にんにく卵黄本舗トップへ にんにく卵黄本舗トップへ

にんにく卵黄本舗トップへ ショッピング 会員様ご案内 サポート 会社案内 個人情報保護 サイトマップ
昔ながらの にんにく卵黄    
私たちの原点    
安心保証

 
ショッピング  
お客様の声  
 

コラム検索:
過去のコラム

コラム一覧

 <月別>

2008年11月

2008年10月

2008年09月

2008年08月

2008年07月

2008年06月

2008年05月

2008年04月

2008年03月

2008年02月

2008年01月

2007年12月

2007年11月

2007年10月

2007年09月

2007年08月

2007年07月

2007年06月

2007年05月

2007年04月

2007年03月

2007年02月

2007年01月

2006年12月

2006年11月

2006年10月

2006年09月

2006年08月

2006年07月

2006年06月

2006年05月

2006年04月

2006年03月

2006年02月

2006年01月

2005年12月

2005年11月

2005年10月

2005年09月

2005年08月

2005年07月

2005年06月

2005年05月

2005年04月

2005年03月

2005年02月

2005年01月

2004年12月

2004年11月

2004年10月

2004年09月

2004年08月

2004年07月

2004年06月

2004年05月

2004年04月

2004年03月

 

« 2008年09月 | コラムトップへ | 2008年11月 »

第1120回 美味しさ温度     2008年10月31日

 日が落ちて吹き付ける風に肌寒さを感じると、湯豆腐が美味しい季節が来たと思ってしまいます。豆腐好きの身としては夏場の冷奴も良いのですが、豆腐の美味しさをより引き出してくれるという意味では湯豆腐の方を好んでいます。

 湯豆腐の作り方にはさまざまなバリエーションがありますが、やはり豆腐本来の美味しさを味わうにはシンプルな昆布だしが良いと思っています。適度な大きさに切り分けた昆布をたっぷりの水を入れた土鍋に沈め、ゆっくりと加熱して沸騰直前に取り出します。そこに豆腐を入れて温めるのですが、美味しい湯豆腐にするにはただ温めるだけではなくちょっとした工夫が必要です。

 豆腐は大豆を搾って作られます。大豆は「畑の肉」と呼ばれるほど多くのタンパク質を含み、それが凝縮されて豆腐を形作っています。タンパク質は高温になるとタンパク質同士がくっついて固まり、水分を放出してざらついた食感になってしまいます。そのため、豆腐を高温にさらさない事が、豆腐の舌触りという点では重要になってきます。

 豆腐には大豆の脂質である大豆油が含まれ、豆腐のプルっとした食感の素となっています。大豆油は温度を高めるほど流動性が増し、柔らかさ出てきます。柔らかいプルプルの食感を得るには、豆腐を高い温度にする必要があります。

 豆腐の美味しさの一つとして、原材料である大豆のほんのりとした甘味があります。人の味覚は、食材の温度が体温に近いほど甘味を強く感じます。湯豆腐が体温より低い温度だと、まだ温まっていないという冷たさを感じてしまうので、体温よりも高く、より体温に近い温度である事が美味しさを感じる条件とも言えます。

 美味しい湯豆腐を作るには、そうしたそれぞれ個別の温度条件を元に、最も美味しい温度設定と加熱方法を考える必要があります。豆腐のタンパク質が硬化し始める温度は70度とされる事から、70度という温度が一つのポイントとなります。

 大豆油の流動性を確保するには温度が高いほうが良く、タンパク質の制限から70度が豆腐に許される上限と考えられます。味覚という点からは、舌が温かさを感じる程度の温度が良く、体温よりも少し高めの温度、45度くらいが下限の温度とします。

 温度の変動が少ない土鍋に昆布だしをしっかりと沸騰させ、短時間で豆腐を目的の温度にするために1丁を6等分程度の大きさに切り分けて、少しだけ水を切っておきます。豆腐を入れる直前に火を止め、豆腐を入れたらふたをして5分ほど待つ、これで豆腐の表面近くは70度の温度になり、中は50度くらいの温度になるので、すべての温度条件を満たした美味しい湯豆腐の出来上がりとなります。


 



第1119回 鎮痛剤登場     2008年10月30日

 モルヒネというと何を連想するでしょうか。古典的な麻薬、強力な鎮痛剤、どちらかと言えば鎮痛剤というイメージの方が強いのかもしれません。

 モルヒネはアヘンを原料に作られます。19世紀のはじめにドイツの薬剤師、ゼルチュルナーによって分離され、ギリシャ神話の夢の神であるモルフェウスの名前にちなんでモルフィウムと名付けられています。

 皮下注射が発明されるのが1853年の事なので、それまではあまりモルヒネを使ったという記録は残されていません。その後、広く使われるようになり、戦争で負傷した兵士の痛みを和らげる事に使われ、南北戦争だけでも40万人を超えると言われる中毒患者を生み出し、当時、軍人病と呼ばれています。

 鎮痛剤を使用する際、弱い効き目の鎮痛剤からはじめて、徐々に用量を増やしていくという事が行なわれます。継続して使用する事で、やがて効き目が弱まり、量が増えていって副作用だけが目立ってくるという「頭打ち」と呼ばれる減少が起こります。

 モルヒネにはその頭打ちが起こらないと言われ、効き目が強力というだけでなく、継続して使用できる鎮痛剤と言えます。また、最近行なわれている低用量の投与法では、心配される依存性も生じない事から、利用範囲が広まってきています。

 かつては粉末をアルコールで溶かし、水で薄めて飲用するという使用法が行なわれ、継続性が低かった事から、痛みがひどい末期ガンの患者では一日に10回以上も服用する必要があり、効く代わりに不便な薬剤となっていましたが、効き目が長続きする錠剤が開発されてからは、それも解消され、一日2回程度の服用で痛みもコントロールができるようになっていると言います。

 最近、そんなモルヒネを上回るかもしれない鎮痛剤が意外な物から見付かっています。前立腺ガンの診断に用いられている腫瘍マーカーの一種、前立腺酸性ホスファターゼに痛みを引き起こす伝達物質を痛みを抑える物質に変換する働きがある事が突き止められています。

 痛みを抑える鎮痛効果は単回の投与でもモルヒネと同等かそれ以上とされ、モルヒネの単回投与での持続時間が5時間とされる事に対し、前立腺酸性ホスファターゼは最長で3日間とまで言われ、一回の投与でこれほどまでの効果を上げるとはと研究者を驚かせたと言います。

 今後、同様の働きを持つ他のタンパク質の検討や、相互作用を持つ物質の研究を通し、錠剤化して使いやすくする事が進められているそうです。痛みの感じ方や痛みへの耐性には個人差が存在しますが、痛みを有効にコントロールできる事は患者の生活の質という点からは大幅な向上に繋がる事と言えます。新たな鎮痛剤の登場を歓迎したいと思います。


 



第1118回 セピアの煙幕?     2008年10月29日

 輸入食材のコーナーに小瓶のような形をした小さなプラスティック製のチューブが、網状の袋に数個入れられて売られています。形が面白く、思わず手に取ってみると、ラベルに書かれたSepiaの文字からそれがイカスミだと判ります。

 ギリシャの言葉でセピアはコウイカの事を指し、コウイカはスミイカと呼ばれるほどイカスミとは縁が深い存在となっています。

 かつてイカやタコの墨はインク代わりに使われていました。黒褐色の独自の色合いがイカスミ色の...という形で残り、今日のセピア色、セピア調といった色合いの表現になっています。

 そんなイカスミを料理に加えると、イカスミの色のせいで料理が黒く不気味な仕上がりになってしまう事から、世界的にはあまり一般的に使われる食材ではありませんでした。

 日本でも伝統的にイカスミを使う料理は、沖縄で作られていたイカの塩辛の黒作りくらいとされ、イカのワタの一部として墨袋ごと捨てられていました。

 イカスミは粘性が高く、アミノ酸を多く含む事からソースなどに加える事で、素材とよく絡み、こくのあるマイルドな味にする事ができます。そうした美味しさに早くから気付いていた地中海地方では、パスタやパエリアなどで広く使われ、特にベネチアではペストを遠ざける働きがあると考えられた事から、多くの料理に使われています。

 イタリア料理や地中海料理が広まるにつれ、イカスミに対する抵抗感もなくなり、今日では特に珍しい食材でもなくなってきています。

 以前、イカスミは煙幕の一種で、イカが天敵の目をくらまして逃げるための物と考えられていました。しかし、粘性が高く、拡散しにくいという煙幕に不向きな性質や、イカが活動している水深には日光があまり届かず、目くらましの意味がない事を考えると、イカスミが煙幕ではないように思えてきます。

 吐き出した場所に塊りで長く残り、多くのアミノ酸から美味しそうな香りがする。そうした特長は身代わりのデコイのようで、天敵が逃げ遅れた美味しそうな塊りを狙っているうちに逃げる時間を稼ぐための物のようです。

 しかも高い粘性はエラに絡み付いて窒息させる働きもある事から、天敵を攻撃する意味合いも含まれています。エラ呼吸ではない私達は美味しくイカスミをいただく事ができますが、健康診断の前に食べてしまうと、イカスミの成分のせいで消化器官内に出血ありと診断されてしまう事があるので注意が必要です。


 



第1117回 唐すぎて天竺     2008年10月27日

 滝沢馬琴の随筆「燕石雑志」の中に唐辛子などの辛い物を入れた味噌を「天竺味噌」と言う。天竺とは「辛すぎる」=唐(中国)を過ぎると天竺(インド)に至るという謎かけからきていると記された食べ物があります。

 天竺味噌を語る上では、その前段階として鉄火味噌について説明しておく必要があります。鉄火味噌はなめ味噌の一種で、味噌に煎り大豆や野菜、香辛料を加えて作られます。

 主なベースとなるのは赤味噌で、香辛料には唐辛子、生姜などが使われ、ゴボウなどを加えて砂糖、酒などで味を調えて作られています。他にニンジンやレンコンが加えられる事もあり、ゴマ油で長時間根気よく炒り上げて仕上げられています。

 鉄火味噌の鉄火とは、唐辛子の辛味を鉄火場の熱に喩えたもので、その辛味を特に強調したのが天竺味噌とされます。辛味で食が進む上に小さく刻まれた野菜や発酵調味料でもある味噌の栄養が加わり、鉄火味噌、天竺味噌は滋養食としても重宝されていたと言います。

 辛いカレーをインドカレーと称した例がありますが、基本となる発想は天竺味噌と同じと言われ、本場のインドのカレーの辛さを参考にしたというより、唐を辛すぎて...の謎かけが元になっているとされます。

 インドとはまったく関係のない天竺味噌ですが、ネーミングの由来に江戸の粋を感じてしまうのは私だけでしょうか。


 



第1116回 大人のための味覚

 個人差こそありますが、大体の場合において子供は酸っぱい物が苦手です。理由は簡単で、脳が嫌うように命じているから。基本的に動物は酸っぱい物を嫌うようにできています。

 食べ物に酸味が含まれているという事は、その食べ物が腐敗しているかもしれない可能性を示しています。ほとんどの場合、食べ物の腐敗が始まると腐敗菌の働きによって発酵が起こり、低級脂肪酸や酪酸などが生成されて酸味が生じてきます。

 本能的にそうした酸味を腐敗として検知するため、酸味を感じた瞬間、脳は危険信号を出してその食べ物を飲み込まないように指示を出してきます。同様の事は植物系の毒素に通じる苦味を検知した時にも起こります。

 大人になって酸味を苦手としなくなる理由の一つは、身体の抵抗力が向上して多少の腐敗なら気にしなくても大丈夫と脳が判断する事が考えられ、若干の腐敗ならば食べる事ができると判断する事で、食料を調達できる幅が確保できる事も充分に考えられる事です。

 また、酸味を受け入れ、むしろ好むようになる理由として、果物の存在を抜きにする事はできません。果実にはクエン酸をはじめとしたさまざまな酸が含まれ、甘味だけでなく酸味を備えています。甘味は身体に直接的なエネルギー源となる糖質なので、種子などからエネルギーを得る場合のように、蓄えられたデンプンを酵素によって糖質に変えるという手間も必要ありません。

 その意味から果実は理想的なエネルギー源と言えるのですが、果実には大切な役割があります。植物が果実を理想的なエネルギー源として動物に提供する背景には、果実に含まれる種子の運搬という目的があります。

 果実を喜んで動物に食べてもらい、良質のエネルギーを提供して広範囲に活動してもらう。より遠くの肥沃な土地に行ってもらい、排泄と共に種を蒔いてもらって、より良い条件で子孫を増やす。しかも、より行動範囲を広く設定するには、子供よりも大人の方が好ましい。

 そう考えると、エネルギー源として動物を引き寄せる甘味だけよりも、子供が苦手な酸味を備える事でより的確に大人にターゲットを絞る事ができます。果物の美味しさには、そうした巧妙な計算があるのかもしれません。そう考えると、果物の種は捨ててしまわずに何処かに蒔いてやって、少しは植物の意に沿うようにしてあげないといけないような気がしてしまいます。


 



第1115回 母乳ダイエット?     2008年10月24日

 細菌やウィルス、ガンなどさまざまな病気から私達を守る大切な仕組みの一つが免疫です。免疫は一度対応した病原体などの情報を記憶していて、次に同じようなものが来た場合、速やかに対応できるようになっています。

 その意味で免疫の強さは、たくさんの細菌やウィルスと接して情報を蓄える事で高められると言え、小児よりも成人の方が病気になりにくい理由の一つとなっています。

 新生児の場合、データの蓄えがない事から、免疫がそう強くない状態にある事が考えられます。そこで手近なさまざな細菌などと接する事で、急速にデータの蓄積が行なわれます。しかし、免疫の適応力が低い状態は非常に危険でもあるので、ある程度免疫のデータが蓄積され、充分な防御が行なわれるまでの間を支えるものが母乳には含まれています。

 その一つがラクトフェリンで、免疫を高める働きを持つ成分として牛乳の中から発見されています。ラクトフェリンは免疫細胞に働きかけて活性化させるだけでなく、細菌やウィルスの鉄分をキレート効果と呼ばれるカニのハサミのように挟み込んで排出する働きで抗菌抗ウィルス作用を発揮します。

 そんなラクトフェリンにダイエット効果がある事が最近の研究によって確認されています。歯周病菌に対する殺菌作用を研究するため、ラットにラクトフェリンを与えていたところ、多くのラットで内臓脂肪の減少が見られたと言います。

 詳細なメカニズムについては更に研究を進める必要があるそうですが、ダイエット中は免疫力が下がってしまいがちなので、内臓脂肪の減少と免疫力の向上が同時にはかれるというのは理想的な事かもしれません。

 牛乳に含まれるウシラクトフェリンを摂取すると、人の体内のヒトラクトフェリンが増える事が確認されています。今後、乳製品に人気が集まりそうな気がしてしまいます。


 



第1114回 麺にあらず?2     2008年10月23日

 蕎麦は古い地層から花粉が採取されている事から、5世紀半ばには日本に入ってきていた事が確認されています。少なくとも千年を超える時間を蕎麦と過ごしてきた訳ですが、今日私達が親しんでいる蕎麦、薄く伸ばして切り分ける「蕎麦切り」が食べられるようになったのは江戸時代に入ってからの事です。

 それまでの蕎麦はどのようにして食べられていたかというと、硬い殻を取り除くために脱穀した蕎麦の実をそのまま炊いて粥にしたり、他の雑穀類と混ぜて炊くという粒食や粉に挽いた物を熱湯でこねて作る「蕎麦がき」、こねて餅状にした物を焼いて食べる「蕎麦餅」などが食べられていました。

 今でも蕎麦屋のメニューに蕎麦がきが用意されている事があり、蕎麦の食べ方の一つという事が判りますが、あくまでもサイドメニューの一環という感じで、蕎麦切りの考案以降、蕎麦切りが蕎麦の食べ方の主流となってしまった事が伺えます。

 蕎麦切りについては、いつ頃、誰の手によって考案されたかについて正確には判っていません。蕎麦が採れ、蕎麦打ちが行われている地域によってもさまざまな由来が語られているようですが、どれもそれが蕎麦切りの発祥とする裏付けを欠くものとなっています。

 蕎麦切りに関する最も古い記載は、江戸時代に入る少し前、天正12年(1574年)に行われた寺院の修復祝いで蕎麦切りが出されたというものとされています。その半世紀ほど後の慶長19年(1614年)の僧侶の日記に、江戸の常明寺で蕎麦切りをご馳走になったと記されている事から、蕎麦切りがこの頃から普及し始めた事が考えられます。

 当時の蕎麦切りの調理法は今とは若干の違いがあり、蕎麦切りを一旦熱湯に入れて茹で、ざるですくってぬるま湯で洗い、水気を切った後、熱湯をかけてふたをして蒸して仕上げるというものでした。

 今日行われている茹で上げた蕎麦切りを冷水で洗って仕上げる調理法に切り替わったのは、17世紀の終わりと考えられ、長い蕎麦の歴史の中のわずかな部分という事ができます。

 調理法が切り替わった最大の理由は「つなぎ」の存在にあると考える事ができます。蕎麦に小麦粉をつなぎとして混ぜる事が行われるようになったのが17世紀の終わり頃とされ、ちょうど調理法の切り替わり時期と重なります。

 それまでの蕎麦切りは蕎麦粉だけで作られていたので、切れやすく、煮くずれしやすかったために蒸して仕上げられ、小麦粉がつなぎとして入った事で扱いやすさが向上し、その後の普及に繋がった事が考えられます。

 麦の不作を補う「そばむぎ」である事、つなぎとして小麦粉を含む事で今日の調理法の確立や普及に繋がった事、そうやって考えると植物としては遠くても、存在としては非常に近いものがあり、蕎麦も麺と呼ばれるべきと思ってしまいます。長い時間をかけて形作られてきた食に関する言葉には、少し掘り下げるだけでも面白いものがあります。


 



第1113回 麺にあらず?1     2008年10月22日

 趣味で蕎麦を打つという方が増えています。そうした方々の間では蕎麦を打つ事を、蕎麦打ちではなく蕎麦道と呼ばれる事もあり、それだけ奥が深いものであるという事を示しているようにも思えます。そんな蕎麦道に精進する方に挑戦的な一言、蕎麦は麺ではないかもしれません。

 蕎麦といえばうどんやラーメンと並んで麺類の代表の一つとも言えます。その蕎麦が麺ではないかもしれないというのは、麺という言葉の成り立ちからきています。

 麺という言葉の始まりは中国にあります。元々は小麦を挽いて粉にした物、小麦粉を指す言葉が麺でした。小麦粉=麺を水でこねた物を餅(ぴん)と呼び、蒸したり焼いたり、油で揚げたりして食べていました。

 その中で今日の麺に近い茹でて食べる物が「湯餅」と呼ばれ、火が通りやすいように平たく伸ばされていた事から、ワンタンに近い物であると考える事ができます。

 小麦粉をこねた物から細く長い形状の食べ物が作られるようになるのは、唐の時代に入ってからとされます。小麦粉をこねて平たくのばし、刻んで作る剪刀麺(せんとうめん)と呼ばれる物が登場し、後の宋の時代には切麺と呼ばれるようになり、やがて麺とだけ呼ばれるようになっています。

 本来は原料の小麦粉の事を指していた麺が、小麦粉を使って作られる細長い食べ物を指す言葉へと変化した事になります。その意味から考えると、小麦粉から作られない蕎麦は麺ではないという事になってしまいます。

 蕎麦はタデ科に属する植物で、イネ科の麦とは種類の異なる遠い存在です。しかし、蕎麦の事を「そばむぎ」と呼んでいた事があります。実際、今でも蕎麦は「きょうばく」と書いてそばと読み、麦の字がしっかりと含まれています。

 荒れた土地でもたくましく育ち、短時間で収穫できる蕎麦は、気象災害などによる飢饉から人々を守る存在でもあり、主食の一つでもある麦を補完する物として「そばむぎ」であった事は納得がいきます。麦の不作を助けた名誉麦というところでしょうか。


 



第1112回 経路考察     2008年10月21日

 タンパク質、漢字で書くと蛋白質となり、蛋とは卵を指す文字となっていて、蛋白とは文字通り卵の白身を指しています。

 卵の白身がほとんどタンパク質の塊のような物である事が由来となっていますが、蛋はあまり日常的に使われる漢字でもないので、蛋白質は卵白質と言い換えようと栄養学者の川島四郎によって提唱された事もあります。

 それくらい関わりが深いタンパク質と卵ですが、輸入された乾燥卵からタンパク質の含有量を偽装する物質、メラミンの混入が検出されていました。

 メラミンは窒素含有量が高い事から、混入させる事で成分検査の際、タンパク質の含有量を高く評価させる事ができます。そのため水増しなどによってタンパク質の比率が下がった素材に混入させ、水増しの有無を隠蔽する事に使われています。

 しかし、今回は乾燥卵なので、水で薄めるという事はできません。何の目的でと思ってしまうのですが、今回の混入は飼料に含まれていたものが卵へと入り込んだと考えられています。

 卵に含まれる成分は母鶏のエサの影響を受けます。ヨードやDHAをエサに含ませ強化した物や、色素が多いエサを使い色合いを良くした卵は、店頭で多く見かける事ができます。

 飼料に含まれるタンパク質量を多く見せかけるために混入されたメラミンは、母鶏の体内ではほとんど分解される事がないため、そのまま卵へと入り込んだ事が考えられます。

 多くは排出されてしまうので、直接混入された場合と比べて含有量はかなり少なくなっていますが、やはり食の安全を考える上では見過せない問題です。

 乾燥卵は運搬や保管が簡単で、日持ちも良く、安価という工業的に優れた面を多く持っています。そのためさまざまな加工食品に幅広く使われているだけに、今後、この問題は拡大してしまいそうにも思えます。食の安全というテーマの難しさが更に高められたように思えてしまいます。


 



第1111回 11月11日     2008年10月20日

 このコラムで伝統的に行ってきた数字並びの話題、回数の桁が4桁になった事から、3桁の頃と比べて頻度が激減する事と思っていましたが、意外にも早く数字が揃う回が巡ってきました。今回は1が四つ並ぶ1111回。さっそく1並びの話題を取り上げてみようと思います。

 1が四つ並ぶ日というと、11月11日です。この11月11日には多くの記念日が設定されています。食べ物関係の記念日を上げていくと、まず「鮭の日」があります。

 鮭という漢字が魚偏に「十一十一」と書く事から、1988年頃に新潟県村上市が制定した事が始まりとされ、まったく無関係ですが築地市場の北洋物産会も同じ理由で制定しています。

 1が四つ並ぶ姿は、某お菓子メーカーの細い棒状に焼き上げたスナック菓子やそれにチョココーティングを施したお菓子に似ている事から、そのお菓子の名前を付けた記念日にもなっています。毎年キャンペーンが行われるそうなので、今年はどんなキャンペーンが行われるのか注目したいと思っています。

 日本の歴史上、国産のチーズの製造が確認できる最古の記録が700年10月となっている事から、旧暦の10月、今の暦では11月に当たる事から11月11日を「チーズの日」としています。

 牛乳を使った発酵食品である「酥(そ)」の製造が命じられた日に由来するそうですが、酥はヨーグルトにも通じる部分がある事から、いずれヨーグルトの日とされる事もあるのではと思ってしまいます。

 土に由来する農産物の一つであるピーナツの記念日も土が十一と書く事から、11月11日に全国落花生協会によって制定されています。ピーナツ=落花生は、文字通り花が地面に落ちてから生まれると言われるほど土とは密接とされ、畑の土という言われ方をするそうなので、ちょっと鮭っぽくはありますが納得のいくものがあります。

 先述のスナック菓子に発想は似ていますが、1が並ぶ姿がいろりで焼いている姿に見える事から、「きりたんぽの日」にも制定されています。秋田県鹿角市の「かづのきりたんぽ倶楽部」によって制定された日で、きりたんぽの更なる普及を目的としているそうです。

 同じ発想ではありますが、1が並ぶ姿は並んだもやしにも見える事から「もやしの日」にも制定されています。もやしは地味な食材ではありますが、意外とあると便利な食材でもあるので、記念日によって普及に拍車がかかる事を期待してしまいます。

 食だけでなく健康に関しては記念日としては、磁力線を使って血行を促進して肩こりを軽減する事を提唱した健康器具メーカーによる、磁力線のプラスとマイナス(十、一)に由来した「磁気の日」というものもあります。10月1日の方がプラスとマイナスには適している気がするのですが、やはり1が並ぶという特徴的な日の方が選ばれています。

 1111回目に改めて1が並ぶ11月11日を振り返ってみると、幅広い記念日の制定に興味深さを感じてしまいます。


 



第1110回 358     2008年10月17日

 東北地方、福島県会津地方には麹漬けの一種である「三五八漬け(さごはちづけ)」なる物が古くから伝えられています。名前の由来は材料の配合を指しており、脱穀や精米の際に出るくず米や残ってしまったご飯の再利用として作られたのが始まりと言われます。

 漬け床として塩と麹、米をそれぞれその名の通り、3:5:8の割合で配合して使います。発酵には温度が必要なので、温かいご飯と麹を混ぜて発酵させます。麹の発酵によって甘味が出てきたら塩を入れて発酵を止め、3〜4週間ほど寝かせて漬け床ができあがります。

 一度漬け床ができあがると、糠床のように毎日様子を見ながらかき混ぜる必要がなく、そのため管理も簡単な上に美味しい漬物がすぐにできるという事で、昔は冬の間に大きな瓶で三五八床を大量に仕込んで、一年を通して利用していたそうです。

 三五八床は旨味が強く、麹の甘味と発酵によるほのかな酸味が独特の美味しさとなっているとされますが、キュウリなどの野菜だけでなく肉や魚介類、身欠きニシンやスルメなどの乾物を漬け込む事も特徴の一つとなっています。

 分類上、三五八床は麹を基調とした漬物床で、塩麹と呼ばれるものに入れられます。塩麹は美味しさの割には非常に簡単に作る事ができ、米麹さえ手に入れば手軽に準備する事ができます。

 米麹1kgに塩300gを用意し、容器に米麹と塩を入れてひたひたになるくらいの水を入れておきます。それから一週間から10日ほどの間、常に水がひたひたの状態にあるように少しずつ水を足しておけばできあがりです。

 旨味が加わり、塩味の角が取れたまろやかな味になるんで、野菜や魚介類を漬け込むだけでなく、肉に塗り付けて焼き上げるといった使い方もできます。たまにかき混ぜるだけで長期にわたって保存が利くので、常備しておけば便利なものとなるのではないでしょうか。


 



第1109回 味覚機能     2008年10月16日

 食べるという事を楽しむのは、複雑に絡み合った味覚の刺激を楽しむ事でもあります。脳は電気的な刺激しか受け付けないので、舌に備えられた味蕾と呼ばれるセンサーが味を感じ取り、電気信号を発する事で食べ物の味は認識されています。

 舌から脳への味覚の伝達は4本の神経で行われており、複数の信号が同時に伝わると一つひとつの刺激が和らぐという傾向があります。酢を直接口に含むと酸味の強さにかなりの刺激を受けますが、砂糖が加えられていると甘酸っぱさとしてそれほど強い酸味の刺激を受けなくなります。

 酸味と甘味という二つの味覚が同時に伝達された事で、砂糖と酢の直接的な二つの刺激が和らげられ、甘酸っぱいという一つの味として認識される事になります。

 その際、細かく分析してみるとまず甘味を感じ、次いで酸味を感じている事に気付きます。舌の味を感じる部分の違いによって生じるタイムラグがその違いの元となっています。

 味は舌の部位によって感じる箇所が分けられています。甘味は舌の先端で感じ、横の部分は酸味、奥の部分では苦味や旨味を感じます。酸味よりも甘味を先に感じてしまうのは、舌の先端から横の部分へと味が広がるわずかな時間的な差によって生み出されています。

 味が味蕾によって検知されてから脳に伝えられるまでの時間にはそれぞれ微妙な差があります。苦味や塩味、酸味は早く、0.6秒ほどで脳へと伝えられますが、旨味では0.9秒、甘味は1秒、唐辛子などの辛味に至っては1.5秒ほどもかかってしまいます。

 よく激辛料理を食べた際、少し遅れて辛味を感じたように表現されますが、実際に辛味は2.5倍近い時間をかけて脳へと伝えられている事になります。

 味を感じる部位の違いや伝達速度の差、そうした微妙な時間的違いや同時に感じる事による刺激の緩和、複雑に設定された味覚の伝達によって食べるという事の楽しさは演出されています。また、味覚の中で苦味と酸味の伝達速度が速い理由として、食材に含まれる毒物や腐敗をいち早く察知するという防御機能も考えられ、味覚をより興味深いものに見せてくれます。


 



第1108回 急速凍結     2008年10月15日

 冷蔵庫で氷を作ると白い氷ができてきます。コンビにで売られている物や、飲食店で出される氷は透き通った透明で、二つの氷を並べて置いておくと、家庭の冷蔵庫で作った白い氷の方が早く溶けていってしまいます。

 家庭の冷蔵庫で作る氷が白くなってしまう事には、氷の作られ方に原因があります。業務用の氷を作る際、まず冷凍用のプールに塩水を満たします。水は塩分を含む事で0度以下になっても凍らなくなるので、塩水のプールを冷やし、そこにケースに入れた真水を漬け込んで氷を作ります。

 冷やされた塩水の温度はマイナス9度ほどで、家庭用の冷凍庫のマイナス20度と比べるとかなり高温という事になります。そんなあまり低くない温度でゆっくりと凍らせる事で、水の分子はミネラルなどの不純物や溶け込んだ空気などを避けながら集まり、透明な氷になります。

 避けられた不純物は、集まって結合していく水の分子に押し出されるように一箇所に集められて凍るので、最終的にはその部分だけを切り落として透明な氷だけにして出荷されています。

 家庭用の冷蔵庫ではマイナス20度という低温で一気に凍らせる事から、水の分子は不純物を閉じ込めながら固まっていくので、白く濁った氷になってしまいます。また、不純物を含む事から溶けやすくなってしまいます。

 家庭で上手に氷を作りたい場合は製氷皿に一度沸かして冷やした水を入れ、ラップをしてからタオルで全体を包み、急速に冷えないようにして凍らせると溶けにくい氷になります。

 早く氷を作りたい場合は、できるだけ冷えた水をと考えてしまいますが、実はその逆で、より高温の水の方が早く氷になってくれます。

 水よりもお湯の方が早く氷になるというのは、ムベンバ効果と呼ばれるもので、20度までなら温度が高くなるほど氷になるまでの時間は長くなりますが、20度以上になると温度が高くなるほど早く凍りつきます。

 水はゆっくりと温度を下げていくと過冷却と呼ばれる不安定な状態になり、凍る事を忘れて液体の状態を保持しようとします。そこに衝撃を与えると凍る事を思い出し、瞬間的に凍り付くという性質があります。その過冷却を極力させないように高温から一気に凍り付かせる事て氷を作る時間を短縮させるのですが、効果は絶大で20度の水と比べ、100度のお湯から凍らせた場合、最大3分の1以下にまで時間短縮が可能とされます。熱湯から氷、ちょっと抵抗がありますが、お急ぎなら一度お試し下さい。

 
 



第1107回 カラスと鳶?     2008年10月14日

 「からすとんび」と言われると、鳥の一種で黒い鳶の事と思ってしまいます。ちょっと詳しい人なら鳥とは関係のない物、イカに関する事だと判ると思います。からすとんびとは、イカの口の部分の事で、正式には鳥のくちばしに似た2枚の顎板の事を指します。

 イカの10本の足に囲まれた中央部にイカの口があります。口には口球と呼ばれる丸い筋肉の塊があり、その筋肉の塊に覆われるように2枚の顎板が備えられています。

 イカの顎板は鳥のくちばしのように上下に展開し、先端がかなり鋭くなっています。吸盤の付いた足でしっかりと獲物を捕まえ、かじり取るように肉に食い付く事に特化したものである事が一見して理解できる感じがします。

 上の顎板は細身で柔らかなカーブを描き、カラスのくちばしを彷彿とさせる事から「からす」と呼ばれ、下の顎板は急なカーブを描くところが猛禽類のくちばしに似ている事から「とんび」と呼ばれて、合わせて「からすとんび」と呼ばれる事になっています。

 有名な話ですが、ディズニー映画の「海底二万哩」では巨大なイカがノーチラス号を襲う場面が収録されています。巨大イカは当時の最高の技術を使い、モーターを動力として本物そっくりの動きができるように作られていました。

 ノーチラス号を襲い、食い千切ろうとする場面では、音を立てて迫ってくるからすとんびが描かれていますが、この巨大イカのからすとんびは、鳥のくちばしを意識し過ぎたために上顎が下顎を覆う形になっていて、本当のからすとんびとは違う形状になっています。

 実際のからすとんびは上顎を下顎が覆う形になっていて、からすをとんびが包むような感じになります。下からすくい受けるようにかじり取るのが正しいからすとんびで、強力な力でそれを動かす口球はイカの中で最も発達した筋肉の塊となっています。そのためイカの中で一番美味しい部位とされますが、イカをさばく際、通常はワタと共に捨てられてしまいます。干物が美味しいと言われるので、一度試してみなければと思ってしまいます。


 



第1106回 改善活性     2008年10月10日

 細胞が分裂する際、それまで二重らせん構造をしていた染色体が解けて二つに分れ、その際に末端部が欠損して短くなってしまいます。その末端部はテロメアと呼ばれ、細胞分裂にとって大切な役割を担っています。

 細胞分裂を繰り返し、テロメアが欠けた状態では染色体は不安定になり、発ガンの原因となると考えられています。テロメアの再生にはテロメラーゼと呼ばれる特殊な酵素の働きが必要ですが、テロメラーゼは正常な体細胞の中では、ほとんど働いていないか弱い活性しか持たないとされ、ガン細胞の中では高い活性を示している事が知られていました。

 細胞内では染色体の不安定化を阻止し、ガン化する事を防ぐためにテロメアが短くなった時点で、細胞老化と呼ばれる細胞分裂をしない常態になっています。細胞老化になるまでの細胞分裂の回数については、元々のテロメアの長さが関係しているため、それが老化に関する個人差という事ができます。

 テロメアの長さについては先天的な部分がほとんどを占めているので、老化を防ぎ、長生きをするにはテロメラーゼの活性を高めて欠損の修復を行う事が重要と考えられます。

 最近、生活習慣を変える事でテロメラーゼの活性が高められる事が確認されています。低リスクの前立腺ガンの患者30人に大幅な生活習慣をしてもらい、3ヵ月後にテロメラーゼの活性度合いを評価したところ、生活改善によって30%近くもテロメラーゼの活性が高まっていたと言います。

 生活改善の内容については、脂肪分の摂取を食事全体のカロリーの10%以内に抑え、精製された糖分の摂取を控える。食材をより健康的な物に換え、野菜や果物を多めに摂る。ビタミン類と魚油を摂るようにし、適度な有酸素運動を行い、ストレス管理とリラクゼーションを行うというもので、呼吸法の訓練も行われています。

 そこまでやればという感じもしないでもないのですが、テロメラーゼの活性化という明確な老化防止の指標が確認されている事が何よりだと思います。生き方が年の取り方に出るという言い方をされる事がありますが、テロメラーゼが関わっているのであれば、正にその通りと思ってしまいます。


 



第1105回 髄液から血液へ     2008年10月09日

 以前、髄液の検査を行うために脊髄穿刺を受けた事があります。腰の少し上辺りから太目の注射針を突き刺し、背骨の隙間から中の髄液を抜き取るのですが、より作業が行いやすいように横に寝て膝を抱えて丸くなります。

 その際、海老になってくださいと言われ、丸めた背中から針が刺し込まれるのを感じながら、いつも海老を料理をする時、竹串を使って背ワタを抜くのはこんな感じなのだろうかと考えてしまった事から、しばらく海老が食べられなくなった事があります。

 私の場合は施術を行った医師が上手だった事もあり、海老が苦手になった程度で済みましたが、人によってはひどい痛みを伴ったり、神経を傷付けてしまい、後遺症が残るという事も起こっています。それだけ負担が伴う検査ではありますが、得られる情報は有益で、さまざまな事を知る事ができます。

 アルツハイマー病のリスク特定には、アルツハイマー病に深く関わっているとされる特殊なタンパク質、アミロイド・ベータを観察する必要がありました。アミロイド・ベータの評価には脳脊髄液を用いるのが最も確実とされる事から、髄液の検査が必要とされていました。

 最近の研究でアルツハイマー病発症直前に血漿中のアミロイド・ベータの濃度が増大し、発症後には減少する事が確認され、発症前に増え続けたアミロイド・ベータが、発症後は脳内に閉じ込められる事が考えられています。

 そうした傾向から血液検査によって、アルツハイマー病の発症リスクの評価が行える可能性が示唆されています。血液検査であれば脊髄穿刺よりもはるかに患者の負担が少なく、検査の頻度も増やす事ができます。

 アルツハイマー病の研究に関しても、これまで患者の病理的な進行を追跡する確実な方法がないとされてきただけに、今回の検査方法の確立によっては大きく前進する事が考えられます。アルツハイマー病は、いまだに治療法の確立に至らない疾患の一つでもあるので、今回の研究が大きな前進に繋がればと期待しています。


 



第1104回 エラの行方     2008年10月08日

 カルシウムというと骨にいばかり目が行きがちですが、細胞内でのカルシウムは神経の伝達や筋肉の収縮、ホルモンの分泌や血液の凝固といったさまざまな生理機能を調節しています。生命活動を円滑に行うためには、常に血液中のカルシウム濃度は一定に保つという事は欠かす事ができません。

 骨は身体を支える重要な物ですが、血液中のカルシウム濃度を一定に保つための貯蔵庫という意味も持っています。血液中のカルシウム量が不足してくると、骨からカルシウムが溶け出させてカルシウムの不足を補います。

 そのカルシウム量のセンサーと骨からカルシウムを放出させる指令を掌っているのが、喉仏のすぐ下にある甲状腺の裏側に貼り付くように存在する、米粒大の非常に小さな内分泌期間である副甲状腺となっています。

 副甲状腺は甲状腺と共に存在する事や名前が副甲状腺とされている事から、甲状腺と同一視されがちですが、由来や機能がまったく異なり、別の独立した内分泌機関という事ができます。

 血液中のカルシウム濃度をモニターしながら、カルシウム濃度が不足してくると副甲状腺ホルモンを分泌して、骨からカルシウムを溶かし出してカルシウム濃度の恒常性を保つという重要な役割を持つ副甲状腺ですが、それだけ重要な働きを持っていながら陸上の脊椎動物にしか存在していません。

 陸上で生活する動物は、必要なカルシウムを食べ物を通して手に入れていますが、水中生活を送る魚類などは水中に溶けているカルシウムを吸収する事ができるので、わざわざ自分の骨を溶かす必要がありません。

 カルシウムに限らずナトリウムやカリウムなどのミネラルも水中には多く、それらをエラから取り入れる事で血液中の必要量を確保しています。アンモニアなどの老廃物の排出もエラを通じて水中に行うので、陸上の生物の肺と同一視されるエラは、単に呼吸器というだけでなく非常に多くの重要な役割を持っている事が判ります。

 実際にエラにはカルシウムの濃度をモニターするためのカルシウム感知受容体が備わっており、体内へのカルシウム取り込みの70%を担っています。その意味で非常に似た役割を持つエラと副甲状腺なのですが、胚から細胞分裂して身体が形成される過程を観察すると、エラと副甲状腺は同じ系統の細胞から分化する事が確認できます。

 進化の過程において陸上へと活動の舞台を広げた動物は、体を支える物として骨を発達させただけでなく、カルシウムの貯蔵庫としても活用し、それを管理する物としてエラを副甲状腺に進化させたと事になります。陸上に上がった際に失ったとされるエラは、今でも私達の体内に残され、生命を守る大切な役割を続けていると言えるのではないでしょうか。


 



第1103回 青を求めて     2008年10月07日

 今では購入する事も可能となりましたが、かつては青いバラはありえない存在とされていました。英語の青いバラには、見果てぬ夢、実現不可能という意味もあり、それだけ実現させる事が不可能に近いものであった事を伺わせてくれます。

 花の色を決める要素の中で赤、紫、青系の色は、ほとんどアントシアニン色素によって決められています。アントシアニン色素は花の花弁細胞内の水素イオン濃度(pH)によって状態が変化し、酸性で赤、中性で紫、アルカリ性で青といった発色をします。

 青い花の発色因子はデルフィニジンと呼ばれる状態のアントシアニン色素で、バラは遺伝的にデルフィニジンを作り出す酵素を持たず、しかも花弁細胞内のpHが4以下と酸性が強く、青い色を発色できない状態になっています。

 青いバラを作るには、まずデルフィニジンを生合成できる事が必要となるため、パンジーからデルフィニジンを作り出す遺伝子を取り出し、バラの花弁細胞内で働くようにするという遺伝子組み換えの技法が使われています。

 しかし、バラの花弁細胞内のpHの問題が完全に解決された訳ではない事から、今日見られる青いバラは完全に青と呼べるものではない部分を残しています。

 デルフィニジンを発色因子として持つアジサイの花弁細胞は、バラと同じくらいの低いpHではあるのですが青い色を維持しています。今後、その謎が解き明かされれば、バラはより完全な青に近付く可能性があります。

 小説の中にも登場し、実際にもかなりの情熱が青いバラの栽培には費やされてきています。幾度も試験交配を繰り返し、破産してしまう貴族などの話を聞くと、遺伝子組み換えで青いバラを実現するのはちょっとズルをしている感じもするのですが、それだけ求められ続けてきたものなら、やはり一度は見てみたい気はしてしまいます。


 



第1102回 罰当たり?     2008年10月06日

 中央アンデス地方、ボリビアやペルーには伝統的なジャガイモの加工食品として「チューニョ」と呼ばれる物があります。チューニョはジャガイモを凍結乾燥させる事で、長期にわたる保存や備蓄を可能にした物で、伝統的な保存食というところでしょうか。

 コロンブスがアメリカ大陸を訪れる以前にチューニョは発明されていたとされ、中央アンデス地方という高地ゆえの冷涼な気候が影響して考案されたという点では、日本の寒天に近いものがあります。

 イメージ的には偶然外気温の低さから屋外に置いた食材が凍結し、やがて昼になって気温が上がると解凍。その繰り返しによって水分が失われていくあたりは寒天そのものなのですが、チューニョは足で踏み付けて水分と水溶性の毒性を抜くという点で異なっています。

 チューニョを作る頃の中央アンデス地方は、昼は15℃程度まで気温が上がりますが、夜はマイナス5℃まで下がるほど寒暖の差がが大きく、夜間に屋外に並べておいたジャガイモは凍結によって固まり、昼には自然解凍されます。それを数回繰り返すとジャガイモの水分が表面に移動してブヨブヨの状態になり、チューニョの下準備が完了します。

 柔らかくなったジャガイモを並べて、足で踏み付けながら表面付近へ移送していた水分を押し出し、皮を剥きます。それをさらに数日かけて乾燥させて、完全に水分がない状態にするとチューニョのできあがりで、次の収穫期までの大切な食料となります。

 完全に水分を抜く事で発芽や腐敗の心配がなく、運搬も容易になります。食べ方としては、水で戻して煮たり、蒸したりするほか、そのままスープに入れて煮込んだり、粉にしたりとバリエーションに富み、生のジャガイモとは別物と考えられているのか、ジャガイモとチューニョを使った料理も見られています。

 文化的な交流があったとは考えにくいものがあるのですが、日本でもチューニョは作られています。山梨県と長野県の一部地域で作られている「しみいも」「ちぢみいも」と呼ばれるジャガイモの加工品は、冬場にジャガイモを屋外に置いて凍結させ、昼間に解けたところを踏み付けて水分を抜いて、重量と体積を減らし、保存性を高めています。

 ジャガイモの産地で夜間、凍結させるだけの充分な低温に恵まれた北海道でも同様の加工法が見られ、「しばれいも」と呼ばれるジャガイモは踏み付けて水分を抜く代わりに凍結、解凍を繰り返しています。

 凍結乾燥、いわゆるフリーズドライによって保存性を確保する事は今日では普通に見られる事ですが、当時は経験の中から導き出された事であり、より良く水分を搾り出すために踏み付けるという工程が設けられていると考えられます。そう思いながら、食べ物を踏み付けるという事に、どこか罰当たりなものを感じてしまうのは私だけでしょうか。


 



第1101回 応援してます     2008年10月03日

 蒟蒻はサトイモ科の多年草で、地中に扁平な円形の芋を形成します。その芋を加工して作られるのが、慣れ親しんだ食材、こんにゃくで、歴史は仏教伝来と共にとも、それ以前からとも言われていて古い付き合いである事が判ります。

 こんにゃくはコンニャクマンナンという多糖類を糊化し、アルカリに反応させて作られています。今はアルカリ溶液として水酸化カルシウムの水溶液が使われていますが、かつては灰を水に溶いた物が使われていました。

 こんにゃくを一度凝固させると水溶性の性質がなくなり、強い弾力性を持ちます。そのため長く水分に漬かっていても伸びるという事がなく、しっかりとした食感を保つ事ができます。

 その上、カロリーが極めて低く、繊維質でもある事からダイエット食として扱われます。充分な満腹感も得られる事から、間食する事を意識したゼリーなどの食品も一般化しています。

 日本では歴史があり、一般化している食材となっていますが、世界的には普通に流通しているのは日本だけで、欧州や韓国ではゼリーにこんにゃくを使用する事が禁止され、米国でもゼリーにこんにゃくが使用されている「こんにゃくゼリー」を見かけたら通報するように呼びかけられています。

 ゼリーにこんにゃくを使うと、通常のゼラチンだけを使ったゼリーよりも弾力が強く、圧力を加えてもしっかりとした元の形に戻ろうとする力が働く事から独特の食感を持つ事となります。

 ゼラチンを使ったゼリーの場合、体温程度の温度でも柔らかくなってしまいますが、こんにゃくの場合、熱で柔らかくなる事はありません。

 そうした特性から塊を噛まずに飲み込んだ場合、喉に詰まらせて窒息する危険性が指摘され、実際に死亡事故が起きています。死亡事故を受けて製品の回収や販売中止の話も出てきています。

 製品のパッケージに注意を喚起する記載が行われているそうですが、一口大のカップ状の容器に個別包装され、吸い出すようにする食べ方、一気に喉の奥に到達してしまいそうな抵抗感のない表面などを考えると、事故が起こりやすい状態にある事が判ります。

 メーカーの側からも将来的な販売中止の話も出ているようですが、何倍も多くの死亡事故を起こしている食品が多数存在し、危険性を知らせる記載さえ行われていない状態が通例となっています。

 2006年の救命救急センターを対象に行われた調査では、こんにゃくゼリーによる死亡は2件で、餅の168件、パンの90件、ごはんの89件を大幅に下回っています。件数の問題ではなく、事故が起きた事こそが問題だとは思うのですが、軽率な販売中止という結論だけは出してほしくないとこんにゃく好きの私は思ってしまいます。


 



第1100回 卵騒動     2008年10月02日

 実は裏技の類なのですが、親子丼を作る際に少量の水溶き片栗粉を加える事で、卵が硬くならずとろっとした仕上がりにする事ができます。火加減が難しく、卵に火が通り過ぎて硬くなってしまうと、美味しさが半減してしまう親子丼を上手に作る工夫の一つです。

 片栗粉のデンプンが卵にとろみを加えるだけでなく、卵に熱が伝わりにくい状態にして卵の仕上がりを良くしてくれます。またデンプンを加ええる事のメリットはそれだけではなく、卵を薄く焼いた際の破れにくさにも貢献してくれます。

 そうした事から加工食品として製造された卵料理の原材料の項目を見ると、卵と調味料だけで作られているはずなのにデンプンの記載を見付ける事があります。

 デンプンは植物が栄養として蓄えている物なので、さまざまな植物から採る事ができます。身近なところではカタクリの根から集めた片栗粉や葛から得られる葛粉、ジャガイモから採る馬鈴薯デンプン、トウモロコシからのコーンスターチ、糊化特性に優れたタピオカのデンプンなども見られます。

 最近、そんな卵に加えるデンプンが米から採られた米粉デンプンで、しかも原料の米が事故米であった事から大変な騒ぎとなっています。卵に加えられるデンプンは微量ではあるのですが、裏技が思わぬ騒動に繋がっているところに食の安全を確保する事の難しさを感じずにはいられません。


 



第1099回 薬剤宣伝     2008年10月01日

 最近、製薬会社を選んでくださいというテレビCMを見かけます。特許権が切れた薬剤を他のメーカーが安価に製造するジェネリック医薬品が一般化してからは、薬剤ではなく薬剤メーカーという新たな選択肢も生まれたという事だと思います。

 現在、製造メーカーではなく処方薬その物の広告を出す事は許可されていません。世界的に見ても許可されているのは米国とニュージーランドのみで、処方薬の広告宣伝というのは極めて稀な事となっています。

 世界的には規制されている処方薬の広告宣伝ですが、許可されている米国では2005年の時点で製薬業界が投入した広告宣伝費は5000億円を超えると言われ、かなり力が入れられている事が判ります。

 米国の隣国、カナダでは処方薬の広告宣伝は禁止されていますが、米国からの電波は届くために米国のメディアの影響を受ける事が多いと考えられています。そのカナダは英語を日常的に使う英語圏とフランス語を日常語とするフランス語圏がある事から、両地域を使って処方薬の広告宣伝の効果についての研究が行われています。

 関節リュウマチの薬剤であるエンブレルとアレルギー性鼻炎の薬剤のナゾネックス、過敏性腸症候群の治療薬ゼルノームの3種類の薬剤について5年間の統計値を追跡したところ、エンブレルとナゾネックスについては広告宣伝の影響が確認されず、ゼルノームについては販売の増加が見られましたが長続きはせず、一時的なものと考えられました。

 結果として広告宣伝の効果が否定された事となりますが、処方薬は消費者が広告を見て直接買いに行くものではなく、医師の処方によって入手している事を考えると当然の結果とも言えるかもしれません。無駄と判った5000億円の広告宣伝費、できれば薬代を下げる方向に回してほしいものです。


 



 

Copyright (C) 2007 Sunproject Co.Ltd. Allrights reserved,