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第1661回 膏薬新時代     2011年02月28日

 紀元前2055年に書かれた中国の医学書に、「薬草を煎じた薬を松脂、乳脂、ニカワ、植物油などと混ぜて布に塗り、傷口や痛む部分に展着すべし」と書かれており、それが貼り薬に関する最古の記載とされています。

 布などに粘着性のある物質と薬効成分を混ぜてた物を貼り付けて治療効果を上げる貼り薬は、「膏薬」として世界各地で古くから利用されてきました。

 紀元前17世紀の古代エジプトでは、布に糊状のゴムを塗った包帯で傷口を密閉して傷の治療を行っていました。密閉性のある包帯で傷口を被う事で傷口からの水分の蒸発を防ぎ、潤いが保たれた状態にする事で早くきれいに傷を治せる事を経験的に知って利用していた事が伺えます。

 現代でも同様の原理を用いた傷の治療が行われていますが、効果が確認されたのは1950年代の事で、遥か4千年近くも前から利用されていた事には驚かされてしまいます。

 紀元前42年頃の古代ギリシアでも膏薬は使われていて、豚脂に鉛丹と呼ばれる酸化鉛、薬草の汁を混ぜた物を布や皮に塗った「ダイアキロン硬膏」と呼ばれる物が存在し、日本でも9世紀頃に編纂された法令集、「延喜式」に10種類もの膏薬の名前が上げられています。

 それだけ古い歴史を持ちながら、肩凝りや打身の治療に特化されたためか、飲み薬と比べてあまり評価が高くはない貼り薬ですが、最近は禁煙用のニコチンパッチをはじめ、再評価の動きが高まってきています。

 特に先日承認された「イクセロン」「リバスタッチ」といった7品目の薬剤の中には貼り薬も含まれ、アルツハイマー型の認知症の貼る治療薬の登場という事で、貼り薬の新たなジャンルが開かれる事となります。

 これまで飲み薬の「アリセプト」だけが認知症の治療薬として使われてきていましたが、貼り薬のイクセロン、リバスタッチにレミニール、メマリーといった4品目が新たに治療に用いる事が可能となり、アリセプトがコリンエステラーゼという酵素の働きを阻害する機能によって治療効果を上げていた事に対し、NMDAと呼ばれる受容体の働きを阻害するという新たな作用を持つ薬剤も含まれる事から、治療への新たなアプローチに繋がる事も考える事ができます。

 飲み薬に比べて貼り薬は飲み忘れや誤飲、過剰投与といった事故が防ぎやすく、表面に貼り付けた日時を記載する事で適切な管理が行え、より使いやすい投薬スタイルとも言えます。

 日本では、方針や信念もなく、節操のない人の事を「内股膏薬」といったり、「膏薬と理屈はどこにでもつく」といった諺もあり、あまり評価されていない印象のある貼り薬の膏薬ですが、これを機に見方が大きく変わるのではとも思えて、少々微笑ましくもあります。


 



第1660回 酵素解析     2011年02月25日

 世界的に最も多くの人が感染している感染症の一つといえば、「虫歯」ではないかと思います。虫歯は歯の表面に棲息する細菌によって作り出された酸が、本来は丈夫な物質であるはずの歯を溶かしてしまう現象で、一旦、歯が溶かされてしまうと自己治癒力の及ぶところではなくなってしまう事から、怖い感染症といわざるを得ません。

 歯の表面に細菌が定着するには糊のような「菌体外多糖」が必要で、菌体外多糖を合成できる細菌が歯に付着して棲息を開始すると、作り出された菌体外多糖を利用して本来は歯の表面には付着できない細菌も一緒に棲息を開始して増殖します。

 そうして作られた細菌の塊は容易には洗い流す事ができず、歯ブラシなどで機械的に掻き落とさないと除去する事ができません。念入りに歯ブラシを使って細菌群を掻き落としたとしても、歯の表面の細菌をゼロにする事はできず、残された細菌はまたすぐに増殖を開始し、元のような状態を回復してしまいます。

 これまでさまざまな抗菌薬や抗生物質などを使って、口内の細菌を死滅させる試みが行われてきましたが、僅かでも口内に残された細菌が増殖を行う事から、虫歯の原因を根絶する薬剤の開発には成功しておらず、口内の細菌は食事や清涼飲料水をはじめとした口にする全ての食物に含まれる糖分を使って酸を作り出してしまいます。

 通常の清涼飲料水の半分以下の砂糖量である5%の砂糖水でも2、3分もあれば口内の細菌は酸を作り出し、歯を溶かす事に充分な酸性度であるpH5.5に達し、その後、唾液によって酸は中和されますが、強い酸性の状態は20分近くも続くとされます。

 虫歯を引き起こす病原因子としては酵素「グルカンスクラーゼ」の存在が知られ、グルカンスクラーゼの働きによって砂糖から菌体外多糖が作り出されて虫歯へと繋がっていきます。

 そのため、グルカンスクラーゼの働きを阻害する事ができれば効果的に虫歯を予防できると考えられてきましたが、口内や小腸にも類似の酵素が存在し、それらの働きが阻害されてしまうと低血糖などの健康上の弊害が生じるため、グルカンスクラーゼのみを特異的に阻害できる事が求められていました。

 先日、X線結晶構造解析によってグルカンスクラーゼの立体構造が明らかにされ、多糖の合成メカニズムが判ってきています。今回、グルカンスクラーゼの立体構造が判った事により、グルカンスクラーゼに対して選択性が高く、より強力に結合して働きを阻害する物質の探索や設計が可能となり、虫歯予防の新たな道が開かれると考えるられます。

 立体構造の解析によって分子レベルでのグルカンスクラーゼの働きや、多糖が形成される仕組も観察されており、効果的な虫歯予防薬の登場は近い将来である事が予想されます。これまで不可能に近い事であっただけに、その登場を早く見たいと思ってしまいます。


 



第1659回 宇宙種     2011年02月24日

 種というと水と温度という条件が調えば、中に含まれた酵素が発動して発芽を始めます。それはどこかセンサーが反応してシステムが動き出すメカニックな機構に似ていて、生命という神秘とは若干趣が異なるようにも思えます。

 種は親となる植物から与えられた種皮に包まれ、受精卵から発育した幼い植物体という構造を持っています。単純に条件さえ揃えば発芽を始めるのかというと、そうでもない部分も大きく、内的な要因で発芽が阻害された「休眠状態」では発芽に好適な条件が揃えられても発芽しない事が知られ、休眠が解除された条件下において好適な条件が揃う事が発芽の要件となっていて、その仕組は極めて複雑とされます。

 休眠状態の種は、非常に長い期間にわたって生き延びる事ができる事が知られ、種によってさまざまな期間が存在する事が考えられます。中には数年程度のわずかな期間で発芽する力を失ってしまう物もあれば、数十年にわたって発芽する力を失わない物もあり、遺跡などから発掘されて発芽するという例も知られています。

 最近、そんな種についてある異変が話題となっていました。国際宇宙ステーションに保管されていた種を地上に持ち帰ったところ、発芽しないはずの種から芽が出るなどの異変が相次いでいる事が確認されています。

 宇宙に保管されていたのは、北海道から沖縄までの13の地域から子供たちの手によって集められた桜の名木14種類の種で、中には岐阜市にある中将姫誓願桜(ちゅうじょうひめせいがんざくら)の種も含まれ、樹齢1200年を超える中将姫誓願桜の種はこれまでも地元の保存会などによって発芽が試みられましたが、発芽せず、接木でしか増やせないとされていました。

 中将姫誓願桜の種は265粒が宇宙へ送られ、248粒が試験的に蒔かれたところ、このうちの2粒が発芽し、10cm程度に伸びた苗木の葉の遺伝子を鑑定したところ、他の桜の種が混ざっていたのではなく、中将姫誓願桜の種である可能性が高いとされています。

 他にも通常は50cm程度しか伸びない真庭市の醍醐桜(だいごさくら)10本が、発芽後、元気に整腸を続けて90cmを超えて、中には160cmを超える桜も出ている事や、1年に30cmしか伸びないはずの稚木桜(わかきのさくら)が、1年で最高135cmに成長した例も確認されています。

 今のところ原因は不明とされていますが、無重力という桜にはありえない空間で、宇宙の強い放射線などを受けて遺伝子の突然変異や、細胞の活性化などが起こったのではと見られています。

 宇宙空間では、地上のようにさまざまな放射線を遮る物が存在しない事から、強力な放射線にさらされる事が考えられます。種に放射線というと、芽が出ないように施す処置を思い出してしまいますが、その逆が起こっているという事がとても興味深く、放射線による突然変異といった別な植物となって活性化しているのではなく、植物活性化の一環という新たな栽培手法となる事を願ってしまいます。


 



第1658回 桜センサー     2011年02月23日

 今年も桜の開花予想が発表されていました。桜の開花には冬の間に寒さを経験する事が重要で、今年は冬が寒かった事もあり、開花は2日ほど早まるのではと予想されています。

 桜の開花予想は桜の代表的な品種であるソメイヨシノが基準となっていて、全国に植えられたソメイヨシノの蕾がほころびはじめる時期を桜の開花としています。

 ソメイヨシノは謎多き桜で、かつては起源について諸説が存在していました。最新の研究では遺伝子の解析からエドヒガンザクラ系の品種を母種とし、オオシマザクラを父種として交配させて生まれたものと考えられています。

 当初は江戸の植木屋によって「吉野」という名前で売り出していましたが、京都の吉野山に自生するヤマザクラと混同される事から、明治33年にソメイヨシノ(染井吉野)と名前が改められて今日に至っています。

 現在、桜といえばソメイヨシノの事を指すといっても過言ではないほど、桜を代表する品種となっているソメイヨシノですが、それだけ全国に広まり、多くの名所、名物となっている反面、ソメイヨシノはクローン植物である事はあまり意思されていません。

 全国各地に散在している事から、ソメイヨシノの花が散った後、種ができて鳥などによって運ばれて自然に増えているようにも思えるのですが、ソメイヨシノは種などによって自然に増える事はなく、接木など人の手によって増やされてきました。

 ソメイヨシノはクローンである事から全ての花が同じ物となり、同一の個体からは受粉できないという植物のシステムによって、ソメイヨシノ同士での受粉は不可能となっています。

 しかし、ソメイヨシノに種はできないのかというと、そんな事はなく、ソメイヨシノの近くに別な品種の桜があるとよく種が実る事が知られています。

 ソメイヨシノの結実については、まだ未解明な部分が多いとされ、それほど近くではない位置に別な品種があるだけで驚くほど結実する事もあれば、すぐ横に同じ時期に花を咲かせる桜があっても全く結実しない事もあり、花粉を媒介する生物の存在や接木された木の状態など複雑な要因が絡んでいるのかもしれません。

 たくさん実ったソメイヨシノの種ですが、植えてみるとちゃんと発芽し、新たな桜が生まれてきます。しかし、新たに生まれてきた桜はソメイヨシノの形質は伝えられておらず、別な桜となってしまいます。

 ソメイヨシノはクローン植物である事から、花を咲かせるにはほぼ同一の環境が整えられた事と考えられるので、全国的に南西から北東へと移動する「桜前線」という考え方ができ、気候の移り変わりとして捉える事ができます。

 人の手がなければ増える事ができないソメイヨシノが全国的に存在する事には、日本人と桜との関わりの深さを感じてしまいます。同じ桜といわれても九州と北海道では随分と開花の時期が異なりますが、日本全国に散りばめられた春を知るセンサーと考えると、少しソメイヨシノと桜前線の見方が変わるのかもしれません。


 



第1657回 ガム伝説     2011年02月22日

 以前、聞かされた都市伝説に第二次世界大戦中、貴重な物資である砂糖が統制され、お菓子の製造業界でも原料となる砂糖を確保する事が難しくなった事がありました。

 その中でチョコレートは、兵士達の速やかな栄養の補給と疲労回復に役立つとして優先的に砂糖の供給が行われたのですが、ガムについてはチョコレートのような評価が行われなかった事から原料の確保が難しくなり、ガムの製造業者は存亡に危機にさらされていました。

 苦肉の策として「ガムを噛む事で集中力が上り、精神を落ち着かせる働きがある」という説を持ち出し、もっともらしく流布します。その後、それが定説のようになってしまった事で、ガムを噛む事の健康効果が言われるようになっていますが、実はそれを裏付ける研究資料は存在しないというものがあります。

 しかし、ガムに限らず物を良く噛む事は消化の促進や肥満の予防に役立つ事が知られ、最近では脳の働きにも関連している事が判ってきています。

 先日、行われた研究では、65歳以上の高齢者1000人に64枚の写真を見て記憶してもらい、その後、一部を差し替えて見覚えがあるかどうかについてテストを行ったところ、約2割の人がテスト開始前に2分間、ガムを噛んでから記憶してもらった方が噛まなかった場合よりも正答率が15%も高くなるという結果が得られています。

 また別の研究では、70歳以上の高齢者1200人を対象に調査を実施し、健康な人は平均で15本ほどの歯が残っていたことに対し、認知症の疑いがある人では10本以下と残されている歯の数が少なく、脳をMRI(時期共鳴画像化装置)で診断したところ、記憶に関する「海馬」付近の容積の減少が見られ、歯を失って噛む事が減ってしまった事が認知機能の維持にマイナスに働いた事が考えられています。

 脳から噛むために顎を動かす信号を伝える「三叉神経」は、歯応えなどの感覚情報を伝えるルートにもなっていて、脳の覚醒をコントロールする「脳幹」にも繋がっています。

 噛んで飲み込むという食事方法は非常に複雑で、まだ判らない部分も多いとされますが、噛む事に特化されたお菓子であるガムには、脳を活性化させる秘密が隠されている事が明確になってきたのかもしれません。


 



第1656回 出世野菜?     2011年02月21日

 雪が多く降った冬も一段落という感じで、そろそろ春めいたものを感じています。梅の蕾もほころび、春を感じる景色もそこかしこで見られるようになってきているのですが、その中でも「菜の花」の存在は、嫌が応でも春を感じさせるものとなっています。

 菜の花は、花を楽しむだけでなく、蕾を食用としたり、種から油を採るなど、多くの用途があります。今日ではほとんど見られませんが、古い時代は葉も食用とされていて畑に菜の花を育て、全体を粉砕して肥料とする事も含め、その用途の広さには驚かされてしまいます。

 そうした用途の広さを示すように、菜の花には多くの呼び名が存在し、菜の花以外にも花菜、菜花、油菜、菜種、青菜、黄菜、黄花、菜花、赤種などがあり、「かきな」「くきだち」などの呼び名も使われていました。

 春の到来を知らせてくれるような黄色い菜の花ですが、白い物や薄紫の花も存在し、咲き始めの時期についても春の訪れと共にというだけではなく、冬が始まる11月に開花する物もあり、季節外れの黄色い絨毯に驚かされる事があります。

 食材として見た場合、菜の花は花ではなく蕾の方を食べる事から、旬の時期が少し早まり冬の中盤くらいから出始め、さっと茹でた際の鮮やかな緑色や、まだほころびていない蕾は春を待つ風情を感じさせてくれます。

 質感が似たホウレン草と比べても栄養的に遜色がないだけでなく、えぐ味の元となるシュウ酸の量が20分の1と少なく、気軽に料理に使える食材となっています。

 多くの名前を持つ菜の花ですが、若い葉が開いて食用とされる際は「青菜」、蕾や花が開いた際は「菜の花」、種子が育った際は「油菜」と呼ばれ、少なくとも成長に合わせて3回は名前が変わります。魚であれば「出世魚」と呼ばれて縁起物とされるところですが、「縁起野菜」と呼ばれない事が少々可哀想に思えています。


 



第1655回 地中海パラドックス再来?     2011年02月18日

 近いようで遠い近未来の科学技術に「超伝導」があります。超伝導とは電気抵抗が完全にゼロになる事で、超伝導物質を作り出す事ができれば、電気エネルギーを全くロスする事なく輸送、貯蔵する事ができるようになり、環境問題にも関連してくる重要な技術となっています。

 現在使われている電線は当然の事ながら抵抗があるので、電気を流すと損失が生まれ、そのために余分な電気を損失を想定した上で流す必要が生じていて、無駄なエネルギーとなっています。超伝導が完成すれば、そうした無駄なエネルギーを消費する必要もなくなり、発電所は必要最小限の発電だけで済む事となります。

 それ以上に期待されているのが超伝導を使ったエネルギーの貯蔵装置で、超伝導物質で作られたコイルに直流電流を流すと損失なく電流が流れ続け、エネルギーが貯蔵できると考えられています。

 超伝導の応用技術として広く知られているものにリニアモーターカーやNMR(核磁気共鳴装置)、MRI(磁気共鳴画像診断装置)などがあり、液体ヘリウムなどを使って極低温にする事で超伝導化した磁石が使われています。

 低温での超伝導については冷却装置が壊れた途端、超伝導の性質が失われ、発生した抵抗が電気エネルギーを熱に変えて更に高温にして抵抗を増し、正常な稼動が失われてしまいます。そのため熱に依存しない常温での超伝導が求められるのですが、常温という部分に超伝導の難しさがあるようにも思えます。

 最新の研究では、鉄系の超電導関連物質を酒に浸して約70℃程度に加熱すると超伝導が発現される事が判ってきており、先日、使用される酒類に関する研究が行われていました。

 これまで判っていた事として、赤ワインに浸して加熱する事で効率良く超伝導の発現が見られていた事から、まず赤ワインと同じように水とエタノールを混ぜ合わせてアルコール度数を調整し、実験を行ったのですが、赤ワインと比べて7分の1程度の効率しか得られず、単に水とアルコールによって超伝導が発現しているのではない事が判ります。

 他の酒類でも同様の効果が得られる事から、赤ワイン、白ワイン、ビール、焼酎、ウィスキー、日本酒などの酒類別の効率を調査したところ、赤ワインが最も効果が高く、焼酎が最も低いという結果が得られています。

 焼酎は蒸留されていて、最も水とアルコールだけの状態に近い事から効率が低くなった事が考えられ、同じワインでも白ワインよりも赤ワインの方が効率が高い事から、赤ワインに含まれる水とアルコール以外の成分に超伝導を発現させる秘密が隠されている事が予想されます。

 同じような話を地中海沿岸の食生活と心臓病について聞かされた事が思い出され、赤ワインに含まれるポリフェノールの一種、レスベラトロールが発見された事を思ってしまいます。

 今回、どのような成分が超伝導の発現に寄与するのかは特定されていませんが、赤ワインの効能に「血液の流れを円滑にする」に合わせて「電気の流れを円滑にする」というものが加わるというのも興味深い事と思えてきます。


 



第1654回 緑の蛇?     2011年02月17日

 葛湯、葛餅、葛まんじゅう。葛粉を使った製品は大好きなのですが、植物としての葛は好きかと問われると、庭に生える雑草の中でこれほど厄介なものはない事を思い出し、好きどころか嫌悪しているとさえ答えてしまいます。

 葛はマメ科のつる性の多年草で、根の部分からは食品の葛粉や漢方薬の「葛根(かっこん)」などが得られ、秋の七草の一つともなっています。大きく開いた葉は家畜の飼料としても使え、頑丈なつるの部分は農作業などにも使われてきました。

 刈り取ったつるの部分を煮て発酵させ、頑丈な繊維分だけを集めて編んだ布は葛布(くずふ)と呼ばれ、平安時代には既に作られていて、衣服や壁紙などの幅広い用途に使われていた事から、かつては葛自体の需要も高かった事もあり、野生の葛が好き勝手に繁殖するという事はあまり見られませんでした。

 しかし。葛布や農作業での利用が見られなくなり、葛の需要が低下すると葛は持ち前の繁殖力を使い、野山を埋め尽くすほどの勢いを見せています。特に地上部のつるの部分は繁殖力が旺盛で、日差しと水に恵まれた夏の最盛期には、一日に1メートル近くも伸びる事があるともいわれ、勢いに任せて周囲の草や木の上に広がり、日光を独占する事で下になった草木を枯らし、地面から得られる栄養も独占してしまいます。

 貪欲なまでの成長意欲を象徴するかのように、秋が来て他の雑草が成長を止め、成長に費やしていた栄養を根に蓄えはじめても葛は成長を止めず、ひたすらたの植物の上に覆い被さって日光と地面の独占を図ろうとします。そのため、葛の根から得られるデンプンである葛粉は、真冬の限られた時期にしか得る事ができません。

 それだけの徹底した独占欲を顕にする葛は、「世界の侵略的外来種ワースト100」にも選定されていて、世界各地でさまざまなトラブルを引き起こしています。中でも1876年に開かれたフィラデルフィアの独立百年祭博覧会で日本から運ばれ、飼料作物や庭園装飾用に有用な植物として紹介され、東屋やポーチの装飾、緑化や土壌流出に有効な植物として受け入れたアメリカでは深刻な被害が生じています。

 日本以上にアメリカの気候が葛の繁殖に適していた事や、天敵となる生物が存在しなかった事もあって、想像を遥かに超えた繁茂、拡散を遂げて「グリーンスネーク」とまで呼ばれる嫌われ者となっています。

 そうした圧倒的な繁殖力を買われて中国奥地の乾燥地帯に移植された葛ですが、残念ながら持ち前の繁殖力を発揮できなかったようで、期待されたような繁殖には至っておらず、葛の強力な生命力を知る者としては、葛が繁殖できない環境の方に脅威を感じてしまいます。

 最近では葛からバイオエタノールを抽出する技術が開発され、新たな需要が発生する事も予想されます。近年、バイオエタノールの増産を理由とした小麦の高騰が見られていました。食料価格の安定という意味においても、今後、小麦やトウモロコシではなく葛がバイオエタノールの主力原料となればと思っています。旺盛な繁殖力は、かなりの二酸化炭素を使っているとも考えられ、地球温暖化の抑制にも貢献するはずです。必要なら我が家の庭の分、いくらでも差し上げますと思っています。


 



第1653回 黄色の変化     2011年02月16日

 食べ物を工業製品化してしまった事により、より美味しくみせるための工夫として着色料の存在が欠かせなくなりました。一説には某コンビニエンスストアのチェーン店で着色料の使用を停止したところ、弁当の売り上げが2割も低下したとされ、見た目にも美味しく見せる事の重要性が伺えます。

 天然素材の色を活かした食の演出は、人の歴史と共に始まったといっても過言ではありませんが、人の手による色素である合成色素の歴史は、1856年のイギリスの化学者ウィリアム・バーキンによる色素の合成とその工業化によって幕を開けています。

 その後、多くの色素が登場し、食品添加物としても使われてきましたが、安全性などの点から淘汰され、今ではある程度の数に限られてきています。

 一般的に食品に使われている合成色素の中で、緑色の色素は「緑色3号(ファストグリーンFCF)」のみとなっていて、意外と安全性を確保しながら安定的に緑色を発色する事が難しいと気付かされてしまいます。

 天然由来の色素では海藻などから抽出したクロロフィル系の色素や、クチナシの果実から得られる黄色と青色を合わせて作る緑色の着色料が使われていますが、合成色素においてもクチナシ色素の緑色と同じように黄色と青色を合わせて緑色を発色する事がよく見られます。

 それだけ安定している色のような印象を持っている黄色ですが、ゴッホが好んで使っていた山吹色に近い黄色、「クロームイエロー」は日光によって変色する事が知られていました。

 クロームイエロー、黄鉛(おうえん)とも呼ばれる黄色はやがて茶色に変わっていく事が知られていますが、そのメカニズムについては不明とされ、有毒物質の六価クロムが含まれる事から現在ではほとんど使われていません。

 今回、行われた研究ではクロームイエローに500時間、紫外線を当てて変色させ、変色した部分を調べたところ、六価クロムの酸素結合が崩れて三価クロムに変化している事がわかりました。

 ゴッホの風景画などからも変色部分の試料を手に入れ、フランスとドイツにある大型の加速器にかけてエックス線で組成を詳しく分析したところ、実験で行ったような化学変化を確認する事ができ、ナノメートル(10億分の1メートル)レベルでの三価クロムのごく薄い膜が黄色い部分を覆っている様子も確認されています。

 今回の研究成果は、大型加速器を使った大掛かりなものでしたが、元素は価が変わる事で色が変わる事が確認され、さまざまな作品の復元にも繋がるものであり、興味深い研究成果といえます。

 歴史的な絵画が復元され、それまでの見慣れた色彩とは異なる鮮やかな色合いに驚かされる事がありますが、今回の研究成果はそうした新たな発見をこれから数多く体験させてくれるのかもしれません。


 



第1652回 食の振子     2011年02月15日

 子供の頃、食生活をきちんと行うように生活習慣病の怖さ、糖尿病食の味気なさなどを教えられた事があります。今ではずいぶんと改善され、美味しくなっている事やカロリーのコントロールを中心に一般食でも大丈夫という事も考えられますが、子供の頃に聞かされた話では何を食べても味がなく、色ばかりのしょうゆなど結構、印象に残る話となっていました。

 糖尿病は消化吸収されたブドウ糖の処理を適切に行えなくなっている病気ですが、かつてそのメカニズムが理解されていなかった頃は糖尿病患者は多量の糖を尿から失っているので、それを補給しなければと多量の糖を摂取するように薦められていました。

 その後、1900年代の初頭には食事内容が改められ、炭水化物の量を極度に少なくする事で2型糖尿病患者の血糖値を低く保つ事ができ、1型糖尿病患者の余命を長める事が知られ、実践されています。

 1920年代になってインシュリンが発見され、糖尿病の治療薬として普及すると糖尿病患者の生活は健康な人の一般的なものに近付きますが、やはり炭水化物の摂取量は低く抑えられ、カロリーの多くを脂質によって得る食生活が標準的なものとされていました。

 その当時、インシュリンによって糖尿病で命を落とす患者は減りましたが、代わりに糖尿病患者に心臓病で若くして亡くなる患者が見られるようになっています。

 1950年代になって、心臓病の発症が飽和脂肪酸を多く摂る食生活を送る人に顕著であるという研究結果が発表され、糖尿病患者に多く見られていた心臓病の原因が、多く摂られていた脂質に原因があると考えられるようになりました。

 1970年代の終わりに、1型糖尿病の患者の食事から脂肪分を減らし、その分、炭水化物を60%ほど増やす事が行われるようになり、炭水化物によって上昇する血糖値のコントロールをインシュリンの量を増やす事で対応するようになりました。

 その後、同じ手法は2型の糖尿病患者においても採用され、繊維質に富んだ高炭水化物食は食後の血糖値の上昇を抑える効果が高い事が知られるようになります。

 2型糖尿病はインシュリンへの反応ができなくなっているため、治療にはインシュリンは使われません。そのため炭水化物の増加は血糖値の上昇を意味しますが、当時は食後の一時的な高血糖は問題ないと考えられていました。

 しかし、食後2時間の血糖値が将来のリスクを左右する事が知られると、食後の高血糖が無害とする意見は疑問視されるようになり、血糖値の上下による山と谷をなだらかにするために炭水化物を抑える意見が出され、それからは振子のように糖尿病食と炭水化物の関係は揺れ動き続けています。

 固有の生理学ともいえる各個人の異なる体質やライフスタイル、一言で炭水化物といっても難消化性の繊維質から砂糖などの糖分までを含む事を考えると、単純に1型や2型、栄養素だけでは食事の傾向を決めるのは困難なのかもしれないと思わされてしまいます。


 



第1651回 お茶漬けに思う(3)     2011年02月14日

 お茶漬けの普及は、庶民が嗜好品としてお茶を飲めるようになった江戸時代中期以降の事と考えられます。お茶をかける理由の一つは、お茶には旨味成分のグルタミン酸ナトリウムが含まれ、お湯をかけるよりも美味しくなる事が上げられます。

 忙しい奉公人が仕事の合間の短い時間に食事を済ませるためにはじめたと考えられ、ご飯とお茶、漬物だけという質素な食事内容の組み合わせから生まれていて、湯漬けの延長線上にある物と思えます。

 しかし、日本各地に存在するさまざまな具材を使ったお茶漬けは、どこかそうした湯漬けから生じたお茶漬けとは異なる雰囲気を感じてしまいます。

 お茶の旨味を活かして米を炊いた物に「茶粥」の存在があります。茶所、奈良の僧坊で食べられはじめた物が庶民の間でも広まったとされますが、西日本の各地で同様の食文化が見られ、郷土食として食べられています。

 江戸時代の初期、寛永年鑑に書かれた「料理物語」には、「奈良茶」という料理が紹介され、栗や芋を米と一緒にお茶で煮込んで雑炊のように仕上げる事が書かれています。また、魚の臭味を除くためにお茶を使うという調理法も行われ、お茶を調味料のように使う事は自然に行われてきたと考える事ができます。

 具材をお茶で煮込んでご飯を加える雑炊のような料理の存在も考えられ、そのインスタント版としてご飯に具材を乗せてお茶をかけたお茶漬けが生まれたという可能性もありえるのではと思えます。

 湯漬けから派生したご飯にお茶をかけただけのお茶漬けと、茶粥から発展したさまざまな具を使うお茶漬け。日本固有の食文化、お茶漬けには複数の系統が存在しているように思えます。


 



第1650回 お茶漬けに思う(2)     2011年02月10日

 夜食に最適なお茶漬けは、主食の米飯と食事の際に出されるお茶、あとは適当な具材があればすぐに食べる事ができます。それなのに米飯を主食とし、お茶も飲む食文化を持つ日本以外の地域ではお茶漬けという食習慣は見られず、お茶漬けは日本固有の食文化となっています。

 日本ではかなり古くからお茶漬けは食べられていたとされ、ご飯にお湯やお茶、汁物などの液体をかけて食べる食習慣は米食文化が始まった頃から存在していた事は容易に想像する事ができます。

 ご飯は炊く事によって米に含まれるデンプンをα化(糊化)した状態にして、水分を含んだ柔らかく、消化に良い状態にしています。ご飯が冷えるとα化していたデンプンが、貯蔵に適した固く水分を含まないβ化と呼ばれる状態になります。

 β化してしまったデンプンは温度を高め、水分を加えてやる事で完全ではないにしても再びα化する事ができます。今日のように電子レンジが普及していれば再加熱も容易な事ではありますが、それがない時代、温かいお湯などをかけてご飯を柔らかくして食べるという知恵は必然的に生じていた事と思われます。

 そんなお茶漬けの歴史については身近すぎる食べ物のせいか、不明な部分が多く、どのように発祥して発展してきたのかについて明確な記録が残されていません。

 すでに平安時代には、冷えたご飯にお湯をかけて食べる「湯漬け」が登場していて、室町時代には正式な宴の席でも出されるようになり、手早く食べられる事から後の戦国大名にも好まれています。それがお茶漬けのルーツとなり、お茶の普及に伴ってお湯からお茶へと置き換わったという考え方があります。

 湯漬けに良く似た存在に「水飯(すいはん)」があります。文字通りご飯に冷たい水をかけていただく物で、明治政府によって編纂された「古事類苑」には、「水飯は、夏季飯を冷水に漬け、或いは乾飯を湯または水に浸し、和らげて食するをいう。飯を湯漬けにする事は古くよりあり、湯漬けは強飯を用いず、常の飯を用いしなるべし」と記され、湯漬けが昔から食べられてきた干して携帯性と保存性を高めた糒(ほしいい)の食べ方から派生したものである事も感じられます。

 お湯がお茶に置き換わった時期や経緯も不明ですが、江戸時代に書かれた「小笠原流諸礼大全」には、「湯漬けは最初は香の物から食し、中の湯はご飯を食べている際はすすらずに食後にお茶ばかりを受けて飲むこと」と書かれており、江戸時代にはお湯がお茶に置き換わっていた可能性もありえるのですが、当時、茶葉が高価であった事からお茶と称してお湯を飲んでいた事を考えると湯漬けがお茶漬けに変わったと言い難いものがあります。

 確実に言えるのはこの時期でも湯漬けには具材が含まれず、漬物と一緒に出されていたという事で、先に漬物ばかりを食べてしまう事から、かなり手早く食べてしまう物であったのかもしれません。お湯からお茶への変遷や具材の事など、どことなく湯漬けとお茶漬けの関係に疑問を持ってしまいます。


 



第1649回 お茶漬けに思う(1)     2011年02月09日

 毎年、受験シーズンが訪れると受験生の大変さを思いながら、自分が受験生であった時の事を思い出してしまいます。結構、大変だったようにも思えるのですが、何か一つの事に集中してその事だけを考えておけば良かったというのは、今から思うと幸せな時間だったようにも思えてきます。

 次の日の授業があるので、それほど遅い時間までは起きていないつもりなのですが、それでも家族の中では一番遅くまで起きている事になってしまって、眠りにつく頃にはそれなりに空腹を覚え、夜食の必要性を考えてしまいます。

 受験生が眠りにつく時間帯が含まれる23時から明け方の4時という時間帯は、体に脂肪が付きやすい時間帯とされ、その時間に摂る食事には注意が必要となります。

 脂肪を増やす要因の一つにインシュリンの存在があります。インシュリンは血糖値を下げる働きを担うホルモンですが、血糖値を下げる際、血液中の糖分を脂肪細胞の中に封じ込めて血中濃度を下げています。

 そのため、インシュリンの働きが活発になると脂肪細胞に封じ込められる糖分の量が多くなり、脂肪細胞の成長を促進してしまいます。それを防ぐためには血糖値の急速な上昇を抑え、インシュリンの分泌を少なくする必要があります。

 血糖値の急速な上昇を抑えるには血糖値の上昇を表す数値、GI値が低い食べ物を選ぶ必要があります。手軽に食べられる食事の中でGI値が低い物となると、意外と身近な存在であった「お茶漬け」が適している事が判ります。

 お茶漬けは温かいお茶を注いで食べる事から、体を温めてくれ、海苔の食物繊維も血糖値の上昇を抑えてくれます。薬味として七味唐辛子を加えるとさらに効果的で。唐辛子が体を温めてくれるだけでなく、ミネラル分を多く含む素材が使われている事から脂肪の燃焼を助けてくれます。

 受験の際は、多少体重が増加する事などそれほど意識しなかったのですが、寒さが厳しく健康管理が難しい時期に行われる受験の事を思うと、日本の伝統の食文化を活用するのも良い事ではと思ってしまいます。


 



第1648回 ナポリタン考(3)     2011年02月08日

 日本生まれのケチャップを使ったパスタ料理、スパゲティ・ナポリタンがケチャップの本場、アメリカではなく日本において誕生した事については、ケチャップをかけるだけの生食が浸透しているアメリカに対し、加熱して調理する手法が確立していた日本の食事情が影響した事は容易に想像する事ができます。

 しかし、実はナポリタン発祥の地として有力視されている横浜のホテルニューグランドの第2総料理長、入江茂忠によって考案されたとされるスパゲティ・ナポリタンは、ケチャップを一切使っていなかったという衝撃的な事実が存在します。

 入江シェフが考案したナポリタンは炒めた具材に調味料とトマトピューレを使った本格的な物で、トマトが中心になったイタリア風のパスタ料理であり、ナポリタンと呼ぶ事にも違和感がない物であった事が考えられ、実際、入江シェフのナポリタンは、フランスで食べられているスパゲティ・アラ・ナポリターナに近い存在であったとされます。

 アメリカにもナポリタンと呼ばれるパスタソースが存在し、トマトベースにタマネギやニンニク、バジル、ローリエ、タイム、オレガノ、コショウ、クローブなどの香辛料にマッシュルームを含み、イタリアでラグーソースと呼ばれる物に近い存在となっています。

 入江シェフのナポリタンもトマトやスパイスをたくさん使い、茹で上がったパスタに絡めて炒め合わせながらしっかりと味付けをする、そういわれるとナポリ風という事にも納得できるものを感じさせられます。

 入江シェフがスパゲティ・ナポリタンを考案した際、日本人にはパスタの美味しい茹で方であるアルデンテに馴染みが薄く、わずかに芯が残る麺の茹で方は不評であったと言います。そのため、茹で上がる直前のスパゲティを冷蔵庫に一晩寝かせ、うどんのような食感を出す調理法も生み出されていました。

 そうした工夫の下に生み出されたナポリタンは、その後、あらかじめ茹で置きした麺を、フライパンで炒めて温め直しながら味付けする調理する事が簡便である事から、学校給食や家庭料理、喫茶店の軽食などにも採用され、一気に広まっていきます。

 ナポリタン拡大の最大の原動力となったものに、国産スパゲティの発売があり、販売促進用のデモンストレーションとして店頭でスパゲティの調理の実演と試食が行われた際、あらかじめ麺を茹で置きできて調理も比較的簡単なナポリタンが採用された事があります。

 その際、入江シェフのオリジナルのレシピでは手がかかり過ぎる事や、トマトピューレと比べてケチャップの方が簡単に入手できる事。すでに多くのスパイスが含まれているケチャップを使った方が、より手軽に調理できる事からケチャップを使ったナポリタンが一般化した事が考えられます。

 オリジナルのレシピからは少し変化してしまったナポリタンですが、調理の手軽さや美味しさからも世界的に誇れるパスタメニューではと思えます。生前、入江シェフはナポリタンの考案者が自分である事を一切公言しなかったといいます。そのため、入江シェフの家族でさえも日本の洋食史上の革命的な発明者の功績について知る事はなかったそうですが、死後、数年経って発見された文献によって、ナポリタンの発案者が入江シェフである事が知られるようになっています。

 トマトの赤い色の素であるリコピンの健康効果が注目されるようになり、トマトが凝縮されたケチャップはリコピンを多く含み、塩分が少なく旨味成分が多い事でも知られるようになってきています。さまざまなパスタ料理の普及や、昔ながらの軽食を出す喫茶店の減少によって、ナポリタンを見かける頻度は少なくなってきているとされますが、ケチャップを使う代表的なメニューでもあるナポリタンが、これからも懐かしい味の洋食、家庭の味である事を願っています。


 



第1647回 ナポリタン考(2)     2011年02月07日

 スパゲティ・ナポリタンをナポリタンではなくアメリカンと呼んだ方が適切なのではと思う最大の理由は、中心となる調味料、トマトケチャップにあります。

 アメリカはトマトケチャップの最大の消費国で、その量は年間4000万リットルに達するとされ、圧倒的に2位以下の国を引き離しています。世界の総生産量の半分をアメリカで消費されているとも言われ、いかにアメリカ人がトマトケチャップ好きなのかが伺えます。

 日本でケチャップというとほとんどトマトケチャップの事を指し、それ以外はケチャップという受け止められ方はしません。しかし、ケチャップとは素材に砂糖や塩、酢、香辛料などを加えて熟成させた調味料の事で、世界には数多くのトマト以外のケチャップが存在します。

 同じトマトケチャップでも酢を加えず、酸味が抑えられた製品が作られていて、トマトソース、レッドグレイビー、レッドソースと呼ばれて販売されています。

 アメリカでもケチャップといえばトマトケチャップの事が主流となっていて、酢が含まれた日本のケチャップとほぼ同じ味付けになっています。

 日本とアメリカでは同じようなケチャップが食べられているのですが、ケチャップに対する接し方の大きな違いはアメリカではケチャップは生食される事がほとんどで、加熱調理される事はあまりないとされます。

 日本では洋食でケチャップを加熱調理に使う調理法が確立されていて、チキンライスやオムライス、ロールキャベツなどケチャップを味付けの中心に据えた料理が数多く存在します。

 アメリカではケチャップの加熱調理がほとんど行われない事を考えると、ケチャップが中心となったパスタ料理であってもアメリカンとは呼べないように思えてきます。だからといってケチャップを使っていないナポリの名前を使うというのはと、多少の違和感を感じてしまうのですが、素朴な洋食のスパゲティナポリタンにも奥深い世界があるのではと思っています。


 



第1646回 ナポリタン考(1)     2011年02月04日

 パスタ料理が好きでよく作っています。特に常備しているタマネギとピーマン、ベーコンが使える事から「ナポリタン」は登場頻度の高いパスタメニューとなっています。

 スパゲティ・ナポリタンは茹で上げたパスタにタマネギ、ピーマン、ベーコンやハム、ウインナーソーセージなどを炒め合わせ、トマトケチャップを使って味付けをする比較的シンプルなパスタ料理で、イタリア料理かと言われると実はそうではなく、日本が発祥の地となっています。

 トマトケチャップの本場、アメリカの料理でもなく、何故日本なのかについては諸説があり、第一次世界大戦で連合国側として参戦した日本が地中海に艦隊を派遣した際、寄港したイタリアの港町でトマトを使ったパスタ料理に触れ、その美味しさを身近にあったトマトソースでもあるケチャップを使って再現したとする説や、大正時代の日本海軍のメニューにはすでに存在していたという意見もあります。

 最も有力視されている説としては、横浜にあるホテルニューグランドの第二総料理長であった入江茂忠が考案したとするもので、記録も残されている事からほぼ確実視されています。

 ホテルニューグランドは第二次世界大戦後間もなくGHQに接収され、以後7年にわたって米軍の施設として使用されていました。

 当時、すでに米国ではトマトケチャップは広く普及していて、日持ちが利く乾麺のパスタをケチャップで和えた料理は一般的な兵営食として供されていました。

 ホテルニューグランドに滞在する米兵達もケチャップで味付けされたパスタ料理を食べていて、接収が終わり、米兵達が帰国するとホテルの倉庫にはパスタの乾麺と瓶詰めのケチャップがたくさん残されていたといいます。

 そんな状況下、ホテルの再出発に際して看板となるメニューを作り出そうとして、当時の日本では珍しい存在であったパスタとケチャップを組み合わせる形でスパゲティナポリタンは開発されています。

 米軍が残した素材が元になっている事から、「スパゲティアメリカン」や発祥の店名を採った「スパゲティニューグランド」ではなく「スパゲティナポリタン」という名称にされた理由については、ナポリの屋台でトマトソースを使ったパスタが人気であった事に因んでいるとされます。

 その後、大衆化してパスタメニューの一環となるナポリタンですが、世界的にも通用するメニューなので、世界的に広まり、スパゲティジャポネーゼとなってくれればと考えてしまいます。


 



第1645回 テクス・メクス     2011年02月03日

 テクス・メクスというと、どことなく不思議な響きを持つ言葉のように思えますが、料理の名前と言われるとどのような料理なのか想像もつかないものを感じてしまいます。

 テクス・メクス料理とはメキシコ風のアメリカ料理を指す言葉で、メクスはメキシコの事を指しています。テクスはメキシコ料理とは近縁のテキサス州独自の料理の事を指していて、テキサスのメキシコ料理という意味を感じる事ができます。

 当初、テクス・メクスという言葉はテキサス・メキシカン鉄道のニックネームとして使われていました。新聞に鉄道の時刻表が掲載されるようになると、長い鉄道の名称は省略されて記載されるようになり、テキサス・メキシカン鉄道は省略してテクス・メクスと表記されるようになっていました。

 テクス・メクス料理については、評価が多きく分かれていて、アメリカ化された低品質のメキシコ料理という評価もあれば、テキサス州独自の古い歴史を持つ郷土料理という解釈もあります。

 代表的なテクス・メクス料理としては、日本でも徐々に浸透しつつある「タコス」や、「ブリトー」、「チリコンカン」などが上げられ、メキシコ風ではありますが、本来のメキシコ料理とは明らかに違う食材が使われていたりもします。

 日本でよく知られているU字型にパリっと焼かれたトルティータを使うというタコスは、テクス・メクス料理特有の物で、本来のメキシコの国民食ともいえるタコスは、平焼きの柔らかいトルティーヤが使われています。

 メキシコ料理の店などで出されるトルティーヤチップスや細切りレタスとトマトのタコサラダ、チェダーチーズや牛肉をたくさん使うというスタイルもテクス・メクス料理特有のものとなっています。

 あまり知られていないテクス・メクス料理という言葉ですが、実はメキシコ料理として接してきたものが多く、広く定着してしまっていたりもします。食文化という点ではあまり語られる事のないアメリカの食ですが、知らないうちに馴染んでいたという事には興味深いものを感じさせられます。


 



第1644回 寿司ポリス?     2011年02月02日

 世界的にヘルシーな食として知られた和食は、健康志向の高まりもあって各地で人気を集めています。高い人気を受けて世界各地に日本食、和食と銘打ったレストランが見られるのですが、実際に訪れてみると和食とは名ばかりの料理も多く、現地特有のアレンジが施されているものも多々見られます。

 そのような状況を放置しておくと伝統的な日本料理が正しく理解されず、間違った食文化が根付いてしまう事にもなりかねません。

 それを問題視した農林水産省が、「正しい和食」を提供する店の認証を行う事を発表しました。それに対しアメリカのメディアが一斉に寿司を取り締まる「寿司ポリス」と称して反発した事から、「認証」は「支援」へと改められてしまいました。

 寿司がアメリカに伝えられ、独自のアレンジがなされて「カリフォルニア巻き」を生んだ事を引き合いに出して、日本食に関する基準への疑問が投げかけられ、曖昧な日本食という規定と食文化の押し付けについての批判が展開されたのですが、一つのカテゴリーを創る際は明確な規定を設けるのは当然の事ではという考え方もできます。

 引き合いに出された寿司についても、昆布の出汁を使って専用に炊かれたご飯に寿司酢をまぶして作られた寿司飯に、新鮮なネタとワサビを合わせて作られています。

 寿司ブームを受けて乱立した店の中には、寿司飯すら充分に作られていない店も存在していたとされる事を考えると、消費者保護という観点からも寿司ポリスという存在は必要なのではと思えてしまいます。

 海外では和食を標榜する店の9割近くが日本人以外の経営者によって運営されているという実情を踏まえると、明確な規定を設けて正しい和食に接してもらいたいという事も考えられます。

 日本にはカレーやカツレツ、コロッケなど、海外の食文化を取り込みながら独自に発展した「洋食」というカテゴリーがあり、国民食でありながら独自の進化を遂げているメニューがあります。

 海外においても同じようにアレンジされたメニューは独自のカテゴリーを形成しても良いのではと思えます。料理の名前は一定の美味しさを表すものであり、レストランのメニューではそれを保障するものであってほしいと思えます。批判を受けて後退した寿司ポリスですが、できればもっと頑張ってほしいと考えてしまいます。


 



第1643回 乳酸以外     2011年02月01日

 乳酸菌というと、身体に有用な働きをする微生物として知られ、善玉菌の代表的な存在ともなっています。乳酸菌はその名の通り代謝によって乳酸を生成する細菌の総称で、発酵を行う事でヨーグルトや漬物、乳酸飲料を作り出してくれる細菌として古くから利用されてきました。

 腸などの体内にも常在していて、健康な状態を保つために有効な働きをしている事も知られ、他の病原性微生物から健康を守り、恒常性の維持にも深く関わっている事が近年認識されてきてもいます。

 乳酸菌という言葉は特定の菌種を指すものではなく、乳酸を生成するという特徴を持つ菌に対して使われています。代謝活動において多量の乳酸を産出し、悪臭や食中毒の原因となる腐敗物質を作り出さない事が一般的な乳酸菌と呼ばれる定義となっており、大きく分けると乳酸だけを作り出す「ホモ乳酸菌」と、乳酸以外にもアルコールや酢酸などを同時に作り出す「ヘテロ乳酸菌」に分ける事ができます。

 また、乳酸菌自体の形状から球形に近いものを「乳酸球菌」、細長い棒のような形状のものを「乳酸桿菌」と呼ぶ分類法も採用されています。

 乳酸菌の働きが広く知られるきっかけとなったのは、ほぼ全ての人の腸内細菌としてラクトバチルス属やビフィドバクテリウム属の乳酸菌が検出される事が知られ、パスツール研究所のメチニコフ博士によって乳酸菌を摂取する事が健康の維持によく、乳酸発酵させた食品を多く摂るブルガリアに長寿の人が多いという事が知られるようになった事によります。

 最近では乳酸菌を健康維持などに積極的に活用するプロバイオティクスという考え方も浸透し、呼び名も漠然とした乳酸を産出するという意味の「乳酸菌」から、属名よりも更に細かい菌株を指す名称で呼ばれるようになってきています。

 そんな乳酸菌の中で、最も広く知られたものの一つとして「ビフィズス菌」の存在を上げる事ができます。ビフィズス菌は乳酸とそれ以外の成分も産生するヘテロ型の乳酸菌で、乳酸以外の成分も健康維持に役立っている事が判ってきています。

 先日行われた研究では、ビフィズス菌が産生する酢酸は、病原性大腸菌の「O−157」の働きを抑え込み、有効に殺菌してくれるとされていました。

 ビフィズス菌が産出する酢酸が大腸粘膜の細胞を保護し、O−157の毒素の侵入を防ぐという働きが解明され、日常的にビフィズス菌を含む食品を摂取する事で食中毒を大幅に軽減させる可能性が示唆されています。

 ビフィズス菌は一般的にも広く知られた乳酸菌であり、ビフィズス菌を含む食品も数多く販売されています。健康生活の実現にビフィズス菌はまだまだ頑張ってくれそうです。


 



 

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