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第1138回 接触皮膚炎に思う     2008年11月28日

 以前、健康食品の受託製造の工場を管理する人と話をする機会があり、さまざまな苦労話を聞かせていただいたのですが、その際、一番苦労するのが労務管理、特にアレルギーによる作業への人員の割り振りだと聞かされた事があります。

 健康食品の製造は、特にエキス分を抽出した物が用いられる事から、継続して接しているうちに体内でアレルゲンが生成されて突然アレルギーを引き起こす事があり、思わぬ体調不良に繋がる事がある事から、申告されたアレルギー物質を元に配置できる人員を定め、新たに発症するであろう可能性を考慮しながら割り振りを決める事が大変だという事でした。

 そうした製造現場で増えていると言われるアレルギー症状に接触性皮膚炎があり、さまざまな物質が原因となりえる事から対処の難しさが言われてきています。

 接触性皮膚炎は化学的、生物学的、物理学的などの因子との接触によって生じる急性ないし慢性の皮膚炎症で、エキス分を抽出した食品や化粧品、香料、金属、洗浄液、洗剤、工業用化学物質、ラッテクスゴムなどでも起こるとされています。

 皮膚炎の多くは手に生じるもので、75%は職業に関連するものだとされます。単独の原因で生じる事もあれば、刺激性皮膚炎やアトピー性皮膚炎などの他の皮膚炎と合併して生じる事もあり、診断を難しくしているとも言われます。

 あくまでも基本となるのはパッチテストなので、基本を大切にする事がアレルギー症状への対処法と言えます。治療にはアレルゲンの排除が大切とされる事から、早めに症状を把握し、対処法を決める必要があるので、少しでもアレルギー症状を感じたら早めの対処が良好な結果に繋がると考えられます。

 さまざまなアレルギーが言われる中、早めの対処と体質改善が重要視されるので、少しでも異変を感じたらさまざまな可能性について検証が必要なのかもしれません。アレルギーは職業病として片付けるのではなく、長い時間をかけて治療する必要のある疾患として捉える事が大切なのかもしれません。


 



第1137回 ヘビメタ汚染     2008年11月27日

 ちょっと気になるへヴィメタルの話です。と言っても私が大好きな音楽の方ではなく、重金属、聞くからに健康被害を起こしてしまいそうな成分の話です。

 英国、キングストン大学のノートン博士をはじめとする研究チームによるヨーロッパ、南米など15カ国を原産とするワインの判定によると、広い範囲で重金属による汚染が懸念される事が報告されていました。

 ノートン博士らは米国環境保護庁が開発したハザード指数であるTHQを用いて文献報告による判定を行ったところ、15カ国のワインのうちTHQが1.0未満であったのはアルゼンチンとブラジル、イタリア産のワインのみで、その他12カ国のワインではTHQ1.0を上回り、多くのワインがTHQ50〜200といった数値を示したと言います。

 判定の対象となった重金属はバナジウム、銅、マンガン、ニッケル、亜鉛、クロム、鉛の7種類で、ハンガリー、スロバキアのワインはTHQ300に赤、白ともに達したそうです。

 重金属が混入した背景については、今後さらに調査を続ける必要があるとされますが、今回対象となった7種類の重金属は土壌中にはわずかしか存在しない事から、ブドウに由来したものとは考えにくく、ワインの製造に用いられている樽やパイプといった金属製の機材が汚染源となった可能性が高いとされています。

 ワインは酸性度が高い事から金属を腐食する働きも強く、特殊なコーティングを施さないと金属の表面を腐食して合金に使われたさまざまな金属を溶かし出す事が考えられます。金属製の製造ラインは一見すると清潔で良いのですが、伝統的なワイン製造を近代化した弊害のようにも思えます。

 今回の報告では米国環境保護庁が開発した指数を用いている事や、米国産のワインが調査対象から外されている事に若干の違和感は感じますが、一日にコップ一杯で病気知らずと言われるワインだけに、今回の検出量ではすぐに健康被害に結びつくものではないにしても酸化ストレスを増大させ、慢性炎症性疾患やパーキンソン病などの神経障害、発ガンなどとの関連が示されている重金属の汚染とは無縁であってほしいと思ってしまいます。


 



第1136回 劣化ウランの思い出(下)     2008年11月26日

 ウランガラスは最盛期の100年ほどの間とは比べ物にはなりませんが、今でも少量が作られています。レトロな雰囲気を持つ事から当時の復刻版としてデザインされたり、蛍光灯やブラックライト(紫外線ライト)が普及している事から光を楽しんだりという形で根強い人気があると言います。

 付加価値の高い復刻版の物は昔ながらの製法で天然ウランを使って製作されていますが、単純に光るという機能を求めたり、製法や原料へのこだわりがない物では、原料に劣化ウランが使われる例が多い事が放射線スペクトル分析の結果として言われています。

 劣化ウランというと非常に悪いイメージを持ってしまうのは、劣化ウランの名前が砲弾に使われた事で広まった事による部分が大きいのではないでしょうか。

 劣化ウランは核燃料などに使用されるウラン235の含有率が天然ウランを下回るウランを指し、使用済み燃料である減損ウランとは区別されています。

 天然ウランには核分裂連鎖反応を起こすウラン235と起こさない238が含まれています。平均的なウラン235の含有率は0.7%程度とされ、濃縮によって得られる濃縮ウランを取り出した後に残されるのが、ウラン235の含有率が0.2%以下となった物で劣化ウランとして扱われます。

 ウラン235の含有率が低い事から核燃料としては使用できませんが、比重が鉄の2.5倍、鉛の1.9倍と大きく、非常に硬いため、合金化して砲弾として用いる事で大きな破壊力を得る事ができます。

 劣化ウランの兵器への転用は、非常に硬くて重いためにあまり良い使い方がないとされていた物に、最適な利用法を与えただけに留まらず、これまで使われてきたタングステン鋼にはなかった装甲板に着弾した際、先端がより鋭くなりながら貫通力を高めていくというセルフシャーピング現象や、高熱を発する焼夷効果といった兵器として優れた一面を示しています。

 特に焼夷効果は着弾した際、それまでの飛んでくるという運動エネルギーが熱エネルギーに変換される事から、1200度を超える高い温度に達し、劣化ウランが溶解して微細化しながら回りの酸素と結合して激しく燃焼して内部にいる人を焼き殺すという極めて残忍な一面も持ち合わせています。

 また溶解して微細化した劣化ウランは広い範囲に飛散し、戦場となった地域での催奇形性や発ガン性といった健康被害を起こしているとされ、一部の研究者には高温で燃焼する事によってナノ粒子化した劣化ウランが世界の広い範囲に達し、思わぬ障害を引き起こしているとする意見もあります。

 ナノ粒子化して広く飛散した劣化ウランが体内に取り込まれると、すい臓の機能に障害が起こるという疑いもあり、劣化ウラン弾の使用量と世界の糖尿病の発生頻度に符合する部分があるとする意見もある事から、できるだけ早期に使用を取りやめてほしいと思っています。

 ウランガラスの原料としては非常に微々たる量しか利用しませんが、できる事なら平和利用してほしい。蛍光色を発するガラス玉を懐かしく見詰めながら思ってしまいます。


 



第1135回 劣化ウランの思い出(上)     2008年11月25日

 子供の頃、庭に落ちていた不思議なガラス玉を見付け、それがとても気に入っていました。表面はすりガラスのようなつや消しの仕上げで、完全な球体ではなく少しいびつで直径は2cm程度だったと思います。

 庭の砂利の中で見付けた事から、表面にはそれなりに傷が付いていましたが、わずかに緑色をおびた色合いと、当時はビー玉くらいしか知らなかったガラス玉という存在の中で、そのガラス玉は特別な物のように思えて大切にしていました。

 それから時は流れ、一人暮らしをするようになってから、ふとしたきっかけで熱帯魚を飼育する事になりました。せっかくなので水槽内もそれなりにしてみようと思い、水槽の飾り付けを探しているうちに不思議な光るガラス玉を発見し、それが子供の頃気に入っていたガラス玉にそっくりである事に気付きます。

 子供の頃、玄関に水槽があり、数匹の金魚が入れられていて、母親に聞いたところでは、父親が以前金魚の飼育を趣味としていて、その頃の名残という話でした。当時は普通に飼育されていましたが、凝り性の父親の事、最盛期にはかなりの情熱を傾けていた事は容易に想像できます。

 物置に使われていない水槽があるのを見た事があるので、おそらくそれらの中に敷き詰められていた砂利が不要になり、庭に放置されたのだと思います。その中にあのガラス玉が含まれていて、それを拾ったという事になります。

 金魚が飼育されていたのがいつの事かは判りませんが、父親が金魚の世話をしていた記憶はまったくないので、私が生まれる以前の事ではないかと思います。かなりの時を隔てる事となりますが、親子して同じ光る不思議なガラス玉を買っていたという事には、何か微笑ましいものを感じてしまいます。

 その後、紫外線を受けて怪しい光を放つという性質から、そのガラス玉はウランガラスで出来ているという事を知ります。緑色がかった色合いと紫外線で光を放つという特徴は、ウランガラスの特徴そのものです。

 ウランガラスはガラスに着色料としてごく微量のウランを混ぜたもので、きれいな蛍光緑色をしています。ボヘミア地方で発明されたとされ、1830年代頃からウランが原子力に利用されるようになり、個人的な利用が難しくなる1940年代までのほぼ100年ほどの間に盛んに作られていました。

 発明当時、ウランガラスの最大の面白さである紫外線を受けて蛍光を発するという事を楽しむためのブラックライト(紫外線ライト)はありませんでしたが、空に紫外線が満ちている夜明け前の青色の空の下でウランガラスの光を楽しんだと言います。

 水槽の照明として使われている蛍光灯の光には紫外線が含まれ、ウランガラスを光らせてくれます。子供の頃、庭で見付けたガラス玉が光を放つ事など想像もできませんでしたが、それを知る遥か以前にその面白さを知っていた父親に対する見方が変わった事は確かです。


 



第1134回 小さな小さな大きな脅威     2008年11月21日

 最近、急速に数が増えてきていて、将来的には身の回りに溢れる事だろうと思いますが、生涯、直接肉眼で目にする事がないだろうと思う物がナノ製品です。

 ナノ、ナノメートルとは国際単位系の長さの単位で、10億分の1メートルの事を指し、光の波長や原子や分子の構造などを表す事に使われる極めて小さな単位と言えます。

 かつては1ミクロンの1000分の1である事から、ミリミクロンという呼び方もされていましたが、1967年の国際度量衝総会でミクロンという単位が廃止された事から、現在はナノメートルが正式でミリミクロンは使われていません。

 そんな非常に小さい単位、ナノという言葉を目にするようになったのは、半導体に関する電子デバイスの技術が非常に微細になり、微細ナノ加工やナノスケール技術、ナノ構造物質といった言葉が使われるようになってからです。

 さらにナノテクノロジーの将来的広がりが注目されるようになったきっかけとしては、カーボンナノチューブの発見があります。炭素の結晶としては、それまでグラファイト(黒鉛)とダイアモンドが知られていました。

 1985年に六角形を組み合わせたサッカーボールのような構造を持つフラーレンが発見され、電子顕微鏡を用いたフラーレンの観察中にこれまでとはまったく異なる形状を持つ、炭素の新たな結晶としてカーボンナノチューブが発見されています。

 カーボンナノチューブの発見によって、これまでの炭素の結晶にはなかった新たな性質が知られる事となり、物質をナノメートルレベルで制御する事によって量子効果と呼ばれる特殊な現象が判ってきました。

 その後、さまざまなナノ物質が登場してきますが、危険性についても懸念が出されています。化粧品をはじめとした身の回りの製品にもナノ物質が使われていますが、これまでにない微細な大きさである事から皮膚で特殊な経路から吸収され、体内に蓄積されたときの毒性や、触媒として未知の毒性を持ってしまう事など、多くの可能性が考えられます。

 ナノ物質は検出が難しく、環境中に拡散してしまった場合の検出方法や回収についても確立されておらず、現時点では事実上不可能とする意見もあります。便利さに隠れて危険性が未確認という事は、これまでも多く見られてきました。急速な発展も大切ではありますが、安全性の確認は充分に行い、これまでの過ちは、できれば繰り返してほしくないものです。


 



第1133回 脆弱容器     2008年11月20日

 最近、某大手メーカーのCMで、カップ麺を防虫剤などと一緒に保存しないようにというものを見かけます。確かにカップ麺の容器は、一見すると完全に密閉されているようですが、あくまで水の分子を通さない程度の物で、防虫剤などの芳香成分だと内部へ浸透してしまう事が考えられます。

 今回、問題の発端はカップ麺から防虫剤成分のパラジクロロベンゼンが検出されたというもので、鑑定の結果、容器や外装フィルムに人為的に開けられた穴などの損傷は見付からず、外部から異物を混入した形跡はなかったといいます。

 パラジクロロベンゼンはかなり身近な化学物質であり、理科の授業で温度によって物の状態が変化するという内容の中で、固体から気体へと変化する昇華の例として実際に昇華していく場面を見せられる実験教材ともなっています。

 最も身近な使用例としては、白色の固体から昇華すると強い臭気を発し、衣服を食い荒らす虫やカビの害を防ぐ事ができる事から、タンスに入れておく防虫剤として使用されたり、トイレやゴミ容器の消臭剤として使われています。

 防虫剤としての使用法や雰囲気が同じである事からナフタリンと混同されてしまいますが、厳密には別な化学物質となっていて、衣類用の防虫剤としてはナフタリンが代表的な存在と考えられていますが、実際はパラジクロロベンゼンの方が利用例は多くなっています。

 カップ麺は保存性が高く、常備しておくと意外な時に重宝する事も考えられます。開封するまでは完全に密閉されたイメージがある事から、収納が限られている場合は衣類の近くに保管してしまう事も充分にあり得る事です。そうなると防虫剤のパラジクロロベンゼンの存在が気になってきます。

 カップ麺の容器の多くはポリスチレンが使われています。ポリスチレンの容器はシソ油を入れて熱湯を注ぐと、溶けてしまって穴が開き、お湯が漏れ出すという脆弱性が確認されています。

 アレルギーを抑える働きが知られた事から、シソ油を料理に加えて愛用する方も多く、シソ油と成分的に近いエゴマ油にも同じトラブルが起こる可能性も報告されています。

 一見、便利で安全な物に見えるカップ麺の容器も、それほど頑丈でも完全に密閉できる物でもない事を認識して接する必要があるのかもしれません。


 



第1132回 取締法に思う     2008年11月19日

 その存在は最古の薬物書や医学書から今日の薬物書、医学書のすべてに記載され、薬用植物として扱われてきました。紀元前16世紀のエジプトでは神殿で焚いて、その煙を吸引する事で神と対話できたとパピルスに記されています。

 インドのアーユルヴェーダでも鎮痛、消化促進から利尿まで、重要な薬草とされたその植物の名は大麻。最近、世間を賑わせている禁止薬物でもあります。

 大麻は大麻規正法によって厳しく規制されています。大麻規正法では栽培や所持、売買などが規制され、罰則も懲役10年にも及ぶ大変厳しいものとなっています。

 それだけ厳しく定められた大麻取締法ですが、ちょっと不思議な部分があります。あり得ない事ですが、私が何処かの怪しいパーティーに出席して大麻を勧められたとします。物珍しさも手伝って、吸引してみたところで私が罪に問われる事はありません。大麻取締法には吸引に関する罰則がないからです。

 やがてパーティーも終わり、吸いかけていた大麻を勿体ないので持ち帰ります。家に帰る途中、警察官に職務質問され、吸いかけの大麻が見付かると現行犯逮捕されてしまいます。大麻所持にあたるからです。

 取調べを受けてパーティーの事を話すと、大麻を購入して準備した主催者は大麻売買、会場へ大麻を持って行ったパーティーのスタッフは大麻所持に抵触してしまいます。

 また、大麻由来の物であっても大麻の実は法規制の対象外となっていて、鳥の餌として普通に購入する事ができます。鳥の餌にするための大麻の実は、焙煎して芽がでないようにしてありますが、たまたま焙煎が弱く芽が出てしまった物を育ててしまうと、大麻の栽培という事で逮捕されてしまう事となります。

 大麻を栽培する事がすべて法に抵触するかというと、県知事の許可を受けた農家が栽培する事は許されていて、大麻の実や衣類などで馴染み深い麻の繊維を採る事ができます。

 栽培農家の畑に出かけて行って、こっそり葉を盗んできて乾燥大麻を作るという話を聞く事がありませんが、それには栽培方法が大きく関与していると言われます。産業用に栽培される大麻は縦方向に伸びるように育てられるため、密集させて路地に植えますが、陶酔作用を求めた嗜好用の栽培ではたくさんの紫外線を受けさせる必要があるため、枝が横方向に伸びるように育てなくてはならず、嗜好用を産業用と偽って栽培したり、産業用を嗜好用へ転用したりという事は不可能となっています。

 法律から栽培まで、複雑な部分を多く持つ大麻ですが、作物としては優秀で、実は食料とする事ができ、実から採れる油はバイオ燃料とする事ができます。縦方向に伸びる茎からは良質の繊維が採れ、1年に3回も収穫できるという成長の速さは大量の二酸化炭素を吸着してくれます。

 大麻は世界中で危惧されている食料、燃料、温暖化といった問題を解決してくれる可能性を秘めた作物とも言えるので、あまり薬物問題でイメージを悪くしてほしくないと、最近のニュース見ながら思ってしまいます。


 



第1131回 動物コーヒー     2008年11月18日

 コーヒーが好きで、出かけない休日などは気が付くとかなりの量を飲んでいたりします。それほどこだわっている方ではないので、決まった銘柄の豆というのもなく、入れ方もドリップからエスプレッソマシンを用いたものまで、幅広く楽しんでいます。

 高価なコーヒー豆というとすぐにブルーマウンテンが思い浮かびますが、それをはるかに凌ぐ高価で希少なコーヒー豆として、幻の豆とまで呼ばれるコピ・ルアクの存在があります。

 コピ・ルアクは特殊製法のコーヒー豆で、野生のジャコウネコの存在が大きく関わっています。コーヒー農園でコーヒー豆が熟し始める頃、コーヒー豆が大好物のジャコウネコがこっそりと忍び込みます。

 ジャコウネコは発達した嗅覚で良いできのコーヒー豆を選りすぐり、食べてしまいます。ジャコウネコの体内で消化できるのは果肉の部分なので、コーヒー豆の種の部分、私達が焙煎して粉に挽き、コーヒーを入れて飲んでいる部分は消化されずに残されてしまいます。

 コーヒー農園周辺で見付かるジャコウネコの糞の中から消化されていないコーヒー豆を集め、よく洗って乾燥させた物がコピ・ルアクです。コピとは現地の言葉でコーヒーを指し、ルアクとはジャコウネコの事を指しています。

 少々抵抗のあるコーヒーの加工方法ですが、効果は絶大とされ、選りすぐりの豆にジャコウネコの消化酵素や腸内細菌による発酵が加わり、独特の芳香を持つコーヒー豆に仕上がると言います。

 似たような物にカペ・アラミドがありますが、実は同じ物で、コピ・ルアクがジャワ島やスマトラ島、スラウェシ島などのインドネシア諸島原産なのに対して、カペ・アラミドはフィリピンや南インド原産となっており、現地の言葉でカペがコーヒー、アラミドがジャコウネコの事を指している事からも同じ物である事が判ります。

 同じく動物が介在する特殊製法のコーヒー豆としては、台湾のモンキーコーヒーが知られ、こちらは台湾猿がコーヒー豆を食べて、吐き出した種の部分を集めて作られています。

 モンキーコーヒーはコピ・ルアクなどのように消化器官を通って発酵するという事はありませんが、やはり希少性が高い事から高値で取引されています。動物が作り出す不思議で高価なコーヒー。あまり試飲したいと思わないのは、コーヒー好きではあってもグルメではないせいでしょうか...?


 



第1130回 種と天神     2008年11月17日

 子供の頃、友達の家の庭にたくさんの梅の実が成っていたので、青々とした実を採ってみて、半分に切って味をみたことがあります。ひどく渋い味がして、それがおかしくて繰り返し味見をしては友達と笑い合った事があります。

 青い梅の実にはアミグダリンと呼ばれる青酸配糖体、いわゆるシアン化物の毒素が含まれていて、体内で有毒に働く事があります。ひどく渋くて思わず笑いが込み上げてきてしまうほどだったのは、身体が毒素を摂取しないようにする防御機能、もしくは危険だから実を採るなという梅からのサインだったのかもしれません。

 諺に「梅は食べても核食うな、中に天神寝てござる」というものがあります。天神とは菅原道真の事で、九州の大宰府に左遷されて不遇のうちに命を落とした後、都では落雷による火災が相次ぎ、伝染病が蔓延するなどの凶事が続いた事から、道真公の事を人々が雷の神、「天神」と呼んだ事が元になっています。

 都を離れる際に詠んだ、「東風吹かば、匂いおこせよ梅の花、主なしとて春な忘れそ」という歌からも道真公の梅への想いの深さが伺え、都を遠く離れた道真公の事を慕い、梅が大宰府まで飛んできて根をおろしたという飛び梅伝説もあり、梅と道真公が関連付けられる事に納得させられてしまいます。

 大変な努力家で温厚な道真公ですが、ひとたび害を成せば天神と怖れられるほどの大変な祟りに繋がる。梅の実の種に多いとされる青酸配糖体を避けるために、中でお休み中の道真公を起こしてはいけないという諺には、昔の人の食への知恵や優しさを感じずにはいられません。

 完熟した梅の実では含まれる青酸配糖体の含有量が激減していて食べてもそれほど危険性は高くないのですが、酸味が強く、好んで食べる動物は少ないとされます。

 次の世代となる種をどこか別の土地まで運んでほしい、運ばれた先ではちゃんと発芽できるように種は健全な状態であってほしい、そんな梅の想いまで含まれているような、そんな諺にも思えてしまいます。


 



第1129回 再生の訳     2008年11月14日

 ガンに対し化学療法を行った後、死滅したはずの腫瘍が急速に再増殖する事がよく見られます。リバウンドと呼ばれるその現象の詳細なメカニズムはこれまで明らかにされていませんでしたが、最近の研究で徐々に解明が進められてきています。

 血管新生阻害薬と呼ばれる比較的新しいタイプの抗ガン剤があります。ガン細胞は急激な増殖を行うために多くの栄養を必要とする事から、新たな血管を自らの回りに新生させてより多くの栄養を確保しようとします。血管新生阻害薬はそうした血管の新生を行えなくしてガン細胞への栄養の供給を低下させ、ガン細胞を兵糧攻めにする事で効果を発揮するように作られています。

 通常、血管新生阻害薬は単独で処方されるよりも、従来の化学療法薬と併用される事が多く見られます。しかし、併用しても単独使用を上回るような薬剤同士の大きな相乗効果は見られておらず、その理由に関する研究も進められていました。

 そうした血管新生阻害剤を巡る研究の中で、化学療法薬によってガンの組織が破壊される際、一緒にガンに栄養と酸素を供給していた血管も壊されてしまう事があり、血管が破壊されてしまうと、「血管内皮前駆細胞」と呼ばれる血管になる細胞が損傷を受けた部分に集まり、腫瘍組織そのものも再生可能な状態にしてしまう事が判ってきました。

 腫瘍組織に終結した血管内皮前駆細胞は細胞増殖因子によって媒介され、破壊されたはずのガン組織を急速に再生させています。今回の研究は、化学療法後の急速なガン組織の再生のメカニズムを明らかにしただけでなく、再生を媒介する細胞増殖因子の活性を阻害する事で再増殖を抑制する事が可能である事も示しています。新たな併用療法の確立が期待できそうです。


 



第1128回 ハサミ抑制型     2008年11月13日

 細胞の増殖する方法は、細胞分裂以外は存在しないとされます。一般的な真核細胞の場合、細胞分裂に先立って細胞を構成する成分が倍加され、準備が整った段階で細胞の中心である核が分裂し、続いて細胞質の分裂が進められていきます。

 細胞分裂において重要な意味を持つものが転写と呼ばれる工程で、DNAを鋳型にRNAが作られていきます。DNAの塩基配列を元にRNAを合成するには、RNAポリメラーゼと呼ばれる酵素が関わっており、RNAポリメラーゼはDNAを移動しながらRNAを合成していきます。

 RNAポリメラーゼにはカニのつめのような突起があり、そのつめが開閉してDNAを捕まえ、保持する事でDNAから離れる事なくDNAを移動しながらRNAを合成しています。RNAポリメラーゼのつめを開かなくする、または閉じられなくする事ができればRNAポリメラーゼはDNAに取り付く事ができなくなり、DNAの転写が行えなくなってしまい、タンパク質の合成、細胞分裂はできなくなってしまいます。

 今、そうしたRNAポリメラーゼのつめに働く新たな抗生物質の研究が進められ、完成の時が近付いてきている事が報告されています。新たに開発が進められている抗生物質は3種類で、いずれも細菌自身が別の細菌と戦うために作り出す天然由来の産物とされています。

 世界の死亡原因の約25%は細菌による感染性疾患が占めているとされる中、主要な病原菌には抗生物質が効かない耐性菌が少なくとも一つ以上は存在するとされます。抗生物質は細菌感染症に対抗する砦とされているだけに、これまでの耐性菌にも効力を発揮する新たな抗生物質の開発は大いに歓迎できるものではないでしょうか。


 



第1127回 ウィルスの作用検証     2008年11月12日

 最近は年中という感じですが、やはり寒さが日毎に増してくると風邪の流行が気になってしまいます。多くの場合、風邪と呼ばれる病気はライノウィルスによる感染症で、咳やくしゃみ、鼻水などの不快な症状は、ライノウィルスによって作り出されると考えられてきました。

 しかし、最新の研究によるとライノウィルス自体が不快な症状を引き起こしているのではなく、ライノウィルスによって体内の遺伝子活性が変化した事が症状を引き起こしているという事が明らかにされてきました。

 35人のボランティアにライノウィルスか偽のウィルスのどちらかを注入し、感染前、感染後を通して鼻の粘膜を採取してDNAの状態を観察します。感染8時間まではDNAに大きな変化見られませんが、2日後には多数のDNAに変化が見られ、活性が異常に高まるものもあれば逆に鈍るものもある事が観察されています。

 中でも抗ウィルス蛋白、炎症性化学物質を作る遺伝子に大きな活性が見られ、最も活性が高まる抗ウィルス蛋白では通常の2倍以上もの活性が確認され、ライノウィルスの複製を妨げている事が示されています。

 そうした反応は、人体がウィルスから身を守るためのメカニズムとしてすでに知られた事ではありますが、抗ウィルス蛋白は気道炎症の症状を引き起こす一因でもあります。身体を守るための働きが風邪特有の不快な症状の原因となっていた事になります。

 今回の研究を受けて、風邪の症状を引き起こす炎症性遺伝子を特定し、異常な活性を阻害する事で風邪の治療に繋げられると考えられています。風邪の不快な症状を軽減するという意味では良さそうな感じですが、感染したウィルスに対処し、増殖を抑えるという本来の働きへの影響が少し心配ではあります。根本的な原因が判る事で正しい対処法が見付けられるという事もあるので、対症療法以外の対処方法がなかった風邪に新たな療法が確立される事を期待したいと思います。


 



第1126回 善悪の境目     2008年11月11日

 コレステロールの善玉、悪玉という言葉を聞くたびに、人の勝手な判断でひどい事を言っているように思えてきます。血液中のコレステロール量が過剰な状態の人が多いばかりに、身体にコレステロールを分配する働きを持つコレステロールを悪玉、回収してくる働きを持つものを善玉と呼んでいます。

 もし、コレステロールが常に不足するような成分だったとしたら、おそらく届ける働きは善玉、回収する働きは悪玉と呼ばれているのではないかと思ってしまいます。

 コレステロールよりもはるか以前から、似たような感じで善悪が分けられていたものの典型例に、益虫、害虫という存在があるのではないでしょうか。

 益虫は文字通り人に利益をもたらす虫で、絹糸を生成してくれるカイコや蜂蜜を提供してくれるミツバチ、アブラムシを駆除してくれるテントウムシなどがよく知られています。

 同じ種族が全てそうかと言うと、意外と益虫は限定的なもので、テントウムシの中でもナナホシテントウだけが益虫とされ、それ以外のテントウムシは作物の葉を食べて害を成す害虫となっています。同じくミツバチを襲うスズメバチも同じ蜂でありながら、典型的な害虫の一つとして扱われています。

 衛生的に問題を持ち、生命力、繁殖力が非常に強力で、姿も不快な事から、今や害虫の筆頭のようなイメージを持つゴキブリを捕食してくれるという事で、かなりの益虫と言えるゲジは、その姿ゆえに害虫として扱われている気の毒な存在となっています。

 正式な名前はゲジですが、大量の足を持つ姿からゲジゲジと呼ばれる事が通例となっているゲジは、クモやゴキブリをエサとして生活し、ゴキブリの数少ない天敵となっています。

 ゴキブリの弊害を考えると、それを捕食してくれ、人に害を成す事がないというのは、かなりの益虫と言えますが、エサを求めて屋内へ入り込んできた姿は、不快害虫として殺虫剤の缶の描かれているほどです。

 人に対し利益をもたらしながら報われない姿は、気の毒の一言に尽きると思ってしまうのですが、もともと益虫、害虫という指定自体、人が勝手に呼んでいるに過ぎないので、当の本人には関係のない事かもしれないと、健康診断を前に考えてしまいます。


 



第1125回 4本の歯の毒     2008年11月10日

 日ごとに寒さが増してくると、急に見かける機会が多くなる料理の一つ、鍋物には多くのバリエーションがあり、その由来などを見ていくと実に興味深いものがあります。

 ふぐを使った鍋物に「てっちり」があります。てっちりという言葉にあまり料理の名前という感じがしないのは、ちり鍋を鉄を使って作った「鉄のちり鍋」が略されて「鉄」の部分が促音化されているというところにありそうに思えます。

 ふぐが鉄と呼ばれている事に関しては、ふぐの事を鉄砲魚と呼んだ事に由来します。ふぐには猛毒があり、当ると死に至る事から鉄砲のあだ名が付けられています。ふぐを鉄砲と呼ぶ事に関しては、当ると怖いという意味の他に当時の鉄砲の精度があまり高くはなく、それほど当るものではなく、過剰に怖れる必要ないとする説もあります。

 ふぐの毒はテトロドトキシンと呼ばれるもので、一旦体内に入ってしまうと解毒する決定的な方法はないとされているだけに、やはり怖いものがあります。テトロドトキシンという毒の名前はふぐの学名、テトラオドンに由来しています。

 ふぐには4本の歯がある事から、「4つの歯」を意味する学名が付けられ、そのふぐが持つ毒という事で毒素を意味する「トキシン」を組み合わせてテトロドトキシンという名前が付けられています。

 その名前からふぐ特有の物かと言うとそうでもなく、カリフォルニアイモリやツムギハゼ、ヒョウモンダコ、それ以外の生物にもテトロドトキシンは含まれています。ふぐの毒と呼ばれながら、ふぐ特有の毒ではないという事については、毒を作っているのがふぐ自身ではないという可能性を示唆しているようにも思えます。

 最近の研究で判ってきた事で、テトロドトキシンはプランクトンやプランクトンが持つ細菌類に起因し、食物連鎖によって蓄積、濃縮されると考えられてきています。水槽で飼育したふぐには毒がないとされる事から、プランクトン起因説が有力なように思えますが、無毒とされた飼育ふぐの毒に関しては、完全に毒が含まれなかったのではなく、人体に害を及ぼす程度の量ではなくてもテトロドトキシンは検出される事があり、無毒ではなく無害の状態だとされます。

 結果的に見るとプランクトンに起因する毒の蓄積も確かですが、ふぐの腸内細菌によって毒素が作られているという可能性も充分に考えられる事になります。

 古来、ふぐは身体を暖め、血行を促進する健康食として扱われてきました。また、万病に効くとされる事もあり、美味しさだけではない付加価値を持っています。その効能の元となっているのがわずかに含まれるテトロドトキシンが身体に刺激を与えるためとされ、実際にテトロドトキシンは医薬品に調合されて健康に役立つ物となっています。

 古い書物では、魏志倭人伝にもふぐを示す「魚鰒」の文字が登場していて、日本人とふぐの関わりの深さを伺う事ができます。テトロドトキシンの名前自体も日本人によって名付けられた事を考えると、鉄砲と呼びながらも食べ続けた日本人のふぐ好きを感じてしまいます。


 



第1124回 卵と牛乳とカモノハシ     2008年11月07日

 カモノハシというと、平たいクチバシが付いたビーバーのようなユーモラスな姿を連想します。特徴的なクチバシのインパクトが大きく、名前の由来が鴨のクチバシのように見えるという事から来ているというのも納得できます。

 オーストラリアにのみ生息し、生きた化石と呼ばれる非常に珍しい生き物で、最初に標本となる剥製がヨーロッパに届けられた際、幾つかの動物の部位を組み合わせて作られた物と疑われ、真剣に縫い目や接着面を探す事が行われています。今も残る最初の標本には、その際のハサミの跡が残されていて、どれだけ不思議な生き物として捉えられていたのかを伺う事ができます。

 そんなカモノハシの不思議さは、その特徴的な姿だけではありません。カモノハシは河川の岸に近い場所に横穴を掘り、その中で卵を産みます。卵はメスが温め、10日ほどで卵が孵ると母乳で育てます。

 動物の繁殖方法は卵で生んで孵化させるか、出産して母乳で育てるかのどちらかに限られています。カモノハシはその両方を採用しているという点で、他の動物とは大きく異なる存在と言えます。現在、地球上でそうした繁殖方法を採用している事が確認されているのは、カモノハシとハリモグラだけとされ、かなり特殊な例と考える事ができます。

 卵で生んで孵化させるという繁殖方法は卵生と呼ばれ、母体からの栄養の供給を受けずに発育する事から、卵の中には発育に必要なすべての栄養を含んだ卵黄が供えられています。卵が完全栄養食と呼ばれる所以は、殻によって閉鎖された中で次の世代を形作るという卵生の特徴にあると考える事もできます。

 卵生に対して受精卵が母体内で形成され、ある程度発育させてから出産し、母乳で育てる繁殖方法を胎生と呼びます。胎生では、胎児の発育中は胎盤を通じて栄養の補給が行われ、二酸化炭素の排出なども胎盤を通じて行っています。そのため出産までは発育に必要な栄養を別に用意する必要はなく、母体から供給される栄養素を使って発育します。

 出産後、親と同じ食事ができるようにるまでは、母乳が重要な栄養補給元となります。そのため母乳も生育に必要なすべての栄養素が含まれ、完全栄養食と呼べる物となっています。牛乳が完全栄養食と呼ばれる事がありますが、子牛を育てるための栄養が詰め込まれているという点では、卵生の卵黄と同じ位置付けと言う事ができます。

 日常生活の中で接している2大完全栄養食、卵と牛乳には卵生、胎生という繁殖方法の違いこそあれ、共通した部分を多く見付ける事ができ、目的が共通したものである事が確認できるように思えます。どちらも生命を維持する上で必要となる栄養素をほぼすべて含みながら、食物繊維とビタミンCが欠けているという共通点も興味深いものがあります。そんな2大完全栄養食によって育つカモノハシは、かなり贅沢な生き物なのかもしれません。


 



第1123回 抗生物質考2     2008年11月06日

 培地の上でカビを繁殖させると、カビのコロニーの周りに他の細菌の繁殖が抑制された円形の無菌地帯ができます。「阻止円」と呼ばれるその無菌地帯は、カビによって何らかの抑制物質が産出されている事でできたと考えられ、その抑制物質の単離という研究が抗生物質の発見の元になっています。

 最初の抗生物質であるペニシリンの発見以降、さまざまな研究によって新たな抗生物質が発見され、天然物であるそれらをさらに化学的に加工する事で増強したり、性質の改善を行うなどして抗生物質は種類や用途を増やし続けてきました。

 主な働きとしては、細菌が増殖するために必要な代謝経路に作用する事で細菌のみに選択的に作用する事が特徴で、消毒薬のように単純な化学的作用によって細菌を死滅させるだけの殺菌剤とは区別される物となっています。

 大きく分けると細菌を死滅させる殺菌剤と細菌の増殖や発育を抑える静菌剤に大別され、それぞれ作用する部分について細胞壁の合成を阻害する、細胞膜の機能を阻害する、核酸の合成を阻害する、タンパク質の合成を阻害する、葉酸の合成を阻害するといった機能別に分ける事ができます。

 そうした多彩な働きを持つ抗生物質を使い分ける事で、多くの感染症を克服する事ができ、人は細菌の脅威から開放され、細菌との戦いに勝利したとまで言われました。しかし、それが思い上がりに過ぎない事は、その後に抗生物質に対して耐性を持つ薬剤耐性菌の出現が教えてくれます。

 2種類の異なる微生物を同じ培地を使って培養すると、片方の微生物の方が優勢に増殖を続け、もう片方の微生物の発育が阻害されるという現象が起こります。抗生現象と呼ばれる現象で、片方の微生物が培地の栄養を独占するために、もう片方の微生物の発育を阻害する物質を産生し、その物質こそが抗生物質となっています。

 もう片方の微生物にしてもそのままでは繁殖の機会を失って滅ぶしかない事から、自分達に向けられた抗生物質を克服する力を変異や進化を通して手に入れます。しかも細菌のような単純な生物の場合、進化の速度が極めて速く、予想もつかない勢いで耐性が獲得されていき、今日、主要な病原菌で耐性菌が発生していない菌はいないとまで言われています。

 細菌が抗生物質に対して耐性を持つ場合、二つのプロセスが考えられます。第一のプロセスは、薬剤の使用によってほとんどの細菌が死にますが、わずかに存在する自然の耐性を持った細菌が生き残り、増殖するというもので、自然淘汰の一環のようでもあります。

 第二のプロセスは、突然変異によって新しく耐性遺伝子を獲得する事で耐性菌となるというもので、自然界ではプラスミドDNAなどを介して耐性遺伝子が菌から菌へと伝達される事から、最初に耐性を獲得した菌が病原菌ではないとしても、いずれ病原菌へと耐性遺伝子が伝達される危険性を持っています。

 抗生物質を多用する事はそれだけ多くの菌が抗生物質に曝される事になり、その中から突然変異によって耐性遺伝子が形成され、伝達されていく事で、最初は問題のない菌から始まった耐性が重大な病原菌へと広がっていく可能性を秘めています。

 抗生物質は感染症に対する強力で大切な武器です。多用する事で効力が失われてしまうという事は、取り返しのつかない損失であり、抗生物質発見以前の時代の事を考えるとそれがどれだけ怖ろしい事か容易に想像がつきます。抗生物質を見かける機会が増える季節を前に、今、こうしている間にも生まれているかもしれない耐性菌について考えてしまいます。


 



第1122回 抗生物質考1     2008年11月05日

 風邪をひいて病院へ行くと幾つかの薬が処方されます。その中に抗生物質が含まれているので、ウィルス感染が原因である風邪に対し、細菌などによる感染症の治療薬である抗生物質が何故?と思ってしまいます。

 抗生物質の定義は、「微生物が産生する物質のうち、他の微生物の発育を阻害する化学物質」とされ、微生物とは大きく異なるウィルスにはほとんど効果がありません。また、人工的に作り出された微生物に対抗する化学物質は、抗菌剤として抗生物質とは分けて扱われる事もあります。

 世界で最初の抗生物質は1929年にフレミング博士によってアオカビから単離されたペニシリンで、その後、さまざまな抗生物質が発見されるようになり、それまで怖れられてきた多くの感染症の治療に劇的な効果を上げる事になります。

 特にストレプトマイシンの開発はそれまで猛威を奮い、不治の死病とされてきた結核の治療に大きく貢献する事となり、結核による死亡率を激減させる事となります。

 抗生物質は化学療法剤という医薬品の中での位置付けを持ち、抗生物質を用いた治療を化学療法と呼びます。化学療法を行う上で重要になってくるのは、化学療法剤が目的とする感染源にだけに影響を及ぼし人体には影響しないという選択毒性とされます。

 選択毒性は薬剤が宿主には毒としての作用を及ぼさず、寄生した異物に対してだけ毒性を発揮する性質の事で、人の細胞と細菌の細胞の構造的な違いをピンポイントで攻撃する事によって、人には毒とならず、細菌にだけ毒となるように作用しています。選択毒性が高ければ高いほど、副作用が少ない化学療法剤と評価する事ができます。

 抗生物質はこの選択毒性の理念が基本となっている事から、副作用が少なく、安心して使える化学療法剤となっています。風邪を引いた際に抗生物質が処方される理由としては、ウィルスの感染によって風邪をひいた事で免疫が下がる事が予想される事から、細菌による感染症を引き起こす可能性が考えられるため、その予防のためとされます。

 選択毒性が高い事から、予防的な意味でも使用できるという事ですが、選択毒性が発揮されるのは人の細胞と細菌の構造の違いによる部分なので、腸内細菌には毒性が及んでしまいます。腸内細菌は免疫を支える大切な存在なので、予防的に服用した抗生物質によってダメージを受け、免疫が下がってしまう事も考えられます。予防優先か免疫による回復優先か。考えながら服用しなければと思ってしまいます。


 



第1121回 身近なシアン化物     2008年11月04日

 先日、大手食品メーカーの工場の地下水からシアン化物が検出されたという事が報道されていました。最近、食品への毒物混入のニュースを多く聞いていた事から、またかという感覚でニュースを見てしまいます。

 シアン化物というと、代表的な物としてはシアン化カリウムが有名で、一般的には青酸カリの名前で知られています。現物を見た事はなくても、推理小説などの中では多くその名を見かけてしまう物で、ある意味馴染み深い物でもあります。

 青酸カリの日常的な利用例としては、還元力が強く金属の表面を磨いてくれる事から、メッキ工場などで使われていますが、もちろん猛毒である事から厳重な管理下に置かれています。

 青酸カリほど強力な毒ではありませんが、シアン化物は私達の身の回りにも存在し、意外なところで触れていたりします。

 梅干を漬ける理由の一つに、青梅に含まれる毒素を無害化するというものがあり、その毒素がシアン化物の一つであるアミグダリンとなっています。

 また、梅が青い段階では種の付近を中心にシアン化物が多く含まれ、色付いてくるに従って含有量が少なくなっていく事から、青梅の青を取って青酸と呼ばれるようになった事からも身近なところにあるものという事が伺えます。

 かつてシアン化物はビタミンの仲間とされた事もあり、当時はビタミンB17の名前が与えられていました。しかし、欠乏症が確認されない事から、健康を維持する事に欠かせない成分とは言えないとしてビタミンの指定を外されています。

 その後も正常細胞には害を成さず、ガン細胞だけを攻撃する成分として取り上げられた事もありますが、さまざまな研究の結果、その効果についても否定されています。

 猛毒として小説に登場したり、金属を磨いたり、健康維持に不可欠とされたり、抗ガン作用まで言われたり、いろいろな経歴を持つシアン化物ですが、身近なところにある理由は植物や微生物が作り出しているというものがあります。自分達が食べられないようにする、自分達を食べる生物が増えないようにするという自己防衛のためなので、やはり身近な物であっても縁遠い物であってほしいと思ってしまいます。


 



 

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