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第1255回 脂肪記憶     2009年05月29日

 脂肪分というと、最近では悪者以外の何者でもないように見られてしまいます。カロリーが高く燃焼速度が遅いために体に蓄積されやすく、ダイエットの大敵でもあり、健康を損なうものとして日頃の摂取量を減らすように指導されたりもします。

 健康的な食事というと高タンパク低脂肪という感じですが、脂肪分の摂取で記憶力が良くなるという意外な効能がある事が判ってきています。特定の脂肪を消化するときに放出されるホルモンに長期記憶の形成を促す働きがある事が確認されています。

 脂肪は体内で分解されて脂肪酸となります。小腸で生成される脂肪酸の一種であるオレイルエタノールアミドをラットの与えて2種類の活動を行わせたところ、記憶力が向上するという傾向が観察されています。

 オレイルエタノールアミドが体内に入る事で活性化される受容体をブロックしてオレイルエタノールアミドを感知できなくすると、ラットの記憶に関する成績は下がりはじめ、オレイルエタノールアミドが記憶の形成に関わっている事が確認できます。オレイルエタノールアミドはラットに特有の成分ではなく、人間や他の動物でも広く生成されている事から、ラット以外でも記憶の形成に関わっている事が考えられ、脂肪分の摂取によって記憶がより良く形成されるといえます。

 今でこそ脂肪分が豊富な食事を摂る事ができますが、進化の過程を考えると脂肪分を多く含む食料を得る事は、かなり稀で大変な事だったというのは容易に想像できます。脂肪分の多い食料を得た際、その食料を得た方法や場所などの情報を記憶して、後でまたその状況を再現して同じような食料を得ようとする能力として脂肪分を得た際、記憶の形成が向上されるという働きが発達してきた事が考えられます。

 学術的な分析はされてきませんでしたが、朝食やおやつを食べる子供の方が成績がよい傾向があると報告されてきていた事は、脂肪分の摂取と記憶の形成によって説明する事ができます。成績の良い子供は、よく学ぶというよりもよく覚えているという事に優れています。脂肪分と上手に付き合う必要が出てきたのかもしれません。


 



第1254回 凝固のこだわり     2009年05月28日

 一説には豆腐の歴史は紀元前2世紀の前漢の時代にまで遡り、淮南の王、劉安の創作とされる事があります。しかし、その根拠となっているのは、「本草綱目」の中に「豆腐は漢の淮南王劉安に始まる」と記されていた事で、「本草綱目」が16世紀の書物である事を考えると、かなり説得力を失ってしまいます。

 豆腐に関する文献を探していくと、7世紀の唐の時代以降でなければ豆腐に関する記載が見られない事を考えると、唐の時代に入ってから豆腐は作られるようになったとするのが自然なようにも思えます。

 発祥の地に関しては、豆腐の別名に淮南佳品という呼び方が残されていたり、中国豆腐文化節が盛大に催される事から淮南と考えて良さそうな気はします。

 豆腐は大豆から作られる至ってシンプルな食品で、大豆のエキスを凝固剤で固めた物という言い方もできます。大豆は国内で使われるほとんどが輸入に頼っていますが、豆腐に使われる大豆は国産の大豆の方が向いているとされます。

 国産の大豆と輸入大豆では、含まれている油脂分に差があると言われ、国産の大豆は輸入物に比べて油脂分が少なく、大豆油などの原料には向かないとされますが、豆腐には適しているとされます。

 豆腐を作る上で重要となるもう一つの原料が凝固剤で、凝固剤の力によって大豆から搾り出された豆乳は固まり、豆腐になる事ができます。伝統的に豆腐の凝固剤としては海水から塩を作る際に副産物として生じる「にがり」が使われ、塩化マグネシウムが主成分となっています。

 新たな豆腐のスタイルとして開発されたビニールチューブ入りの「充填豆腐」には、「グルコノデルタラクトン」と呼ばれる凝固剤が使われています。グルコノデルタラクトンは酸性に変化する物質で、充填した後で凝固を開始する事から加工に適した凝固剤と言えますが、充填豆腐自体の普及が進まない事から少数派の凝固剤と言えます。

 近年、普及が進んだ凝固剤としては硫酸カルシウムがあり、凝固させる力の安定性や味が淡白で豆腐自体に影響を与えない事から、急速に普及が進み、広く使われる事となっています。

 凝固剤として「にがり」を使ったという豆腐が増えてきていますが、「にがり」に関する規定が厳格ではない事から、本来のにがりとは若干違う物となっている事があり、塩化マグネシウムが主体の物であればにがりと称している事も多いように思えます。

 輸入物のにがりと新興勢力の硫酸カルシウム、シンプルな豆腐ゆえのこだわりの一つとなりそうな気がします。大豆の産地や品種のこだわりが聞かれますが、凝固剤へのこだわりも味わいへの影響を考えると重要なように思えてきます。


 



第1253回 ショウガの効用     2009年05月27日

 以前、知り合いの漢方医から、天ぷら屋で天つゆに薬味として大根とショウガをおろした物が添えられてくるのは、うちの店は油が悪くて胃にもたれますよと宣言しているようなものだ。大根には消化酵素が含まれていて、消化を助けてくれるし、ショウガは吐き気を抑えてくれるからという笑い話を聞かされた事がありました。

 漢方医が教えてくれたようにショウガには吐き気を抑えるはたらきがあり、古くから民間療法として使われてきました。最近になって、ショウガの吐き気を抑える働きが見直され、ガンの化学療法に伴う副作用としての吐き気にも有効に働く事が判ってきています。

 ガンの化学療法に伴う吐き気は多くの患者に見られる副作用として知られ、持続性のある吐き気となる事も珍しくはありません。吐き気を抑えるために制吐剤が処方されますが、約7割の患者には制吐剤の使用によっても吐き気がみられています。

 化学療法を行っている患者で、すでに吐き気の症状を訴えていて、まだ化学療法を継続しなくてはならない約650人を対象にショウガのサプリメントと偽薬を使い、化学療法の3日前、終了後の3日間の調査を行い、最も強い吐き気の症状が出やすい1日目には従来の制吐剤の使用を行うという条件で調査を行ったところ、有意に吐き気の減少がショウガを使ったグループで見られています。

 化学療法を始めた1日目に最も酷い吐き気が生じ、嘔吐も起こる事があり、その1日目の吐き気を抑える事ができれば、その後の吐き気も生じにくくなるという傾向があると言います。吐き気を抑えるためのショウガの量については、段階的に用量が分けて設定されていましたが、どの用量においても有効性が認められ、中でも0.5gから1gという量が最も大きな効果を示したと言います。ショウガの用い方はこれからの研究による部分が残されていますが、食材で薬品以上の効果という事で、嬉しい発見と言えるのではないでしょうか。


 



第1252回 過剰による不足     2009年05月26日

 体内ではカリウムとナトリウムが対をなして働く事で神経の伝達が行われています。カリウムには多くの酵素を活性化させる働きもあり、筋肉のエネルギー代謝や収縮を助けています。

 体内のカリウムは98%が細胞内にあり、残りの2%が血液をはじめとした細胞外に存在しています。細胞外に存在するカリウムが一定の濃度を下回ってしまうと、低カリウム血症と呼ばれる状態になり、脱力感や筋力の低下、筋肉の麻痺や横隔膜の機能不全と血圧の低下による呼吸不全などの症状を引き起こしてしまいます。

 自然界ではカリウムは植物など身近な物に含まれ、ナトリウムと比べると容易に手に入れる事ができます。そのためカリウムはナトリウムと比べると吸収率がかなり低くなっています。ナトリウムが身の回りに溢れている現代、カリウムは不足しがちな傾向にあるとも言えます。

 ソフトドリンクというと多量に含まれる糖分や香料、着色料、保存料などの添加物のために不健康なイメージで捉えられる事が多いのではないでしょうか。中でも黒っぽい色の某炭酸飲料は、さまざまな点で健康に良くないという言われ方をしています。

 そんな某炭酸飲料の過剰摂取によって低カリウム血症が引き起こされる事が最近の研究によって明らかにされてきています。甘味料として含まれているブドウ糖や果糖、それにカフェインなどの過剰摂取がカリウムの濃度を下げてしまうと考えられています。

 最近、さまざまな食品に甘草が含まれています。甘草は漢方成分として知られていますが、その名の通り甘味があり、有効成分の一つグリチルリチン酸の働きによって炎症が抑えられたり、調味料として加えられた場合、他の調味料の味の角を取って、円やかな味にするという不思議な働きを持っていて、食品添加物としては大変優れたものとなっています。

 しかし、甘草は副作用として体内のカリウム濃度を下げて低カリウム血症を起こすというものがあり、日常的に添加物として接している事には不安があります。そこに某炭酸飲料となると血中カリウム濃度が心配になってしまいます。今回の研究で過剰に摂取しているとされた患者は、一日当たり2〜9リットルの某炭酸飲料を飲用していました。低カリウム血症以外の部分が心配になりながら、よくそんなに飲めるものだと思ってしまいます。


 



第1251回 低温防御     2009年05月25日

 話題という点では豚インフルエンザに先を越された感じの鳥インフルエンザ(H5N1)ですが、ずいぶんと長い事、大流行して多大な犠牲者を出す事が確実かのように言われ続けてきました。今のところ大流行が見られていない理由として、意外な事が判ってきています。

 鳥インフルエンザのH5N1ウィルスは空気中に飛散し、吸引される事で粘膜に付着して感染を引き起こす空気感染によって拡大します。人に感染する場合、まず呼吸を行っている鼻から吸引されて、鼻腔内の粘膜に付着する事が考えられます。その鼻腔の粘膜の温度が、ウィルスが増殖するには充分ではなかったという研究報告が行われています。

 鳥インフルエンザウィルスは感染した鳥の消化官内で増殖する事が判っています。鳥の消化管内の温度は40度前後と、意外なほど高温になります。その高温下において増殖する鳥インフルエンザウィルスにとって、人の鼻腔内の32度程度という温度はあまりに低過ぎて成長する事も増殖する事もできず、周辺の細胞を効率的に死滅させて良好な環境を作り出す事もできない事が示されています。

 突然変異する事がウィルスの怖ろしさとされますが、人のインフルエンザウィルスに鳥インフルエンザ由来のタンパク質を追加して特殊な突然変異ウィルスを製作しても、32度という温度設定下では成長はともかく生存自体も困難であった事から、鳥インフルエンザが人の鼻腔内に感染して拡大するのは最低でも2回の突然変異が必要であり、最短で的確に変異を遂げるのは極めて難しいようにも思えます。

 鳥インフルエンザは世界中に拡大を見せていますが、人に感染し、パンデミック(世界的大流行)を引き起こすのは一定の変化を経た場合に限られるとも言えます。インフルエンザウィルスが人に感染し、流行を引き起こすには温度も重要な意味を持っている事が判ってきた事で、インフルエンザウィルスの変異の方向性の一つが解明されたとも言え、パンデミックに繋がるウィルスの特定にも役立つと考えられます。

 人の鼻は顔から盛り上がった形状のため、体温が下がりがちな構造ではあります。それが意外な事で役立っているというのは、進化に繋がる淘汰の法則の確かさを考えてしまいます。


 



第1250回 かん水の不思議(2)     2009年05月22日

 かん水の発見には諸説があり、どれもそれなりに思えるものがありますが、その中の一つに小麦を粉に挽いて麺を作るという食文化が中国の北部で発達し、やがて南へと伝わっていった事がきっかけとなったとするものがあります。

 中国の北部ではアルカリ性の水質を示す水が多い事に対し、南部では酸性が強くなってくる事から、同じように作ってはいても麺質に違いが出てしまう理由を探しているうちに水質の違いに気付き、アルカリ性の水を加えて麺を作るという事に繋がったと言います。

 アルカリ性を得るために鉱物質を多く含むかん湖から析出された成分を使ったり、ヨモギやタデなどの草を焼いて作られた唐灰(とうあく)などが使われ、日本へも輸出されます。輸入されるかん水は高価であった事から、あまり食品に対する規制が厳しくなかった頃には、水に溶かす事でアルカリ性を示す物が適当に使われたりもしていました。

 そのためかん水には身体に悪いイメージができ上がり、麺質を良くするための添加物であるという事もかん水が嫌われる原因となってしまい、かん水を使わない中華麺の開発が行われる事となります。

 かん水を使わずに中華麺を作るという事は、非常に困難を極める事で、しっかりとしたこしを得るという事からカルシウムや卵を使った麺が開発されています。カルシウムや卵を使う事で食感は再現できても、風味まで出す事はできないとされ、風味を出すために香料などを加えてしまうとかん水を抜こうとした意味さえなくなってしまいます。

 カルシウムに関しては、貝殻や卵の殻を焼いて作る焼成カルシウムを使う事でアルカリ性を得る事ができ、かん水を使った場合と同じ効果を得る事ができます。焼成カルシウムは天然物である事から使用に関する基準がなく、中華麺の製造に使う事ができます。

 焼成カルシウムを使う事でかん水を使わない事から、かん水不使用という表示が行われる事となりましたが、その後、是正が入り、中華麺の製造において使用される焼成カルシウムについては、かん水と併用されるとカルシウム強化剤とみなされ、単独使用されるとアルカリ剤となる事からかん水とみなされるという見解が示されます。

 麺を作る際にわずかでもかん水の成分が含まれれば、焼成カルシウムはカルシウム強化剤となり、かん水成分がなければアルカリ性を作り出す成分としてかん水と表示する義務が生じます。ちょっと曖昧で困ってしまいそうな決まりなのですが、実際、翻弄されているメーカーも多いのか、焼成カルシウムを含んでいるのに無かん水という麺が存在ます。かん水に関する難しさを思うと、仕方のない事かと大目に見てあげるしかないのかもしれません。


 



第1249回 かん水の不思議(1)     2009年05月21日

 ラーメンというとカレーと並んで日本の国民食となっていると言えます。外国での暮らしが長くなった人に、何を食べたいかというアンケートを取ると、特に男性を中心にラーメンと答える人が多いという事もラーメンが日本人の食に広く浸透している事が伺えます。

 ラーメンは日本の各地にそれぞれ地域色豊かなバリエーションが存在しますが、共通するのは麺の作り方ではないでしょうか。本来、ラーメンは引き伸ばして細くされた麺を指し、多くの麺に関するバリエーションを持つ中国ではごく一部の麺の事でしかありません。

 日本では引き伸ばして作った物に限らず、機械から押し出して細く成型された物や、切り揃えて細くした物もラーメンと呼ばれ、共通する物として「かん水」の存在があります。かん水を加えて作られた麺は中華麺とも呼ばれ、ラーメンに共通する麺となっています。

 かん水の始まりは、中国にある湖の水を使って麺を作ったところ、良い麺質の麺ができた事からその湖の名前を採ってかん水したという言い伝えがあるほど、麺のでき上がりに関わる物となっています。

 かん水はアルカリ性の液体で、かん水が加えられる事で小麦粉の質が変化し、独特の風味を持ったこしの強い麺が作り出され、色合いも変化して黄色みを帯びた麺になります。アルカリ性のかん水を加えられて練り上げられる中華麺は、当然アルカリ性を示し、それが酸性のラーメンのスープとよく合う理由の一つとも言われています。

 中国では日本のように麺のこしにこだわる事はあまりない事や、麺が入るスープの質が違う事から、かん水を使った麺は少数派だと言われ、かん水を加えずに作られる麺の方がはるかに多いという事には、日頃からかん水を含んだ麺を中華麺と呼んでいる身としては違和感を感じてしまいます。やはりラーメンは日本の食文化という事でしょうか。


 



第1248回 塩味雑感(3)     2009年05月20日

 世界で一番塩を輸入している国は?といわれると、人口が多い国や陸に閉ざされて海に面していない国、工業技術の発達が遅れている国などを思い浮かべてしまいますが、実はそのどれにも当てはまらない国、日本が世界で最大の塩輸入国となっています。

 日本は国内で使われる塩の85%を輸入に頼っています。輸入元としてはメキシコとオーストラリアが圧倒的に多く、中国からの輸入も急激に増えてきています。その量は2番手の国を大きく引き離し、アメリカとカナダを合わせた量の倍ほどを輸入しています。

 回りを海に囲まれ、無尽蔵に塩が手に入りそうなのに意外な感じがしてしまいます。食料の自給率が下がり続ける中、塩までもがと思ってしまうのですが、輸入塩のほとんどは食用には使われず、食用の塩に関しては自給が可能と言われています。

 食用に使われている塩の85%が国産の塩とされ、塩の専売法による規制がなくなって以降、増え続けている小規模な製塩所や輸入塩を使った天然塩の普及など、微妙に塩をめぐる環境は変わりますが、一定の自給率が保たれたまま推移していて、完全自給を行うとなっても充分対応できる製塩能力があるとされます。

 日本人が年間を通して消費する塩の量は、一人当たり10kgとされます。10kgと言われるとかなりの量を使っている感じがしてしまいますが、一日の量にすると約27g。それでも多いように思えますが、塩は使用量と摂取量に違いがあり、パスタを茹でる際にお湯に入れて使う量も使用量として計算されている事を考えると、少し安心できるものがあります。

 そうした日本人の食用塩の使用量は微妙に減少してきていると言います。減塩に対する意識の浸透で塩分を控える傾向は強くなってはいますが、塩は生命の維持に欠かせない物であるため身体が求める量があり、また塩味を感じる許容値もあるので、摂取量はそれほど変化しているともいえません。塩分の摂取量はそれほど変わらないのに、使用量が減少してきている背景には、家庭で料理を作る頻度が下がり、調理された食品を利用する頻度が上がってきている事。しかもその調理された場所が国外である事を示しています。塩に関する数値を見ているうちに、意外な寂しい現実を見てしまった気がします。


 



第1247回 塩味雑感(2)     2009年05月19日

 塩を購入する際、選択肢は大きく分けて3つあると思います。一つは何処ででも売られていて安価な精製塩、一つは割高な天然塩、もう一つがかなり高価になってしまいますが手作りの塩。いろいろな銘柄の塩がありますが、おそらくこの3つのどれかに属している事となります。

 3つのうちどれかを選ぶとなると、精製塩は健康に良くないイメージがあり、手作りの塩はあまりに高価な感じがするので、手が伸びてしまうのは割高ではあっても内容的に折り合いがつく天然塩ではないでしょうか。

 天然塩というと近海の海水を汲み上げ、釜炊きや天日干しによって作り出された塩という感じがします。海水由来のミネラルが豊富で、天然のにがりを含むほとんど加工を施していない塩というのが天然塩と思ってしまいます。

 天然塩として真っ先に名前が出てくる某大手製塩メーカーのブランド天然塩では、パッケージにメキシコから輸入された塩を使って作られている事が明記され、同じくらい有名な天然塩でも裏面の記載に塩に日本産のにがりを加えて作られた事が説明されています。

 精製塩と天然塩の違いの一つとしてにがりが含まれているかどうかというものがあります。精製塩は海水からイオン交換膜を使って純度が高い塩化ナトリウムを取り出すため、にがりなどの成分は取り除かれた状態になっていて、昔ながらの製塩法で作られた塩では不純物を取り除く事が難しい事から、にがりなどの成分を多く残しています。そのため天然塩では、天然の塩らしくするためににがりを加えて成分を調整しています。

 海水を汲み上げてさまざまな成分を取り除いて塩を作り、得られる精製塩。その精製塩や輸入塩に海水から塩を取り除いて得られたにがりを添加されて作り出す天然塩。加工を施していないという意味では、精製塩の方がかなり手間がかかっておらず、自然に近いと思っていた天然塩は意外なほど手が加えられていた事になります。

 かけられた手間の分、割高なのかと思えてしまいますが、手間をかけて天然の塩に近いものにした分、味も良くなっているという事は間違いないように思えます。塩を制するための第一歩として、塩選びから始めなければいけないのは、選択肢をたくさん持ってしまった事による贅沢な悩みなのかもしれません。


 



第1246回 塩味雑感(1)     2009年05月18日

 塩を制する者は料理を制する・・・このコラムでも幾度か採り上げてきた事でもあります。そのため、自分なりにこだわりを持って数種類の塩を集め、料理などの用途に合わせて使い分けてはいますが、意外と知らない事が多いというのも塩については言える事かもしれません。

 よく精製塩は身体に良くないという意見を耳にします。精製塩は高度に精製が進められている事から、純粋な塩化ナトリウムに近く、高血圧などの生活習慣病に繋がってしまうとも言われます。

 そんな精製塩に対し、海洋塩や岩塩であれば天然由来のさまざまな成分が含まれる事から、生活習慣病を助長するような事はないとまで言われますが、両者を数値的に比較するとそれほど大きな差がない事には少しばかり驚いてしまいます。しかし、その微妙な差が味覚に与える影響は大きいのか、精製塩と天然塩では明らかに塩辛さの感じ方が違うように思えます。

 よく岩塩の紹介で、甘味を感じるというものがあります。岩塩は太古の海底が地殻変動などによって隆起され、海水が陸上に封じ込められて水分が蒸発し、濃縮されて塩分が結晶化して地層中で圧縮された物である事を考えると、結晶質という性質上、極めて純粋な塩化ナトリウムである事が考えられ、精製塩と組成的には変わらない物という事もできます。

 岩塩にはルビーソルトやローズソルトなどの色付きの物があり、天然由来の不純物がそれらの色を演出しているという事が流布されています。しかし、そうした色のほとんどは不純物によるものよりも、長い時間をかけて地中の放射線を浴びる事によって起こった結晶構造の格子欠陥によって発色されている物が多いとされます。

 同じ塩化ナトリウムの結晶と考えた場合、精製塩と岩塩、両者の違いを突き詰めると結晶質のでき方が違うという事が思い浮かんできます。イオン膜交換法によって塩分だけを取り出された精製塩と、太古の海水から長い時間をかけて濃縮されて結晶化され、その後、圧力まで加えられた岩塩では結晶の強度に違いがあり、精製塩が速やかに水分に溶けて塩味を生じる事に対し、岩塩は溶け出す速度が若干遅く、塩味を感じる速度に微妙な遅れが生じ、それがほのかな甘さとして感じられている可能性は否定できません。塩味という単純な味覚を発生する素と思われがちですが、掘り下げてみると深い世界があると思えてきます。


 



第1245回 食文化?     2009年05月15日

 カレー、パスタソース、液体の調味料、レトルトの食品は身近なところに多数存在しています。日常的に使うレトルトとはレトルト食品の事を指し、レトルトパウチ食品とも呼ばれていますが、本来、レトルトとは蒸留や乾溜を行う際の実験器具の事で、丸みを帯びた球状の本体に、先に行くほど細くなる下向きの長く伸びた管が付いた独特な形状をしています。

 蒸留したい液体を球状の本体に入れ、熱する事で蒸気が発生して管の部分に流れ込み、冷まされて結露する事で液体として取り出す事ができる事から、盛んに蒸留実験が行われていた錬金術でも多く用いられ、当時の事を描いた絵画などで姿を見掛ける事ができます。形状や大きさ、目的はまったく異なりますが、缶詰や瓶詰を加熱減菌するための加圧釜もレトルトと呼ばれる事があり、製造工程でレトルト釜を用いるという意味では、缶詰もレトルト食品に含まれると言う意見もあります。

 レトルトの技術は携帯食糧の缶詰に代わる物として、重さや空き缶の処理を改善する目的から軍用食の技術として開発され、宇宙食にも採用された事から、多くの食品メーカーの注目を集める事となりましたが、当時のアメリカでは冷凍冷蔵庫が広く普及していて、食品の長期保存を可能にするには冷凍する事の方が一般化していた事もあり、レトルト食品はほとんど普及しませんでした。しかし、冷凍冷蔵庫の普及が遅れていた日本では、常温で長期間食品の品質を保持できる物として急速に普及しています。そのためかレトルト食品という言葉は、日本固有のものともなっていて、世界的には通じないものとなっています。

 世界初の一般向けレトルト食品は、地域限定のテスト販売ではありましたが某大手メーカーから発売されたレトルトカレーで、翌年の1968年4月にはパッケージに改良を加えて全国発売されています。現在でもそうですが、当時から3分間温めるだけで食べられるという簡便性が最大の特徴とされ、保存性の高さはあまり強調されていない事から、保存食ではなくインスタント食品としての位置付けを持っている事となっています。

 多種多様なレトルト食品が存在する中、売上高の3分の1という大きな部分をレトルトカレーが占めているとされ、レトルト食品の普及にカレーという存在の役割が大きかった事が感じられます。日本がレトルト食品の先進国となった背景には、カレーが国民食となっていたという日本の食文化が関わっていた事や、高度成長を続ける中、忙しさからインスタント食品が大いに普及したという要因があると思えてしまいます。食品の保管事情やカレーの存在、忙しいライフスタイル、整い過ぎた環境が独自の文化を形成したのかもしれません。


 



第1244回 肥満の弊害     2009年05月14日

 簡単かどうかは別として、身近なエコ活動で温暖化防止に役立つ事があります。それはダイエット。いかにもという感じで納得してしまうのですが、実際にその事を裏付けるデータは多数存在しています。

 少し前の事になりますが、アメリカの航空会社の試算によると、アメリカ人の肥満によって航空機の燃料代が30%ほど余分に消費されていると報告されていました。航空機は離陸の際に多くの燃料を消費する事を考えると、乗客の総体重が増加すれば、それだけ燃料を消費してしまう事は容易に想像がついてしまいます。

 別な研究では、温室効果ガスの排出は食糧生産に関連して発生している事から、やせた人ばかりの国では、現在のアメリカのように人口の40%が肥満している国と比べると、食料の消費に20%ほどの違いが生じ、その違いが二酸化炭素の排出に大きく関わってくるとされています。

 もし想定した国の住民が10億人の規模となると、交通機関が排出する二酸化炭素の量は年間10億トンもの違いとなるという試算もだされています。肥満によって身体が重くなり、それを動かすには多くの労力が必要となる事から、少しでも距離がある移動には車を使いがちになり、その事が二酸化炭素の排出に影響を与えてしまいます。

 温室効果ガスの排出を抑制して、地球規模での気候変動を抑える動きは世界的なテーマとなっていますが、意外にも個人的な問題と思われてきたダイエットが大きな鍵を握っていると言えなくもありません。先進国では平均BMI(ボディマスインデックス、肥満指数)が増加する傾向にあり、問題解決は難しいようにも思えてしまいます。


 



第1243回 振動利用     2009年05月13日

 電磁波については、最近ではあまり良い印象がなく、電磁波という言葉自体にアレルギーを感じてしまう事さえあります。しかし、電磁波は意外に身近なもので、電子レンジや最近急速に普及が進んでいるIH調理器なども電磁波を利用して熱を発生しています。

 電子レンジで使われる電磁波は、マイクロ波と呼ばれる周波数の高いもので、2450MHzという周波数が使われています。マイクロ波は金属には反射され、プラスティックや陶器は透過し、水などには吸収される性質を持っています。

 電子レンジの中に料理を入れて温めはじめると、マイクロ波が器のプラスティックや陶器を透過して中の料理に当たり、食材に含まれる水分に吸収されて水の分子を振動させます。振動させられた水の分子は、分子同士での摩擦熱を生じる事で熱を発するので、料理を温める事ができます。

 周波数と同じだけ水の分子が振動させられる事を考えると、1秒間に24億5千万回も振動している事になるので、かなりの熱量が得られる事も納得してしまいます。マイクロ波は水だけに限らず、電気的に偏りがある分子であれば振動させる事ができるので、ほとんどすべての食材を温める事ができます。

 特徴としては、素材の中心部から素材自身が熱を発するので、通常の調理が外側から熱を伝達する事に比べると非常に低いエネルギーで素材を調理する事ができます。加熱に関しては、塩分や糖分、油分が含まれる量によって熱を発する具合が変化するので、味付けや素材の性質によって加減する事や、加熱時間を少なめに設定して、均一にマイクロ波が当たるように向きを変えながら継ぎ足し加熱をする事が好ましいとされます。

 マイクロ波の性質を理解すると、意外な使い方ができる事が判ります。電子レンジで茹で卵を作る事は非常に危険な事とされ、専用の器具を使わなければできないとされていますが、簡単な工夫で手軽に作る事ができます。

 耐熱容器に卵を入れ、完全に卵が沈んでしまうように水を入れます。ポイントは卵をアルミホイルで包んでおく事で、アルミホイルがマイクロ波を反射し、回りの水だけが熱を発して卵を茹でてくれます。大切なのはアルミホイルが水から出ない事で、茹でている最中にアルミホイルが水の表面から出てしまうと、火花を発するなどの怖い思いをしてしまいます。意外と簡単なので、お暇な際にでもお試しください。


 



第1242回 起きずに眠る     2009年05月12日

 短期的には睡眠は栄養の摂取よりも重要とされ、実際に睡眠を妨げられ続けると栄養不足よりも早い期間に死亡してしまうとされます。統計的には1日7時間程度が最も長生きすると言われるほど、睡眠は健康の維持に欠かす事ができない要素となっています。

 睡眠の量については人によって個人差が大きく、4時間という人もいれば8時間しっかりと眠らなければ睡眠不足を感じてしまうという人もいます。睡眠の量は単純に延べ時間だけで良いというものではなく、連続した時間で摂るのが好ましい事は多くの人が実感している事だと思います。

 高齢になると、夜間にトイレに行くために目が覚めてしまうという事がよく言われますが、夜間の頻尿による睡眠の中断は死亡率の高さに関与している可能性が新たな研究で示され、夜間の頻尿について原因の究明や治療を行う必要性がある事が判ってきています。

 都市部に住む70歳以上の高齢者、約800人を対象に面接を実施し、その後3年間の被験者の医療記録を調べたところ、夜間に2回以上トイレに行くために起きてしまう人は、1回以下の人に比べて死亡率が高く、その数値は糖尿病や高血圧、アルコールの摂取などの因子の影響を考慮して調整を行っても2.7倍ほど高くなる事が判っています。

 夜間の頻尿は加齢によるものと考えられがちですが、重篤な疾患が隠れている可能性がある事や、別な研究でも心疾患と夜間頻尿がある人は心疾患のみの人よりも死亡率が高い事も示されているので、見過ごす事ができない問題かもしれません。夜間の睡眠中という事もあり、注意力の低下から転倒、骨折などが引き起こされると、高齢者には新たな問題となっています。質の良い睡眠は、質の良い人生に繋がるというのは確実なように思えます。


 



第1241回 美味しさの名前     2009年05月11日

 熊本の新たな特産品となっている物に「デコポン」があります。デコポンは少し大きめの柑橘類で、全国の生産量の約半分が熊本県内で生産されています。すっきりとした甘さと少なめの酸味が特徴で、全国で統一された糖酸品質基準を持つ唯一の果物でもあります。

 デコポンの正式な品種名は「不知火」で、寒さに弱い事から、主に宇城、芦北。天草といった熊本県内でも温暖な気候の地域の沿岸部を中心に生産されています。

 そんなデコポンの生まれ故郷は、実は熊本ではありません。デコポンは1972年に長崎県南高来郡にある農林水産省の果実試験場で、ミカンの一種、清見とポンカンを交配によって生まれています。

 特徴の一つであるデコが現れやすく、不揃いになりがちな事と、表面が粗く、成熟してくると色がくすんで萎びた感じになるという外見的な悪さから、育成試験の選抜対象とはならずに品種登録されずに埋もれていました。

 甘夏の産地であった不知火やその周辺地域では、甘夏に変わる品種の柑橘類を探していたところ、埋もれていたデコポンに出会います。形をはじめとした外見的にはあまり良くはないとされながらも味が良い事から、品種名を不知火として品種登録を行い、東京の仲卸業者に紹介したところ評判が良い事から本格的な栽培に着手しています。

 不知火の中でも糖度が13度を超える物を選別して、本来は外見的な弱点とされたデコをセールスポイントとして「デコポン」の名前で商品化しています。その後、各地で不知火の栽培が行われ、すでに評判となっていたデコポンに似たような名前で製品化されます。

 デコポンの名前は商標登録されていた事から、熊本県産の不知火以外にはデコポンの名前を付ける事ができなくなっていた事が類似の名前の製品を生む事となり、市場や消費者の混乱を招く結果となってしまい、せっかく美味しさを示すために付けた名前が逆に作用するという皮肉な結果に繋がってしまいました。

 それから関係機関での協議が行われ、規定を満たした不知火にはデコポンの名前が使用できる事となって混乱は収まりました。一部、無許可の使用は認められるものの、デコポンの名前は美味しさを保障するものとして使われています。ちなみにデコの存在は美味しさとは関係ないそうですが、厳しく守られる規定が美味しさを保障するものなのかもしれません。


 



第1240回 中火以下     2009年05月08日

 テフロンのフライパンがすぐに傷んでしまい、年に1回くらいは買い替えを余儀なくされてしまいます。使い方が悪いのでしょうか?そんな質問を受けてしまう事があります。最初は油をひかずに焼き物や炒め物をしても全然こびりついたりしないものが、使い込んでいくうちに段々とこびりつきや焦げつきがひどくなり、やがて新しい物に買い替えなくてはならなくなる事はテフロンのフライパンを使った人なら誰でも経験がある事かもしれません。

 テフロンとはフッ素樹脂やフッ素樹脂で表面加工する事で撥水性や撥油性を高めた製品の事で、デュポン社による登録商標となっています。そのためフッ素樹脂で表面加工を施されたフライパンであっても、デュポン社の製品でなければテフロンと呼ぶ事はできません。

 フッ素樹脂とはフッ素原子を含むプラスティックの総称で、第2次世界大戦中に原子爆弾の製造に必要となるウラン235の濃縮行程の中で開発されています。開発から数年後、耐熱性や耐低温性、耐燃焼性、耐薬品性、非粘着性や摩擦の低さ、絶縁性、紫外線に耐えられるといった優れた特性が軍事目的以外でも使用される事となっています。

 フッ素樹脂の優れた特性はフッ素原子と炭素原子の結合力の高さからきているとされ、フッ素原子が一旦炭素原子と結合してフッ素樹脂となると、化学的に分離する事が難しいと言われるほど強力に結合して他の物質とは結び付かなくなるので、フッ素樹脂には物がこびりつきにくいという性質が生まれます。

 熱に強く酸やアルカリにも影響を受けず、物がこびりつきにくい、そうした優れた特性によってフライパンの表面処理に採用され、瞬く間に普及したフッ素樹脂加工ですが、意外な事で性能を大幅に損なってしまいます。

 よく言われるのが表面を硬い調理器具で傷付けてしまうというもので、初期のフッ素樹脂加工のフライパンには金属製のヘラやフライ返しは使えないとされていました。今ではかなり強度が確保され、金属製のヘラでも角が鋭利でなければ大丈夫と言われます。最初に購入したフッ素樹脂加工のフライパンがコンソメのキューブを投げ入れただけで傷が入り、そこからフッ素樹脂が剥げてフライパンをダメにしたという経験を持つ身としては、かなりの進化だと思えます。

 調理器具で傷を付けてしまうだけでなく、フッ素樹脂加工の表面は独特の手触りがある事から、洗う際に油汚れが落ちてない印象を受けてしまう事があり、ついスポンジに付けられた研磨面を使ってしまうと表面に傷を付けてしまい、焦げ付きの元となってしまいます。

 頑丈になったからといってもフッ素樹脂はそれほど強くない事は知られているので、金属の調理器具やスポンジの研磨面を使わないとしても、調理を終えた後、いつまでも料理をフライパンに残していると、一見滑らかに見えるフッ素樹脂の表面には微細な穴がたくさん開いているので、そこから中へ水分が入り込み、そのまま加熱する事で入り込んだ水分が熱されて膨張し、フッ素樹脂の層を剥がしてしまう事があります。そうなると激しく焦げ付く事となってしまいます。

 フッ素樹脂加工のフライパンを劣化させている最大の原因は、鋭利な調理器具でも研磨スポンジでもなく、いつまでもそのままにしていた料理の水分でもなく、意外な事が関わっています。それはフッ素樹脂加工に添えられた説明書にも書かれた事で、料理をする際の火加減にあります。

 フッ素樹脂加工のフライパンには、必ず中火以下で使用するように書かれています。フッ素樹脂は耐熱性があるといってもやはり樹脂であるため、本来フライパンに使われてきた金属と比べると格段に熱に弱いといえます。

 260度を超えるとフッ素樹脂は気化し始めるので、そうなると表面の滑らかさが失われて焦げ付きを生じるようになってしまいます。調理に使われる温度は最大で180度程度とされるので、そのくらいの温度なら大丈夫と考えられていますが、フライパンに食材を入れずに空焚きをしてしまうと300度を超える熱が表面にかかってしまうとされ、また、最近の調査では260度を下回る温度でもフッ素樹脂は気化し始める事が判ってきています。

 フッ素樹脂加工のフライパンは、フライパン自体をアルミなどで成型した後、表面にフッ素樹脂を塗布して作られています。アルミは素材的に熱伝導は悪くはないのですが、表面にフッ素樹脂の皮膜がある事から火にかけた時の熱の立ち上がりが悪く、通常よりも火加減が強めになってしまうという傾向があります。そうした熱に対する特性もフッ素樹脂を傷めてしまう要因となっている事が考えられます。

 火加減に注意し、他の要因にも気を配る事で寿命を延ばす事ができるフッ素樹脂加工のフライパンですが、鉄製のフライパンのように長く使うほど油がなじんで使い勝手が良くなるという事はなく、時間と共に性能が劣化していく物なので、消耗品と考えるしかなさそうです。


 



第1239回 最初は誰?     2009年05月07日

 江戸時代、寛政9年(1797年)に長崎の遊女がオランダ商人からプレゼントされた贈り物のリストが、「寄合町諸事書上控帳」に記されています。その中に「しょくらあと」なる物を6つという記載があり、同じ頃に書かれた「長崎見聞録」には、削ってお湯の中に入れ、卵と砂糖を加えて茶筅で泡立てて飲む薬として「しょくらあと」は登場しています。

 現在とは扱い方に大きな違いがありますが、この「しょくらあと」こそが日本史上初めて文献に登場するチョコレートの事と考えられます。チョコレートが固形の食べ物となったのが、約170年ほど前という事を考えると、当時は飲み物として入ってきている事や、栄養価の高さから薬と考えられた事も納得できます。

 オランダ商人からプレゼントを受けた長崎の遊女が日本で最初のチョコレートを食べた人かというと、実はそれよりもはるか以前にチョコレートを食べた可能性がある人物がいます。戦国大名として有名な仙台藩主伊達政宗の家臣に「支倉常長」という人物がいます。この常長こそが、日本で最初にチョコレートを食べた人物ではないかと考えられています。

 常長は1614年、藩主伊達政宗の命によってメキシコを経由してスペインへと渡り、翌年にはローマへと渡っています。スペイン国王に拝謁し、メキシコとの貿易に関する許可を得るための交渉を行う旅でしたが、正式な外交使節団である事から、スペイン国王に謁見する際、それなりのもてなしを受けた事が考えられます。当時、宮廷では新大陸からもたらされたチョコレートが大流行していた事から、常長もチョコレートをご馳走された事が想像されます。

 残念ながらその時の事は記録に残されていませんが、遊女のプレゼントが文献に登場する180年ほど前、すでに日本人がチョコレートに接していた事になります。

 それから260年ほどが経過した後、「猪口令糖」の当て字がされた日本初のチョコレートが両国の米津風月堂から発売されています。その当時はあまり普及していませんが、その後、独自の研究開発が行われ、今では日本のチョコレートは世界でも高い評価を受けるほどの物となっています。

 常長がチョコレートに接した時、当時のチョコレートが現在のように高い品質を持ち、便利な個包装された物であったなら、藩主伊達政宗にお土産として持ち帰り、独眼竜と呼ばれた政宗がチョコレートを頬張るという、ちょっとかわいい場面も見られたのではと想像してしまいます。


 



第1238回 魅惑の旨味     2009年05月01日

 イボテン酸・・・耳慣れない成分で、あまり美味しそうな感じはしませんが、実は非常に旨味が強い成分とされます。構造的に旨味調味料として使われているグルタミン酸に近く、良く似た味わいを発揮してくれるアミノ酸の一種です。

 イボテン酸の名前は1960年に日本の薬学者、竹本、常松博士らによってイボテングタケから初めて抽出された事から付けられ、正式な学名となっています。イボテングタケならイボテング酸ではとも思ってしまうのですが、あらためて言ってみるとイボテン酸の方が言いやすいようにも感じます。

 旨味成分としてのイボテン酸はグルタミン酸よりもかなり強力で、人が旨味を感じる最低濃度がグルタミン酸が約0.02%である事に対して、イボテン酸では0.001から0.003%と、約20倍近い強さを持ってるとされます。

 そのためイボテン酸を含むキノコは旨味調味料を加えたような美味しさを持つとされ、食が進む事が想像できます。しかし、イボテン酸はグルタミン酸に似た構造を持つ事から、味を感じる味蕾に作用するだけでなく、中枢神経のグルタミン酸受容体にも作用してしまいます。

 グルタミン酸は旨味を出すだけでなく、脳内では興奮を伝達する重要な神経伝達物質となっています。イボテン酸は旨味のときもそうであったようにグルタミン酸よりも強力な興奮作用を持ち、グルタミン酸受容体に作用して興奮状態を引き起こします。

 また、イボテン酸は比較的不安定な成分であるため、容易に変化して揮発性の高いムッシモールへと変化してしまいます。ムッシモールは神経伝達物質の一つであるγアミノ酪酸(GABA)と構造が似ているので、GABAの受容体に作用してしまいます。GABAは抑制性の神経伝達物質である事から、ムッシモールと結合したGABA受容体は神経伝達物質の放出を抑えるように働きかけ、脳の働きを不活性化してしまいます。

 イボテン酸を含むキノコを食べてしまった後、興奮と抑制が同時に起こるという複雑な中毒症状が見られるのは、イボテン酸とムッシモールの微妙な関係によるものという事ができ、ムッシモールの方が5倍ほどイボテン酸よりも中枢神経をかく乱する力が強い事から、多くの中毒症状はムッシモールによるものと考える事もできます。

 そうした中毒作用を利用するため、バイキングは蒸留酒にテングタケを漬け込んだ薬用酒を闘いの前に飲用したり、テングタケの傘の部分の皮をはがして乾燥させ、タバコのように吸引する事で麻薬の代替品とした例も見られます。強力に美味しいと言われても、中毒症状の事を考えるとやはり味見もしたくないと思ってしまいます。


 



 

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