第1122回 抗生物質考1
2008年11月05日
風邪をひいて病院へ行くと幾つかの薬が処方されます。その中に抗生物質が含まれているので、ウィルス感染が原因である風邪に対し、細菌などによる感染症の治療薬である抗生物質が何故?と思ってしまいます。
抗生物質の定義は、「微生物が産生する物質のうち、他の微生物の発育を阻害する化学物質」とされ、微生物とは大きく異なるウィルスにはほとんど効果がありません。また、人工的に作り出された微生物に対抗する化学物質は、抗菌剤として抗生物質とは分けて扱われる事もあります。
世界で最初の抗生物質は1929年にフレミング博士によってアオカビから単離されたペニシリンで、その後、さまざまな抗生物質が発見されるようになり、それまで怖れられてきた多くの感染症の治療に劇的な効果を上げる事になります。
特にストレプトマイシンの開発はそれまで猛威を奮い、不治の死病とされてきた結核の治療に大きく貢献する事となり、結核による死亡率を激減させる事となります。
抗生物質は化学療法剤という医薬品の中での位置付けを持ち、抗生物質を用いた治療を化学療法と呼びます。化学療法を行う上で重要になってくるのは、化学療法剤が目的とする感染源にだけに影響を及ぼし人体には影響しないという選択毒性とされます。
選択毒性は薬剤が宿主には毒としての作用を及ぼさず、寄生した異物に対してだけ毒性を発揮する性質の事で、人の細胞と細菌の細胞の構造的な違いをピンポイントで攻撃する事によって、人には毒とならず、細菌にだけ毒となるように作用しています。選択毒性が高ければ高いほど、副作用が少ない化学療法剤と評価する事ができます。
抗生物質はこの選択毒性の理念が基本となっている事から、副作用が少なく、安心して使える化学療法剤となっています。風邪を引いた際に抗生物質が処方される理由としては、ウィルスの感染によって風邪をひいた事で免疫が下がる事が予想される事から、細菌による感染症を引き起こす可能性が考えられるため、その予防のためとされます。
選択毒性が高い事から、予防的な意味でも使用できるという事ですが、選択毒性が発揮されるのは人の細胞と細菌の構造の違いによる部分なので、腸内細菌には毒性が及んでしまいます。腸内細菌は免疫を支える大切な存在なので、予防的に服用した抗生物質によってダメージを受け、免疫が下がってしまう事も考えられます。予防優先か免疫による回復優先か。考えながら服用しなければと思ってしまいます。