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第1357回 和洋辛子事情     2009年10月30日

 オリエンタルマスタードと言われると、どことなくエキゾチックな響きに聞こえ、新たな香辛料の登場かと思ってしまうのですが、日頃からよく馴染んでいる和辛子の事を指します。

 和辛子、洋辛子は日常的な食材として接していて、普通に辛子と言った場合は和辛子の事を指し、マスタードと言えば洋辛子の事を指していて、和、洋の両辛子とも質感や色合いが似ていますが、味的には明確な違いがあり、多くの場合、片方の代用として使えないように思えます。

 和辛子はアブラナ科のカラシナの種子をすりつぶして作られます。最近はチューブ入りの物が主流となっていますが、かつては粉の状態で流通する事が多く、粉を杯などに入れてぬるま湯で溶き、逆さまに伏せておくという利用法を子供の頃、見ていた記憶があります。和辛子には独特のえぐみを伴うアクがあり、逆さまにして伏せておくうちにそのアクが抜けていって、和辛子本来の美味しさが発揮されると言います。

 洋辛子はシロカラシもしくはクロカラシの種子をすりつぶして水や酢、小麦粉などと混ぜて作られた物で、和辛子とは異なる酸味は製造工程で加えられる酢によるものとなっています。また、製造の途中で熱が加えられる事から、和辛子と比べると大幅に辛味が少なく、そうした製造方法の基盤はローマ人によって考案されたとも言われます。

 一時に多量に使う食材ではありませんが、アナトール・フランスの「愛のない物語は、辛子のない牛肉のようなもの」という言葉が示しているように、風味を加える欠かせない香辛料ではないかと思え、我が家でも意外な量を消費していたりもします。


 



第1356回 ファースト丼     2009年10月29日

 丼物・・・明らかな和食ですが、どことなく正式な和食のスタイルではなく、ファーストフード的な雰囲気を感じてしまいます。すでに日常生活に馴染んでいる食であり、作り方も結構手間がかかる事を考えると、到底ファーストフードとは言えないのですが、どこからそのような感じがしてしまうのかと少々考えてしまうのもがあります。

 丼物の歴史は和食の中ではそれほど古いものではなく、19世紀の初め、江戸時代に始まったとされます。1885年に宮川政運によって著された「俗事百工起源」によると、江戸の堺町に住む大久保今助が鰻丼を考案し、芝居町で大人気となった事から、葺屋町にある大野屋において「元祖鰻めし」として売り出したとされています。

 鰻めしは「鰻丼飯」の略とも言われ、その後、江戸では深川丼が登場しますが、明治に入るまでは丼といえば鰻丼を指していたほど丼物の代表格となっていました。

 その後、牛肉が一般的に食されるようになると、大衆向けに牛肉の安価な切り落とし肉などをタマネギと甘辛く煮込んだ牛めしが考案され、牛めしを丼のご飯にかけたすき焼き丼が登場して今日の牛丼のルーツとなっています。

 さらにすき焼き丼は卵でとじられ、開化丼と呼ばれるバリエーションを生んでいます。開化丼は文明開化の象徴的食材であった牛肉を使っている事からそう呼ばれていますが、今日の他人丼の事であり、後に牛肉が鶏肉に変更される事で親子丼の誕生に繋がっています。

 丼物というと和食の典型のような感じもしますが、アジア諸国では主食であるご飯とおかずを別々に配膳しながら、食べる段階で茶碗のご飯におかずをかけるという食べ方は多く見られ、丼物という食べ方が日本特有というよりも、ご飯とおかずとは別メニューとして丼物がある事が独自の食文化と言えると思います。

 和食の作法によるとご飯とおかずは交互に食べる事が推奨されている事から、丼物では上に乗せられた具材と下のご飯を交互に食べる事が正しい作法のように考えられます。

 具材にかけられたたれの味が下のご飯に染み込んでいる事も丼物の美味しさの一つとなっていますが、本来であれば別々に配膳されるはずのご飯とおかずが同時期に食べられるという簡便さも丼物の魅力であり、その手早さがファーストフード的な雰囲気を醸し出しているのかもしれません。


 



際1355回 焦げ対処     2009年10月28日

 最近はフッ素樹脂加工された調理器具が増え、昔のように焦げ付くという事を心配する必要がなくなったように思えます。フッ素樹脂は反応性や表面の摩擦係数が極めて低い事から、焦げ付きがほとんど起こらない調理器具として広く普及しています。

 食品の酸性やアルカリ性といった性質や調味料による侵食に強く、摩擦係数の小ささから表面への焦げ付くが生じないフッ素樹脂加工の調理器具は、加熱の火加減や食材を入れたままにするといった誤った使い方をしなければ、長期にわたって安定して焦げ付きを防ぐ事ができます。

 かつての鉄やアルミ製の調理器具を思うと、ずいぶんと便利になったものだと思えると同時に当時の不便さが無かった事のようにも思えてしまいます。

 鉄製のフライパンが主流だった頃、フライパンは調理を終えた後、熱いうちに汚れを水で洗い流し、洗剤は使わないというのが常識化していました。そうする事で表面に油膜を形成し、焦げ付きにくい状態にする事が生活の工夫でもありました。

 フッ素樹脂加工の場合、熱いうちに水を使って洗浄すると急激に温度変化が生じる事から金属部分の収縮が起こり、フッ素樹脂による表面処理の剥離に繋がってしまい、フッ素樹脂加工の寿命を短めてしまいます。

 そうして表面に傷みが生じてしまったフッ素樹脂加工の調理器具では、調理の際に焦げ付きが生じてしまう事となるのですが、焦げ付きへの対処という点でフッ素樹脂加工と鉄製では大きく違ったものがあります。

 焦げ付かせてしまった場合、基本はフッ素樹脂加工も鉄製も同じで、焦げ付いた調理器具から食材を取り出し、熱湯を注いで火にかける事で焦げ付きがはがれやすくなります。その後、10分ほどことこと弱火で煮て、お湯を捨てるだけでかなりの焦げ付きを落とす事ができます。

 それでも残される頑固な焦げ付きの場合、鉄製であれば研磨作用のあるタワシなどが使えるのですが、フッ素樹脂加工では表面に傷を付けてしまう事になってしまいます。そこで重宝するのが重曹で、たっぷりと水を入れて重曹を加え、弱火でことこと10分ほど煮ます。

 重曹は熱を加えられる事で二酸化炭素を発生させるので、底からの気泡がたくさん発生する事となり、その気泡によって焦げ付きが剥がされていきます。重曹の結晶質を使って研磨するという乱暴な意見もありますが、頑丈になったとはいえフッ素樹脂加工はデリケートな物です。大切なのは焦げ付かせない事ですが、焦げ付かせてしまったら慌てず、放置せず、優しく対処する事が重要なようです。


 



第1354回 現象?     2009年10月27日

 ラムスデン現象・・・耳慣れないどこか難しげな響きの言葉で、化学や物理学の範疇の事のように感じられます。しかし、実際は意外にも身近な現象の事で、誰でも経験している現象だと言う事ができます。

 ラムスデン現象とは牛乳を温めると表面に膜を張る現象の事で、その名の通りラムスデン博士によって詳細なメカニズムが解明された事からそう呼ばれる事となっています。

 牛乳に40度以上の熱が加えられると、豊富に含まれたタンパク質が熱によって変質を始め、表面では水分の蒸散が起こって成分の濃縮が行われます。表面でタンパク質が濃縮されながら、回りにある脂肪分と糖質を取り込みながら固まる事で膜が形成されていきます。ラムスデン現象による膜は、一旦、取り除かれてもまた形成され、徐々に回数を重ねるごとにタンパク質の比率が多くなり、膜ができにくくなっていきます。

 ラムスデン現象は牛乳に限らず、タンパク質をはじめとした栄養素を豊富に含む液体で見る事ができます。代表的なところでは豆乳を加熱する事でラムスデン現象を起こし、表面にできた膜を集めた「湯葉」を上げる事ができます。

 湯葉は豆乳の栄養素を凝縮したヘルシーな食品として食品として知られていますが、牛乳にできるラムスデン現象の膜も牛乳の栄養を凝縮していて、牛乳よりも栄養的には優れています。舌触りが悪いという事で、ほとんどの場合取り除かれてしまいますが、古い乳製品である「蘇」が牛乳を温めて得られた膜を集めて作られていた事を考えると、ラムスデン博士に敬意を表しながら謹んでいただく事が良いように思えてきます。


 



第1353回 禁煙ワクチン     2009年10月26日

 最近、よく聞く話題と言えば、ワクチンの摂取に関する事もその一つに入るのではと思います。本格的なインフルエンザシーズンを前に、ワクチンを接種して少しでも備えをしておきたいという話は多くの場面で聞かされます。

 ワクチンは感染症の予防に用いられる医薬品で、毒性を弱めたり、無くしたりした病原体から作られ、事前に病原体を体内に注入する事で体内に抗体を作り、以後の感染に備えるというものです。

 その意味から少々異色のワクチンと思えるのですが、新たなユニークなワクチンの研究が進められています。先日、米国立薬物乱用研究所がそのワクチンの研究を行っている企業に対し、約9億円に上る助成金を提供した事から、ワクチンの開発に弾みが付くのではと期待されています。

 そのワクチンとは禁煙を補助するためのもので、摂取する事で二度と喫煙を行わないように設計されている抗ニコチンワクチンと呼ばれています。すでに一部の実験では良好な結果が得られているという事で、研究の最終段階は近いとも言われています。

 ワクチンの働きは免疫系がニコチンを察知するようにして、ニコチンによって免疫系が活動を開始する事で効果を発揮するようにしてあり、抗体がニコチンの分子に結合する事で、ニコチンが脳内へ入り込まないようにし、ニコチンの働きを無効化するように設計されています。

 これまでの研究で体内にうまく抗体を形成できた喫煙者は、その後、永久に禁煙できる確率が高い事が示唆され、副作用に関する報告はほとんどないとされています。

 研究の完成、薬品としての認可、保険の適応など、道のりの険しさは考えられますが、健康に繋がる事は明らかなものであり、今後を期待したいと思います。実現すればタバコの予防接種と呼ばれるのかと少々面白くも感じられ、ニコチンを絶って喫煙を無意味にしてしまうワクチンではありますが、習慣化している行為への抑制がどうなのか、その部分への興味も出てきてしまいます。


 



第1352回 疱疹注意     2009年10月23日

 子供の頃、よく見られる病気に「水痘」があります。水痘はウィルスによる感染症で、発症してから回復するとその後、一生感染する事はないと言われます。しかし、水痘の症状から回復したからといって感染したウィルスが死滅した訳ではなく、ウィルスはその後も長い間、神経節に潜り込んで息を潜めています。

 病気やストレス、過労などで抵抗力が下がってしまった際、それまで潜んでいたウィルスが急に活動を再開し、神経節に沿うかたちで疱疹を生じる事があります。それが帯状疱疹で、子供の頃に水痘に罹った人の2割程度が経験すると考えられています。

 帯状疱疹はウィルスによって神経が破壊される事が原因の痛みを伴い、発症時の痛みがひどいほど帯状疱疹後神経痛を発症しやすいと言われます。激しい痛みを伴いますが、あまり死とは関連付けられて考えられる疾病ではないと思われます。

 しかし、帯状疱疹に罹患した成人は脳卒中のリスクが高い傾向が見られ、特に目の周りに発症した場合は注意が必要であるという気になる報告が行われていました。

 これまで一部の研究では帯状疱疹と脳卒中のリスクに関連性がある事が示唆されてきてはいましたが、大規模な集団を対象とした研究は行われていませんでした。

 約8000人もの帯状疱疹治療患者のデータを分析したところ、帯状疱疹の治療を行ったグループでは、帯状疱疹に罹患していないグループと比べると、脳卒中になるリスクが31%も高く、目やその周辺に帯状疱疹が生じた場合は劇的にリスクが高まる事が判ってきています。

 今のところ帯状疱疹による脳卒中リスクの上昇に関するメカニズムや、リスクを回避する方法については解明されていませんが、関連するものである事を立証し、早期に対策を打つ手立てになればと考えられます。水痘を経験し、抵抗力が下がりがちの人には、特に注意が必要な報告かもしれません。


 



第1351回 老化という病に     2009年10月22日

 老化は病という考え方があります。生き物が進化の過程を通して、さまざまな病を克服してきた事に対し、老化という病がそのまま残されているのは、老化によって被るデメリットが、老化によって得られるメリットよりも小さいからと考えられています。

 老化によって得られるメリットといっても、ほとんど思い浮かぶものはなく、そうした実情がアンチエイジングという要求に繋がっていく事と思います。

 アンチエイジングと一言で言っても、取り組み方にはたくさんの方法があります。老化によって失われるものを補う事から、老化に繋がる可能性のあるものを排除する、もっと積極的に老化を防止するという考え方までさまざまなものがあります。

 これまでアンチエイジングの関しては、補う、可能性を排除するという方法が主流だったように思えます。コラーゲンやヒアルロン酸を摂取したり、活性酸素を除去する働きのある抗酸化作用成分を摂取したりというのはその典型と言えます。

 これまで積極的に老化を防止するという事については、摂取カロリーを抑える事で寿命が延長する事が一部の動物において観察されてきていました。詳細なメカニズムに関しては不明な部分を残したままとなっていますが、摂取カロリーを抑える薬剤を用いる事によって、実際にカロリー制限を行ったのと同じ効果が得られる可能性が示唆されてきています。

 まだ一部の動物での研究しか行われていませんが、寿命が延長された動物では老化の度合いも低い事が観察されているので、将来的には人への応用も可能と考えられています。

 実現すれば、有効に食事制限を行った状態を作り出し、ダイエットとアンチエイジング、長生きを同時に実現する薬剤の登場となります。生き物があえて克服してこなかった老化という病を克服する事によって起こる事、そちらの方にも大いに興味が湧いてしまいます。


 



第1350回 眠りの粉     2009年10月21日

 キッチンの調味料が並んだ片隅に小さな容器に入った白い粉末があります。粉の正体はグリシンで、砂糖に似た甘さを持つ真っ白な粉体です。

 グリシンはアミノ酸の一種で、アミノ酸の中では最も単純な構造を持ってます。タンパク質にはそれほど多く含まれてはいませんが、ゼラチンなどの動物性タンパク質のコラーゲンの中に多く含まれています。

 甘さとしては似ているとはいえ砂糖の70%程度の甘さしかなく、ほんのりとしたくせのようなものを感じる事ができます。あまりはっきりと甘さ以外の味については感じる事はありませんが、どことなく魚介系の甘味に通じるものがあります。

 そのせいかグリシンは魚介系の加工品に食品添加物として使われている例をよく見かけます。グリシンは食品添加物として認可され、特有の甘味を活かした調味料として使用されています。

 また、食品添加物としてグリシンを利用するもう一つのメリットとして、食品の日持ちを向上させるというものがあります。グリシンには細菌の増殖を抑える働きがあり、食品が腐敗してしまうのを遅くし、安全に食べられる期間を延長する事が可能なため、甘味調味料として使う事で保存性も向上させる事ができます。

 加工食品の多くは加熱する事で殺菌を行いますが、バチルス等の細菌には耐熱性を備えたものが存在し、グリシンは細胞壁の合成を阻害する事でバチルスの増殖を阻害する事を得意としています。

 グリシンによってバチルスの増殖が弱められると、その分、他の細菌が活性化してくる事があります。そのため、グリシンは他の日持ち向上剤と併用される事が多く、リゾチウムやグリセリン脂肪酸エステルなどと使われ、相乗効果を発揮しています。中でも酢酸ナトリウムとの併用が最も効果的とされ、甘酸っぱい味を出しながら日持ちも向上させるという一挙両得とも言える働きをしています。

 そんなグリシンにはもう一つの効能が知られ、その働きがグリシンが我が家にある理由となっています。この数年、グリシンの働きとして特に注目されてきているのは、眠りの質を向上させるというもので、サプリメントの素材としても利用されてきています。

 睡眠薬と違い睡眠に入る事を助けるというよりも、眠った後の質を向上させるというもので。睡眠薬のような依存性がない事も安心して使う事ができます。食品メーカーから分けてもらった物ですが、サプリメントとして購入する事を考えると、ずいぶんと安価に手に入れられた事になります。さまざまな働きを持つグリシンですが、使用目的によって価格差が大きくなっている事には不思議なものを感じてしまいます。


 



第1349回 粒と辛味     2009年10月20日

 大好きな食べ物に「粒マスタード」があり、そのまま使うだけでなくちょっと手を加えてソースやドレッシングにしています。少々和風の味付けにしてご飯と一緒にという事もあるのですが、さすがにそれは回りから奇異な目で見られてしまいます。

 粒マスタードは、マスタードと呼ばれながらそれほどの辛味を感じません。粗挽きマスタードとも呼ばれるように、粗く挽いて粒が残っている事に理由があるように思えるのですが、粒の部分だけを噛んでみたところでほとんど辛味が生じる事はありません。

 マスタードの辛味の素はアリルイソチオシアネートと呼ばれる揮発性のある精油成分で、シニグリンという物質から変化して生成されます。シニグリンが含まれている細胞がすり潰されるなどして、シニグリンが酸素に触れると、酵素ミロシナーゼの働きによってアリルイソチオシアネートへと変化して強力な辛味が発生ます。

 粒マスタードは粒がそのまま残されているので、シニグリンが酸素に触れないので変化しておらず、加工の過程でミロシナーゼも活性を失ってしまう事から辛味を発生させる事がなくなっています。それが粒マスタードが辛味を発生させない理由となっています。

 シニグリンは多くの虫にとって毒性を発揮します。しかし、モンシロチョウの幼虫のアオムシだけはこの毒性を克服していてシニグリンを好んで食べ、逆にシニグリンが含まれていないアブラナ科の植物以外の葉を食べようとしません。

 植物としてもそのまま食べられている訳にはいかないので、食べられて葉に傷が生じるとシニグリンが酸素に触れてアリルイソチオシアネートに変化し、アオムシの天敵である寄生バチを呼び寄せるという仕組を備えています。

 この仕組がマスタードと粒マスタードの辛味を分けていると言え、植物の工夫をうまく利用しているようにも思えます。シニグリンとアリルイソチオシアネートの関係はマスタードに限らず、ワサビや大根でも見られます。素材としては甘味を感じる大根が、おろす事で豹変したように辛味を発揮するのもマスタードと同じという事には興味深いものを感じてしまいます。


 



第1348回 続々醤の油     2009年10月19日

 子供の頃、醤油を残すと出世をしないと昔から言うのだ教えられた事があります。今から思うと手持ちの料理がどのくらいで、自分があとどのくらい食べる事ができるのか、そしてそれを食べてしまうために必要となる醤油の量はどのくらいなのか、それを的確に判断できないようでは大成しないという意味だと思えます。

 また、昔は醤油は高価であった事から、皿に少量を注いで残したとしても、それが積み重なると意外なほどの金額を無駄にしてしまっているという考え方もできます。

 かつては醤油は非常に高価な物で、一般的な庶民が日常的に使用する事は難しい物でもありました。それが身近になった背景には、醤油が関東に伝えたられ、江戸の人口の増加に合わせたように大量生産が可能な濃い口醤油が発明された事によります。

 それまでたまり醤油が主流で、醸造に時間がかかっていただったものが、1年で出荷が可能になり、江戸の庶民の好みに合った濃い口醤油は瞬く間に広まっていきます。多数の醸造所が創業を始め、醤油の価格も安定してくるのですが、それでも今日のような安価な値段ではありません。

 今日、醤油は高低の価格差が大きく、非常に高価なこだわりの製品もあれば、極めて安価な製品も存在しています。その中にあって惣菜などのパックに付いてくる一回分ずつ個包装された醤油は、最も安価な物ではないかと思います。

 本来ならば醸造された醤油を手間を掛けて個包装するので、通常の醤油よりも割高になるはずですが、中には醤油の値段とは思えない物も含まれています。そうした安値の秘密は作り方にあり、醸造して作る醤油と同じ脱脂大豆を使ってはいますが、発酵ではない方法によって作り出されています。

 大豆に塩酸を加えて含まれているタンパク質を加水分解すると、旨味の素となるアミノ酸が得られます。そのままでは酸が強過ぎるので、アルカリ性の水酸化ナトリウムを加えると、塩酸を水酸化ナトリウムが中和して水と塩に変わり、旨味の素のアミノ酸を豊富に含んだ塩水ができあがります。

 その旨味塩水にカラメル色素を加えて黒っぽい色を付け、増粘多糖類で食材に絡みやすくするためのとろみを加え、甘草エキスやステビア、アスパルテームやサッカリンなどで甘味を付けてグルタミン酸などのアミノ酸系調味料で味を調えると醤油のような物のできあがりです。

 醤油というより正確には醤油風調味料と言うべきですが、個包装が小さいという事もあって詳細な成分表示を免れ、見分けにくい物となっています。このような醤油であれば残しても出世に差し支えないのでは、ふとそんな事を思ってしまいます。


 



第1347回 続醤の油     2009年10月16日

 先日、醤油と油分に関する話題に触れました。20%近くの油分を含む大豆という素材を中心に使いながら、何故醤油には油分が含まれないのか。考えてみると不思議な部分でもあります。

 理由は実は簡単で、製造過程において取り除いているからというもので、かつては醸造中に醤油の表面に浮いてくる油分は変質が進んでいるために油分としては使えないという事で捨てられていました。

 現在では昔ながらの丸大豆を使った醸造方法の場合、油分を取り除く必要が生じますが、多くの醤油が事前に油分を取り除いた脱脂大豆を使用しているので、醸造途中での油分の除去という作業は必要なくなっています。

 大豆というと、豆腐や豆乳、味噌や醤油、若いうちに食べる枝豆などの食品が思い浮かび、食用として多くが使われている印象がありますが、輸入や生産された量の多くは油脂原料として使われています。

 大豆から油脂を得る場合、単純に圧搾しただけではあまり油脂の回収が良くない事から、溶媒として有機溶剤のヘキサンなどを使って溶出が行われています。溶出が行われた後の大豆には油分が1%程度しか残されていないので、油分が邪魔者の醤油造りには適した素材となっています。

 溶出を行った後、溶媒を除去するために大豆に熱が加えられますが、熱によって大豆のタンパク質が変質してしまう事から、低温で処理された脱脂大豆しか醤油造りに使う事はできません。

 油脂が取り除かれた後の脱脂大豆ですが、原料として安価、醸造途中での油分の取り除き作業が必要ないというだけでなく、発酵期間が短く、旨味を強く出せるというメリットがあり、醤油の大量生産には欠かせない物となっています。

 しかし、大豆が本来持っていた油脂を除いてしまった事で、油脂の脂肪酸エステルから変化するグリセリンが含まれなくなり、醤油の微妙な甘味が表現できなくなってしまっているとも言われます。醤油を身近な物にしてくれている脱脂大豆ですが、その点では昔ながらの丸大豆には敵わないのかもしれません。


 



第1346回 一杯一食?     2009年10月15日

 海外では安いコーヒーを出す店として知られたチェーン店が、何故か日本では高級感を持って展開されている事に当初は違和感を感じていたのですが、いつの間にか街の風景となっている事には時の流れを感じてしまいます。

 看板メニューのエスプレッソは大好きなコーヒーメニューではあるのですが、とある理由で利用する事は皆無となっています。これからも利用する事はないとは思うのですが、さまざまな新手のメニューが発表される事は興味深く見ています。

 コーヒーは含まれているポリフェノールの一種であるクロロゲン酸やカフェインの働きによってダイエット効果があるとされます。肝臓に蓄えられたグリコーゲンの分解を促す事から、運動をする少し前に飲んでおく事で通常よりも多くのカロリーを使うようになるとも言われ、利尿作用との相乗効果もあって体重減少に役立つと考える事ができます。

 コーヒー自体は非常に低カロリーな飲料ですが、コーヒーに付属するミルクと砂糖の存在がコーヒーのカロリーを飛躍的に高めてしまいます。

 コーヒーに添えられるミルクにはコーヒーにコクを持たせ、渋みを抑えるという意味があり、砂糖はコーヒーの過度の苦味を緩和して本来の味わいを楽しむ事を助けるというものがあり、一部のコーヒーファンにはコーヒーを楽しむには不可欠な存在のように言われる事もあります。

 そんなミルクと砂糖、どちらかと言えばコーヒーのいカロリーを高めているのはミルクよりも砂糖の方で、砂糖を使わずにミルクを少なめにするか低脂肪乳などにする事でカロリーを10Kcal以内に抑える事も可能となっています。

 コーヒーチェーン店で新たに発表される魅力的なメニューには、砂糖やミルクに留まらずホイップクリームやフレーバーを使った物も少なくはなく、それらは驚異的にコーヒーのカロリーを高めてしまう事があります。

 コーヒーにミルクと砂糖を入れた場合、平均的にカロリーは65Kcal程度に収まりますが、さまざまな素材が混ぜられたコーヒーは平均して240Kcal近くになると言われ、一般的な炭酸飲料の90Kcalを大幅に上回る数値となっています。

 特に大きいサイズの物では750Kcalを超える物があり、最大のサイズを選んだ場合、860Kcalにも達してしまう事から、ほぼ一食に値する数値となってしまう事になります。

 ちょっとした息抜きには良いアイテムという見方もできないでもないのですが、その一杯が一食に相当してしまうという事には注意が必要なのかもしれません。


 



第1345回 蒸しの強弱     2009年10月14日

 最近、ヘルシーな料理として「蒸し料理」が人気と聞かされます。根菜をはじめとした野菜類を蒸し器で蒸し上げただけのメニューを専門とする料理店のニュースも聞かれ、家庭でも失敗が少ない蒸し料理は手軽に取り組めるものと言えます。

 基本的に蒸し料理は、お湯を沸かして蒸気を発生させる鍋の部分と、食材を入れておき、蒸気に触れさせる事で熱を加える蒸し器の部分によって構成される調理器具を使って料理されます。

 蒸し料理の特徴として鍋の部分の水分をうっかり切らしてしまうという事でもない限り、大きな失敗をするという事がありません。基本的には沸騰したお湯の蒸気を使って加熱が行われるため、熱の供給が穏やかで、水分も一緒に加えられる事から食材を柔らかく調理する事ができます。

 また、肉や魚は焼いたりすると身が縮んで固くなってしまいますが、蒸すと縮まず柔らかく仕上げる事ができ、身もほとんど崩れないので見た目にもきれいに料理が出来上がります。

 そんな蒸すという調理法ですが、欠点があるとすれば臭みやアクが抜けにくいという事だと言えます。茹でたり煮たりすると水に臭みやアクが溶け出しますが、蒸すという調理法では接する水分に限りがあるので、溶け出すというには無理があります。

 接する水分量の問題であれば、水分量をより多くする事で対処する事ができます。野菜を蒸したり茶碗蒸しを作る際は、ゆっくりと弱く蒸す事がポイントとなりますが、肉や魚を蒸す際は強く蒸して蒸気の量を増やす事が重要となります。

 高い温度で蒸す事で食材である肉や魚が高温になり、最終的に表面に残される水分が少なくなって水っぽさがなくなります。コツとしては、蒸し器の温度が充分に上がって蒸気が勢い良く立ち上るまで待つ事で、たくさんの蒸気によってできてしまう水滴が食材にかからないように布巾などで水分のコントロールを行うと、意外なほど簡単で上手に仕上げる事ができます。手軽な割には豪華に見える調理法なので、日頃から慣れておくと良いのかもしれません。


 



第1344回 醤の油     2009年10月13日

 無人島に行くとして、何か調味料を一つだけ持って行けるとしたらと聞かれれば、迷わずマヨネーズと答えると思うのですが、汎用性や使い勝手の良さを考えると醤油を持って行った方が良いのではとも考えてしまいます。

 醤油は和食には欠かす事のできない調味料ですが、世界各地に同様の調味料を見る事ができます。旨味の素となるアミノ酸を豊富に含んだ発酵調味料が「醤」と呼ばれる事から、醤油の仲間が多い事は納得できます。

 醤油という言葉には「油」という文字が含まれるので油性の製品、ラー油などの仲間のような印象を持たないとも言えないものありますが、醤油には油分が含まれない事から少々違和感を感じてしまいます。大豆から得られる油分、大豆油、白絞油は最も一般的な食用油脂として広く使われ、大豆自体には品種や栽培によって差が生じますが13〜25%程度の油分が含まれています。

 油分を多く含んでいる大豆ですが、大豆を使って作られた豆腐や味噌、豆乳などは油分を意識する事がほとんどありません。醤油も同じく油分とは無縁の製品という事は、醤油を皿に注いだだけで判ります。

 醤油の語源については諸説があるのですが、醤からしみ出した油という定義があり、醤については今から3000年も前の中国の書物、「周礼」に記載されています。日本でも「大宝律令」には大豆を麹にして仕込むという定義付けがあり、醤を用いる文化が形成されていた事が伺えます。

 そんな醤に油を加えた醤油については、油ではなく湯から転じたという説や水からきたという説もあり、醤油という言葉の日常性を含めて興味深いものがあります。

 現代の味噌汁に通ずるものがあるのですが、昔、味噌を煮立てて汁を分離した物を「醤湯」と呼んだ例があり、その湯が水とは違う物という事から油に転じたという考え方があります。

 また油という文字は水を意味するさんずいへんに「由」が当てられ、水によって得られる物を指すという意味があり、醤に水を混ぜて得られる物として醤油という文字が成立したとも言われます。

 現代のドレッシング風ではありますが、醤とゴマ油を混ぜて使うという例があった事から、使う際に油を含ませた事の名残が今日の名前に繋がったという説もあり、少し説得力に欠ける感じがしながらも興味深く思えてしまいます。

 古い書物に油に関する説明を「緩やかに流れる物」とするものがあり、それによると油とは油脂だけを指すのではなく、とろみのある液体全体を指していた事が伺えます。素材を発酵させる頃で得られるとろみのある液体。今日では抽出、ろ過といった技術が進んでほとんどとろみを感じない醤油ですが、意外と製品そのものを表現した名前であった事に面白さを感じてしまいます。


 



第1343回 乾湿加熱     2009年10月09日

 料理は毎日の事なので、慣れという部分が大きく関わってくるのですが、その中でも失敗が少ない調理方法として煮る、茹でるといった調理方法が上がられます。煮る、茹でるは炊く、蒸すと同じ分類の調理法に入れられ、水分を与えながら加熱する事から「湿熱調理」と呼ばれる事もあります。

 湿熱調理に失敗が少ないのは、水分を与えながら加熱するため与えられる熱に制約があり、水の沸点である100度以上の温度を与える事ができないという点が上げられます。水分に何らかの成分が溶け込んでいる事から、厳密には水の沸点は100度を超える事になりますが、基本的に鍋の中の温度は100度をそれほど大きくは超えないものとなっています。

 水分と熱が一緒に加えられていく湿熱調理に対し、水分を奪いながら熱を加える、100度を超える熱を加える事で水分を蒸発させ、水分を奪っていく調理法を「乾熱調理」と呼びます。焼く、炒める、揚げるといった調理法が乾熱調理にあたります。

 乾熱調理は水の沸点に温度の制約を受ける湿熱調理と比べると、水の沸点を超える事を前提としている事からかなりの高温になるため、食材を焦がしてしまうという失敗のリスクが常に付きまとう調理法とも言えます。

 一般的にはサラダ油を熱する事からはじまるので、サラダ油の上限温度が乾熱調理が食材に加える温度の上限という考え方をする事ができます。サラダ油はさまざまな脂肪酸の混合体なので、一概には温度の上限を言う事はできませんが、大豆油や菜種油の発火点が300度付近である事を思うと、湿熱調理の3倍近い温度で調理する事が可能という考え方もできます。

 調理方法で最も高い温度を使う料理は、オーブンで焼き上げる際の400度という温度設定が存在しますが、日常的な調理の中では、てんぷらで使われる180度という温度を使っての調理となります。ある意味、この180度が日常的調理法の最高温度で、これ以上は必要ないとも言えるのですが、フッ素樹脂のフライパンが傷んでいく事を考えると、280度くらいには温度を高めてしまっている事が予想されます。

 温度管理が難しい乾熱調理ですが、水分を抜く事で味わいを濃厚にしてくれたり、表面を香ばしく仕上げてくれるという利点があり、リスクに見合うだけの成果をもたらしてくれる調理法とも言えます。火を制するというのは人類のテーマでもあるのですが、料理においてもそれは言える事ののかなと考えてしまっています。


 



第1342回 判定に異議有り!     2009年10月08日

 レタスとほうれん草というと、個人的に好きな食べ物のかなり上位に位置しています。レタスは生か炒め物が美味しく、ほうれん草は茹でたり蒸したりというのが気に入っています。そんなレタスとほうれん草がハイリスク食品という評価がされていて、食べる機会が多かった身としては結構ショックを受けてしまうものがあります。

 レタスやほうれん草といった葉物野菜は、葉を可食部とした品種改良が施されている事もあり、虫に狙われやすいという一面を持っています。虫に齧られてしまった跡がある事で商品価値が激減してしまう事から、葉物野菜は常に残留農薬の心配が付きまとってしまいます。レタスやほうれん草がハイリスクな食品と言われると、すぐにそうした残留農薬の事を考えてしまいます。

 今回、レタスやほうれん草にハイリスク食品という判定を行ったのは、栄養保護団体のCSPIで、90年代以降、最も多い病気を誘発した食品のトップ10を選定し、その1位にレタスとほうれん草を指定していました。

 米国食品医薬品局(FDA)の資料に基いた調査の結果、過去20年に363件の感染が発生し、1万3563件の発病事例が報告された事がハイリスク判定の理由とされていますが、しっかりと洗わなかった事が元で起こるノロウィルスやサルモネラ菌といった病原菌への感染症が主な理由とされています。

 今回の報告に関しては、「いたずらに恐怖心を煽って、緑黄色野菜という栄養価の高い農産物を遠ざけるというのは、消費者のために良くない事である」という声明書を発表し、抗議行動を起こしています。

 洗浄の状態が問題というのであれば、食材そのものよりも栽培方法や流通、保管状態の問題という事になると思うのですが、そのために大好きなレタスやほうれん草が悪者になってしまう事には納得がいかないものがあります。食材をちゃんと管理し、しっかり洗って使うというのは基本中の基本ではないしょうか。


 



第1341回 天然加工品(2)     2009年10月07日

 植物が用意したスクロースを中心とした蜜を転化酵素でブドウ糖、果糖などに変化させ、水分を抜いて糖度80%までに濃縮されたハチミツは、濃厚な食品の代表の一つともなっています。

 液体の粘度はcP(センチポアズ)という単位を使って表される事があり、ハチミツの粘度は5000〜6000cPに達すると言われます。cPは摂氏20度の水の粘度を1cPとして基準にしているので、水の6000倍近い粘度を持つ事となります。

 身近なところでは、とろっとした食感のマヨネーズの粘度が2000cP、トマトピューレを煮詰めたケチャップが2000〜3000cPとされているので、身の回りにあるとろみのある食品の倍近い粘度を誇っている事になります。

 それだけの粘度を持つだけあって、ハチミツは糖の溶解度のほぼ限界点に近い状態にあり、低温になると溶解度の限界点を超えて結晶化が始まってしまいます。冬場などにハチミツが固まってしまい、使いにくくなってしまうのは、糖の溶解度の高さによるもので、主に結晶化するのはブドウ糖が中心となっています。

 結晶化したブドウ糖は容器の下の方に沈み、上澄みには液状のままの果糖を中心としたハチミツが残されます。ブドウ糖に限らず物質は凝結核があると結晶化しやすい事から、花粉などの不純物が多く含まれているとハチミツが固まりやすい傾向を持つ事になり、ろ過して不純物を取り除いてやると固まりにくいハチミツにする事ができます。

 よく低温で固まると純粋なハチミツで、固まらないと糖分を加えた合成のハチミツといった言い方をされる事がありますが、単純に結晶化するかどうかだけではハチミツの純粋さを見分ける事は困難となっています。

 固まってしまったハチミツは湯煎するなどで温めてやれば元にように液状化してくれますが、一度結晶化してしまうと湯煎しても後々固まりやすくなるという傾向があります。結晶化したハチミツを高温にする事で糖の溶解度を上げて液状化しますが、結晶質が完全に溶けていないと新たな凝結核となるので結晶化が促進されてしまい、湯煎が不充分であるほど再結晶化しやすくなります。

 湯煎で完全に溶かす事が面倒で、上澄みだけを先に使ってしまう事もありますが、結晶化するブドウ糖と液状のまま残る果糖とでは甘さが倍ほど違い、より甘味が強い果糖を先に使ってしまうと甘味が弱くなってしまうので注意が必要です。多少手がかかるように思えますが、ミツバチの手間を考えると最後まで上手に使いたいと思ってしまいます。


 



第1340回 天然加工品(1)     2009年10月06日

 子供の頃、養蜂業の家の子がいて、直接遊んだ事はないのですが近くに住む友人と遊んでいて、ここがあの子の家だと教えられた事があります。衝撃的だったのは、その子の家の裏手に水飴と書かれた業務用の大きな空き缶がたくさん捨てられていた事で、あれからハチミツという物がどことなく胡散臭く見えてしまいます。

 それでも甘い物に目がない身としては、ハチミツは大好きな食べ物の一つで、特に優しい香りとすっきりとした風味のトチノキのハチミツは、大きなビンで購入して常備するほどのお気に入りとなっています。

 ハチミツの元となるともちろん花の蜜となるのですが、花は蜜を用意する事で虫などの生き物を呼び寄せ、大切な受粉作業を行ってもらいます。花の蜜は受粉作業の対価として用意されるとも言え、甘い味の素はオリゴ糖の一種、スクロースが中心となっています。

 スクロースが甘さの中心となった花の蜜ですが、ミツバチによって集められ、巣の中に蓄えられてハチミツになると成分がブドウ糖や果糖、イソマルトオリゴ糖、グルコノラクトンへと変化しています。ミツバチが運搬のために体内に一旦花の蜜を取り込んだ際に、体内にあった転化酵素のインベルターゼが加えられるためで、スクロースから単糖類のブドウ糖、果糖へと変化している事によってハチミツは消化吸収に優れたエネルギー源となっています。

 ミツバチは花の蜜を見つけると、一定の法則に従った飛び方をして仲間に花の位置を教えます。場所を教わった仲間のミツバチ達は一斉にその場所を目指し、花の蜜を集めて帰ってきてハチミツの製造が開始されます。単純に花の蜜を集めただけと思われがちのハチミツですが、でき上がりまでは意外と手がかけられていて、自然界が作り出す工業製品のような一面も持ち合わせています。

 運搬の際に転化酵素が加えられた花の蜜は、ミツバチの巣に蓄えられて徐々に成分が変化していきますが、酵素の活性を助ける要素として温度管理が重要になってきます。意外にもミツバチの体温は高く、たくさんのミツバチが出入りしている蜂の巣の温度は常に35度に保たれて、酵素が働きやすい温度設定になっています。

 また、常に35度に温められているハチミツには、働き蜂の羽によって風が送り続けられるという送風行動によって水分が蒸発させられ、糖分が80%という極めて濃縮された状態になっています。

 小さな体のミツバチが何度も巣と花を往復しながら蜜を集めてくる事自体も大変な事に思えますが、その後もかなりの手間がかけられている事を思うと、しっかり感謝しながらいただかなければと思ってしまいます。


 



第1339回 エグ味と灰汁     2009年10月05日

 以前、知り合いからコンニャクの材料となるコンニャク芋は相場の変動が大きく、通常の10倍の価格となる事も珍しくない素材であり、それでも倒産するコンニャク製造業者がいないという事から、コンニャクとはかなり特殊な存在の商品なのだと聞かされた事があります。

 今日の感覚でコンニャク芋を見ると、ゴツゴツとしていてあまり食用という感じがしません。しかし、それほど食料が豊富ではなかった時代を考えると、植物の根の部分に大きな膨らみがあれば、とりあえず食してみるというのは充分考えられる事です。

 土を掘り返して出てきたゴツゴツした丸い芋を、期待を込めながら表面に付いた土を洗い流して一齧り。その後に待ち構えているのは、大きな失望以外の何者でもないと思います。

 あまり経験する事ではありませんが、コンニャク芋をそのまま食べると、ひどいエグ味に驚かされ、後々まで残る刺激に二度と口にしたいとは思わないはずです。このエグ味は焼いても煮ても変わらず、コンニャク芋を食用に不適切と考えさせるには充分なものと思えます。

 コンニャク芋のエグ味を出している主な成分はシュウ酸で、シュウ酸を中和しない事にはコンニャク芋を食用に適う物にする事はできません。シュウ酸は文字通り酸なので、中和するにはアルカリ性が必要になります。そのために使われたのが灰汁で、灰汁で処理する事によってコンニャク芋は食用のコンニャクへと変化を遂げます。

 コンニャク芋の原産地はインドやスリランカ、インドシナ半島付近とされ、それが日本に伝えられたのは縄文時代という説があるほど古いものとなっています。その当時、食用とする技術が存在したかは不明ですが、食用にできるからこそ伝来したという考え方もできます。

 コンニャクが最初に文献に登場するのは平安時代の事で、「蒟蒻、その根は白く、灰汁をもって煮れば、すなわち凝成す。苦酒をもってひたし、これを食す」と記されています。

 苦酒とは酢の事で、すでにコンニャクの製法が確立され、アルカリ性の灰汁によって処理され、灰汁が残されたコンニャクを酢で中和するという、今日のアク抜きをして料理するという手法に似た考え方がされていた事が伺えます。

 コンニャクが常食化されるのは、その後の鎌倉時代以降の事ですが、日本固有の食文化となっているコンニャクをエグ味の中から作り出した人とはどのような人なのか、想像もできないものがあります。


 



第1338回 味噌汁雑感(3)     2009年10月02日

 戦国乱世を通して大いに発達してきた味噌汁ですが、最終的に戦乱の世を平定した徳川家康も味噌汁とは無縁ではありません。家康も味噌汁を好んだ事が知られていますが、家康の場合、他の武将とは少々味噌汁の内容が異なり、その違いが天下取りに繋がったという意見もあるくらいです。

 家康の食というと「麦飯、丸干しイワシ、味噌汁」という一見質素なものですが、味噌汁は具沢山であった事が知られ、五菜三根と家訓に残して推奨したと言われるほど充実した内容となっています。

 使われる味噌にも違いがあり、家康が好んだ味噌は豆味噌の八丁味噌でした。豆味噌は麦や米の味噌と比べタンパク質が豊富で、戦のエネルギー源としては非常に優れた物と言えます。

 応仁の乱以降、100年にわたって続いた戦国の世を終わらせる大きな役割を果たした織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の3名は、いずれも豆味噌の食文化で育ったという事実も豆味噌の優位性を示しているようにも思えます。

 最終的に天下を取るのは家康ですが、家康の最も優れた点と言えば、当時は平均寿命が38歳程度であった事に対し、75歳まで生きたという驚異的な長寿にあると言えます。しかも死の直前まで現役で権勢を奮っています。

 その長寿を支えたのが食にあるとされ、食生活を改めて見直してみると栄養豊富な八丁味噌に行き着いてしまいます。戦国の世が終わると、従軍していた兵たちは各地の故郷へと帰っていきます。兵糧として食べた味噌汁の美味しさが忘れられず、家族向けに再現した事は容易に想像でき、その後の味噌汁の急激な普及に繋がります。

 従軍した際の兵糧が元で急速な普及に繋がるというのは、カレーの普及においても見られています。カレーが兵糧として採用される際の基準には、一度に大量に調理する事ができ、手軽に栄養補給ができる、毎日食べても飽きがこないというものがありました。味噌汁も充分にそれを満たしているように思えます。


 



第1337回 味噌汁雑感(2)     2009年10月01日

 北条氏康と氏政の味噌汁騒動ですが、同じような話を武田氏でも聞かされた事があります。武田信玄が食事をしていて、味噌汁をおかわりしながら、結局食べきれずに残してしまった後継者の力量の無さを憂うというものですが、自分がどのくらい食べられるのか、味噌汁はどのくらい器に入ってくるのか、そうしたものを計れないようでは戦国の世は生き残れないと判断されるあたりは、ほとんど同じ話のように思えてしまいます。

 真偽のほどは定かではないにしても、武田信玄なら味噌汁を残すと小言を言われそうな気がします。さまざまな資料から信玄の味噌への思いの深さを伺う事ができます。

 味噌汁の原形は鎌倉時代に見る事ができますが、当時は味噌を溶いただけの物で現在の味噌汁と比べると、かなり完成度が低い物だったと言えます。味噌汁が今日のようなスタイルになったのは室町時代になってからの事で、戦場でも手軽にたくさんの量を一度に作れ、栄養補給に優れた味噌汁は戦国の世には非常に重宝する料理であった事が容易に想像されます。

 信玄が味噌作りを広く奨励した背景にもそうした兵糧としての味噌の優れた面を高く評価しての事と思われますが、さらに味噌汁を限られた状況下でも食べる事ができるような工夫も行っています。

 荷物を束ねたり編み笠に編み込んだりして「芋茎(ずいき)の縄」という物を使う事が武田方の軍勢では奨励されていました。芋茎の縄とは文字通り芋の茎を使った縄で、里芋の茎を縄状に編んで味噌で煮込み乾燥させた物でした。

 お湯を沸かして芋茎の縄を煮込むとすぐに味噌汁ができあがり、今日のインスタント味噌汁の原形とも言う事ができます。現代の味噌汁と比較すると、重要な要素となる出汁の存在が不在と思えてしまうのですが、味噌汁という料理の重要性が充分伝わってはきます。


 



 

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