えていると言えます。
低インシュリンダイエットを成功させるには血糖値のコントロールが重要になってくるので、少量の食事を回数多く摂取して、血糖値の上下の振幅を少なくする事。そして血糖の元となる炭水化物を少なくする事が重要になってきます。
糖尿病に食事療法のためにGI値(グリセミックインデックス)を示した表があります。GI値はブドウ糖を100として、食べ物別に血糖値の上がり方を指数にして表示しています。GI値の表を片手に血糖値の上がり方が少ない食品を選び、それらを回数多く食べて血糖値の管理を行う事。どちらかと言えばダイエットにしては楽な方のような気がします。効果は個人差が大きそうですが...。
第901回 現役続行
2007年12月04日
年を取ると動きが鈍くなり、運動能力が衰えていくのは当然。高齢者でなくてもそう思っている事は自然な事であり、それゆえに運動をしなくなる高齢者も多い事と思います。しかし、それは誤解であり、そのような誤解は簡単に解消できる事が先日行われた研究で示されていました。
今回の研究では普段から運動をしない65歳以上の高齢者46人を対象に、週一回、1時間程度のペースで合計4回のグループセッションを行い、健康指導員が再帰属訓練と呼ばれる技術を用いて、年を取れば運動しなくなるものだという考え方を改め、高齢になっても運動を続ける事が可能であるという考えを持つよう指導しています。
毎回のセッションの後には筋力、耐久力、柔軟性を高めるトレーニングを含めた1時間の運動講座を実施し、運動に対する精神的、機能的面でのトレーニングを行っています。
研究期間中、参加者の1週間ごとの歩行歩数が2万4749歩から3万707歩に24%も大きく増大し、精神的な面での健康も改善され、日常の動作困難や痛みの減少、活力の増大などが観察され、睡眠の質も向上したとされています。
私達の中に出来上がっている高齢者像、まずそれを打破する事が大切なのかもしれません。運動能力が劣る高齢者が動き回る事で、さまざまなリスクが生じてしまう。それ故にあまり動かない事を薦め、やがては動けない高齢者を作り出していたのかもしれません。そんな悪い流れに反省させられてしまう研究内容です。
第900回 元素番号9
2007年12月03日
お蔭様でこのコラムも900回を迎えました。毎回きりの良い数字の際は、その数字にまつわる話をするようにしてきたので、今回も9に関する話題にしてみようと思います。
元素番号9、9番目の元素はフッ素です。難しい言い方をすると最も軽量なハロゲン元素で全元素中最も大きな電気陰性度を持ち、化合物中では常に−1の酸化数をとるという特徴を持った元素です。と言うといまいちよく解らないのですが、フッ素は意外と身近な元素ではないでしょうか。
自然界には化合物として蛍石の状態で手に入るフッ素は、古くから製鉄などに使われてきました。必須微量元素の一つという主張もあり生命維持に欠かす事ができないという意見もありますが、欠乏と過剰の量的な範囲が狭く正確には理解されていません。
化合物ではなくフッ素が単体で存在する場合、淡黄褐色の気体で特有の臭みがあり、非常に強い酸化作用を持っています。猛毒なので電気分解によってフッ素を単離しようとした研究者を、短時間の間に中毒症状に陥れた事例は多く残されています。
何となく難しげで怖い感じがしてきますが、代表的な利用法の一つであるテフロンの名前を出すと急に身近に感じられるのではないでしょうか。ポリマー樹脂は一般的に炭素と水素から構成されていますが、その水素をフッ素に置き換える事で普通とは異なる性質のフッ素化ポリマーを得る事ができます。
フッ素化ポリマーは撥水性に優れ、耐薬品性、耐熱性にも優れています。その性質を利用して家庭用のフライパンのコート材に用いられ、焦げ付きが少なく、油汚れもすぐに洗い流せる便利なフライパンとなっています。最近では表面処理の硬度も上がり、金属製のヘラなども使えるようになってきていて、便利な物となった事でさらに広く普及しています。
フッ素化合物の一つであるフロンは、クーラーや冷蔵庫の冷媒として広く使われています。一部のフロンには塩素原子が含まれ、それがオゾン層を破壊するとして使用が禁止され、塩素原子を含まない代替フロンへと代わってきています。
最近、そうした代替フロンは強い温室効果がある事が言われてきているので、やがて冷媒としてのフロンは見かけなくなってしまうのかもしれません。
意外なところでは、フッ素はガラスの屈折率を低下させる働きがある事から、光ファイバーなどに使われ、屈折率の制御には欠かせない元素となってきています。
最も身近な用例の一つは、歯磨剤への添加かもしれません。フッ化ナトリウムなどを配合する事で、歯を強化する事ができるとされ、低濃度フッ化ナトリウム溶液によるうがいや2%程度の用量のフッ化ナトリウム溶液の塗布で、効果的に虫歯を防げるとされています。
現在、フッ素が含まれている歯磨剤は全体の9割近くにも上るとされ、ほとんど毎日フッ素に接していると言っても過言ではありません。
何故フッ素が歯を強化してくれるのかは、歯のエナメル質を構成するハイドロキシアパタイトの水素部分をフッ素に置き換え、フルオロアパタイトという虫歯菌が作る酸に強い物質に変えてくれるからです。
フッ素がフルオロアパタイトを構成するためには、一定以上の濃度が必要なので、歯磨剤が唾液などで薄まらないよう、保護したい歯は最初に磨いてやらないと効果が薄いかもしれません。
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