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第956回 ヘビ、ヤブヘビ?
2008年02月29日
幼少の頃、近所の子供達で野イチゴを摘みに行っていました。年長の子に連れられて野イチゴが多く自生している場所へ行き、ひたすら収穫に励みます。赤い小さなビーズを集めて作ったような実は目立つので、それほど時間をかけなくてもそれなりの量を収穫する事ができます。
摘んできた実は軽く洗った後、塩水を入れたボウルに入れて様子を見ます。この時、年長者の子曰く、「沈んでいる実は大丈夫だけど、浮かんでくる実はヘビイチゴなので食べてはいけない」という事でした。
当時はあまりよく意味が判らなかったのですが、とにかくヘビイチゴという言葉の響きに何やら危険なものを感じ、素直に浮かんでくる実だけは食べてはいけないと思っていました。
ヘビイチゴは別名「毒イチゴ」と呼ばれる事もありますが、実際には毒はありません。ヘビが出そうな湿気の多い藪に自生する事から、またはヘビイチゴを食べに来た小動物をヘビが狙うという事でヘビイチゴと呼ばれるようになり、ヘビのイメージから毒があるように思われてしまいます。
普通のイチゴが白い花を付ける事に対しヘビイチゴは黄色い花で、花の形は似ていますが、別な種類のような印象を受けるようにヘビイチゴは、普通のイチゴと同じバラ科にはなりますがヘビイチゴ属という独自の種類になります。
同じヘビイチゴ属の仲間には、ヘビイチゴよりも実が大きく、藪を好んで自生するヤブヘビイチゴがあり、何か余計なものを見てしまったような印象を受ける名前だと思ってしまいます。
いずれも毒はなく安全ではあるのですが、味はいまひとつ美味しくないとされ、あまり好んで食用にはされません。確かに子供心に野原で摘んでくるという楽しさはありましたが、美味しいとは思えない感じはしていました。
今から思うと、収穫した野イチゴすべてがヘビイチゴで、浮かんでくるのは傷んでいたり虫食いなどがあるため。塩水に漬けるのは比重によって浮き具合を判断するというよりも、塩の作用による消毒の意味があったように思います。いろいろと後になって判ってくるものはありますが、素直に毒を怖れていた頃の方が楽しかったようにも思えてしまいます。
第955回 お馴染みの新医療機器
2008年02月28日
全地球測位システムと言ってしまうと難しく聞こえてしまいますが、すでにお馴染みとなっているGPSの事です。今から思うと最初にGPSを見たのは映画「007」の中での事で、追跡している敵の車の位置を地図上に表示する夢のような機材として登場していました。
その後、GPSは急速に発展しながら日常の中に溶け込み、カーナビや携帯電話など、多くの製品に組み込まれて利用されています。医療分野では、個人の現在位置を特定できる事から、事故が起こった際、いち早く救護を必要とする人の位置を特定する事や、認知症による徘徊者の位置の確認などにも応用されてきています。そんなGPSに新たな利用法が提案されていました。
末梢動脈疾患は脚(下肢)の動脈に閉塞が生じ、歩いている時に激しい痛みを引き起こす疾患として知られ、心血管の疾患死のリスクが5倍近くも高まるとも言われています。
現在、末梢動脈疾患の診断は、患者が歩行による脚の痛みで動けなくなるまでに、平坦な地面でどれだけの距離を通常の速度で歩く事ができたかという最大歩行距離を元に重症度が計られています。
最大歩行距離の測定には運動負荷試験が標準的に行われ、研究室内という限られた空間で日常を想定しながら一定の歩行を行う必要があり、日によって異なる歩行能力や歩行中にも変化する個人の状況を考慮しなければならないという難しい面を多く持っていました。
今回、そうした最大歩行距離の測定試験にGPSを用いる事で、より手軽で正確に測定が行え、末梢動脈疾患の重症度の判定ができるようになる事がレポートされています。
末梢動脈疾患の患者に公園内を散策してもらい、GPSとコンピューターの表計算ソフトを用いて患者の最大歩行距離を分析する事で、歩行距離の他に歩行速度や休憩時間、歩行回数などを長時間にわたり負担を少なくして実施する事が可能となっています。
最近、某テレビショッピングでGPS機能を備えたポータブルタイプのテレビが手軽に持ち運べるという事がアピールされていましたが、同じように持ち運びが簡単になったノートパソコンと合わせて、和やかな公園が診察場所となる日が近付いているのかもしれません。
第954回 洗眼禁止
2008年02月27日
中学まで水泳部に入っていたせいで、いまだに塩素の臭いを嗅ぐと懐かしく感じてしまう事があります。プールの水は水道と同じなので当然塩素を含んでおり、プール自体にも消毒の意味を込めて塩素が撒かれていました。
その日の練習が終わると丸い塩素のタブレットをプールに投げ込み、一定の塩素濃度を保つようにし、水着に着替えてプールの前に消毒用に入る、小さなプールには粉末の塩素を加えて濃い塩素濃度を保つようにしていました。
夏休みになると練習時間も長くなるので、練習を終えて帰る頃には視界がもやがかかったようになり、白く濁った景色を眺めながら帰途についていた事が思い出されます。
そんな白くなった視野が少しでも良くなればと、一定の間隔で穴が開けられた鉄製のパイプから上がる水で眼を洗っていたのですが、プールの後、水道水で眼を洗う事で感染症を予防しようとする洗眼は、実は逆効果である事が指摘されています。
現在、国の基準でプールの水質基準は決められています。その塩素濃度に従って塩素を溶かした生理食塩水を用意し、比較対照用にただの水道水、生理食塩水、純粋な蒸留水を用意して50秒間眼を洗ってもらい、眼の表面で起こる事を観察します。
その結果、塩素消毒剤入りの水で眼を洗った場合、角膜の上皮細胞が破壊される程度が他の3種類の水よりも激しく、角膜の表面にある粘液を洗い流してしまう作用も強い事が判りました。同じく塩素を含む水道水でも粘液を洗い流す作用は同程度に見られています。
角膜の上皮細胞が損傷したり、角膜を保護するための粘液が失われる事は、角膜自体の防御力を著しく低下させ、感染症を引き起こす可能性が高まる事は容易に想像する事ができます。
プールへの塩素の添加は発熱や結膜炎を引き起こすプール熱の感染拡大を防ぐ意味があり、同じ目的でプール利用後の洗眼が推奨されています。眼科医の間ではかねてよりプール後の洗眼が問題視されていたそうですが、根拠となる研究が少なかったために問題提起にまでは到っていません。
今回の研究を受けて、プールの中で眼を開ける場合はゴーグルを使用する事。そうでない場合はプール後の洗眼は避ける事が推奨されています。今年の夏、プールで泳ぐという方は、忘れず実践される事をお奨めします。
第953回 盲点発見?
2008年02月26日
ダイエットの観点から代替甘味料や人工甘味料を使用し、カロリーオフといった表示を行った商品を見かける事も珍しくはなくなってきました。代替甘味料の使用はオリゴ糖などが多く、消化できない糖分を使う事によって体内への吸収をい妨げ、糖分の摂取を抑えるという考え方が元になっています。
それに対し人工甘味料の多くは、一般的な甘味である砂糖と比べてカロリー的にはそれほど変わらなくても、極度に甘味が強い物が多く、同じ甘さを発生させるために使用量が極端に少なくて済む事から、砂糖を使用する場合と比べてカロリー自体を低く抑える事ができています。
そんな人工甘味料について、それほどダイエットには繋がらない、むしろ体重を増加させてしまうのではないかという、ちょっと気になる研究発表が行われていました。
身体は甘い食べ物を摂取した際、その甘さから糖分が吸収されてやがて血糖値が上昇する事を予測します。人工甘味料で甘さを付けている食品を摂取した場合、甘さはしっかりと感じられますが、その後の血糖値の上昇が起こらない事から、身体が満腹を感じるプロセスが阻害される可能性があると指摘されています。
食べ物を摂取すると身体は潜在意識下の自動的な働きによって、どのくらいのエネルギーを摂取した食べ物から取り込む事ができるかを推測しています。甘味は身体を動かす事に必要なカロリーを摂取したと判断され、身体はそれに備えた動きをはじめます。
しかし、甘味を感じた後に血糖値の上昇が起こらず、実際のカロリーの摂取が確認できないと消化器系に混乱が生じ、それ以降の甘味に対する代謝率の変動が起こらなくなると言います。
その事はラットを使った実験で検証されており、無糖のヨーグルト、ブドウ糖で甘味を付けたヨーグルト、人工甘味料であるサッカリンで味付けしたヨーグルトという3つのグループに分けて飼育を行うと、サッカリンで味付けしたヨーグルトで飼育されたラットの体重増加が顕著で、食べる量も多く、代謝率の目安である体温の上昇が低い事から、代謝も下がっていた事が伺えます。
人の場合は常日頃から人工甘味料の多く接しているため、ラットほど顕著に結果が出ないとされますが、単純に味覚が甘味を与えられた事だけで満足し、身体が何らかの不満を蓄積させていないとは言い切れないものはあると思います。これだけ甘味を摂取したのにカロリーは充分に得られない。それならばより多くの甘味を摂取するようにしなければ...。無意識下で身体がそう考えしまいそうな気が大いにしてしまいます。
第952回 懸念払拭
2008年02月25日
昨年、大きなニュースとなったものの一つにiPS細胞の作製というものがありました。iPS細胞とは「誘導多能性幹細胞」と呼ばれるもので、新型の万能細胞とも呼ばれています。
これまで身体のさまざまな細胞に変化する事ができ、再生医療の要ともなる幹細胞は、人の胚を素材として用いる事から、技術的な問題以上に倫理的な問題が論じられてきていました。
iPS細胞は人の皮膚細胞を元とし、それを再プログラムするかたちで作られる事から、倫理上の問題も考慮する必要なくいろいろな疾患の治療に役立てる事ができると考えられています。
しかし、そんなiPS細胞に一つの大きな懸念が付きまとっていました。iPS細胞を再プログラムするための遺伝子の導入に細胞のガン化に関連したレトロウィルスを用いる必要がある事から、iPS細胞自体も発ガン性を持つ可能性があるとされていました。
今回、iPS細胞の作製者の一人でもある京都大学の山中教授をはじめとしたチームによる研究では、作製されたiPS細胞が成熟した成体細胞に由来するものである事を裏付けた上で、再プログラムに用いられたレトロウィルスが腫瘍を引き起こす染色体の部位には組み込まれない事を突き止め、iPS細胞がガン化する心配がない事を示しています。
今回の研究結果は、iPS細胞を用いた医療という点で大きな前進と捉える事ができますが、作製者の山中教授自身、「実際に医療に利用できるようになるまでには、さらに数年の基礎研究が必要」とコメントしているように、これからという部分を多く残してはいますが、明るい未来へ一歩前進できたようにも思えます。自分の細胞で、それまで治療が不可能と思われていた疾患を治療する。待ち遠しく思えてしまいます。
第951回 ボルシチの赤
2008年02月22日
以前、準備中の給食室へお邪魔する機会があったのですが、その際、今日のメニューは何ですか?と尋ねたところ、ボルシチですよと給食のおばさんに教えられ、最近の給食も変わったものだと思った事があります。
バイキング形式の給食の登場以来、私の頃とはずいぶんと様変わりしてしまったのだと、給食の話題を聞くたびに思ってしまいます。
その日のメニューだったボルシチは、ロシア料理の代表的なメニューでもありますが、発祥の地はウクライナと言われ、旧ソビエト連邦の各地にシベリア風、モスクワ風といったさまざまなレシピが残されています。
基本となるのは肉や野菜を煮込み、サワークリームを添えた物ですが、欠かせない物としてウクライナの言葉でブリャーク、お馴染みの言葉ではビーツがあります。
体に優しい糖分として「てんさい糖」が販売されていますが、てんさい糖の材料となるてんさいはこのビーツの一種であるシュガービートで、味噌汁の具材でお馴染みのふだん草もビーツの仲間のリーフビートです。
ビーツは赤い色をしていて姿は似ていますが、日本の赤カブとは別の種類となり、赤カブとは違い皮だけでなく中身まで赤い色をしています。この赤い色は食用色素としても使われています。
ボルシチは一見赤い色をしている事から、トマトを加えているようにも思われてしまいますが、特有の赤い色の素はビーツによるものとなっています。
野菜と一緒にビーツを刻んで加え、煮込むうちにビーツの色素が溶け出し、ボルシチ特有の色合いとほんのりとした甘味を加えてくれます。ボルシチをただの煮込み料理と違えているのは、このビーツの存在かもしれません。あの日の給食、寒い日だっただけに特に美味しそうに見えてしまいました。
第950回 はんごろし?
2008年02月21日
九州ではまったく使う事のない言葉なので、最初聞いた時はかなりの違和感を感じたのですが、もち米にうるち米を混ぜて炊いたものを軽く潰して作った餅やそれを丸めた物、もしくはそれに餡を付けて作られるおはぎを「はんごろし」と呼ぶ方言があります。
主に日本の北の方で使われているらしく、調べてみると東北や北海道といった広範囲な地域で使われている例を見ます。最初に聞いたのが群馬の人からだったので、あまりのインパクトにその人の出身地特有と思ったのですが、意外な地域の広がりに驚いてしまいます。
使用例としては、「お祖母さんが帰ってきたら、おはぎを食べましょう」というものが、「祖母ちゃんが帰ったら、はんごろしにすっけ」となるらしく、かなり穏やかではないものを感じてしまいます。
また、東北地方では、すいとんの事をその作る時の動作を元に、「とってなげ」と呼ぶ事があるらしく、「すいとんを食べようか、おはぎにしようか」という言葉は、「とってなげにすっか、はんごろしにすっか」となると聞かされ、かなり攻撃的なものを感じてしまいます。
同様の言葉に「みなごろし」というものもあるとされ、はんごろしは軽く潰した物を指す事に対し、完全に潰して餅の状態にしたものは、「みなごろし」と呼ぶそうです。潰すという行為が殺すと表現された事が明白ですが、なんとも物騒な使用例だと思ってしまいます。
第949回 デキャンタの効用
2008年02月20日
ワインをいただこうとして味がいまいちと感じてしまった時、デキャンタに移し替えてみると意外と美味しくなってしまう事があります。単に容器が変わった事によって、気分が変わる程度ではない明らかな変化が見られるので、試してみる価値は充分にあります。
デキャンタはワインをビンから移し替える専用の容器で、クリスタルガラスなどを使ったワインの何倍かの値段がしそうな高級品として見かける事が多いと思います。
本来のデキャンタの役割はワインの味わいを変える事や高級品に見せるといったものではなく、年代物のワイン、特に赤ワインに出来る沈殿物、「澱(おり)」を取り除くというもので、同じ目的でワインのビンの底は大きくカーブを描いたくぼみを作ってあります。
ワインをデキャンタに移す事をデキャンティングと言い、必然的にワインはそれまで詰められていたビンからデキャンタへと移る過程において、多くの空気に触れる事になります。
この空気に触れる事がワインの味わいに大きな影響を与え、余分な酸味や雑味を飛ばして空気を含ませる事で味をマイルドにしてくれます。また、ワインには品質の安定化の目的から亜硫酸塩を含んでいますが、空気に触れる事で亜硫酸塩が飛ばされる事もワインの味を柔らかくする事に繋がります。
亜硫酸塩の添加は昔から行われてきた事で、古式製法ではブドウを搾ったタンクの上で硫黄を燃やし、燃えた硫黄がブドウの果汁に溶けて亜硫酸塩になるというものがあります。
亜硫酸塩の働きは酸化防止に留まらず、発酵中の雑菌の発生防止や澱の分離を良くして、ワインをより透明に仕上げるのにも役立つと言います。良い事尽くめの亜硫酸塩ですが、美味しいものではない事や健康面では決して良いとは言えないものなので、できればデキャンタの使用をお薦めしたいと思ってしまいます。一手間でより美味しくヘルシーにというのは、やはり食の世界では重要な事かもしれません。
第948回 第三の摂取法
2008年02月19日
インフルエンザが本格化してくると予防のためのワクチン摂取の話題が聞かれて、一つの季節を感じるキーワードとなります。子供の頃は学校で集団摂取が行われていて、最初の頃は細い注射器が大量にトレーの上に並べられていたのですが、途中から圧搾空気を使った射出装置のような物が使われていた事が思い出されます。
注射器は注射針を刺される際の痛みが子供心に嫌だったのですが、射出装置でも一瞬の痛みは同じだったように思えます。現在、インフルエンザに関するワクチン接種は注射よるものが相変わらず一般的ですが、それ以外にも鼻からの吸引による鼻粘膜吸収という手法が行われています。
何らかの物質を体内に取り込む際、注射によって直接血液内に送り込む他に飲用して消化管からの吸収、腸管からの吸収、皮膚からの経皮吸収、鼻などの粘膜からの吸収が考えられます。
最近、その中で舌下に摘下して粘膜から吸収させるという、全く新たなワクチンの摂取方法が研究されていました。まだ実験段階と言いますが、実現すれば注射針による痛みを気にする事なく、鼻からの吸引よりも手軽に摂取する事が可能になります。
粘膜には多くの欠陥が集まっていますが、特に舌の粘膜には血管量が多く、舌下に投与する事で吸収が効率良く行われ、広範囲の全身免疫や粘膜免疫が誘導される事も考えられます。
注射針を使用しない事で、開発途上国で見られるような針の再利用による汚染や感染症の拡大を防ぐという、別な面でのメリットも充分に考える事ができます。
また、鼻粘膜からの吸収では、吸収される部位が脳や中枢神経にあまりに近い事から、稀に中枢神経に到達してしまい、危険な合併症が起こる事が懸念されますが、舌下への滴下投与ではそうした懸念はないとされます。
インフルエンザのウィルスは粘膜から体内へ侵入してきますが、ワクチンの舌下投与によって粘膜免疫が誘導されている事で、ウィルスの侵入を効果的に防御する力が高まっているという事が考えら、手軽、安全というだけではないメリットも大きくなります。診断の際、舌を出して喉の奥を検診する事がありますが、その際に済ませてしまうという手軽な施療もありなのではと思ってしまいます。あとは味だけでしょうか...。
第947回 危険補助
2008年02月18日
有名な人の言葉に「禁煙は難しい事ではない。私など既に100回ほど禁煙している」というものがあり、禁煙を思い立ちはしても完遂する事の難しさをユーモラスに示していると思います。
禁煙の難しさは、喫煙が嗜好品の愛用という習慣的な事ばかりでなく、ニコチンという化学物質への中毒症状が元になった薬物依存の状態にある事にも起因していると考えられます。
禁煙によって急にニコチンの供給を絶つ事は、ニコチンの中毒状態にあった身体に禁断症状が起こり、禁断症状に伴う不快感から逃れるために新たなニコチンを求めてしまう事が想定され、それが禁煙を難しくしているので、ニコチンを急速に絶たず、微量を供給し続けながら喫煙の習慣を終わらせて禁煙に繋げるという取り組みが行われています。
そのために使われているのが禁煙補助剤と呼ばれる物で、皮膚から微量のニコチンを供給する貼り薬のパッチや微量のニコチンを含んだガムなどが知られています。
先日、そんな禁煙補助剤で焦燥感や抑うつ感、自殺といった重篤な神経的副作用を及ぼす懸念が報告されていました。問題とされていた禁煙補助剤は製品名シャンティックス、一般名はバレニクリンと呼ばれるもので、既に多くの副作用例が報告されていると言います。
FDA(米国食品医薬品局)では、シャンティックスに関連した自殺行動の事例を491件把握しており、自殺を遂げたケースは39件としています。製造元では因果関係を否定し、症状の一部はニコチンの離脱過程に起因するものではないかとしていますが、やはり気になるものではあります。
FDAでは、シャンティックスの使用を開始する前に精神疾患の病歴について医師に報告するように勧告しています。健康を気遣って行う禁煙なので、そのために使用する補助剤で副作用に悩まされる。まして自殺に懸念もあるというのでは本末転倒な感じもします。シャンティックスは既に日本国内でも製造販売承認が得られているので、今後、禁煙を頑張ろうとい人は注意が必要ではないでしょうか。
第946回 エコ無洗
2008年02月15日
急速に普及した感のある無洗米は、お米を研ぐ煩わしさを軽減してお米離れを防ぐというより、研ぎ汁による環境汚染を防ごうという観点から開発されたと言います。
確かに生活雑排水は環境に対し深刻な与えていますが、お米の研ぎ汁は料理の下拵えにも使え、元が食品由来でもあるので、それほど環境への負荷は大きくないように思えてしまいます。
しかし、実際にはお米の研ぎ汁は粉石けんの15倍以上の環境負荷を持つ汚染源になるとされ、何より食品由来ゆえの栄養の高さが排出された河川を富栄養化して水質の悪化やヘドロの発生を招いてしまいます。
研ぎ汁の中でも特に糠には非常に高い栄養価があります。お米を研ぐ理由の大きな部分は、糠を取り除くというところからきています。糠は栄養的には優れていますが、特有の臭みと苦味があり、炊き上がったお米の美味しさを台無しにしてしまいます。
精米した段階で糠は取り除かれていますが、まだお米の表面にはわずかに糠の層が残されています。お米を研ぐ際、とにかく手早くと言われるのは、水に溶けやすい糠がお米に染み込むのを防ぐ意味があります。
無洗米の洗わずに糠を除くという技術の原点には、ガムの存在があると言います。吸着性のある物を使ってお米の表面に残された糠の層を除くというもので、取り除かれた糠は回収され、飼料や肥料に使われています。
糠の栄養価の高さを有効利用した形になりますが、家庭レベルでも研ぎ汁や糠を肥料として使う例を見かけます。しかし、実際に糠を煮た物を肥料として撒いた事があるのですが、植物はかえって元気がなくなったという経験があります。
糠は栄養価が高いので良いように思えてしまうのですが、植物は無機質しか栄養にする事ができず、有機物の塊である糠が肥料となるには、バクテリアなどによる発酵によって分解される必要があります。
植物の周りに撒かれた糠はバクテリアによって分解されますが、その際に発生する発酵熱によって根が傷んでしまう事があります。農家の方がお米の研ぎ汁を畑の周りに撒く事があるそうですが、それは発酵熱で雑草の根を枯らし、発酵後に分解された養分を肥料とする優れた発想が元になっていると言えます。栄養価が高いというのも難しいものです。
第945回 植物の女王
2008年02月14日
にんにくを食べると体内でにんにくに含まれていたアリインがアリシンに変わり、特有のにんにく臭を発する事になります。アリシンが血液中を巡回し、皮膚呼吸によって体表から蒸散されて臭いを発する事に着目し、バラの香料を血液中に巡回させるようにした商品が、以前大変なヒット商品となっていました。
バラの香りは世界的に好まれ、その気品溢れる芳香と見事な花形は、バラを「花の女王」と呼ぶ所以となっています。歴史的に見ると西洋に比べ、日本では芍薬や牡丹、百合や菊などが好まれ、あまり芳香が特徴の花は評価された感じがしないのは、香水に対する文化の違いがあるからかもしれません。
最近ではガーデニング、特にイングリッシュガーデンの流行に伴ってイングリッシュローズやつるバラに人気が出てきていますが、園芸ではオールドローズ、花束では大輪のハイブリッドティーに人気が集まっていました。
香料としてのバラはブルガリアが主要な生産地となっており、フランスのグラース、リビエラと共に多くを生産しています。観賞用のバラと違い、香りが薄まらないように開き始めをまだ露を含んでいる早朝に手作業で収穫するため、一見優雅そうに見えるバラ農家は結構な重労働とも言われます。
収穫したバラからは、香料の素となるローズオイルが作られますが、1kgのローズオイルを作るためには200万輪のバラの花びらが必要と言われ、如何にバラという香料が高価な物であるかが伺えます。
そんな香料としてのバラの栽培ですが、ブルガリアの社会体制の変革に伴う伝統的なコルホーズ(集団農場)の解体によって、他の作物への転作や離農が相次いだ事から生産量が激減してきています。合成香料も存在してはいますが、やはり天然物は一線を画すものがあります。
昔から西洋では、「バラとアーモンドの贈り物には返す品がない」と言われるほど高級な物として扱われてきましたが、今後さらに香料を中心に貴重な物となっていくのかもしれません。アーモンドもバラ科の植物なので、やはりバラは永遠の植物の女王と言えるのではと思ってしまいます。
第944回 サメヒレ?
2008年02月13日
コラーゲンというと美容素材という感じがして、化粧水や乳液の原料、もしくは粉末や飲料となった物を美肌対策として愛用するイメージがあります。実際のコラーゲンの働きはそれだけに限られたものではなく、身体の各組織を形成する材料である事から、骨を丈夫にしたり、免疫を掌る細胞の餌となる事から、免疫力を高める事にもコラーゲンは関係しています。
そんなコラーゲンを大量に含み、体に良い物として薬膳料理にも使われる高級食材にフカヒレがあります。フカヒレは文字通りフカ=サメのヒレを加工した食材で、中華料理の高級食材として知られています。
繊維状に解れる事から、解して使ったり、形の良い物はそのまま形を残してじっくり煮込んだりして使われ、柔らかなゼラチン質の食感が珍味として重宝されています。
中華料理の素材である事から、中国が主要な産地のように思われがちですが、実はフカヒレの世界的な産地は日本にあります。最近ではシンガポールやインドネシアの生産量が大きくなってきていますが、気仙沼はかつて世界有数の生産地であり、今でも気仙沼はフカヒレの高級ブランドとなっています。
サメが一般的に食用にされない理由の一つにアンモニア臭があります。サメはふやけてしまわないように、身体の浸透圧調整に尿素を用いています。そのため身体の組織には尿素が蓄積されており、鮮度が下がると加水分解されてアンモニアへと変わっていき、食用ととして敬遠される事になります。
フカヒレも同様にアンモニア臭を持っているのですが、加工によってそれを取り除き、無味無臭の状態に仕上げています。加工技術がフカヒレの質を左右すると言われ、最初の天日干しだけでも50日近くを要するほど、多くの手間と時間を必要としています。そうした加工技術の蓄積が、日本産のフカヒレを世界一にしている要因とも言えます。
サメは東日本では普通にサメと呼ばれ、特に大きなものがフカと呼ばれる傾向があります。それが西日本になると何故か逆転し、普通はフカと呼び、特に大きなものをサメと呼ぶようになります。
フカヒレは、最初に製造されたのが長崎であった事や、主要な種類があまり大きくないヨシキリザメであった事からフカのヒレとなったと考えられます。率直な感想ですが、フカヒレの方がサメヒレよりも美味しそうに感じてしまうのは、単に慣れの問題でしょうか...。
第943回 備前、越前
2008年02月12日
以前、知り合いのシェフの厨房にお邪魔した際、幅の広い黄土色の皮のような物が広げられていたので、それが何であるのか気になって聞いてみた事があります。シェフは冗談で犬の皮と答え、ちょっと気持ちが悪くなったのですが、後にそれは中華風サラダに使われたクラゲである事を知りました。
今から思うと、直径1mくらいもある大きな物だった事から、エチゼンクラゲではないかと思うのですが、当時は少量しか使わない食用クラゲがあのように大きな物とは考えられませんでした。
エチゼンクラゲはクラゲの中では最大級の傘を持ち、1m以上も大きくなります。ここまで大きくなるクラゲ世界的にもエチゼンクラゲしかなく、同じく食用にされるビゼンクラゲ、スナイロクラゲでも傘の直径は50cm程度なので、エチゼンクラゲはかなり大きな存在である事が伺えます。
越前でよく獲れたためその名が付いた事は容易に想像できるのですが、生息域は越前に留まらず、日本海、東シナ海と幅広く生息しています。
淡白な味わいと独自の食感、透明感が特徴の食用クラゲは、主に中華料理の食材として知られ、高級食材でもあるのですが、原価は非常に安いとされ、漁師さん達はあまり積極的に漁を行う物ではないとも言われます。
英語ではクラゲの事をゼリーフィッシュと呼びますが、如何にクラゲが水分を多く含む生き物であるかが表現されているように思えます。直径1mを超える巨体のほとんどが水分で構成されているという事で、かなりの重量になり、網にかかった物を引き上げる際の労力、網への負担は容易に想像できます。
また、毒性は低いのですが、触れるとバネ仕掛けのように毒針が飛び出してくる刺胞と呼ばれる細胞を持ち、刺されるとそれなりに痛い事からも、クラゲが網にかかると嫌われる事が理解できます。
最近では大量発生のニュースが聞かれ、たくさんのクラゲが網にかかって迷惑しているという場面を目にする事もあるのですが、クラゲ好きの私としてはその都度、今夜のサラダに1匹...と思ってしまうのですが、直径1mのクラゲ、何人前のサラダになる事かと考えてしまいます。高級食材ではあるのですが、明らかに需要と供給のバランスが取れていない食材なのかもしれません。
第942回 発酵筍
2008年02月08日
ブームは一段落した感はありますが、B級グルメの定番としてラーメンの存在は欠かす事ができません。一言でラーメンと言ってもさまざまな地域によって特色があり、スープや麺に違いがあって似て非なる物という事さえできます。
そんなラーメンに共通する物と言えば、麺とスープを除けばメンマとチャーシューではないかと思います。メンマはシナチクとも呼ばれ、シナチクは文字通り「支那(中国)の竹」から来ています。
メンマは、中国南部、台湾の麻竹のタケノコを乳酸発酵させて作られる加工食品で、麺類に添えられる麻竹から「麺麻」と呼ばれるようになっています。メンマの呼び名が一般化したのは昭和50年代になってからの事で、それまではシナチクという呼び方が一般的であったとされます。
中国産と台湾産、乾燥物と塩蔵物があり、中国産よりも台湾産の方が高級とされ、乾燥物の方が塩蔵物よりも高級とされています。乾燥物、塩蔵物共に一旦水で戻して塩抜きをする必要があり、この戻しがメンマを美味しく仕上げるには重要とされます。完全に戻してしまうと後の味の染みが悪くなって味がぼやけてしまう事から、微妙な戻し加減が美味しさの秘訣となります。
中華料理のイメージが強いメンマですが、戻されたメンマの味付けは意外にも日本の煮物と同じ調味料が使われています。しょうゆ、みりん、ごま油、酒、塩などが使われ、煮物との違いはコショウ、オイスターソース、XO醤が使われる事で、弱火で煮込んで仕上げられるあたりも煮物に似ています。
基本的にタケノコの煮物と同じ感じなのですが、市販のタケノコの水煮を使って煮込んでもタケノコの煮物になるだけでメンマになる事はありません。両者を分けているのは孟宗竹、和竹、麻竹といった竹自体の種類ではなく、発酵という工程が含まれているかで、メンマ特有の風味は発酵によって作り出されています。一見煮物に見えるメンマですが、実は発酵食品という奥深いものがあります。
第941回 分解マンション
2008年02月07日
PCB、ポリ塩化ビフェニルは毒性が強く、地球規模での環境汚染の原因となっています。最も燃えにくい油とも言われ、熱に対し極めて高い安定性を持ち、電気絶縁性が高く、薬品などに影響されない耐薬品性にも優れているとされ、その優れた特性から、熱媒体、絶縁油、塗料、溶剤など幅広く使われてきました。
日本では特に1968年に起こった「カネミ油症事件」でPCBの名前と毒性の高さが知られるようになり、1974年以降は製造および輸入が原則禁止となっています。しかし、それ以前に製造、使用されたPCBは、その安定性の高さから自然に分解する事なく、多くが残されています。
安定性の高いPCBですが、塩素を取り除いてやる事ができれば自然界で分解し、無毒化される事が知られています。環境中にばら撒かれ、土壌や地下水を汚染したPCBを取り除くには、これまで土壌すべてを入れ替えるしかないとされてきましたが、微生物を使ってPCBの塩素を取り除くことができれば、安全に無毒化する事ができます。
これまで微生物を使ってPCBを分解させる試みは幾度も行われてきましたが、PCBは塩素の結合の仕方で200種類以上存在し、特定の微生物によって一部のPCBを分解する事はできても、すべての種類のPCBの分解は難しいとされてきました。
先日、考案された新たな微生物によるPCB分解に関する手法は、塩素化合物を好む微生物など約30種を一緒に集めておき、さまざまなPCBから一斉に塩素を取り除くという画期的な方法でした。
素材の表面に直径数十マイクロメートルという小さな穴が無数に開いたガラスビーズやセラミックボールなどを微生物群が棲息するマンションに見立て、微生物の生息に最適な環境を用意します。実用的にはそれらで透過性のある浄化壁を作り、PCBによる汚染源を浄化壁で囲む事によって浄化を行います。
将来的には微生物群の中から塩素を取り除く微生物を特定し、培養して土に混ぜ込む事ができれば、PCBを無毒化する事のできる土を作る事ができ、安全性が極めて高いPCB分解技術が確立される事になります。環境を汚染するPCBを環境の力で分解するというのは、優れた試みではないかと思えます。
第940回 嗅げてます?
2008年02月06日
風邪のシーズンに合わせたわけではないでしょうが、最近、ホームセンターなどがリニューアルされて薬局が売り場に加わるという場面をよく見かけます。規制緩和のお陰だと思うのですが、市販薬が気軽に買えて便利になってきたと実感しています。
少し風邪っぽい感じはするが、病院へ行ったり休みを取るほどでもないので、手軽な市販薬で済ませるという人も少なくはないと思います。風邪に限らず頭痛がするので鎮痛剤、熱っぽいので解熱剤というのも日常的な事でもあります。ところが、それで突然重いぜんそくのような発作が起き、死に至るという事があるとしたら...。
最近、頭痛薬などで知られたアスピリンと同じような作用を持つ薬剤、解熱剤や風邪薬によって誘発されるぜんそくとして「アスピリンぜんそく」と呼ばれる症状が増え、医療現場で問題になっていると言います。
アスピリンぜんそくは、アスピリンをはじめとする非ステロイド系抗炎症薬が原因で起こるとされ、30代以上の発症例が多く見られています。女性の方が発症例が多く、はじめから重症化する事が目立ち、ぜんそく発作による突然死の41%がアスピリンぜんそくによるものであるという報告もあります。
原因としては好酸球という白血球の一種が関わっている事と、体質的な事が考えられていますが、傾向としてアスピリンぜんそくを発症した人の約8割で、鼻の中にキノコ状のポリープが見つかっていて、以前からにおいが判りにくくなっていたと言います。
においが判りにくくなっていたり、薬剤に過敏、慢性鼻炎などの自覚症状がある人は、風邪などで安易に市販薬に頼る前に、早めに検査を受けておいた方が良いのかもしれません。アスピリンぜんそく発作の誘引は風邪薬などの内服薬に留まらず、塗り薬、シップ薬、点眼薬、防腐剤や着色料などの食品添加物でも引き起こされると言います。
もともと好酸球は寄生虫を退治する役目を担っていたそうですが、最近ではその活躍の場はほとんどなくなっていると言えます。アスピリンぜんそくは、そんな寄生虫不在と化学物質蔓延の時代の産物なのかもしれません。
第939回 スタートライン
2008年02月05日
エボラ出血熱・・・いまさら説明する必要がないほど広く知られたウィルス感染症です。フィロウィルスの一種であるエボラウィルスが原因で引き起こされる出血熱の一つで、初めてウィルスが分離された患者がいた地域、アフリカのザイールにある小川の名前が付けられています。
非常に感染力が高く、1000個ほどのウィルスが体内に侵入しただけで増殖、発症すると言われ、感染者の血液1滴の中に100万単位のウィルスが存在する事から、一度感染が起こると急速に広まる事でも知られています。
潜伏期間は通常7日程度とされ、突発的に症状が発生し、死亡率は50〜90%に達すると言われますが、現在、エボラウィルスに対するワクチンやエボラ出血熱感染症への有効な治療法は見つかっていないとされています。
そうした治療法研究の遅れの一つに、極めて感染力が高く、致死率も高い事から、レベル4という極めて隔離性の高い研究施設でしか扱えないという実情があります。
先日、エボラウィルスの増殖に関わるタンパク質である「VP30」を作る遺伝子を取り除いた改造ウィルスを作成し、通常の細胞に感染させたところ1週間経ってもまったくウィルスの増殖が見られず、VP30を作り出す特殊な細胞の中では増殖したと言います。
この改造ウィルスは、増殖に関わるタンパク質を作り出せない事以外は実際のエボラウィルスと同じ性質を持っているとされ、安全に治療や予防の研究が行う事ができます。感染を引き起こす可能性もない事から、通常程度の実験室でも扱う事が可能と考えられ、ワクチンなどの開発が大きく進む事が期待できます。一つの新たなスタートラインとなる研究成果ではないでしょうか。
第938回 知らない第4位
2008年02月04日
COPD・・・突然言われても何の事か判りません。頭文字ではなく正式名称で「慢性閉塞性肺疾患」と言うと病気の事とは判ってくるのですが、それにしても何処か縁がなく、遠くの世界の事のように思えてしまいます。
主に喫煙者を中心に咳やたん、息切れなどが慢性的に続く肺の疾患で、生活習慣病の一つとして考える事ができます。喫煙が肺に悪影響を与える事は広く認識されていますが、はっきりとした病名に繋げて考える事はあまり行われない事から、この病気に関する認知度も極めて低いとされています。
COPDは喫煙によって気道が炎症を起こし、酸素を取り込む肺胞が破壊されてしまう疾患で、自覚症状としてはしつこく続く咳やたん、息切れとなっています。それだけだとあまり怖いという印象はないのですが、進行すると死に繋がる可能性があり、年に数回急に症状が悪化する事がありますが、それによって入院の必要が生じた場合、その1年後の生存率は約6割と言われます。
実はこのCOPD、全世界の死亡原因の4位を占めているとされ、世界中では6億人の患者がいると推定されています。日本でも500万人以上が罹患していると考えられ、死因としては10位となっていますが、実際に治療を受けている人は22万人程度で、認知度の低さが伺えます。
昨年、40歳以上の男女を対象に行った調査では、何らかの形でCOPDを知っている人の割合は34%に留まり、咳が長引いた場合、肺炎やぜんそくを疑う傾向が強く、COPDを疑う人は全体の15%に過ぎない事が明らかになっています。
COPDは禁煙をはじめとした早めの治療によって健康な人と同様の生活を送る事ができるとされ、運動療法や理学療法、栄養療法を組み合わせた呼吸リハビリも効果的とされます。年中風邪と自己申告する人を見かける事がありますが、一度COPDを疑って見た方が良いのかもしれません。
第937回 二度、三度
2008年02月01日
江戸時代後期の医者にして蘭学者、高野長英の言葉で、「その一つは砂地、石田、穀類熟せざる地に好んで繁茂するなり。その二つは、烈風、暴風、長雨に合うて害を受けざるなり。その三つは繁殖容易にして人力を労する事なし。寸地に耕し、尺地の収穫あり。誠にもって荒年の善量(食物)というべし」と語られた物があります。
年に二回も栽培できる事からニドイモまたはサンドイモと呼ばれる事もあり、一株あたりの収穫が多い事からゴショウイモ、ハッショウイモと呼ばれたりもします。形からナシイモやマンジュウイモと呼ばれた事もあり、ヨーロッパでは、ポム・ド・テル、土の中のリンゴとも呼ばれます。
1700年の中国の文献には、その形が馬に付ける鈴に似ている事から馬鈴薯の呼び名が記載され、日本でもその呼び名は使われています。ここまで書くとそれがジャガイモの事だとすぐに判ってしまいます。
ジャガイモはサツマイモと比べると、何処となく洋食寄りの食材のような感じがしてしまうのですが、慶長3年に長崎の平戸に伝えられた事を考えるとサツマイモよりも早く伝わっている事になり、古い付き合いという事ができます。
ちょっと意外な感じがするのですが、サツマイモが根の一部を食べていることに対し、ジャガイモは茎の一部を食べている事になります。種芋を植えると芽から茎が伸び、地上に伸びていきます。地下に潜ったままの茎からはストロンと呼ばれる細い茎が伸び、ストロンの先端には休眠芽が形成されます。
この休眠芽が養分の蓄積場所で、地上の葉で光合成されたデンプンが盛んに送り込まれ、塊茎というイモの部分ができます。これがジャガイモで、完熟すると10週間以上も休眠し、安定的な貯蔵を可能にして低温に強い性質の元となっていると言われます。
そんな優れた環境への適応手段を私達はいただいているのですが、最近では新たな品種が多数店頭を賑わしています。どの品種がどんな料理に適しているのか、いろいろ試してみるのも楽しそうです。
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