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第1017回 保存と旨味
2008年05月30日
魚介類を天日や冷風などにさらして乾燥させた物、干物はどことなく和のイメージが強く、日本食という感じが強くしてしまいますが、英語でDriedfishという単語があるように、世界中の漁業の盛んな地域ではさまざまな干物が見られます。
干物は、保全性があまり良いとは言えない魚介類を干す事で表面に硬い膜を作り、塩を塗す事で保存性を高めています。単に保存性が高まるだけでなく、独自の食感になる事や水分を除く事で味が濃厚になる事、一部のタンパク質が分解されてアミノ酸となって旨味が増すという優れた面を多く持っています。
天日干しとよく言われますが、実際には日光に当て過ぎると温度が上がり過ぎて美味しさが損なわれてしまうので、短時間天日に当てて、後は陰干しにするという事が多く行われています。そのため干物を作る際は、日光の強さよりも風通しの方が重要とされます。
日本で干物といえばアジの開きやカタクチイワシの丸干しがすぐに思い出されます。外国ではとなると、比較的知られた物としてポルトガルのバカリャウが思い浮かびます。
バカリャウはタラの干物で、イタリアではバッカラ、スペインではバカラオと呼ばれて広く親しまれています。タラを塩漬けにして乾燥させるという素朴な物ですが、保存性を高めるために多量の塩が使われている事から、調理するには前段階での塩抜きが必要になります。
カトリックの習慣に一定の期間中に小斎として鳥獣の肉を絶つ慣わしがあったので、その際はバカリャウが食べられていたそうで、重要な食材であった事が判ります。
よく知られた調理法としては、聖なるバカリャウと呼ばれるグラタン風の料理にしたり揚げ物などで親しまれています。そうやってみるとバカリャウは、干物ではあっても保存食料としての意味合いが大きく、日本の干物とは若干位置付けが異なるように思えます。
魚離れが言われる中、通信販売や流通の進歩もあって各地のこだわりのお取り寄せ干物が手軽に手に入るようになってきています。地域や風土、伝統などによってさまざまな製造方法があります。和食には欠かせない物でもあるので、いろいろと食べ比べてみるのも面白いかもしれません。
第1016回 ミネラルの黒
2008年05月28日
朝食で一枚、それだけでその日に必要となるミネラルを賄う事ができます。そんな優れた食品があります。馴染み深い黒い食品、海苔です。
かつてはブラックペーパーと呼ばれ、特に欧米では敬遠される傾向がありましたが、ヘルシーフードとして寿司の需要が高まるにつれて海苔の美味しさも認識されるようになってきています。
しかし、どうしても黒い外観に抵抗があるのか、米国の西海岸由来のカリフォルニアロールなどでは、海苔を外側には巻かずに内側に巻き込み、ご飯が一番外側にくるように巻かれています。
最近では味付け海苔の一種である韓国産の海苔も出回り、パック入りの焼き海苔も一般化している事から、海苔を焙るという行為はあまり見かけないようになってきているように思えます。
かつて有名な演歌歌手には、海苔を焙る専属のスタッフが付いているという事が報じられた事があるほど、海苔を焙るという事は大事な事になっています。
海苔は天日に干して仕上げられ、そのままでも食べる事ができます。わざわざ焙って加熱して食べる必要性は、海苔が持つ硬い細胞壁にあります。焙った海苔と焙ってない海苔を食べ比べると、意外なほど焙ってない海苔には風味がない事に気付きます。
焙る事で海苔の細胞壁が壊れて、はじめて海苔の風味や旨味が表面に出てきます。また細胞壁が壊れる事で中に含まれていたアミノ酸と糖質が熱を受け、メイラード反応を起こす事で香ばしい風味がより強くなります。
海苔を焙る加減は難しいと言われますが、焙りすぎると色や食感が悪くなり、風味も飛ばされてしまいます。160度程度のの温度で短時間で焙るのが良いとされますが、両面を焙ると表と裏の組織の収縮度が違うために海苔の組織がもろくなり、崩れやすくなってしまいます。
2枚を合わせた形で手早く焙ると、意外なほど上手に焙る事ができます。よく見ると表面がざらついた面と艶がある面があります。実はざらついた面がが表で、艶のある面が裏と呼ばれています。海苔を干す際、干し板に触れている面が艶が出て、天日にさらされていた面はざらついてしまいます。それによって表裏が決められているそうです。美味しいミネラル補給にお薦めの食材です。
第1015回 塩で塩抜き?
少し季節が離れている感じがしますが、数の子の塩抜きの話しです。数の子は塩蔵されているので、そのまま調理はせず、塩抜きをして使います。その際、真水ではなく薄い塩水を使って塩抜きをするように料理の本などに書かれています。
水溶液にはその濃度によって浸透圧があります。浸透圧は水溶液の中に濃度が違う箇所があった場合、それを均等にしようとする力で、浸透圧の事を考えると塩抜きは真水でやった方が素早くできそうな気がしてしまいます。
真水や蒸留水などを使うと、確かに塩分は早く抜けます。しかし、良く見ると表面の塩分だけが抜けて、内部は塩辛い状態が残っている事があります。数の子も真水に漬けると表面の塩が抜けて白っぽくなってしまい、美味しさも大きく損なわれてしまっています。
塩蔵の数の子と真水では塩分濃度の差が大き過ぎるため、数の子が水分を一気に吸い込み、水っぽくなるなるだけでなく塩分と一緒に旨味も流れ出してしまいます。また食塩の主成分である塩化ナトリウムと塩化マグネシウムでは、水に溶ける速度が違うために、真水では解けやすい塩化ナトリウムが先に溶けて流れ出し、塩化マグネシウムが残されてしまう事もあります。塩化マグネシウムは苦汁の成分なので、素材の味が悪くなる原因にもなってしまいます。
そのため薄い塩水に漬け込む事によって数の子と水分との間の濃度差をあまり大きくしない事で、ゆっくりと塩分が溶け出すようにします。塩水で塩分を抜くというとうまくいかない感じがしますが、迎え塩という言い方をされると変に納得してしまうものがあります。塩を制する者は料理を制する。塩の扱いには奥が深いものがあります。
第1014回 服用時間
2008年05月27日
ヒポクラテスの時代、柳の樹皮を煮て作られる苦い液体に解熱、鎮痛の働きがあるとして知られ、痛みや熱の特効薬とされていました。爪楊枝に柳の木が使われる理由も木質だけでなく、柳の枝を噛む事で虫歯の痛みが和らぐので、柳の枝を噛む習慣から使われるようになったとする説もあります。
しかし、そんな柳の働きも長い歴史の中では忘れられていましたが、19世紀に入ると柳の木から解熱、鎮痛の効果があるサリチル酸が分離されます。サリチル酸は解熱鎮痛剤として使用されますが、患者が耐えがたいと思うほど苦く、強い胃腸障害という副作用もあり、安心して使える薬ではありませんでした。
1897年、リュウマチを患った父親を気遣うドイツの薬品メーカーに勤める研究者、フェリックス・ホフマンはサリチル酸を手軽に服用できる物にしよと過去の研究に着目し、サリチル酸のアセチル化を行ない、苦味と副作用の少ない薬剤、アセチルサリチル酸(アスピリン)が誕生しました。
アスピリンは抗炎症剤、鎮痛剤として広く使われ、一般用薬剤としては売り上げが歴代3位、使用量では第一位となり、歴史上最も使われた「薬の王様」と言われるほどになっています。特に消費量が多いアメリカ一国だけでも、年間に服用されるアスピリン量は200億錠と言われ、いかに広く浸透しているかが伺えます。
古いアメリカの映画やドラマを見ると、朝起きるとすぐにアスピリンを服用する場面が出てきて、日常の一部となっている事が理解できます。目覚めたときの頭痛を和らげるためという感じですが、最近ではアスピリンが血管を拡張してくれる事から、少量のアスピリンを毎日摂取する事で脳血栓や心筋梗塞などの血管障害を予防できるとして、疾患の有無に関わらず愛用している人も多いとされます。
最近の研究では、アスピリンを夜、就寝前に服用する事が効果的とされています。臨床試験でもその違いは明確に出されており、血液凝固を引き起こすホルモンが夜間の休息時に産出される事から、産出を抑える働きがあるのではとする考え方や、夜間は消化管による薬剤の吸収率が高まるのではとする説もあり、現段階では明確にされていません。
今後の研究待ちという部分も多く残されてはいますが、アスピリンがなぜ効くのかという事が解明されるのに、アスピリンが開発されてから80年もかかっています。それを思うと少々待つくらいはと思ってしまいますが、アスピリンの愛用者に無自覚のまま胃腸障害を起こしている人が多いともされます。就寝時の服用には注意が必要なのかもしれないので、研究の早期展開を期待したいと思います。
第1013回 生食禁止
2008年05月26日
弥生時代の遺跡から出土した骨は当初イノシシの骨と思われていましたが、後に豚の骨という事が判り、豚肉と日本人の付き合いの長さを伺わせる資料となっています。日本書紀や古事記にも猪飼、猪甘、猪養という記載で表現され、すでに家畜化されていた事が判ります。
表面を焙って中は生に近い状態を残し、旨味を増加させる「たたき」という食べ方は、牛、馬、鶏、魚では見られますが、豚肉では行われてきませんでした。
豚自体が持っている豚ヘルペスウィルスやトキソプラズマ、E型肝炎などの感染症に感染する事や、流通の段階でカンピロバクターやリステリアなどの食中毒菌に汚染されている可能性が考えられるからです。
最近では特殊な飼育方法が行われた「SPF豚」という表示も一般的に見られるようになってきました。SPFとは「特定疾患不在豚」を意味し、オーエスキー病、萎縮性鼻炎、マイコプラズマ肺炎、豚赤痢、トキソプラズマ病の原因菌を保有していない事を意味しています。
SPF豚は特殊な生育方法が採られ、親豚の段階で一般の豚とは育て方が異なっています。無菌状態の中で産道からの感染を防ぐために帝王切開で取り出された豚を、病原菌を遮断した農場で育てて親豚とし、その親豚から生まれた子豚を衛生的に管理された中で育ててSPF豚として肥育されています。
一般の豚と比べてSPF豚は特定疾患の怖れがないだけでなく、病気によるストレスがない事で子豚の成長が早く、柔らかい肉質とあっさりとした味わいが特徴となっています。腸内の悪玉菌が少ない事もあって、豚特有の臭みも少なく、風味も良いとされます。
病気にならない事で出産率や成長率が良い事から、生産効率が良いので、特殊な生育を行う割には価格も安価になっています。特定疾患の怖れはないSPF豚ですが、その他の病原菌に関しては保障されている訳ではないので、やはり適度な加熱は必要です。
第1012回 カーボンニュートラルに思う
2008年05月23日
バイオエタノール、バイオマスエタノールとも呼ばれ、サトウキビやトウモロコシといったバイオマスを発酵させる事で得られます。バイオマスを生育させるために二酸化炭素が使われる事から、燃焼させても二酸化炭素のカウントはゼロとされ、再生可能な自然エネルギーとされています。
穀物や果実に含まれる糖質またはデンプンは、発酵させる事によってアルコールへと変化させる事ができます。糖質はそのままアルコール発酵をさせる事ができ、デンプンは一旦糖化させてからアルコールへ。歴史的に見ても古くから酒造という形で長く親しまれてきた事でもあります。
バイオエタノールは環境に優しいと言われ、原油高が続く中、環境への配慮、代替燃料への模索という意味でも注目が集まっています。直接燃料にしたり、現行のガソリンなどの燃料に添加して使用量を削減したり、それ以外にも廃油などで作られるバイオディーゼル燃料を造る際にも、触媒としてエタノールは必要になってきます。
しかし、そんな環境に優しいバイオエタノールにも困った一面があります。原料が穀物などであるために、食料との競合が心配されています。実際、小麦を原料としたパンや麺類をはじめとした食料品の値上げは、バイオエタノール製造を名目とした食料の転用による穀物の高騰が原因と言われています。
穀物が高騰する事で、食料を確保する充分な資金を持たない途上国では飢餓や貧困を加速させてしまうのではないかという懸念もあり、無条件に歓迎できる物ではなさそうにも思え、これだけ世界的に影響を及ぼしておきながら、バイオエタノール自体を見た事のある人がほとんどいないという事にもどことなく胡散臭いものも感じてしまいます。
有名な自動車レースのインディ500では、今年初めて100%バイオエタノールを使用した車が優勝していました。目に見えるバイオエタノールの使用例ではありますが、値上げを続ける食料品や世界の状況、投機的な話しなどを聞くと、食べる事を大切に考えてほしいと思ってしまいます。
第1011回 煤の害
2008年05月22日
洞爺湖サミットを控え、地球温暖化防止に関する議論の話題を聞く機会も増えてきました。二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの削減に注目が集まってきています。
地球の温暖化には幾つかの要因が関係していると考えられますが、大きく分けると二つに分類する事ができます。一つは太陽から地球が受けるエネルギーで、どれだけ太陽光によって地球が温められるかという事です。このエネルギー量が最も重要で、温暖化の最大の原因とする学者もいます。
次に地球から宇宙空間へ放出するエネルギーで、温められた地球がどれだけ冷めるかという事になります。これには、一旦放出したエネルギーが宇宙空間にに届く前に跳ね返されてしまう分も含まれ、二酸化炭素による温室効果という考え方は、この放出エネルギーの反射に繋がり、地球が冷めにくい状態を作り出していると考える事ができます。
現在、二酸化炭素に主な関心が置かれているように感じられますが、意外な温暖化の原因が放置されていると言います。それは二酸化炭素と同じく炭素を主成分とする燃料を燃やした際に出る物、「スス」だとされます。
ススは燃料を高温で不完全燃焼する事によって発生します。大規模な発生源としては石炭の燃焼、ディーゼルエンジンの排気ガス、森林火災などが上げられ、工業化、都市化、旱魃など、最近よく聞く言葉に関連性を強く持っている事が伺えます。
粒子は小さくても表面積が大きく色も黒なので、非常に効率よく光を吸収し、大気を温めてしまいます。そうして地球全体の平均気温を上昇させるだけでなく、地域的な気象にも影響を与えると言われています。
燃焼によって温められた上昇気流に乗って、大気中の比較的高いところに存在しているススは、太陽光を受けて加熱される事で本来は冷たいはずの上空の大気を高温にし、大気の対流を妨げてしまいます。
大気の対流が妨げられる事で、雲のでき方や雨の降り方が極端になり、局所的な自然災害が起こる事も考えられます。また、粒子が小さく、風に乗って遠くまで飛ばされる事から、本来は太陽光をよく反射してくれる氷河や雪、氷などの上にも降り注ぎ、地球が受ける太陽からのエネルギー量を増やしてしまいます。
ススの発生は二酸化炭素の発生とも関連があるだけに、これから二酸化炭素同様に関心が高まる事を期待したいと思います。
第1010回 柑橘系治療薬?
2008年05月21日
グレープフルーツというと思い浮かぶのは、薬の効果を増大させる働きがある事から、血圧を下げる降圧剤などの強力な作用を持つ薬剤と一緒に摂らない事。最近では、匂いをかぐ事でダイエット効果があるという事でしょうか。
いつもジュースを選ぶ際にオレンジとどちらにしようかと迷ってしまうのですが、特有の苦味を思い出してオレンジを選ぶ事が多くなってしまいます。しかし、その際にいつも思ってしまうのは、あの特有の苦味には何か効能が隠れているはずというものです。
特有の苦味は、グレープフルーツに含まれるポリフェノールによるもので、実際に胃の活動を活発化したり胃酸の分泌を促す働きがあると言われ、ホテルの朝食バイキングにグレープフルーツジュースが加えられているのは、食欲を増進して一日のはじまりでもある朝食を美味しく召し上がってもらおうという心配りもあると言います。
そんなグレープフルーツに含まれるポリフェノールの一種に、治療が難しいC型肝炎の治療に繋がる可能性を秘めた新たな薬効がある事が判ってきました。現在、有効とされているインターフェロンやリバビリンによる治療は、強い副作用が懸念される事や効果が上がる患者が限られるといった問題点も指摘されています。
グレープフルーツに含まれるナリンゲニンと呼ばれるポリフェノールの一種には、過去の研究でVLDL(超低比重リポ蛋白)の分泌を阻害する事が示されていました。最近の研究でC型肝炎のウィルスはVLDLと結合して増殖する事が判ってきています。
リポ蛋白の代謝に影響を及ぼす化合物やサプリメントが見つかれば、C型肝炎ウィルスにも作用する可能性が考えられます。ナリンゲニンはその一つとして有望であるだけでなく、グレープフルーツに含まれるその他の成分にも顕著な薬物相互作用がある事が指摘されており、今後の研究に大いに期待が持てます。グレープフルーツ味の肝炎治療薬、どこか違和感を感じてしまいます...。
第1009回 万能クリーナー?
2008年05月20日
炭酸水素ナトリウムというより重曹の方が、より親しみがあるかもしれません。かつては膨らし粉や山菜のあく抜きなどのイメージが強かったのですが、最近は掃除の際の便利グッズとして広く親しまれるようになってきています。
白い結晶の粉状で販売され、水に溶かすと弱いアルカリ性を示します。加熱すると水と二酸化炭素を放出する事から、焦げ付いた鍋に水と重曹を入れ、火にかけておくと鍋底から発泡して焦げ付きを剥してくれる事から、それを機に重曹ファンになったという話しはよく聞かされます。
また、油汚れに対する効果も大きく、油汚れに事前にふりかけておき、しばらくして水洗いをすると油汚れが意外なほど素直に落ちてくれます。
油汚れが落ちにくいのは油が酸性であるためなので、それを重曹のアルカリ性で中和するので落ちやすくなるとされます。さらに油はアルカリと反応させると鹸化と言う反応を起こし、油自体が石鹸に近い状態となる事から汚れ落ちを良くしている事も考えられます。
同じような中和作用を用いたものに重曹の脱臭効果があり、生ごみや排水口、靴や靴箱などといった酸性の臭いには効果を発揮してくれます。
いずれも対象が酸性の場合に効果を発揮し、灰汚れや石鹸かす、魚の生臭さやアンモニア臭といったアルカリ性の場合は、結晶質を利用した研磨作用以外、あまり効果が期待できないという一面も持っています。万能クリーナーのような扱いを受けている場面も見かけますが、特性を理解して上手に利用しなくてはいけません。また、買い方で値段も大きく変わってしまうので、そのあたりも理解しておく必要があるのかもしれません。
第1008回 αとβ
2008年05月19日
炊飯器の方が圧倒的に手軽ではあるのですが、たまに土鍋でご飯を炊きます。こだわりのポイントはいくつかありますが、中でも大事なのは火にかけてから沸騰するまでの時間。ちょうど10分で沸騰するように火加減を調節します。
この10分で沸騰するという時間と火加減がお米を美味しく炊き上げる秘訣で、10分より長くても短くても美味しさに欠けてしまいます。10分の間にお米の中で起こっている変化は糖化と呼ばれるもので、お米に含まれるデンプンの性質に変化が生じています。
植物は光合成によってデンプンを作り出し、栄養として蓄えています。私たちはそれを主食としていただいている訳ですが、植物が蓄えているそのままの状態では美味しくなく、消化にも良くはありません。
植物が栄養として蓄えているのは「β」と呼ばれるタイプのデンプンで、保存性に優れていますが食用には向いていません。それを調理する事で「α」タイプのデンプンに変え、美味しく、消化されやすい状態にしています。β‐デンプンがα‐デンプンに変わるには、95度以上の熱を加えてやる必要があります。お米に限らず麦や芋などを生で食べず、必ず加熱調理する理由はこのデンプンのα化にあります。
デンプンのα化という意味では一気に沸騰させず、ゆっくりと時間をかけて加熱した方がより多くのβ‐デンプンを変化させる事ができます。β‐デンプンのα化が進むと甘味が出てくるので、より多くの時間をかけた方が美味しくなるように思えます。しかし、沸騰までの時間が長くかかり過ぎると、お米の食感がべちゃっとなってしまいます。
ふっくらと炊き上げるには急激に温度を上げて、一気に炊く事。しかし、それではα化が充分ではなく、お米としての味わいが足りなくなってしまいます。しっかりとα化させて、ふっくらと炊き上げる。その微妙なバランスが取れるのが10分という時間だと言われます。そうして炊き上がったご飯も冷めてくると、α‐デンプンの一部がβ化してしまうので、味が落ちてしまいます。上手に炊いて、炊きたてを美味しくいただきましょう。
第1007回 居眠り事情
2008年05月16日
高齢者に関するイメージを幾つか上げていくと、その中に居眠りをしているイメージはないでしょうか。暖かな日差しの縁側で、猫と戯れているうちにうとうととしてしまう、そんな和やかな場面を想像してしまいます。
実際、日常を注意深く観察すると高齢者は居眠りをしている確率が高く、その中には睡眠障害や糖尿病、疼痛などが原因として隠れている可能性が高い事が最近の研究で判ってきています。
平均年齢80歳の高齢者235人を対象に1週間ほど腕時計型の測定器を装着してもらい、睡眠のパターンや生活のリズムの計測を行ってもらい、同時に睡眠に関する日誌を付けてもらうという実験が行ったところ、4分の3以上の高齢者が日中に5分以上の居眠りを日誌に記録しており、睡眠障害、呼吸器疾患、糖尿病、疼痛といった疾患を抱えた高齢者ほど居眠りの比率が高いという結果が得られています。
特に糖尿病を自己申告していた高齢者の居眠りの持続時間が長く、43%近くも長い事が計測されています。血糖値が高い状態が睡眠を妨げている事や、他の疾患に罹りやすく、それらによって眠りの質が低下している事も考える事ができます。
日中の居眠りは、睡眠が充分ではない事を伺わせている可能性もあり、睡眠不足による高齢者の抑うつや注意力、記憶力への悪影響や、睡眠薬などの薬剤への依存も考えられます。睡眠不足は肥満や心血管疾患、糖尿病などの健康障害を増大させる可能性も高いので、今後、さらにこの分野での研究が進み、高齢者の睡眠の質の確保が行われる事を期待したいと思っています。
第1006回 ザンギ?
2008年05月15日
ザンギ・・・突然その名を聞かされても、それが何にあたるのかは判り辛いものがあるかもしれません。料理の名前と言われると、どこかアジアの南の方を思い浮かべてしまうのですが、実は北の方、北海道の郷土料理になります。
郷土料理と言っても全国的に見られる物で、どちらかと言えば名称の方に独自性があるのかもしれません。定義としては鶏や魚介類にしょうゆやにんにく、生姜などで味付けをしてから揚げにした物とされているので、全国的には竜田揚げに近い物という事ができます。
由来に関しては、昭和30年中頃には釧路の「鳥松」のメニューにあったという証言や、戦前から「陶陶亭」にあったという話しもあり、釧路発祥という事以外は定かではないとされています。
発祥の店の一つとして有力視されている鳥松の主人の話によると、中国語で鶏のから揚げの事を炸鶏(ザーギー)と言うので、その間に運が付くように「ン」を入れてその名前にしたという事ですが、やはり同じ中国語の鶏のから揚げ、炸子鶏(ジャーズージー)が訛ったという別説もあります。
作り方については、衣に片栗粉を使う事は共通した条件となっていますが、地域によってはザンギの衣に卵を加える事があり、卵を使っていなければザンギではないとする意見もあります。
ザンギは下味を濃厚にするという点が特徴とも言われますが、意外と薄味の物も多く、そうなると竜田揚げとの違いが明確ではなくなり、そのせいか鶏のから揚げがザンギであり、地域特有の言葉ではないという認識も存在していると言います。
実際現地では、全国チェーンのコンビニエンスストアでも鶏のから揚げをザンギの名称で販売したり。有名な居酒屋チェーンでもメニューにザンギの記載があり、注文すると鶏のから揚げが出されると言います。
まったく異なる土地ですが、愛媛県今治市の一部では揚げる前にタレに漬け込んで下味を付けた物を「せんざんき(千斬切)」と呼んでいます。四国の東部でも同じように調理された物を「ざんき」と呼んでいる例があるので、調理法に名前の由来があるように思えてしまいます。
鳥松の主人の話も興味深いのですが、中国の鶏の料理法とその呼び名に、ザンギという不思議な言葉の秘密が隠されているのかもしれません。なかなか奥深い感じがしてきました。
第1005回 緑は嫌い?
2008年05月14日
新緑の季節はやがて梅雨へと移り変わっていきます。天気が悪い日が増え、どんよりと曇った空の下、日中でも特に朝夕は薄暗い事があります。そんな中、新緑の緑は古い葉よりも明るい色合いで、遠目には蛍光色のように明るく見えてしまう事さえあります。
新緑に限らず葉が緑に見えるのは、よく知られた葉緑素によるものです。葉緑素は緑色をしていて、葉の中で光を受けて水と二酸化炭素からデンプンや有機物を作り出しています。難しい言い方をすると、光エネルギーを化学エネルギーに変換する役割を担っているともいえます。
植物というと葉緑素のお陰で緑というイメージが定着していますが、実は植物は緑色が嫌いという事はご存知でしょうか?植物に波長の違う光を当てて、どの波長がより効率よく光合成を行うかを観察していくと、ある一定の波長が効果的に光合成に使われている事が判ってきます。
光合成に効果的な光の波長は主に二つあり、それらは青と赤を示しています。光の三原色、赤、青、緑のうちの二つ、赤と青を好み、緑では効率が上がらないので、緑は必要としていない事が解ります。
葉緑素なのにと思ってしまうのですが、葉緑素が緑に見える事自体は、たくさんの波長の光を含んだ太陽光などを浴びて、光合成に必要な赤と青を吸収、不必要な緑を反射している事が元になっています。
深まる緑を見ていると心和むものがありますが、そうやって考えると植物が不必要なものとして捨てている色を見ている事になります。どことなく風情がなくなってしまうので、やはり葉緑素は緑、それだけに留めておきたくなってしまいます。
第1004回 トレハのお陰
2008年05月13日
最近、白いパンに出会う事が増えてきました。様々な素材を合わせ、釜で焼き上げるパンは、通常こんがりとした焼き色が付いている物です。それが焼く前と変わらないような白い色をしています。だからと言って焼けていない訳ではありません。
白いパンの秘密は、糖分として加えられるトレハロースにあります。糖質は加熱される事によって、回りのアミノ酸などと複雑な化学変化を起こしながら特有の褐色に色付いていきます。褐変と呼ばれる変化で、こんがりとした色合いの元にもなっていますが、トレハロースはその褐変を起こさないという特徴を持っています。
トレハロースは古くから自然界に存在していましたが、発見されるのは19世紀に入ってからで、正式に分離されて名前が付けられるのは1859年と、近代の事になっています。当初は抽出する方法が難しい事から、非常に高価な物でしたが、近年、日本でデンプンから大量生産する技術が確立され、価格も安価になった事から一気に普及しています。
旧約聖書の「出エジプト記」でモーゼがイスラエルの民を連れて砂漠を彷徨い、40年にわたる旅を続けますが、その旅を支えた食料がトレハロースを豊富に含んだ「マナ」と呼ばれる食べ物だったと言われています。
そう言われると生命に直結したイメージが強くなってくるトレハロースですが、実際に生命を守る強力な働きがある事が判ってきています。
動物に限らず植物も水分なしでは生きる事ができません。しかし、中にはとても生命を維持できるとは思えない極度の乾燥状態の中でも生命を保ち続け、やがて水を得る事で蘇生する物があります。
よく知られたところではイワヒバという砂漠に生きる植物が有名で、完全に干からびたと思える状態から少量の水で蘇生する事ができます。酵母も乾燥状態で何年も行き続け、水さえ加えれば生き返る事が知られています。
最強の生命力と言われる事のあるクマムシも極度の乾燥状態の中でも行き続け、やがて水を得て蘇生する事で知られますが、イワヒバもクマムシも同じトレハロースを体内で大量に分泌し、乾燥状態の中ではそれを結晶化させる事で生命を維持する為に必要な組織を保護している事が判ってきています。
白いパンはあまり好みではありませんが、どことなくありがたく思えてきたので、今度は購入してみようかという気になっています。
第1003回 浜辺の白
2008年05月12日
紫外線が苦手なので海水浴とは無縁なのですが、身近に海水浴に行くという人がいれば日焼け止めをお薦めします。紫外線の弊害を考えた場合、しっかりと防御をしておかなければ思うからです。しかし、その日焼け止めが意外な物を白くして、困った事態を引き起こしている事が判ってきました。
世界各地で珊瑚が白くなって死滅する「白化」と呼ばれる現象が見られています。珊瑚はもともと白い色をしているのですが、褐虫藻が共生する事で鮮やかな色になっています。褐虫藻は珊瑚に色付けするだけでなく、海面からの光を受けて光合成を行い、珊瑚にも栄養を供給しています。
この褐虫藻が何らかの原因によって脱落すると珊瑚は脱色したように白くなり、栄養の供給が受けられない事からやがて死滅してしまいます。これまで白化現象は海水温の上昇が原因と考えられてきましたが、リゾート化が進んだ海域で顕著に見られる事から、浜辺で人が使う物に何か原因があるのではないかと考えられました。
世界各地の海から採取された珊瑚を使い、浜辺で人が普段使っている物の影響を調べた結果、日焼け止めによって白化が引き起こされる事が確認されています。海水1リットルあたり10マイクロリットルという微量であっても、4日以内に珊瑚の白化が起こる事が判っています。
脱落した藻類の細胞には穴が開いていて、ウィルスの粒子が多数存在していた事から、共生していた藻類か珊瑚が潜在的に感染していたウィルスが日焼け止めに含まれる何らかの化学物質によって活性化され、それによって珊瑚の白化が起こっていると考えられます。
今のところ日焼け止めに含まれるケイヒ酸ベンゾフェノン、ショウノウ誘導体、防腐剤のブチルパラベンといった化学物質が珊瑚を白化させる事が判ってきています。ブチルパラベンは日焼け止めに限らず、多くの化粧品で使用されている事から、影響を及ぼす範囲がより大きい事が考えられます。肌の白さを守る日焼け止めが、思わぬところで珊瑚を白くしているというのは、非常に皮肉な事に思えてしまいます。
第1002回 教え方考察
2008年05月09日
物事を教える時は、とにかく判りやすく解説する事。そして身近な具体例に置き換えて話す事。当たり前の事のようで常に気を付けておかなければと思ってしまうのですが、実は間違いなのかもしれないという研究結果が公表されていました。
まったく新しい数学的概念を教える際、学生たちに身近な現実世界の具体例を使って説明を行うと、新しい状況下では、そこで得た知識を応用する事ができず、抽象的な例を基に同じ概念を学んだ学生は、異なる状況にも応用できる事が多い事が明らかにされています。
これまで疑問視される事も検証される事もないまま、深く浸透していた教育法に疑問を投げかけるものであり、実証された事で今後の教え方にも影響が出る可能性もあります。
よく使われる問題で、Aという街をBという街へ向けて出発した特急電車と、BをAへ向けて同じ時間に出発した普通列車は、何分後にすれ違うでしょう?というものがあります。この問題を使って速度の違う移動体が出会う時間を計算する事を学んだ学生は、同じような移動体に関する計算への応用はできますが、概念は同じでも場面が大きく異なると応用が出来なくなる事が多いとされています。
例えばAという水槽の栓を抜いて水を抜き、Bという水槽へは蛇口から水をいれていきます。二つの水槽の水位が同じになるのは何分後でしょう?という問題の場合、下がっていく水位と上がっていく水位。考え方は列車と同じなのですが、異なる概念として捉えれてしまいます。
勉強離れが起こらないようにさまざまな実験やイラスト、器具や文章を使った授業が多くなってきていますが、注意を引くための演出が余計な情報となって、本来必要な応用力の向上を妨げている可能性が高いという事になります。学問に王道なし。やはり苦労して学べという事でしょうか。
第1001回 皮膚循環器検診
2008年05月08日
コレステロールというと健康に悪影響を与える物というイメージが定着してしまっています。実際には身体には欠かす事のできない物で、ホルモンや消化液、ビタミンDの材料にもなっています。
もっと細かいところでは、細胞の外側、細胞膜を作っているのもコレステロールです。そうした体内でのさまざまな需要を満たすために、コレステロールは血液を介して全身へと運ばれています。
コレステロールが血液中を輸送される際、コレステロールは単体ではなくリポ蛋白と結合して複合体を形成します。この複合体が善玉、悪玉と呼ばれるコレステロールで、厳密にはコレステロール分子単体の事ではありません。
善玉、悪玉といった性質の違いを生じさせているのはコレステロール自体ではなく、複合体をを形成するリポ蛋白の違いにあり、血管内でコレステロールを運搬して各組織に届けるのか、各組織からコレステロールを回収してくるのかといった働きの違いで、善玉、悪玉という呼び方をされています。
最近の研究では、皮膚細胞に含まれるコレステロールを検査する事で、健康な人の心疾患のリスクを評価する事が可能という報告が行われていました。皮膚の細胞に含まれるコレステロールも血液中のコレステロールと分子的に関連した物質である事に着目した結果と言われています。
簡単な器具を使って既に死んでいる手のひらなどの角質細胞を採取し、その中に含まれるコレステロール値を計測する事で心血管疾患の危険因子の状態を判断する事ができます。
これまでのコレステロールに関する検査は、血液を採取するという痛みや事前に絶食をする必要があるといった負担がありましたが、皮膚を使った検査だとそうした負担を大きく軽減する事ができます。血中コレステロール値は気にされ過ぎな感じはしていますが、検査による負担が軽減されるというのはありがたい事ではないでしょうか。
第1000回 あっという間の長い道のり
2008年05月07日
今回でこのコラムも1000回を迎えました。思えば4年前の3月3日に始まったので、ちょうど50ヶ月。私の生活の一部となりながら、ウィークデイの更新という事で一月あたり約20回。あれもこれもと、たくさんの話題を欲張りながら進めてきました。
あらためて1000回というと、大変な回数のように思えるのですが、特にこの4年間という時間はあっという間に過ぎていったように思えています。
振り返ってみると第1回目の話題は「鳥インフルエンザ」について。その後の鳥インフルエンザはどうなったでしょう。先日も野鳥の感染が報じられていましたが、ほとんど騒ぎになる事もなく、鳥インフルエンザには慣れてしまったというところでしょうか。
感染症などの伝染性のあるものの場合、風評被害という二次的な被害の発生もある事を考えると、何かある毎に騒ぎにならないというのは良い事ではあるようにも思えるのですが、危機に対し慣れてしまうというのはやはり怖いものがあります。
話題性という点では減少傾向にある鳥インフルエンザですが、脅威という点では減少どころかむしろ高まり続けていると言った方が適切かもしれません。H5N1というウィルスの毒性の増加や、鳥から人へ、人から人へという感染パターンの変化によってやがて大流行を起こすのではという予測もされています。
4年前の当時話題となっていた鳥インフルエンザ、狂牛病に残留農薬、偽装、改ざんなどの問題が加わり、食の安全や健康という点では、どれほどの前進が見られたのだろうと疑問に思ってしまう事もあります。それだけにこれからもさまざまな角度から、多くの情報をお伝えできればと思っています。
情報の過多、取捨選択する事の大切さが言われるようになって久しく、インターネットの普及によってその傾向は更に強まっているように感じられます。日々、大量の情報に触れる中で、少しでも有益な情報を。あっという間に過ぎた4年間という時間を振り返りながら、これからも更に頑張っていかなければと考えてしまいます。
第999回 9が三つ
2008年05月02日
私の中では恒例となっている回数が同じ数字の並びとなった回の数字にまつわるシリーズ。やがてこのコラムの回数も桁が一つ増えてしまうので、今後は回数が激減してしまうのではと少々寂しく思っています。
今回は999回という事で、三つ同じ数字が並ぶ中では最大で最後の数字となります。9と言うと、日本では読みが「く」になり、「苦」に繋がる事から、あまり好まれる数字ではないとされます。アパートや旅館の部屋番号に9号室がない話は、それほど珍しいものでもないように感じられます。
商品価格に関しては、かつては1円の桁は8円が良いとされ、いかにも値引きをしてはいるが、7円だと7が「しち」=質屋に通じる事から縁起が悪く、9円だとおつりがうるさいので値引きが逆に嫌われるという事で、9は中途半端な数字となっています。最近では値引き合戦の熾烈さか、それほど9円も使われない数字ではなくなってきています。
九を二つ並べた九九というと、小学校で暗記させられた記憶がありますが、10進法の一桁の乗数を効率よく覚える方法で、日本人が数字に強い理由の一つとして上げられています。
火傷を負ってしまった際、全身の皮膚の大まかな面積を算出する基準として、体のの各部を9%ずつに分ける考え方があります。9の法則と呼ばれるもので、事故などの際、火傷の程度を考える上では重要なものとなっています。
当地熊本がある九州は、かつては筑前、筑後、肥前、肥後、豊前、豊後、日向、大隈、薩摩の9国がある島として九州と呼ばれるようになったと言いますが、厳密には長門、周防、琉球を含めた12国では?という意見もあります。廃藩置県以降は9には足りなくなってしまっています。
西洋の諺には、「猫は9つの魂を持つ」というものがあり、猫が高い所から落ちても怪我をしないというところから、なかなか死なないという意味に使われます。それを踏まえた上で、「好奇心は(なかなか死なないはずの)猫をも殺す」というものがあり、誘惑に駆られて好奇心を出してしまうと、思わぬ痛い目を見るという意味に使われています。
999回を迎えても満足するどころか高まるばかりの好奇心。思わぬ痛い目よりも、たくさんの楽しい目に出会ってきたように思えます。これからも大好きな食や健康といったテーマを中心に頑張っていきたいと思っています。
第998回 足りてます?
2008年05月01日
最近、味付けがおかしい?慣れた味のはずなのに、何かが違う気がする?それは亜鉛不足なのかもしれません。食べ物の味が判らない。何を食べても酸っぱかったり、苦かったりと味の感じ方の偏りがある。それは亜鉛不足による味覚障害に陥っている可能性があります。
亜鉛というと鉛という文字が含まれているせいか、何処となく悪い物のように見えてしまいますが、進退には欠かす事のできない物です。味覚だけに限った事ではなく、身体の発育や元気にも深く関わっています。
それほど重要な働きを持つ亜鉛ですが、食物に含まれる割合が低く、調理によって失われやすく、体内への吸収率も低いという困った面をたくさん持っている栄養素でもあります。
また、食品添加物としてハムやチーズなどの練り製品に弾力を持たせるポリリン酸や、変色防止に使われているフィチン酸には亜鉛と結びついて吸収を阻害する働きがあります。チーズと言うと亜鉛が多い食材なので、ポリリン酸による吸収阻害は非常に残念なものがあります。
牡蠣や牛肉、レバー、うなぎにナッツ類が亜鉛の含有量が多い食品とされますが、最近ではサプリメントで摂取する人も増えてきています。皮膚細胞の入れ替わりを円滑にする事から、美肌にも良いと言われるようになり、免疫力を向上させるとも言われているので、積極的に摂取したい栄養素といえます。
しかし、亜鉛にはちょっと困った一面があり、一日の摂取上限とされる100mgを超えたあたりから免疫力を下げてしまう方向へ働き、髪にも良いと言われていた事も逆に脱毛へと働きかけてしまいます。
通常の食事からそこまで摂取する事は難しいのですが、サプリメントを愛用し、摂れば摂るほど力が出ると思っている人は注意が必要なのかもしれません。何事も節度を守って上手に付き合う事が大事と言えます。
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