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第1336回 味噌汁雑感(1)     2009年09月30日

 日本の朝というと味噌汁を思い浮かべてしまいます。最近では朝はパン食という家庭も増え、味噌汁の登場回数は減ってきているのかと思われますが、栄養的な事を考えると一日を始めるためのアイテムとしては理想的な物に思えます。

 味噌汁は極めて身近な料理であった事から、味噌汁に関するエピソードは多く伝えられている事とは思われますが、その中にあって戦国大名の北条氏の行く末を暗示した話は、味噌汁という物の日常性を伺わせるものとなっています。

 味噌は平安時代に鑑真和尚によって伝えられたと考えられています。当時の味噌は発酵はしていますが乾燥しているため、どちらかと言えば干した納豆のような物だったと言われています。そのまま食べるというのが主な食べ方で、今とはかなり趣が異なるものと言えます。

 その後、味噌は徐々に今日の形に変化し、鎌倉時代から味噌汁が登場する事となります。鎌倉時代というと武家社会の始まりの時代でもあり、戦国時代に各地の武将たちがこぞって味噌作りを奨励した背景には、武士と味噌の密接な関係があった事を感じさせてくれます。

 関東を支配していた北条氏は初代の北条早雲に始まり、早雲の孫に当る氏康の代には、近隣の豪族と結託して集めた上杉憲政率いる8万の軍勢をわずか8千の手勢で退け、天下に武勇を轟かせるまでに至っています。

 その氏康が息子の氏政と食事をしていたところ、急に涙を流し始め、驚いた家臣達が理由を尋ねたところ、氏政がご飯に味噌汁を2回もかけたためと答えたと言います。

 訳が判らないのでさらに詳しく尋ねたところ、茶碗は毎日使う物で、その中にある物の量は自然と把握できるものであり、氏政が2回も味噌汁をかけ直した事は、ご飯と味噌汁の分量が量れなかった事を示し、毎日使う物の分量すら計れない者に戦乱の世を生き抜く事ができるだろうか。北条の家も息子の代までだと思うと、情けなくて涙が止まらなくなってきたと答えたそうです。

 この話には別な解釈があり、近隣の巨大な勢力となっていた今川氏、武田氏と同盟を結んで以降、目立った侵略を行っていない事から、地味な印象の北条氏ですが、関東管領を受け継いだ上杉謙信の度重なる侵攻にさらされ、小競り合いが耐えなかった北条氏の日常は常に臨戦態勢にあり、食事の作法も戦に即したものとなっていたと言われます。

 氏政が通常は戦を意識して1杯しかかけないと決めていた味噌汁を2杯もかけてしまった事で、戦への備えを忘れたと判断されて氏康の苦言に繋がり、カリスマ的リーダーだった氏康の後継者としての氏政の力量不足宣言が、後の北条氏衰退へと向かう雰囲気作りとなったとして、リーダーとしての氏康の軽はずみな言動を問題視する意見もあります。

 いずれにせよこうした故事は、後に武将の人となりを表すために作られたものがほとんどですが、味噌汁が重要なアイテムとなっているところに興味深いものを感じます。戦国乱世においては、日常的な味噌汁一つをとっても面白い話に繋がるものです。


 



第1335回 伝統料理     2009年09月29日

 食の歴史を振り返る際、貝塚という存在には、いかに貝という食材が古くから馴染み深い物であったのかを伺う事ができます。貝塚に残された大量の貝殻を見ると、古代では比較的容易に入手できる貝という食材は主食に近かったのではないかと思えてしまいます。

 貝塚は世界中で発見されており、地球規模で気温が上昇した事で狩猟の対象となっていたナウマンゾウやツノシカなどの大型動物が激減し、食生活の変化を余儀なくされた事によって海辺へ人口が集中していった結果とも考えられています。

 貝は浜辺へ行けば容易に獲る事ができます。新鮮な物であれば生食も可能であり、すでに火を使った調理を行っていた事から、火にくべて加熱し、口を開いたところを食べるという事が行われていたと考えられ、その意味から貝焼きという料理は伝統的な物のように思えます。

 貝焼きは最も古いスタイルの料理であり、それを裏付けるように多くの書物の中に登場しています。豊臣秀吉の朝鮮出兵は有名ですが、秀吉の後に将軍に就いた徳川家康によって悪化した日朝関係の修復が行われた事はあまり知られておらず、日朝外交に貝焼きが重要な働きをしていた事はほとんど知られていません。

 将軍の職務を受け継ぐ事を襲職(しゅうしょく)と言い、その際は盛大な祝賀が行われていました。祝賀の席には朝鮮国も招かれるようになっていて、席上で出される本膳料理の二の膳に貝焼きが使われていました。

 料理本によるレシピの変遷を見ていると、貝殻を器とした貝焼きは徐々に卵とじという技法が加わるようになり、卵と出汁を合わせる料理は茶碗蒸しへと進化を遂げていきます。

 茶碗が器ならば納得がいくのですが、当時の貝焼きには器としての大きさがちょうど良いアワビが使われていた事が多くの書物に残されています。困った事にアワビの殻には多くの穴が開いていて、直接火にくべたり、卵でとじたりという事が極めて難しいように思えます。料理本には味噌を穴に詰める事で水漏れを防ぐとありますが、当時の味噌とは何かが違うのか、味噌を詰めたところで水漏れを起こしてしまいます。机上の空論が通用しないのが料理の世界ですが、アワビの貝焼きには何か秘密が隠されているように思えます。貝料理を前に味噌の考察が必要と言うのも興味深いものを感じてしまいます。


 



第1334回 税の功罪     2009年09月28日

 歴史的に見ると税はさまざまな要因によって導入されている事が判ります。そうした税の導入要因の一つに何らかの抑制を意図したものがあり、記憶に新しいところではタバコにかかる税金を引き上げる事で禁煙を促すというものがありました。

 最近、ユニークな税の導入が検討されていて、医療の専門家からの支持を集めています。米国では肥満や過体重に関連した医療費が全医療費としての支出の9%近くを占めるとされ、原因の一つに炭酸飲料の過剰な摂取が上げられています。

 検討されている税はそうした肥満や過体重の原因とされる炭酸飲料や糖分を含み、肥満の原因となりかねない清涼飲料水1オンス(約30ml)あたりに1セントの税を課するというもので、肥満の抑制をはかると同時に歳入を増やす事ができると考えられます。

 砂糖や果糖ブドウ糖液糖、濃縮果汁を使った清涼飲料水の摂取が増える事で、肥満ばかりでなく糖尿病、心疾患、虫歯などの疾患が増える事を示す研究は多く、清涼飲料水の販売の伸びに応じて若年層の肥満が増えた事や、糖分を含む飲料を排除した事で有意に体重の減少が見られた例など、多くの研究例が清涼飲料水の過剰摂取による弊害を裏付けています。

 一部の専門家の意見では、1セント程度の課税では不充分であり、清涼飲料水の過剰摂取を抑える事は不可能とされ、糖分を含む飲料と肥満の関連性についても否定的なコメントが出されています。

 実際、すでに清涼飲料水への課税が導入されているアーカンソー州の例を見ると、肥満率の高さという点ではアーカンソー州は全米のトップテン入りをしている事から、効果の程には疑問が生じてしまいます。清涼飲料水という特定の食品を悪者視する事を助長するという意見もあり、データ的な評価という点では納得のいくものがあります。

 経済的な観点としては、肥満や過体重による医療コストが1470億ドルに対して、税からの収入が初年度で149億ドルと試算されているので、有効な手立ての一つにはなりえると考えられます。

 米国のファーストフード店では、日本のファミリーレストランのドリンクバーのように、定額で飲み放題というシステムが普及している事から、税制が導入されても課税の難しさが感じられますが、実現すればそれなりに健康への取組としてインパクトがある事とは思えます。より良い形で実現する事を見守りたいと思います。


 



第1333回 悪魔の...     2009年09月25日

 インフルエンザのワクチン不足が言われ、大規模な流行が懸念される中、感染から身を守る難しさを思ってしまいます。ウィルスに感染してしまうと抗ウィルス剤を使った治療となるので、有名なタミフルの出番となります。

 タミフルは主成分となるシキミ酸を得るために中華料理でよく使われる香辛料、八角ウイキョウから作られ、インフルエンザの大流行で中華料理の値段が上がってしまうのではという変な心配もされていました。

 そんな心配を軽減してくれるものでしょうか、新たな素材が新型インフルエンザの抗ウィルス剤として使用できる可能性が示唆されてきています。その新たな素材とはセリ科の植物で、「アギ」と呼ばれ、中国からイラン、アフガニスタンにかけて自生しているとされます。

 1918年、インフルエンザの脅威という話では、必ずと言えるほど名前が出てくるスペイン風邪の世界的な流行が起こった際、中国では「阿魏(あぎ)」という植物を風邪薬として利用されていた事が記されていますが、アギと抗ウィルス作用を結び付ける研究は行われていなかったとされます。

 今回、台湾の研究チームによってアギの抽出物に含まれる抗ウィルス作用を持つ化学物質が特定され、現在使用されているインフルエンザ用の処方薬よりも強力な作用を持つ事が確認されています。

 特にアギは新型インフルエンザ(H1N1)に対して効力を持つとされ、スペイン風邪に使われた事を考えると今後、大流行に対する有効な手立てとなる事が考えられます。アギの特徴としては樹液に強い悪臭があり、その悪臭ゆえに「悪魔の糞」と呼ばれる事もあるほどで、料理には使われていない事から、大量に使用されても料理の値段が上がる心配がない事も良い事の一つのように思えてしまいます。


 



第1332回 特許製法の不思議     2009年09月24日

 食品関連の説明書きを興味深く眺めていたりする事があり、中には疑問を持ってしまうものも少なくはありません。最近ではルチンに関して事が記載されたものが興味深かったように思えます。

 ルチンは中世のヨーロッパで使われていて、小説の中で見かける事があるみかんの仲間にあたる薬草、ヘンルーダから1930年代に発見されています。

 発見された当初は、その働きからビタミンPとして扱われていましたが、ルチン単体ではなく複数の成分も同様の働きを持つ事から、ビタミンP様体として扱われるようになり、近頃では柑橘類よりもソバの薬効成分として知られるようになってきています。

 ルチンはソバが紫外線から身を守るために作り出す成分と言われ、紫外線量が多い高山で育つ韃靼ソバ(だったんそば)に特に多いとされ、韃靼ソバを使ったサプリメントも販売されています。効能としては血液をサラサラにして血管の弾力性を確保してくれる働きがあるとされ、血圧を安定させるものとして生活習慣病の予防に良いものと言えます。

 ソバに多いルチンですが、ソバの中にはルチンを加水分解する酵素、ルチナーゼが含まれているので、ソバを打つ際などの水を加えた状態にするとルチナーゼの働きによってルチンは分解され、ケルセチンへと変化してしまいます。そのため韃靼ソバを挽いたソバ粉を売るメーカーでは、特許製法を使ってルチナーゼを破壊し、ルチンがケルセチンへ変化しないようにしているという事でした。

 そこまでして変化が抑えられるルチンのケルセチン化ですが、ケルセチンの効能は血液をサラサラにして血管の弾力性を確保し、血圧を安定させるというもので、そうなるとルチンとの区別に困るように思えてきます。その他の部分で微妙に違いがあるのですが、タマネギの効能の元として評価が高いケルセチンがソバにおいては悪者のように言われていた事には、なんとなく不思議なものを感じてしまいます。


 



第1331回 増粘多糖類の思い出     2009年09月18日

 以前、増粘多糖類の製造工場にお邪魔した際、海藻から抽出して作るトコロテンのような物だという説明を受けました。実際、工場の中へ入り、製造途中の乾燥前の製品を見せてもらうと、巨大な透明度の高いトコロテンという感じがしたのが印象的でした。

 その際、増粘多糖類の利用状況について質問したのですが、もっとも目立つ使用例としては室内の芳香剤で、それ以外にもとにかくさまざまな物に使われているという事でした。

 当時はそれほど増粘多糖類という名前を原料記載に見る事はなかったのですが、その後、食品の原材料名を記載したラベルに幅広く見られるようになってきていました。

 当時と比べて増粘多糖類の利用例が増えたという訳ではなく、増粘多糖類の記載が増えた背景には平成3年に行われた食品衛生法の改正があります。原材料の内容表示が義務付けられた事によって、それまで天然由来の添加物という事で表示が行われていなかった増粘多糖類も表示対象となり、以降、幅広く見かける事となっています。

 増粘多糖類はとろみや粘りを付けるための添加物として使われ、海藻や植物などが原料となる天然由来の糖類です。増粘多糖類として単品で市販される事はほとんどありませんが、とろみ調整食品として売られています。とろみ調整食品は液体などに簡単にとろみを付ける事ができるので、物を飲み込む力が弱っている病人や高齢者の食事に利用して、食事のサポートを行う添加物として使用されます。

 とろみというと料理では片栗粉やコーンスターチが使用されますが、増粘多糖類の優れた点は温度に左右される事なく、時間の経過に対しても安定していてにおいや色がなく、料理その物の風味を損なわないなど多くを上げる事ができます。

 トコロテンと同じような製造方法を採りながらトコロテンのような磯の香りがしないのは、高度に精製して必要な多糖類のみの状態にしてあるからと言えるのですが、初めて見た時の透明な印象には重要な意味があったと、後になって納得させられるものがあります。


 



第1330回 時計と食     2009年09月17日

 眠りの質が問われるようになり、枕や寝具、音楽やアロマなど、多くの快眠関連商品が見られるようになっています。それほどまでに睡眠が意識される背景には、質の良い睡眠が充分に摂られていない事が日常化していて、原因の一つに体内時計の狂いを上げる事ができます。

 動物の身体機能は体内時計が元になった一定のリズムを繰り返す事が知られています。その毎日繰り返すサイクルがサーカディアンリズムと呼ばれ、サーカディアンリズムの乱れから睡眠障害が発症してしまう事が考えられます。

 体内時計は、朝日を浴びるなどの日常的な事によって微調整が加えられています。そうした微調整が働かないように暗い状態で炭水化物を減らした食事を続けると、体内時計の一日を示す周期が短くなる事が判ってきています。

 食の内容によって体内時計の周期を微調整できる事が判ってくると、食を通してサーカディアンリズムを整えて健康的な生活の確保が可能と考えられます。

 また、脂肪酸の代謝に重要な役割を果たしているタンパク質が、体内時計の調節を行っている事が新たに確認されている事から、食が体内時計、サーカディアンリズムに深く関わっていて、食を抜きにより良い生活は成り立たないという考え方もできます。食と睡眠の関わりについては人の営みの重要な部分でもあるので相互関係には興味深いものがあり、今後の研究の展開を楽しみにしたいと思ってます。


 



第1329回 麻痺縛り     2009年09月16日

 金縛りというと、どことなく心霊現象のように思えて不可思議な現象のようにも感じてしまうのですが、睡眠麻痺という見地から医学的な解明も進められています。

 疲労などによって睡眠のリズムが乱れた時に起きやすいという傾向が判っており、金縛りの最中の人は、金縛りにあっている事によって特に苦しがる様子はなく、わずかですが手先は動いている事が観察されています。

 外見的には眠っているようにも見える金縛りの最中ですが、脳波を調べると睡眠中の夢を見ている状態とは大きく異なる事が判ってきていて、レム睡眠という浅い眠りの最中に起こるにも関わらず、脳波は目覚めている時と同じアルファ波を大量に出し、目が覚めている時と区別がつかないと言います。

 金縛りの最中にも夢を見てはいるのですが、通常の夢とは脳の状態が大きく異なる事から、夢の見方に違いがある事が考えられます。アルファ波の状態から、脳はほとんど起きているという事ができるので、脳は起きた状態で夢を見て、夢という非現実的な内容を現実として見てしまいます。

 夢を現実と感じてしまう事で、夢の中で起こる事に対処するように脳は指令を出すのですが、身体は眠っている事から脳の指令は脊髄で遮断され、脳は思い通りに身体が動かない事を異常事態として捉えてしまいます。それが金縛りとして認識されるのですが、事前にそうした心霊現象に関する知識がある事も大きいように思えます。生理現象の一環と解ってはいても、できれば経験したくないものです。


 



第1328回 銀、金、四角     2009年09月15日

 「きんつば」は和菓子の一種で、正式な名称は金鍔焼きとも言われます。四角く成型された餡を薄く伸ばした小麦粉の生地で包んで焼き上げた物で、繊細な小豆の味を楽しむ事ができる餡と生地の比率が最大差を見せる甘党向けの焼き菓子ではないかと思います。

 普段見かけるきんつばは四角い形状をしていますが、もともとは刀の鍔のような丸型をしていたと言いわれます。江戸時代の中期に京都で考案され、小豆の粒餡を固めた物に米の粉である上新粉で作った生地をかけて、油をひいた平鍋で焼いた「ぎんつば」が元になっています。

 京都から江戸へぎんつばの製法が伝えられると、生地が上新粉から小麦粉へと変わり、気風の良い江戸っ子によって「銀」よりも高価な「金」へと名前も変えられ、今日のきんつばという呼び名が定着する事となりました。

 その後、小豆餡で作られる江戸きんつばに対し、芋餡や芋ようかんを使った薩摩きんつばやカボチャ餡の鎌倉きんつばなどのバリエーションも生まれ、きんつばは和の焼き菓子として根付いていきます。

 そんなきんつばに転機が訪れるのが明治30年代の初めで、神戸元町の紅花堂の創業者、杉田太吉によってそれまで円形だった江戸のきんつばは四角形への進化を遂げます。円形のきんつばは表裏面を焼いた後、側面を手で支えて回転させながら焼き上げる必要がありますが、四角形であれば手で支えて回転させる必要もなく、一度に一人の職人が何個も作る事ができて合理的でもあります。

 面を使って焼き上げるという発想の合理性がさらに追及されたのか、一部地域には三角形のきんつばが作られていて、語源である刀の鍔との関連性が合理性によって失われた例として見る事ができます。

 杉田太吉によって創業された紅花堂は、本高砂屋として現在も元祖となる四角形のきんつばを製造販売しています。不思議な事に芋餡で作られたきんつばが「ぎんつば」と称して売られていて、色合いがきんつばよりも金色に近い事やきんつばの由来、薩摩きんつばの存在などを思うと違和感を感じてしまいます。

 方言によっては回転焼き、今川焼の事をきんつばと呼ぶ地方がある事や、京都からぎんつばが伝えられた頃、すでに江戸ではきんつばと呼ばれる今日の今川焼に近い焼き菓子が存在していたとする話もあり、きんつば一つにもずいぶんと奥が深いものがあると感じさせられてしまいます。


 



第1327回 エコ地産地消     2009年09月14日

 地産地消というと安心安全な食に関するキーワード、食のあり方の理想像として語られる事もある言葉です。その土地に合った作物を生産し、生産された土地で消費するという食のスタイルは、健康のために多品目を摂取するという点では難しいものがあるかもしれませんが、少しずつ根付いてきている動きではないかと思います。

 そんな地産地消が食以外の分野で私たちの生活の中に根付いてきています。食意外の分野の地産地消、それはエネルギーの分野で、特に発電という部分では食よりもはるかに地産地消が進んでいると言う事ができます。

 代表的な例としては発電機付きの街灯や標識で、作り出した電力をその場で消費しています。まだ現物を持っている人を見た事はありませんが、太陽電池が付けられた携帯電話も発売され、同じように太陽電池を使った外付け式の充電機も出回っています。

 電力は発電所で発電されても、送電線を通っているうちに送電ロスが生じて目減りしてしまいます。その目減りを少なくするには送る距離を短くするか、送電線の抵抗をなくす必要があります。

 送電線の抵抗をなくす技術、超伝導の実現には、まだ時間がかかりそうな感じなので、送電距離を可能な限り短くして電力ロスを少なくするエネルギーの地産地消が必要となってきます。

 最近では太陽電池に限らず、振動を利用した発電システムで駅の自動改札機を稼動させる研究も行われていました。スピーカーの技術を逆に応用したというもので、スピーカーが電気を振動に変えて音を発する事に対して、人が改札を歩く時の振動を電気に変えて発電し、その場で得た電気をその場で使うというものです。

 思えば自転車のライトは、タイヤの回転エネルギーを電力に変える事で必要な灯りを得ていました。エネルギーの地産地消は、意外にも早い時期から身近なところにあり、言葉が生まれて意識されるはるか前から浸透していたのかもしれません。必要に応じて小規模に、エコライフの基本のようにも思えます。


 



第1326回 貼り針     2009年09月11日

 子供の頃、大人とすれば可愛がった程度の事かもしれませんが、後々トラウマになってしまう事が意外とあったりもします。皮下注射もその中の一つで、皮下注射を連想させる細長い注射器はいまだに怖い物の一つとなっています。

 皮下注射は、文字通り皮膚の下に薬剤を注入する注射であり、血管内に薬剤を入れ込む血管注射とすると、比較的難易度が低いようにも思えます。しかし、注射としての痛みという点では、それまで何もなかった皮下に薬剤を注入する事から、特有の痛みがあり、子供には恐怖の対象でもあります。

 そんな皮下注射を受ける際、緊張している姿がおかしかったのか、それをからかいながらまるでダーツを投げるかのように注射され、一気に薬液を注入された事があり、いまだに注射器を見ると嫌な気分になってしまいます。

 最近、皮下注射に代わるかもしれない物が開発され、ちょっと注目しています。マイクロ針と呼ばれる長さ数百ミクロン程度の微細な針を使う技術の応用で、皮膚に貼り付けて使用するパッチ剤にマイクロ針を備える事で患者が自分で簡単に貼り付け、痛みを感じずに皮下注射と同じ効果を得る事ができる可能性があると言います。

 すでに実験段階では皮下注射と同様の効果が確認され、早期の登場が待たれます。大人になると皮下注射はそれほど怖い物でもなくなりますが、黄斑変性症の治療では直接眼球に注射される事を思うと、マイクロ針の将来に期待したいと思ってしまいます。

 注射器を使用しない事から、患者が自分で施療する事も可能なので、インフルエンザのワクチン接種などは郵送されてきたパッチ剤を貼り付けるだけとなり、予防接種のために病院へ出向き、院内感染するリスクも下げられます。さまざまな意味でメリットの多い技術となるのではないでしょうか。


 



第1325回 処方乱用     2009年09月10日

 ADHD(注意欠陥多動性障害)については、当初、子供の疾患とされていましたが、その後、大人でも発症するとされるようになり、患者数は増加傾向にあるとも言われます。

 患者数が多い米国では疾患としての存在そのものを疑問視する意見もあり、最も一般的とされる薬剤、リタリンの早計な処方に関しても意見が分かれています。その米国において、ADHD治療薬の不適切な使用による薬物濫用が増えている事が報告されていました。

 今回のレポートは中毒事故管理センターのデータのみを対象として行われた研究によるもので、処方薬が利用されている全体を把握したものではありませんが、薬剤の利用増加に伴って乱用例も増加傾向にある事を示すものであり、薬剤との関わりを見直す必要性も感じられるものとなっています。

 未成年者が手を出す薬物としては、入手が比較的容易とされ、末端の市場価格も安価とされるマリファナが最も多いとされますが、それに次いで処方薬の存在が上げられ、合法的に入手、所持できる事が大きな理由として考えられています。

 中毒事故管理センターに寄せられるADHDの治療薬に関する相談は、この8年間で76%の増加を見せたと言われ、同じ時期にADHDの治療薬の処方は80%の増加と、同じ増加率を見せています。

 中毒事故管理センターへの相談には、ADHDの治療薬乱用者が処方された本人なのかについては言及されていないので、問題の深さの全貌を判断する事はできませんが、ADHDの治療薬は覚醒剤のLSDと構造的に酷似していて、処方薬という安心感がそれに加わる事でより問題を深刻化させる可能性がある事を認識しておかなければならないという危機感を感じずにはいられません。


 



第1334回 効能発見     2009年09月09日

 アスパラガスというと、さっと茹でた後の鮮やかな緑色が思い浮かべられ、初夏に旬を迎える野菜としてサラダやパスタなど幅広い料理に使われますが、どちらかというと単品でそのまま食べられる事が多い食材ではないでしょうか。

 先端の部分にほんのりとした苦味があり、少しだけ大人の味わいのようにも思え、消費量が多いフランスなどでは新物が出回るのを心待ちにするというのも納得できます。

 そんなアスパラガスから元気の素となる成分、アスパラギン酸が発見され、アスパラガスが名前の由来となったという話は広く知られています。初夏から本格的な夏へと向かう季節、アスパラガスは元気を支えてくれているようにも思えます。

 最近、アスパラガスの効能は元気の素となるだけでない事が判ってきています。普段、食用にしているアスパラガスの若い茎や食用にはしない葉の部分の抽出物を肝細胞に与えると、細胞毒性が有意に軽減される事が観察され、その事は肝細胞が保護され、肝臓では毒物として扱われるアルコールの過剰摂取による二日酔いの軽減に役立つと考えられます。

 アスパラガスの効能というと、抗ガン作用や炎症を抑える働き、真菌への抵抗力を上げる働きや利尿作用などが知られています。今回の研究によって新たな効能が加わる事となり、長期間、継続的にアルコールを摂取していると酸化ストレスによって肝臓に害が及ぶ事が知られている事から、飲酒の習慣がある人には毎日食べた方が良い野菜が増える事にもなります。


 



第1323回 天然?     2009年09月08日

 パンを買っていて、ふと疑問に思う事があります。パンをふっくらとさせる働きを担っているのは酵母で、パンの生地に含まれた糖質を分解して二酸化炭素を生成する働きを持っています。その酵母についてより健康的な物、素材にこだわった物として、天然酵母を使用していると表示された製品があります。

 酵母はそれほど特殊な存在ではなく、意外なほど身近なところにいたりします。それら天然に存在する酵母を使ってパンを焼くという事で、天然由来の素材を使っている安心できる製品という認識が一般的に行われます。

 天然酵母を簡単に使う方法として、レーズンやドライフルーツ、果物などを水洗いし、その水の中に洗い落とされた天然の酵母を培養してパン焼く際に利用します。天然の物を捕まえ、増やして使っているという事になります。

 同じような事は、魚の養殖にも見る事ができます。最初は天然の魚を捕まえ、仔魚を増やして養殖池で育て出荷しているのですが、通常、そうして市場に出された魚は養殖魚と呼ばれ、天然の魚から増やされた魚として天然魚と呼ばれる事は決してありません。

 そうして見ると天然酵母とは、急に説得力を失ってくるように思えてきます。視点を変えて、天然酵母の反対の物という存在について考えてみます。天然の対義語となると人工という事で、人工酵母とはどのような物なのでしょうか。

 人工酵母、人の手によって作り出された酵母となりますが、そのような物はこの世に存在していません。人はいまだかつて人為的に生命を作り出す事には成功していないからです。

 一般的な定義として考えると、天然酵母とは酵母のうち単一の株を人為的に培養した物ではなく、果実や穀物、空気中に含まれている物となります。先述の魚に置き換えると、天然に存在する雑多な魚を捕まえ、単一の種だけでなく、さまざまな種類の魚を増やして出荷したとなり、確かに通常の養殖とは異なるものと思えてきます。

 天然由来の雑多な菌が存在する事で、生産効率を追及した単一の酵母でパンを焼くよりも微妙な味わいが出てくる事と思われます。それが天然酵母のパンの味わいとなるのですが、健康を製品の特性とするのであれば、もう少しこの分野は厳密性が確立されても良いのではと思ってしまいます。


 



第1322回 菌食ライフ     2009年09月07日

 最近、マイコファジストなる言葉を知りました。日本語で簡単に言うと「菌食主義者」という事で、どことなく不思議な雰囲気を感じながら、菌食という事でバイオテクノロジーなどの研究で使われている大腸菌を食用にするという話を思い出してしまいます。

 大腸菌は分裂の速度が速く、良質のタンパク質を持っているので、やがて食糧難が訪れたら大腸菌を大量に培養してタンパク源として活用するという研究が行われていましたが、菌食主義の菌食とは「菌によって作り出された物」を積極的に食べるという意味で、菌そのものに食性を限定するものではないという事です。

 菌によって作り出された物となると、身の回りのかなりの食品が該当する事になってきて、菜食主義者のベジタリアンと比べると大した不自由もなく、普通に生活できるのではと思えます。

 身近なところから見ていくと、味噌やしょうゆ、酒といった発酵によって得られる物は、正に菌によって作り出された物であり、パンや製造工程の最初の部分でカカオを発酵させるチョコレートやココアも菌食の範疇に入る事が考えられます。

 そんな菌食の中で、菌食の王道とされているのがキノコの利用でした。キノコは植物でも動物でもない菌界という独自の世界に属しています。何となく植物の仲間のように思えるのですが、私たちが普段、キノコとして接している物は子実体と呼ばれるキノコのライフサイクルの一部にすぎないもので、多くの時間をキノコは菌糸体と呼ばれる目立たない姿で過ごしています。

 キノコ(子実体)の目的は次の世代となる胞子を飛ばすというもので、飛び立った胞子は生育の条件が整うと発芽し、成長して核を一つだけ持った一核菌糸となります。一核菌糸が成長すると性質の異なる別な一核菌糸と結合して二核菌糸と呼ばれる状態になり、キノコになる準備を始めます。

 準備が整った二核菌糸は光や温度といった刺激を受けて、原基と呼ばれるキノコになる元となり、成長を続けてお馴染みのキノコとなります。キノコの胞子には旨味成分、グアニル酸の元となる核酸が含まれているので、キノコには申し訳ないのですが胞子を飛ばしてしまう前の方が美味しくいただけるという事ができます。

 キノコは料理の幅が広く、旨味も加えてくれる食材でもあるので、キノコが美味しくなる季節を迎え、マイコファジストというライフスタイルを試してみてはと思っています。


 



第1321回 味覚地図の嘘     2009年09月04日

 ワイングラスを製造するメーカーが、地域によってワイングラスの売れ行きに差がある事について、ワイングラスの形状がワインを飲む時の顔の傾き加減に影響し、その地域のワインの特徴を充分に楽しめる状態になっているかどうかという理論付けを行っていました。

 舌は部位によって味覚を感じる強度が異なるため、ワイングラスを開いた形状にして飲む際の顔の傾きを小さくして、ゆっくりと舌の先端に触れるようにすれば甘味を強く感じ、グラスの縁を絞って、顔の傾きをや大きめにするようにすると、舌の真ん中あたりにワインが触れる事から苦味を感じるという具合に、ワインが舌に触れる部分をグラスの形状で調整する事によって、ワインの味わいを変えるとしています。

 舌の部位による味覚強度の違いについては、今から100年以上も前、その頃知られていた甘味、辛味、酸味、苦味に対し、舌の感度を測定するというボランティアを使った実験によって、甘味は舌の先端で最も良く感じられるという結論が得られたとする事から始まっています。

 40年後、その際に得られていたデータを元に味覚の感度レベルを図る実験が行われ、相対的に特定の味覚に敏感であるとされる部位が見付けられ、他の実験において感度が低い部位を低感度、もしくは感度がない領域として仮定された事によって、今日私たちが見てきた舌の味を感じる部位という地図が完成されています。

 1970年代の半ばには、味覚を感じる部位について追加実験が行われ、確かに部位によって特定の味覚に対する感度に違いが確認されていますが、その差は非常に小さく、ほぼ無視する事ができるレベルである事が確認されています。

 しかし、そんな追加実験の事はほとんど知らされないため、いまだに私たちは子供の頃に見せられる味覚マップを信じています。最近、こだわった塩が普及した事に合わせて、こだわりの塩を使った飴玉が売られているのを多く見かけます。そうした飴玉を一つ口に含んだ際、舌の先端で飴玉に触れ、甘味と共にこだわりの塩から生じる辛味もしっかりと感じています。

 日々、そんな事を経験をしながら、舌の異なる部位で味を感じているように思ってしまうのは、子供の頃に見た味覚地図のせい以外の何ものでもありません。食育の難しさを感じてしまいます。


 



第1320回 興味二代     2009年09月03日

 師匠は少年時代の事をよく話してくれる人で、料亭での修行時代の事は特にいろいろと詳しく聞かせてくれました。その中で料亭で出される料理の中に、少量なのに非常に高価で美味しそうなカラスミに興味を引かれ、とにかく食べてみたいと思っていろいろと苦労した話を聞かされた事があります。

 量的にわずかしか出されないカラスミをお客さんは喜んで食べてしまいます。そのため、残り物に預かる事はできず、残り物で味見をする事もできません。その事がかえって興味を引き、高価なのに注文するお客さんがいて、いつも喜んで残さず食べてしまう。それはどのような美味しい物なのか、想像だけが膨らんでいったそうです。

 当時、住み込みの見習い料理人に高価な食材を試食させるという機会などなく、ましてわずかな給金ではカラスミを買ってみる事もできません。散々考えた挙句、師匠は同じくらいの年代のカラスミ屋の見習いと仲良くなり、お腹が空きがちの年頃同士、料亭の残り物を分けてやって親しくなっていきました。

 そんなある日、カラスミ屋の見習いは師匠にこっそりカラスミを分けてくれました。人に見付からないように日が暮れるのを待って、裏口の木戸の近くに師匠を待たせ、少しだけ開けた木戸の隙間からカラスミを差し出したそうです。

 受け取ると、それまで憧れ続けたカラスミだけにとにかく嬉しく、懐に抱え込むようにして帰り道を急いだそうですが、途中で我慢できなくなり、食べ方も判らないままカラスミに齧りついてしまいました。

 憧れのカラスミは想像とは大違いで、煙臭く、塩辛いだけの味にがっかりさせられ、それまでの期待感がかえって大きな怒りとなって湧き上がってきてしまい、ちょうど通過していた橋から川へ投げ捨ててしまったそうです。

 師匠に限らずカラスミは高級珍味としての知名度はありますが、意外に食べ方は知られていません。贈答品としてもらいましたが、食べ方が判りませんという意見は多く聞かされます。

 以前、伺ったところでは、カラスミは薄くスライスして焙って食べるのが一番という事なのですが、焙らずそのままでも美味しく食べられると言います。また、同じく薄くスライスした大根と一緒に食べるという例も見かけます。

 これといって明確な食べ方がはっきりしていないカラスミではありますが、最近ではトリュフのように薄くスライスしてパスタの仕上げにという食べ方も一般化してきています。和の食材のイタリアンへの応用となりますが、確かに美味しい食べ方のように思えます。庶民の私としては、修行時代の師匠と同じく縁が薄い食材ではありますが、食文化に興味を持つ身としてはいろいろ試してみたい食材の一つとも言えます。


 



第1319回 茹で基本     2009年09月02日

 卵は非常に料理のレパートリーが広く、毎日違う料理を出しても1年分のメニューが組めるというくらい多彩な料理に化けてくれます。そんな卵を使った料理で一番贅沢なものはと言われると、ゆで卵ではないかと思います。卵は他の食材と合わせられる事で料理の嵩が増え、増量された状態になりますが、茹でただけのゆで卵は卵本来の1個分の量にしかなりません。

 ゆで卵の基本は単純で、鍋に卵と水を入れてゆっくりと加熱していき、卵が固まればでき上がりです。要は卵を一定の温度にして卵のタンパク質を固まらせれば良いので、普通にお湯を沸かす感覚で加熱してしまうのですが、それでは卵の中の膨張を招いて卵が割れてしまう事になります。

 卵を茹でる際に酢や塩をお湯に入れるのは、卵が割れた際、速やかに割れ目の卵を固まらせて卵の茹で崩れを少なくする意味があります。

 そうしてでき上がるゆで卵ですが、殻を剥くという作業があり、それが思いの外うまくいかず、でき上がりが非常に無様なものになってしまう事があります。

 茹で上がった卵を剥けにくくする最大の理由は、卵に含まれる二酸化炭素にあるとされ、二酸化炭素が抜けていない新鮮な卵ほど茹で上がりが剥けにくくなると言われます。茹でる際に熱で膨張した二酸化炭素が卵の中身を殻に押し付け、密着させてしまう事が原因と考えられています。

 内側から生じる圧力が剥きにくさを生み出しているのなら、外側から圧力を加える事で内側からの圧力を相殺してやれば、剥きにくさを生じなくなると考える事ができます。

 卵を圧力鍋で茹でると、熱によって発生した圧力が卵の外側から卵に加わり、卵の殻がメッシュ構造で圧力を中に入れてしまう事から、内側からの圧量を抑えてくれます。それによって卵が殻に押し付けられる力が弱まり、剥きやすいゆで卵のでき上がりとなります。

 圧力鍋まで持ち出さなくてもと思ってしまうのですが、その場合は二酸化炭素が自然に抜けるように、しばらく待ってみるという事になってしまい、卵の鮮度を損なってしまいます。できれば卵は新鮮な方が美味しいので、新鮮な卵を茹でるには基本に立ち返ってみる必要があるのかも知れません。

 卵は丸くてとんがってない方に画鋲などを使って小さな穴を開けます。この穴によって卵の内部の二酸化炭素を抜き、茹でている間にわずかに入り込む水分が卵と殻の間に膜を作る形で卵の殻離れを良くしてくれます。

 穴を開けた卵を鍋に入れ、浸るくらいの水を入れて火にかけ、塩を少し入れて沸騰するのを待ちます。沸騰し始めたら火を弱め、半熟なら5分ほど、固ゆでなら10分ほど弱めた火で茹でていきます。

 茹で上がったら一気に冷やし、冷えて殻の中の卵が収縮する際、水分を取り込んで殻離れを良くするために卵の全体にひびを入れます。卵が冷えたら殻全体にひびを入れ、少しずつ殻を剥いていきます。他にも卵を上手に茹で上げる方法は幾つかありますが、基本をマスターして卵の性質を理解すると応用が利くようになるのかもしれません。


 

 



第1318回 糊化の扱い     2009年09月01日

 自他共に認めるジャガイモ好きで、ジャガイモが使われた料理であまり好きになれない物というのに出会った事がありません。現物に出会わないまでも、さまざまなレシピを見てもこれは遠慮しておいた方がと思える物さえありません。唯一、存在を知りながら味を想像できない物としては、ジャガイモから作られる北欧のお酒、アクアヴィットくらいのものです。

 そんな大好きなジャガイモ料理の中で、最も好きだと思えるのがジャガイモ料理の中ではかなりシンプルな物といえるフライドポテトです。

 フライドポテトというと、「ご一緒にポテトはいかがですか」の一言でお馴染みのように、ファーストフードのサイドメニューの代表格でもあり、家でジャガイモを揚げて作るというよりも店で買うという方が多いのではないかと思ってしまいます。

 フライドポテトを家で揚げない理由と言われると、手間がかかる割には主食にはならず、主菜にもなれません。付け合せかおやつの類として捉えられてしまうというのもあるのですが、店で買ってきた物との質感の差が大きいという事もあるのではと思えます。

 店で買った物は表面がカリっと揚がり、中はホクホクに仕上がっていますが、家で揚げた物は中はホクホクに仕上がっても表面はしんなりとしています。同じジャガイモを切って揚げるだけという単純な料理なのに、どうしてこれほどの差が出てしまうのだろうと考えてしまいます。

 フライドポテトの基本は2度揚げにあると言われます。最初、150度以下の低温でゆっくりと揚げて、ジャガイモに含まれる水分を温めます。ジャガイモの表面から泡がたくさん出てきて、水分の蒸発が確認できたら、一度ジャガイモを取り上げて油分を切ります。

 その間に油の温度を上げ、180度の温度で2度目の揚げを行い、表面に移動してきていた水分を飛ばしてカリっとした表面と、キツネ色の美味しそうな色合いに仕上げます。基本は解っていても、でき上がってみるとしんなりとなっているというのが実際ではないでしょうか。

 フライドポテトの表面がしんなりしてしまう理由のほとんどは、ジャガイモの内側から出てきた水分が原因となっています。その水分を2度揚げで蒸発させて、しんなりとならないようにするのですが、水分は後々も出てくるので、2度揚げ程度では防ぎきれないものがあります。

 ジャガイモの中に水分を留める物としてデンプンの存在が上げられます。デンプンは熱を加えられる事で糊化と呼ばれる粘りを持った状態になり、水分をしっかりと保持してもちもちした食感の素ともなっています。ジャガイモが冷めていくと糊化したデンプンが元の状態に戻っていく事から、それまで保持していた水分が放出されてしまいます。

 フライドポテトを上手に揚げるコツとして、このデンプンの扱いにポイントがあります。揚げる前にジャガイモを水にさらし、しっかりとデンプンを洗い流しておく事で糊化するデンプンを少なくし、水分を保持させないようにしてカラっと揚がった状態にする事ができます。しかし、デンプンがなくなると糖化して甘味を出すというデンプン本来の役割も発揮されなくなるので、味気ないフライドポテトになってしまいます。

 揚げる時の熱でデンプンを糊化させるのではなく、事前に糊化させた状態を揚げるようにする事で、揚げ上がりを良くするという考え方もあります。ジャガイモを事前に蒸しておき、それを切り分けて揚げる事でしんなりしないフライドポテトができ上がると言います。

 より業務用に近い物にしたい場合は、蒸したジャガイモを潰してマッシュポテトの状態にし、適当な厚さに延ばして切り分けて細長い形状にして揚げる事で、ファーストフード店のサイドメニュー風に仕上がります。

 ゆっくり加熱して糊化させて揚げるという考え方の応用としては、冷凍のフライドポテトを揚げる際、天ぷら鍋に油を入れ、フライドポテトを入れてから火をつけるというやり方があります。油の温度が上がっていき、ポテトがキツネ色になって浮かび上がってきたらでき上がりなのですが、油の温度を上げてからポテトを入れるよりもカラっとした揚げ上がりになります。

 ジャガイモを油で揚げるだけというシンプルなフライドポテトですが、シンプルなだけにちょっとした事が結果に大きく反映されてしまいます。奥の深さが興味深くも思えますが、かつて飲食店の手伝いをして一ヶ月で5kg痩せた後、業務用のフライドポテトの大袋をもらった事が嬉しくて、毎日食べていたら2週間で元の体重に戻ったという経験があります。カロリーが高い食べ物でもあるので、程ほどにしておかなければと思ってしまいます。


 



 

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